伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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富岡市の事業仕分け 解説パート2

2011-08-29 17:45:09 | 事業仕分け 住民協議会 構想日本
富岡市の事業仕分けに関する8月28日のブログの続きです。
なお、これは一仕分け人の感想であり、
富岡市や構想日本の公式見解ではありません。

市民判定人と、仕分け人が次の5つに仕分けました。
 ①不要(民間実施含む)
 ②再検討・見送り・根本的に見直し 
 ③国・県・広域で実施すべき 
 ④市で行うが改善すべき
 ⑤市で現行どおり実施・または拡充


5 防災訓練事業
市の説明によると、他の自治体に比べて
富岡市は市民の参加がとても多いそうです。
説明資料の中で防災訓練のやり方について、
初動マニュアルに基づいた訓練を計画したいと記述しながらも、
従前の避難訓練を中心とした防災訓練も重要であると書かれ、
迷いが見られました。

私は、防災訓練は防災計画上の重要事項だと思いますので、
何をどのように実施するのか、その後いかに発展させていくのかなどは
担当者が迷い悩むことではなく、防災計画の中で
きちんと位置づけるべきだと考えました。

議論の結果、市民判定人の判断は④改善、
仕分け人の判断は全員一致で
⑤現行どおり・拡充、となりました。


6 公営墓地管理事業
自治体の仕事の中では、少し異色の事業です。
公営墓地を持っていない自治体が多いですから、
自治体が市の職員と税金を使って
直接やらなければならない必須の事業ではないのです。

判断のポイントは、
富岡市には、民間任せではなく
どうしても市が公営墓地を造成・販売・管理しなければなない
特別の地域の事情があるのか?という点でした。

日本全体の人口減少、税収不足の流れの中で、
「民間でできることは民間へ」というスタンスが
行政改革の基本です。

富岡市では、
市民すべてが市の墓地を購入するのではなく、
菩提寺にお墓をもっている方も多いそうです。

議論の基本的な前提として、富岡市では
民間の墓地の販売可能な空きはどれくらいあって
新しい墓地を購入する予定の市民の数はどれくらいあるのか質問しました。
把握されていないそうです。

この回答ですと、民間任せではどうしても足りないので、
市が作らなければならないのだ、という理屈は成り立ちません。
それでは、なぜ市が作らねばならないのか?

キリスト教信者など、宗教の関係で
お寺の墓地を使えない方のために作るという回答がありました。
「なるほど、そのような問題もあるのか。」

「だがまてよ、たとえば伊勢崎市内にもキリスト教信者はいるだろう。
 伊勢崎には公営墓地がないので、その方たちはどこに埋葬しているの?」
疑問が浮かんできました。

富岡市が販売・管理する墓地は
分譲価格も、年間の管理費も民間と比べて格安です。
これなら新しくお墓を求める方には人気です。
値段的には、民間事業者やお寺が販売しようとしても
太刀打ちできません。

市は墓地販売と管理については、
使用料と管理料を徴収していますが、赤字のため税金で補填しています。
この墓を利用している方は、格安で使用できますが、
それ以外の市民は、他人の墓地の購入や維持管理費を
税金の中から負担しているのです。

他の仕分け人から、利用者負担の原則から
一般会計ではなく、独立会計として区分し、
利用者からの料金の中で運営すべきではないか、という
指摘がありました。

市民判定人の判断は、④要改善、
仕分け人の判断は、②根本的見直しとなりました。



7 敬老会実施事業
説明資料によるとこの事業の目的の概要は、
各地区が主体で開催し、高齢者にとって生きがいと交流を
深める機会とし、高齢者に感謝し、長寿を祝福する、
とあります。

事業内容は、各地区に委託料を払って実施してもらいます。
地区割りで7万円+人数割りで一人当たり千円。

市担当者は、この敬老会の招待状を持っていくときに
高齢者の安否確認ができると説明しました。

他の仕分け人からは、高齢者の安否確認が
一年に一度でいいのか?という疑問が出ました。
おそらく地域の役員さんや民生・児童委員さんは
高齢者や1人暮らし世帯の様子は、いつも把握されていることと思います。

また、高齢者にとって交流の機会になったり
生きがいを感じる事業であれば、
ミニデイサービスは実施していないのか質問しました。
富岡市ではサロンが5箇所あるそうです。
伊勢崎市では、町内単位でミニデイに取り組んでいますので
だいぶ数が違います。

近隣の藤岡市では、敬老会事業が平成19年度に廃止されたと
資料に書かれていました。
他の仕分け人が理由を尋ねたところ、
参加者の減少と、高齢者の楽しみの多様化により廃止とのことです。

根本的な疑問は、
事業目的で「各地区が主体で開催」とされていながら、
補助金ではなく委託料となっている点です。

補助金であれば、事業の実施主体に対しての応援です。
委託料であれば、市が実施主体であり、代わりにやってもらうために
委託料を払うのです。
誰が祝うべきなのか、だれが主体なのか、考えなければなりません。

8 男女共同参画事業
事業は、意識調査、職員研修、セミナー開催。
更にポジティブアクションとして
「女性のためのパソコン教室」と、
「男性のための料理教室」を行っています。

女性のためのパソコン教室は、
女性の就職を支援するためだそうです。

いまどきの女子学生は、
パソコン教室に習いに行かなくても
パソコン使えるのではないかしら?

