カタツムリの富士登山(3)

2020-11-20 09:11:54 | 童話
『あっ、雨だ。』雨粒が僕の目に当たりました。
『チョウチョさん大丈夫?』
『ええ、これくらいの雨なら大丈夫だけれど、きつく降ってきたら雨宿りしないといけないわね。』
『そうなの? 僕は雨がたくさん降っていてもへいきだよ。』
『わぁ、たくさん降ってきだした。わたしは大きな葉の裏側で雨宿りするわ。』
『じゃぁ、僕も葉っぱの裏側で休憩するよ。』
『カタツムリさんは1日10メートル歩くんでしょ。』
『うん、だけれど、雨がやんでから一杯歩くよ。』
こうして、僕とチョウチョさんは歌いながら、何日も富士山を登って行きました。

僕が『ランランラン、ランランラン。』
チョウチョさんは『ルンルンルン、ルンルンルン。』
『楽しそうだけれど、何をやっているの?』
僕とチョウチョさんが見上げるとトンボ君が話しかけてきました。
『チョウチョさんと山登りしているんだよ。』
『カタツムリ君はふもとからずっと登って来たの?』
『登山口まで自動車で送ってもらったけれど、登山口からはずっと歩いて登っているんだよ。途中でチョウチョさんと友達になって一緒に登っているので楽しいよ。』
『いいなぁ、僕も友達に入れてよ、僕も一緒に登りたいなあ。』
『いいよ、たくさんで登ると楽しいよ。』
『決めた。僕はカタツムリ君とチョウチョさんの友達になる。』

こうして3匹で
僕が『ランランラン、ランランラン。』
チョウチョさんは『ルンルンルン、ルンルンルン。』
そして、トンボ君も『ピッピピピ、ピッピピピ。』
と歌いながら何日も何日も富士山を登って行きました。

カタツムリの富士登山(2)

2020-11-19 08:34:29 | 童話
僕は、登るのに2年で、下るのに2年かかるから、僕が今度お花畑に帰るのは4年後になるんだなぁと思った。
さあ、ガンバルぞ、僕の始めての大冒険の始まりだ。

今はまだ低い所なので草やお花が一杯だ。僕は体が乾燥しないように、水が残っている草の上を歩いて行った。
『どこへ行くの?』
僕のうしろから声がしたので頭をうしろにまわすとチョウチョが飛んでいた。
『僕はね、これから富士山に登るんだよ。』
『ふぅ~ん、すごいね。ひとりで登っているの?』
『うん、お父さんとお母さんはお家に帰ったよ。』
『わたしが途中まで一緒に行ってあげようか?』とチョウチョが言ったので、仲良く一緒に登って行った。チョウチョはカタツムリの僕の体が乾燥しないように、水のある所や、水の付いている草の場所を、高い所から探して僕に教えてくれました。
そして、夜は仲良く一緒に寝ました。

『カタツムリ君、もう朝だよ、早く起きなよ。』
『ああ、おはよう。昨日はいっぱい歩いたから疲れちゃった。』
『まだ1日でしょ。4年間歩くのだから、がんばらなければダメだよ。』
『そうだね、よしガンバルぞ。』
僕は草の上の水を飲んだあとで、大きなあくびをした。
そして、僕はまた歩きだし、チョウチョは僕の上を飛び始めた。
『ランランラン、ランランラン』僕はチョウチョと一緒なので楽しくなり、歌をうたいながら歩きました。
チョウチョも『ルンルンルン、ルンルンルン。』と楽しそうにヒラヒラと飛んで、一緒に富士山を登って行きました。

カタツムリの富士登山(1)

2020-11-17 09:20:02 | 童話
『お母さん、僕、富士山に登りたい。』
僕達が住んでいるお花畑の持ち主さんが、テレビで世界遺産になった富士山を見ていた時に、カタツムリの僕は急に富士山に登りたくなった。
『何を言っているの、あんな高い山に登れるはずが無いでしょ。』
お母さんがあきれて言った。
『富士山の高さは3776メートルでしょ、1日に10メートル登ると377日だから、1年ちょっとで登れると思うんだ。』
『だけれどね、高い山は雪が降ってすごく寒いんだよ。私達カタツムリは寒さに弱いので生きていられないのよ。』
『それでは、寒い時は背中にある家に入って、温かくなるのを待っているよ。そうすると、2年で登れると思うんだ。』
お父さんが、『絶対に登るという気持ちが有るなら、やってみるといいよ。だけれど、寒くなってきたら家から出たら絶対ダメだよ。』
『うん、わかった。』

そして、僕は今日から体力をつける運動を始めた。
僕達の住んでいるお花畑を、今までは1日で1廻りしていたが、今日からは1日に3回まわることにした。最初は疲れて、休憩ばかりしていたが、何日かすると休憩しないで、まわれるようなった。

そして、たくさん練習して富士山に登れる自信がついたので、明日出発することにした。
すると、お父さんが、このお花畑の持ち主さんに、富士山の登山口まで自動車で送ってもらえるようにお願いをしてくれた。
そして、お花畑の持ち主さんが、僕とお父さんとお母さんを入れた虫かごを富士山の登山口まで自動車で運んでくれた。
自動車の外に置いてくれた虫かごから僕だけが外に出た。お父さんとお母さんは、虫かごに残って、もとのお花畑に連れて帰ってもらうことにしていたのだ。

『お父さん、お母さん、行ってきます。』
『気を付けてな。絶対ムリしたらダメだよ。』
『うん、わかった。バイバイ。』
『バイバイ。』
そして、お父さんとお母さんは、お花畑の持ち主さんの自動車で帰って行った。

ドッコイショ(3)

2020-11-16 08:54:09 | 童話
これから、おじいちゃんと一緒の時は、おじいちゃんとドッコイショとヨイショと言う競争をしようと思いました。

だけれど、僕が中学生になった時におじいちゃんとドッコイショとヨイショの競争ができなくなりました。
僕は時々、おじいちゃんのいる空に向って大きい声で
『ドッコイショ』
『ヨイショ』
と言っています。

いつかおじいちゃんが高い空から、僕と競争するみたいに、もっともっと大きな声で
『ドッコイショ』
『ヨイショ』
と言ってくれると思っています。

おじいちゃんのドッコイショやヨイショが聞こえるのはいつなのかなぁ。

おしまい

ドッコイショ(2)

2020-11-15 08:29:00 | 童話
だけれど、お父さんもお母さんもおばあちゃんもドッコイショやヨイショとは言いません。どうして、おじいちゃんだけがドッコイショやヨイショと言うのかなぁ?

ある日、おじいちゃんが
『なんでおじいちゃんだけが、ドッコイショやヨイショと言うのかだって? それはね、おじいちゃんだけがドッコイショやヨイショと言っても良い年だからだよ。』
と教えてくれました。

『ねぇおじいちゃん、ドッコイショやヨイショと言っても良いのは何才からなの?』
『決まりは無いけれど、おじいちゃんの年から良いんだよ。』
『ふぅ~ん。』
『ねぇおじいちゃん、僕もドッコイショやヨイショと言っても良いのかなぁ。』
『ああ、おじいちゃんと一緒の時だけドッコイショやヨイショと言って良いよ。』
『わぁ、うれしいなぁ。』
『だけれど、おじいちゃんと一緒ではない時は、ドッコイショもヨイショも言ってはいけないよ。』
『うん、わかったよ。』僕はおじいちゃんから、おじいちゃんと一緒の時は、ドッコイショやヨイショと言っても良いと言ってくれたのでうれしかったです。