伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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県の防災体制 抜本的見直し 日本にもFEMAを

2019-09-25 17:53:25 | 地震・災害 関係

(千葉県の台風災害)

千葉県の台風災害では、房総半島の停電が長期間続き、
被災地の市町村から県へ被災情報が伝わらなかったようです。
被害にあわれた方には心よりお見舞い申し上げます。
今回のことを教訓に、
今後の防災対応を向上させるために検討しています。
防災の本を何冊か注文しました。
今回の提言は1回目です。



(県庁の立場)

千葉県庁としては、市町村から連絡が来なかったので、
たいしたことなかったのだと思っていたら、
強風による建物の損壊や、ライフ・ラインである
電気、水道が止まるなど甚大な被害が発生していました。

東日本大震災時のように、被災地の被害があまりに甚大だと、
市町村役場の機能は失われ、県へ連絡することさえできないのです。

この矛盾をどう解消したら良いのか。
災害の無かった県庁で、
市町村から何も連絡がこないと待っているだけでは、
貴重な初期対応の時間を浪費してしまいます。

被災市町村から情報が来ない場合は、
県は自から情報を取りに行くことが必要です。

初期段階では
ヘリコプターを使い上空から全県をチェックして回る。
県庁の出先機関は県内各地にあり、
電話のほか防災無線もつながっていますので、
出先機関の職員が担当区域の市町村役場へ行ったり、
管内をパトロールする、ということが想定されていたはずです。



(千葉県の防災計画)

千葉県の防災計画
を確認すると、
「被害情報等の迅速・的確な把握は、
あらゆる応急対策活動の基本となるものである」と書かれています。
逆に言えば、被害情報が迅速に把握できなければ、
あらゆる応急対策が滞ります。ここが災害対応の一番の肝なのです。

続けて千葉県の防災計画では、災害対策本部は、
「市町村や施設管理者が、被災等のため情報の収集が困難となった場合は、
職員等を現地に派遣して、情報収集を行う」と記述されています。
さらに、
「大規模な災害が発生し、被災地全般の被害状況や孤立地区等の状況を
緊急に把握する必要がある場合には、次の機関の所有する
航空機による情報収集活動を行う。
①陸上自衛隊 ②海上自衛隊 ~」とされています。
(千葉県は、防災ヘリコプターを持たない数少ない県のひとつ)

続けて、防災計画には次のように書かれています。
「県内のヘリテレ搭載回転翼 ・県警本部~ ・千葉市~ 」。
実はこの記述には誤りがあります。
私は群馬県庁の消防防災課に5年間勤務し、
防災ヘリを担当していましたのですぐに気づきました。

「ヘリテレ」というのは、ヘリコプターに搭載する
テレビカメラと画像を地上へ送信する装置システムのことです。
過りはその後の部分「回転翼」。

航空法では飛行機を固定翼機と回転翼機に分類しています。
普通の飛行機は固定翼機で、ヘリコプターは翼が回転するので回転翼機です。

千葉県の記述では「ヘリテレ搭載回転翼」となっているので、
これではカメラを付けたプロペラと言う意味で、
ヘリコプターを意味しません。
正しくは「ヘリテレ搭載回転翼機」と書くべきところでした。
(千葉県庁へ修正の連絡しました)
(翌日電話回答を頂きました。次回見直し時に訂正するそうです)

千葉県庁自身が消防・防災活動用のリコプターを所有していないことが、
災害の初動段階において情報収集にヘリコプターを使わなかったことや、
防災計画でヘリの法的名称を間違ったことの遠因かもしれません。
(注:私が知らないだけで情報収集にヘリを使った可能性はあります)

「市町村や施設管理者が、被災等のため情報の収集が困難となった場合は、
職員等を現地に派遣して、情報収集を行う」のほうも、
あまり機能していたとは思えません。千葉県知事の記者会見と、
被災地のテレビ報道などには大きな隔たりを感じました。



(日本にもFEMAを)

ここで思い出すのは、FEMA(フィーマ):アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁。
この公的機関は、洪水、ハリケーン、地震および原子力災害を含む、
その他の自然災害や核攻撃などの人的災害に際して、
迅速に現地に入り、連邦機関や州政府等の関係機関の業務を調整し、
復旧の指揮もしました。残念ながら今はありません。

