京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

コレクター「夢石庵」

2017年12月05日 | 催しごと・講演・講座

「末法/Apocalypse -失われた夢石庵コレクションを求めて」に誘っていただき細見美術館へ。この展覧会を催すスタンスが興味深かった。

「初公開」「新発見」「〇〇万人動員」あるいは「国宝・重要文化財指定」などとの指標だけで美術が語られる展覧会が次々と催されている。一方で、個性豊かな美意識・鑑識眼をもって美術品を蒐集していたコレクター・数奇者と呼ばれる人々が姿を消しつつある、と。これは美術にとってある種の末法の世ととらえている。その状況に戸惑いを感じる立場から、個人の美意識に基づいたコレクション展を催し、〈いいも悪いも、一人称で語り、評価する世界を楽しんでみて〉、と一石が投じられた。…と今展を理解してみた。

作品リストの一覧によれば、前・後期で多少の入れ替えがあるが展示作品は80点あまり。その中に国宝、重要文化財は一点もなかった。展示品の名称、時代と、中には所有者、伝来までが添えられたものがある。作者名がわかるのは長谷川等伯、与謝蕪村、丸山応挙、酒井抱一による絵画作品だけ。

見て回る際、少しでもいいから解説が欲しいと思ってしまった。いつも何がしかの説明を頼りに見ることが習慣づけられてきたせいか、物足りない。一見しただけでは、一つひとつの作品の奥がわからないのだ。けれど、そここそ個々に美の鑑賞が委ねられた部分でもあり、そこを楽しむのですよ、と投げかけられていたわけだろう。そうは言われても、語るほどのものを持ち合わせず、こういうのが身近にあったらいいのになと思うくらいで情けないこと。とは言え、で、いいなあと思うものからは、しみじみとした平安さ(?なんて表現があるかしら)、豊潤なぬくもり感(?などと言うかな…)で気持ちよく充たされる。この感覚、まさに個人的な好みの問題と言えそう。迦陵頻伽像(覚園寺伝来 パワーズ旧蔵)、金銅十一面観音懸仏(平安時代 藤田青華蔵)、薬師如来懸仏(鎌倉時代)などはとりわけ印象に残った。

見終わって出口を出たところに用意されてあった1枚の印刷物。そこから、この展覧会のちょっとした仕掛けを知って、「夢石庵って??」「えっ、どういうこと?」って、ワインを傾けながら友人と語り合う。その種明かし、ここではできない。この作品展の会期が終わるまでは、胸の内に収めておくという約束に…。語ってしまってる? いませんよね。


道路を挟んで東にあるロームシアター京都では「吉例顔見世興行」が開幕している。南座が改装工事中のためで、ここに掲げられたまねきの看板だけを見て帰ろうと立ち寄った。

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4 コメント

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Unknown (yo-サン)
2017-12-06 10:22:43
不思議な謎めいた展覧会のような気がしてきました。
凄いコレクターさんがいらしたのですね。

keiさんの印象深い金銅十一面観音さまにお会いしたくなりました。
何度か湖北の観音の里は訪ねましたが、近年は身辺の雑用に追われてばかりで。

しかしながら、新聞の文化欄を見るような、とてもインパクトのある評論でした。さすが!
モーニング中のyo-サンでした。さてお仕事・お仕事。
謎めいた・・、yo-サンさん (kei)
2017-12-06 22:19:07
こんばんは。
ゆっくりのお目覚めでしたか~。

個人ではなく、実は「凄いコレクターさん」たちの共同展?という形でした(ナイショです)。
「懸仏」は初めてでした。
小さくて愛らしく品があり、ほれぼれする何かがあって惹かれます。
私も身近に置いて毎日拝していたいと欲が出てしまいます。
等伯の柳の屏風絵、こういうものの良さがわからなくって、絵画オンチを思い知らされます。
ありがとうございます。




コレクション (Rira)
2017-12-07 12:43:44
こんにちは。
コレクションの絵画展に初めて行ったのは小学生の時 小学校の団体で。
絵画鑑賞、上手くは語ることができませんが
お陰さまで 描いた人達の気持ちのようなものが想像できるかも
市美術館の常設展は見応えあるよう感じます。
子供会の役員してる時、ミニ旅行で市美術館に行きました(^^)
絵の興味を思い出せた評論、ありがとうございます。



鑑賞、Rira さん (kei)
2017-12-07 23:01:45
こんばんは。
「末法」の文字が目に入ってスルーしていました。
誘われなければ縁なく終わっていたわけで、
私の好みの世界なんてちっぽけなものです。
なるべく広く様々な世界に触れようとだけは心がけています。
絵画展も数は少ないですが行くこともあります。
洋画は選んでは行きませんけど。

「油絵が動く! アニメになってる!」と友人から勧められた映画「ゴッホ最後の手紙」見ました。
目新しい試みに驚きました。
画面に目を奪われながらストーリーを追っかけました。

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