京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

国を滅ぼしますよ

2022年12月19日 | 映画・観劇
京都府舞鶴市にある舞鶴引揚記念館は全国のシベリア抑留体験者らの寄付を受けて1988年に開館され、抑留や引き揚げの歴史を紹介している。2015年、その関係資料570点がユネスコの世界記憶遺産に登録された。

手作りのマージャンパイ。白樺の皮に、端正な文字で書き綴られている短歌や随想、移動記録。

 

「身につけた教養や文化が精神を支えた」、「楽しみを見いだす心は、過酷な状況を耐え抜く生きる力になったのだろう」と分析、語られる学芸員・長嶺さんの言葉を読んだことがあった(‘21.1月の記事)。
ちょうど今朝の新聞コラムは、記念館で展示中の「残っていることが奇跡的な資料」だと言われる新収蔵品に見入る若者がいることに触れて始まっていた。
そして、記事の中で映画「ラーゲリより愛をこめて」が公開中であるのを思いださせてもらい、見に行こう!となったわけだ。

 

どんな環境にあっても希望を捨てずに生きることを仲間に家族に記憶させた一人の人間、二宮クン演じる山本幡男氏の半生。死期迫る病床にあって、真っ黒な爪の汚れが目についた。
敗戦から12年。日ソ国交が回復してようやく帰国の道が開けるまで、過酷な日々を共に耐えた仲間が、遺書を彼の家族のもとに届ける。
文字を書き残すことはスパイ行為とされた環境で。「白樺日誌」などはどのようにして残されたのだろう。

帰りに原作の『収容所から来た遺書』(辺見ジュン)を購入。映画の余韻が落ち着いたあと、読んでみようと思って。

半藤一利氏がこんなことを書いていた。
〈(日本国を)小人国と書いたことを怒る人がいるかもしれない。われら日本人はそんな弱虫にあらず、誇りをとり戻せ、断固戦争できる「ふつうの大国」にして、国民一つになって内憂外患を吹っ飛ばせっと。
でも、わが日本国は地政学から厳密にみると、とても戦争なんてできない国と思うんですがね。大国主義は国を滅ぼしますよ。
歴史は所詮人間のつくるもの、人間の質が変わらなければ同んなじことが…。芭蕉のいう「不易」がここにあるようである。〉(「小人国の内憂外患」『歴史のくずかご』収 )

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