FEMAは、核攻撃を受けた場合に備えて設立された組織だったので、
迅速かつ自立的であることが特徴です。
EMAは災害対応において非常に効果を上げました。

最災害時に、被災した自治体に対して、
「被害の情報を集めて報告せよ」と
何の被害も受けていない県や国が命令するのは酷です。
激甚災害ならばなおさらです。

救助する側が自分で現地へ行って
情報を収集・分析し、自立的に迅速に活動するほうが、
よっぽど合理的ではないでしょうか。

私の提案として、県の災害対策本部は県庁内に置くのではなく、
これからは原則として被災地に置くようにすべきと考えます

電源も食料も自前で用意し、かつてのFEMAのように
迅速かつ自律的に支援するのです。
県職員の意識や行動が大きく変わると思います。

これだけ毎年のように大災害がおきるようでは、
国の省庁としてFEMAを設置することも意味があると考えます。

もし県の災害対策本部が県庁内にないと、
県庁各部への連絡調整や知事等が出席する会議がやりにくくなる、
という県庁内部都合の意見が出るかもしれません。

県庁にも災対本部の留守番部隊は置きますし、
行政無線やテレビ会議などを使えば対応できるはず。

被災地の自治体職員が自らも被災した中で
災害情報の収集と住民対応を行うことの困難さに比べれば、
県庁の災対本部の現地設置は十分可能であり、
それこそが被災地支援ではないでしょうか。

50年に一度、100年に一度の大災害に見舞われた被災地では、
市町村職員にとってそのような体験は生まれて初めて。
なかなかうまく機能しないでしょう。
しかし、国や県がFEMAのような専門機関をもっていたらなら、
プロフェッショナルが対応し、毎年の貴重な経験も蓄積され、
年々強い組織になるでしょう。



(プロアクティブの原則)

私も県庁の防災部署にいたのでよくわかりますが、
いざ災害が発生すれば電話や無線、メール、FAXなどが飛び交い、
連絡調整や会議の開催、マスコミ対応等てんてこ舞い。

しかし、県庁が被災してなければ通常のデスクワークの範囲なのです。
命の危険もなければ、ワイシャツとネクタイ姿でも仕事はできます。
県庁に座って市町村から被害情報や、救援要請が来るのを待っている姿勢は、
厳しく言えば殿様商売。

防災のプロであれば、情報が少ない時点で、
これは連絡できないほど現地の被害は深刻なのかもしれないと
ピンと感じるべきでした。そうすれば自分たちでもっと早く
情報収集に動けたはずです。

アメリカには「プロアクティブ」という危機管理の原則があります。
大規模災害時にトップに立つ者の行動原理で、
米国では組織のトップは徹底的に叩き込まれます。

災害が大規模であればある程、現地は混乱し、情報は入りません。
その際、トップはどのようなスタンスで危機に臨むべきか、
という判断基準です。

 プロアクティブの原則
 一つは、「疑わしきときには行動せよ」、
 二つ目は、「最悪事態を想定して行動せよ」、
 三つ目は、「空振りは許されるが、見逃しは許されない」

良くない例として「プロアクティブの原則」の逆を考えてみましょう。
 1 状況を甘く考える。
 2 思った以上に状況が悪く、対応が後手後手になる。
 3 もっと早く資機材や人員を投入していれば軽くすんだのに、
   タイミングが遅れ被害が拡大してしまう。

名官房長官と言われた後藤田さんは、
悪い情報ほど、早く伝えろ、と部下を教育しました。
第一報は、ラフ・アンド・レディ。
大雑把で手元にある情報でいいのです。

現在の千葉県の防災計画には次のような記述があり、
呆れました。非常時にこんなことやってられません。

(4)情報報告に当たって留意すべき事項
 ウ 被害等の調査。報告にあたっては、関係機関及び内部の連絡を密にし、
   調査漏れや重複等のないよう十分留意するとともに、被害数値等の
   調整を図ること。
 カ 市町村は、り災世帯・り災人員等の把握に当たっては、
   現地調査のほか住民基本台帳等と照合し、正確を期すこと。

大災害時には、他県から緊急消防援助隊が派遣されます。
消防庁のホームページで「緊急援助隊の応援等の要請等に関する要綱」を
確認したところ、1ヵ所脱字を見つけたので連絡しました。

(応援等実施計画)
(誤)第 38 条(4)NBC災害部隊の編成及び出動体制に関すること。
(正)「NBC災害即応部隊」



(参考ブログ)
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