京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

連鎖を止める力

2023年06月24日 | 映画・観劇
プロテスタントとカトリックの対立が長く続いた北アイルランドのベルファストには「平和の壁」と呼ばれる分離壁が存在し、大まかには平和が維持されているが武装化した組織が今なお存在して若者の勧誘に余念がないのだという。

宗教的、政治的対立の記憶と分断が残る街の男子小学校では、哲学の授業が行われている。
かつて暴力で解決を図ってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生みださないためにケヴィン校長が導き出した一つの答えが哲学の授業だったのだ。


哲学的な思考と対話で問題の解決を探ろうとする挑戦のドキュメンタリーが上映される。
上映開始日(23日)を待っていたところ、その前日に「行かへん?」と友人から打診があった。75歳になる彼女は、不登校の子供たちのカウンセラーとして現役でいる。関心の向かう先がどこか似ているようだ。どちらからであっても、誘い水には即反応が常。

「どんな意見にも価値がある」.
校長先生の教えのもとで、子供たちは異なる意見に耳を傾け、自分の思考を整理し、言葉にしていく。どんな小さなことでも言葉にすることが大切だと励ます。
喧嘩やもめごとは日々絶えない。そのたびに先生たちは共感を示し、対話へといざなう。
そして、自らの内にある不安や怒りをコントロールする方法を教える。それが生徒たちの身を護る何よりの武器になるとケヴィン校長は知っていた。


「暴力は暴力の連鎖しか生まない。それを止める力が君たちにはあるのだ」
根気強く、真剣に子供たちの心を耕し続ける。

「たった一粒の花の種が地中で朽ちず、ついに千本の梢に満開の花を咲かせることもある」
「人の心は種である。果てしない未来を拓く種である。」
こんな言葉に触れたばかりだ。(『穀田屋十三郎』磯田道史)

紛争、対立を越えて共に生きる社会の実現は、気が遠くなる道のりかもしれない。けれどそんな中にも生きる意味がひそみ、余韻が生まれた。子供たちは未来を託す希望なのだ。


 
   プレスリー大好きなケビン校長の車のフロントにあったのは、これかもしれない?





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