カタツムリの富士登山(1)

2020-11-17 09:20:02 | 童話
『お母さん、僕、富士山に登りたい。』
僕達が住んでいるお花畑の持ち主さんが、テレビで世界遺産になった富士山を見ていた時に、カタツムリの僕は急に富士山に登りたくなった。
『何を言っているの、あんな高い山に登れるはずが無いでしょ。』
お母さんがあきれて言った。
『富士山の高さは3776メートルでしょ、1日に10メートル登ると377日だから、1年ちょっとで登れると思うんだ。』
『だけれどね、高い山は雪が降ってすごく寒いんだよ。私達カタツムリは寒さに弱いので生きていられないのよ。』
『それでは、寒い時は背中にある家に入って、温かくなるのを待っているよ。そうすると、2年で登れると思うんだ。』
お父さんが、『絶対に登るという気持ちが有るなら、やってみるといいよ。だけれど、寒くなってきたら家から出たら絶対ダメだよ。』
『うん、わかった。』

そして、僕は今日から体力をつける運動を始めた。
僕達の住んでいるお花畑を、今までは1日で1廻りしていたが、今日からは1日に3回まわることにした。最初は疲れて、休憩ばかりしていたが、何日かすると休憩しないで、まわれるようなった。

そして、たくさん練習して富士山に登れる自信がついたので、明日出発することにした。
すると、お父さんが、このお花畑の持ち主さんに、富士山の登山口まで自動車で送ってもらえるようにお願いをしてくれた。
そして、お花畑の持ち主さんが、僕とお父さんとお母さんを入れた虫かごを富士山の登山口まで自動車で運んでくれた。
自動車の外に置いてくれた虫かごから僕だけが外に出た。お父さんとお母さんは、虫かごに残って、もとのお花畑に連れて帰ってもらうことにしていたのだ。

『お父さん、お母さん、行ってきます。』
『気を付けてな。絶対ムリしたらダメだよ。』
『うん、わかった。バイバイ。』
『バイバイ。』
そして、お父さんとお母さんは、お花畑の持ち主さんの自動車で帰って行った。


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