健保のつぶやき

食事、トイレと他人様に頼る必要はないが、薬に頼る生活がソロソロ始まりました。当面は「親鸞さん」に照準。

なるほど 血圧基準の決め方は だから自分が基準を作る

2014-05-30 10:03:18 | 夏井医師
  •  「AGA(男性型脱毛症)についてのメールです。
     私は診断を受けておりませんのでAGAとは言えませんが、三十代後半から額が広くなりました。現在進行形です。だからといって、治療をしようとは思いません。
     何故なら、「はげ」は治療を要する疾患と捉えられないからです。加齢と共に起こる「頭が薄くなる」、「しわが増える」等の外見の変化は病気ではありません。先生の「ミニエッセイ」の最後の記事にあるように、単に「加齢に伴う変化」と捉えるべきではないでしょうか?
     薬事法上、医薬品の対象になりますが、本当に必要とされる薬ではないと思いますし、そもそも病気ではないと考えれば、治癒は望めないと考えます。

     最後に一言、確かに「若はげ」の気持ちは痛いほど理解しています。人一倍、夏暑く、冬寒いのですから。
     このメールを受けて,ちょっと大風呂敷を広げます。
     疾患は2つに大別できます。
    健康である状態と病的な状態が明確に分かれるもの(例:感染症,外傷)
    明確に分けられないもの(例:変性疾患,代謝性疾患,加齢性変化)
     
     ①は「骨折しているか,していないか」は専門家なら明確に区別がつくし,「肺炎が起きているか,起きていないか」も同様です。感染症と外傷に関しては二者択一,1ビットの世界に近く,専門家であればほぼ明確に線引ができると思います。
     そして,①は「完治可能」です。骨折は完治するし,感染症も完治可能です。完治すればギプスも要らないし,抗生物質を点滴する必要もありません(医者によっては長々と抗生剤を投与したりするけど,基本的には治れば抗生剤は不要というのが医学の常識ですよね)

     一方,②はどうかというと,どこかで人為的に線引する必要があります。「〇〇mg/dl以上は糖尿病」とか「〇〇mmHg以上は高血圧」とかはまさにそれであり,それを医学では「診断基準」と呼んでいます。この基準値は数万人,数十万人のデータから帰納されたものなので何となく確からしい数字ですが,「139.999999は正常で,140.0000001は異常というのはなんか変だよね」という不合理感は常につきまといます。なぜ不合理感がつきまとうかというと,本来は連続的数値で得られる血糖値や血圧に「異常と正常の境界線」を導入しているからです。研究者側・治療者からすれば,「どこかで黒白付けないと話が進まない」という裏事情も透けて見えます。
     そして,この②の多くは「完治しない=生涯にわたって薬物治療を要する」疾患です。これは加齢性変化についても同様です。

     他方,製薬会社からすると①は儲けが少なく,②は儲けが大きくなります。①は完治するので治ればそれっきりですが,②は治らないので一生薬を飲んでくれるからです。

  •  となると,製薬会社や研究者の中に,「これまで異常と思われなかった加齢現象を病気と名付けちゃえば一儲けできるんじゃね」と思いつく人が出るのは当然です。

     「歳を取れば白髪になるのは当たり前」ではなく「白髪はみっともない」という意識を普及させれば「白髪治療」が飯のタネになるし,「ハゲるのは人間なんだから当たり前」という世界に「ハゲるのはみっともない」という意識を植え付けられたら,日本中が飯のタネ,宝の山になります。
     しかも,白髪もハゲも明確な基準がありません。前述の「連続数値」だからです。しかし,黒髪から白髪への変化は連続的ですが,そのどこかに線を引いてしまえば,そこには「白髪患者」が生まれ,「白髪治療」の需要が生まれます。        
  • 加齢になると如何しても数値が悪くなる血圧など個人の対応によって数値を維持できるとして、生活習慣病と名づけられたのは、100歳を越して今尚現役の日野原医師とか。気づきをあたえてくれたということで、感謝するものです。が、悪乗りして日本血圧学会のように若者から老人まで治療目標血圧を同じ水準にしたのは、薬を売るため。医者の生活を守るため。とは。それで、年配者脳梗塞の死亡者が多くなるとは漫画ですね。でも、他人の医者に自分の命を預ける勇気があるならば、薬を止める勇気も自己責任でもってもよいとは、言いすぎかも知れません。あえて、他人に強制するものではありません。そもそも基準がいい加減であるとすれば、服薬するしないも自己責任。原因がわからない死亡はいくらでもあるとのこと。そうすれば、自分の死に対して誰を恨むことではなく、対処すればよいこと。基準に押しはめてはみ出した数で、インセンティブを支払う国の保健行政のあり方は、やはり異常です。自分の組織を守るため、いろいろ発言されている方々もやはり、心底指示することはできません。病気にさせない、病気になったらどうする。こんな視点がどこかにいつてしまつた議論の先は、おのずつ知れた結末しかないはず。が、誰も解決できない大きな課題であることは間違い事実。
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