義父の仕事場

今度義父が勤めた所は、
神田に在った小さな証券会社で、
『社長は元玉子屋で株の事は何も分からない奴なんだ、分からないくせに取引の事で一々口出しするから、「玉子の事なら良い、株の事に口出しするな！」と何時も怒鳴っている』と話していました。
歩合外務員の給料は、株の売買高の手数料収入です。
会社６：外務員４が取り分になるのだそうです。
1万円の売買高の手数料が幾らかは知りませんが、
株を遣っている方で在れば、義父の給料で扱い高が想像出来ると思います。

義父は今までの経験から、これまでの遣り方、買い注文、売り注文の両方ではなく、
売り注文だけ受ける事を考え実行に移しました。
買い注文では事故が起こるらしいのです。
電話での売り買いの注文ですから、『その値段で買った覚えは無い』と云う客が居るそうで、『言った、言わない、の話になると困った』と話していました。
扱う金額が金額ですから、困るのは当然です。
株価が、買った値段より落ちれば損をする訳で、
知らないと云えば逃れられると思う人が出てきたようです。
義父は律儀な人でした、長い付き合いのお客さんの言う事を信じようとしたようです。
信じれば当然身銭を切らなければなりません、
このような事が何回も有ったように感じました。


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