女性が就職・再就職しにくい最大の障害は、
パソコンができるかできないか、ということではなく、
保育所や学童保育所が足りているかどうか、
のほうが影響が大きいのではないか?

こんな疑問がうかびましたので、
質問したところ、担当部署が違うせいもあり、
把握していないとのことでした。

後援会やセミナーを実施しても、
一部の関係者のみの啓発となり、市民に浸透しないそうです。
実行はどのようになっているのか事前に調べました。

「富岡市男女共同参画基本計画」では、
民間事業者に対し、女性の能力を生かした登用の
呼びかけをうたっています。

このように民間に協力要請をするくらいなら、
市役所内部ではどのように女性の幹部登用を進めているか
該当部分を読んでみると、
「女性市職員の管理職部門への参画の促進」と
ハッキリ書いてありました。さすがです。

このことから、仕分けの場で、
市では女性市職員の管理職部門への登用は
目標何パーセントに設定し、どのように進んでいるのかと
質問しました。
回答は、目標設定すらしてないそうです。

このような取り組み方で、民間も含めた
富岡市の男女共同参画は進むのか心配になりました。

名古屋大学の田村哲樹教授によれば、
「男女共同参画」とは、平たく言うと、
「女だから○○しなさい」とか、「男だから××でなくちゃ」などと、
男女という属性によって私たちの行動範囲・思考範囲が
限定されることがないようにしていこう、ということです。

「男女共同参画社会」は、
性別で決め付けるのではなく、個人の個性や意思、能力を尊重して
認め合っていく社会を造っていこうとしているのです。

この原理を踏まえて、
富岡市が実施している事業を見てみますと、
「女性のためのパソコン教室」と、
「男性のための料理教室」。

役割がひっくり返っただけで、
これも性別による役割の固定ではないでしょうか。
男女別に教室を開催するよりも、
男女一緒の料理教室を開催し、そこへ行く男性を増やすような取り組みが
必要ではないでしょうかと質問しました。



9 老人クラブ事業
多くの自治体で共通していると思いますが、
老人クラブの加入者が減少しています。

年金の支給が65歳になったため、60歳を過ぎても
働きに出る人が多くなりました。
社会の中に多様な趣味を生かせる活動の場も増えました。

また、老人クラブの会長は仕事の負担が非常に大きいため
会長交代の際に、後任が見つからずクラブが解散してしまう
ことも多いそうです。

趣味が多様化しているとはいえ、
高齢化社会が進展している現在、
地域の交流の場としての老人クラブの役割は
ますます重要だと思います。

老人クラブ活動振興のために
市では補助金を配布していますが、
現状は、クラブの解散や、クラブ員が減少しています。

その原因の一つが、
会長さんの仕事の負担が重過ぎることがわかりました。
だとすれば、市がお手伝いすべきことは
お金を配ることだけでなく、運営面のお手伝いや、
会長を補佐する組織や人材のノウハウの伝授ではないでしょうか。
他の仕分け人から、そのような指摘がありました。

伊勢崎市では老人クラブのボランティアの方が
毎日小学生の下校時見守りパトロールをして頂いています。
雨の日も、風の日も、暑い日も、寒い日もあります。
80歳を超える方にも支えて頂いております。
そして、昨年の「安心安全まちづくり市民総決起大会」で
伊勢崎市長からすべての老人クラブに感謝状を贈呈して頂きました。
老人クラブの皆さんは、社会からきちんと認められ
市長から感謝されたことをとても喜んでいらっしゃいました。

行政が老人クラブを応援するのに、
お金以外にもこのような方法がありますと
私から富岡市の担当者の方にご紹介したところ、
たいへん参考になりますと、前向きに受け取って頂きました。

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事業ごとの仕分けのご報告は以上です。
正式な実施結果は、富岡市のホームページに掲載されると思いますので
そちらでご確認ください。

市民判定人の方は、
今年だけでなく、昨年も参加された方も多数いらっしゃいました。
今年は一日限りですが、
昨年は二日間、朝から晩まで仕分けがありました。
市民判定人の皆さんの熱意に敬意を表します。

富岡市におかれましては
ぜひともこのようにすばらしい市民の力を生かした街づくりを
推進されますことをご期待いたします。
キーワードは「市民力」。

終了時のご挨拶の中で
富岡市長さんは、来年度も事業仕分けを実施しますと
宣言されました。
より進化した富岡市民と市職員のみなさんに
お会いできることを楽しみにしています。


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