京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

銀河鉄道の父

2024年03月07日 | 映画・観劇
国際交流基金・京都支部による映画上映会で「銀河鉄道の父(FATHER OF THE MILKY WAY RAILROAD)」を見てきた。
この上映会は、外国人のための…とあって、しかしいつも大半は日本人だが、英語字幕が付く。128分の上映時間に座り疲れを感じていたが、(無料だよ、ムリョーだよ)と脳裏をかすめれば有難いばかりで文句など恐れ多いことよ。
ひと月も前から誘われた、約束の日だった。


直木賞受賞作『銀河鉄道の父』(門井慶喜)の映画化。宮沢賢治を支えた家族の姿が描かれている。
【質屋を営む裕福な父・政治郎の長男に生まれた賢治は、跡取りとして大事に育てられるが、家業を“弱い者いじめ”だと拒絶。宗教に身を捧げる、と東京へ出てしまう。そんなとき、一番の理解者だった妹のトシが結核に倒れる。
妹を励ますため、賢治は一心不乱に物語を書き続ける】

「お父さん、ありがとう」と何度も賢治は口にしていた。映画では、賢治今わの際に父が暗唱していたが、「雨ニモマケズ」の詩に涙が誘われた。

つい最近、『風に立つ』(柚木裕子)では岩手県盛岡市にある南部鉄器工房を舞台にした職人父子の葛藤を垣間見た。物語の中で賢治の『グスコーブドリの伝記』が挙げられ、人生をも狂わす自然災害の過酷さが父の背景に描かれた。
「幸せな人生ってなんだろう」とあった問いかけは、賢治の世界に通じるようでもある。

 

またその少し前に、『六の宮の姫君』(北村薫)で落語「六尺棒」に描かれた父子の姿を読んだ。
夜遊びが過ぎる息子を父が締め出してしまう。「それなら火をつける」と声を上げるので、父は六尺棒をもって息子を追いかけるのだが、その最中に立場が逆転。家に入り込んだ息子が父を締め出す。
怒りながらも息子を心配し、それをあしらう息子にも父の心は十分わかっている。(明日から親孝行しよう) 父親が好きだ、という息子の気持ちを外してはいけないと描かれていた。

三者三様も、どこかでつながり合えたいい人たち。あらぁ、我が家の父と子は…といつも考えるわ。

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4 コメント

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読書と映画と。 (サッ チー)
2024-03-08 10:29:09
Kei様、おはようございます。
 今朝は雪でしたが、霙から雨になりました。
 ほんの少しの春への移行ですね。
 
 kei様が読書もされて、映画も観て、心の中で噛み締めて・・自分の人生とも照らし合わせて・・考える。
 素晴らしい本に出会えて心の栄養にしておられる姿は神々しい。
宮沢賢治 (りりん)
2024-03-08 12:22:53
こんにちは

今更ながら宮沢賢治のことを深く知らないことに気づきました。
この映画、予告編観ただけでも泣きそうです。
『風に立つ』の中にあった『グスコーブドリの伝記』も興味あります。

このサイトで読んだ宮沢賢治
とてもユニークで理系の人
高村光太郎先生が世に宮沢賢治を知らしめたお人だったと、初めて知りました。
https://www.nhk.or.jp/morioka/lreport/article/001/79/
心の栄養に サッチーさん (kei)
2024-03-08 16:01:00
こんにちは。
今朝、関東地方の天気の荒れ模様が気になりました。
霙から雨にですか。
こうして一歩一歩本格的な春に近づくのですね。

原作を読んでいないのですが、映画は映画なりに楽しめました。
明るく優しい、とてもユニークな賢治像でした。
読書でも映画でも、受け取る側にはそれぞれに異なった余韻や感慨が生まれますよね。
「ありがとがんす」と りりんさん (kei)
2024-03-08 16:28:36
こんにちは。.

よい映画でしたよ。
涙がツーッと流れるのですが、マスクのところでストップ(笑)
あの有名な、畑でうつむき加減の立ち姿はベートーベンを真似ているのだとは。知らなかった!
明るく、心根の優しい人間ですね。理系であること、
そしてなんともユニークな人物である面もよく描かれていました。
高村幸太郎によって彼の作品が世に出ることになったのですね。さすがの慧眼ですね。
エッセンス的にも作品があちこちで用いられていること。
それだけ賢治の作品の素材の価値、内容的価値が認められているということですよね。

私は青空文庫から、わざわざプリントアウトして読むことが多いです。

サイトのご紹介ありがとうございます。
知らないことも多く教えていただけました。感謝感謝です!

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