京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「千鳥百年」

2019年06月09日 | 映画・観劇
   キノハノ
   ヲチタ
   カキノキニ
   オツキサマガ
   ナリマシタ


鳥取県に生まれた田中千鳥(1917ー1924)が5歳のときに書いた初めての詩だそうです。無題。
母の古代子は鳥取初の女性記者で、その後は小説家としての道を選んでいる。両親の仲は悪く、千鳥は母親とともに実家に移った。病弱だったという。わずか7歳の短い命を終える間に40編の詩を遺した千鳥。その千鳥が残した言葉の世界に触れる…、短編映画「千鳥百年」が京都で初上映された。

砂丘に、ぐるぐる回る風車。荒波。倒れたおびただしい墓石。こんな映像が続いて始まる。ものわびしい音楽とともに。美しい自然?鳥取の風土?
製作者の意図がしっくりこなかった。


何度か繰り返し読むうちに「キノハノ ヲチタ カキノキニ オツキサマガ ナリマシタ」と口ずさんでいた。
絶筆は「けむり」
   
   ばんかたの空に
   ぽつぽと
   き江てゆく
   きしやのけむり 

まっすぐに心に響く千鳥の言葉。何気ない言葉の中に広がる世界。聞いて心地よい言葉の響きがあった。なんとなく覚え、フレーズが口に乗る。
心の動くまま、心は感動と置き換えてもいい、ことばを紡いだ千鳥。
よい詩とは? 問うてみたいものだ。読みの貧困な自らのことは棚に上げてでも。

古代子の随想が遺されているようで、詩には母親の言葉が添えられてもいた。37歳で自ら死を選んだそうな。
千鳥生誕100年。こんな母娘がいたことを知った日。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いい詩ですね。 (ゴマメのばーば)
2019-06-10 06:56:09
おはようございます。
田中千鳥の詩、はじめて出会いました。
いい詩ですね。
短編映画観てみたいです。
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いい詩、ゴマメのば―ばさん (kei)
2019-06-10 16:55:34
こんにちは。
私も初めてです。
戦後間もない頃の東京の飲み屋さんで、フツ―のおじさんが
「汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる」と口ずさんでいたとか。
現代の詩では、そのようにふと口をついて出る詩がないような気がします。
まっすぐな言葉の世界が届けられ、私にもイメージが広がりました。
幼い子の言葉の力、すごいものですね。
ありがとうございました。

もうお加減はすっかりよろしいですか。
返信する
短い命 (Rei)
2019-06-10 21:44:36
田中千鳥、初めて知りました。
短い命だったとしり、清らかな5歳の詩が
余計胸打ちました。
古代子もまた薄幸の人でしたね。
ネットで調べました。
もう少し知りたいと思いまして。
いつもいろいろなことご紹介くださって
ありがとうございます。
返信する
胸を打つ・・、Reiさん (kei)
2019-06-10 22:55:45
こんばんは。
30分ほどの映画の前に、京都出身のオカリナ奏者の演奏もありました。
千鳥の詩に魅かれ、イメージした曲やオリジナルなものまで。
砂丘に風車、思わず恐山を思いました。墓石の映像、ちょっと重かったです。
子供の純な心からの言葉に、映像が立ち上がり、イメージも広がるようでした。
古代子さん、きれいな方でした。
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