京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

木組み・心組み

2024年09月01日 | 日々の暮らしの中で
昨夜、NHKの番組「新プロジェクトX」を観た。1300年を経た薬師寺東塔の全解体修理に携わる職人さんたちの〈技と哲学〉、挑戦の姿に見入った。




1300年の荷重で腐食したりゆがんだ心柱をはじめに1300あるという部材を、「創建当時の工人たちの心になって」仕事をされていく職人さんたち。
2012年に開始された修理は2019年に終了、9割の部材を生かすことができたと伝えられた。近しい者の幸せや世の安穏を祈りつつだったろう。


飛鳥時代から受け継がれていた寺院建築の技術を後世に伝える棟梁・西岡常一さんを描いた
映画、「宮大工西岡常一の遺言 鬼に訊け」を見たことがある。
「技法に世襲なし」 は名言として残る。

法隆寺の大工には代々口伝が伝わっているそうで、西岡氏も祖父の常吉棟梁から教えを受けていた。
「木は生育の方位のまま使え、東西南北はその方位のままに」
   山の南に生えていた木は、塔を建てる時に南側に使え。北の木は北、東の木は東、
   西の木は西に、育った木の方位のまま使えと。
   
「堂塔の木組は、寸法で組まず木の癖で組め」
「百工あらば百念あり…」

「木の癖組は工人たちの心組み」

木と同じように人にも癖がある。
木の癖を生かした木組みをし、工人たちの心を汲んで心組みをする。
ありとあらゆる職人たちが心を一つにして仕事に向かえる集団にしていくことは、棟梁の器量なのですな…。
物の見方、人とのつきあい方、教えられるようだ。


「初め器用な人はどんどん前へ進んでいくんですが、本当のものをつかまないうちに進んでしまうこともあるわけです。
だけれども不器用な人は、とことんやらないと得心ができない。こんな人が大器晩成ですな。頭が切れたり、器用な人より、ちょっと鈍感で誠実な人の方がよろしいですな」

1300年、ここに建ち続けているということが、建て方、材の用い方…誤りではなかったことの証しとなること、印象に残った。
創建当時の工人さんたちの技法、哲学、祈りの心、に遠く遠く思いをはせてみる。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (sk_oyazi)
2024-09-01 16:00:57
自分も観ました。
奥様の話しには、
思わず涙してしまいました。
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棟梁・西岡常一さん (うばゆり3)
2024-09-01 16:35:23
こんにちは。

今回のものは観ませんでしたが、昔から棟梁・西岡常一さんの特番は観てました。
器用な人は・・・以下心に残っております。

ところで、生家も嫁ぎ先も何百年かの家を改築して住んでます。
改築時に実家は自宅の山林より木を切って使い、嫁ぎ先では蔵に入れてあった木材を使いました。
しかし、新築何軒分もかかるんですね~

>「堂塔の木組は、寸法で組まず木の癖で組め」

国宝の場合は!!きちんと、こうしたやり方で、また1000年持ってほしいと思います。
そうそう、西岡さんの本も持ってます。
幸田文さんの『木』の本も良かったです。
返信する
宮大工さん (Rancho)
2024-09-01 17:53:07
宮大工さんって、相当な技術が必要なのでしょうね。

宮大工さんって、釘一本も、木で作るとか、
後々のことまで考えられているとか
聞いたことがありますが、、

残念なことに、見ることができませんでした、、、

流石のkeiさま、
色々なところに目を向けてらっしゃって、
拝見させていただいて、楽しいです!
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 思わず… sk_oyaziさん (kei)
2024-09-01 18:05:53
そうですね、ジンときましたね。
あれだけのお仕事をされ、家では奥様が病と闘う姿を見ながら寄り添って…。
仕事中も頭から離れなかったと言われてましたね。
29歳で西岡さんと出会い、後継者ですよね。
そして笑顔の素敵な優しそうな女性と出会って。
「思わず涙」。はい、sk_oyaziさんらしい(?)なと想像してます。
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また1000年  ゆりさん (kei)
2024-09-01 18:19:46
心柱はシロアリにやられてで3mほど空洞になっていた
ました。
根継ぎをしないで、心柱の寸法を切らずに中を削って修理されていました。
古いものを削り落とさない、ミリ単位の仕事なのだと。
あと1000年もつものとして後世につなぐ、心意気も映えていましたよ。
幸田文さんの「木」ですね、ありますね。
芽吹きをとても好まれる話が印象に残っています。

「新築何軒分もかかる」、聞いたことあります。
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釘一本も  Ranchoさん  (kei)
2024-09-01 19:53:20
竹の釘を口に含んで、作業にあたる職人さん。
1本、1本とうまいこと口から出して流れるように作業するのですよね。
確か山口県の瑠璃光寺の修理現場の映像にありました。
大徳寺方丈の軒先から400年前のノミが発見され、それが修理現場と合わせて公開されたので、
ヘルメットかぶって拝見してきましたよ。

東塔の水煙の天人は新しく作りかえたのですね。
鋳型に真っ赤な銅を流し込む場面では、小説「与楽の飯」にあった
東大寺大仏づくりの工程のシーンがふと思い出されました。
あれこれ見たり聞いたりしたことが合わさって、楽しんでみました。
「技術は先輩から盗み取るんや」って。
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