カタツムリの富士登山(7)

2020-11-24 09:37:00 | 童話
僕が立ち止まって深呼吸をしている時に、遠くに建物が見えた。
『あれは山小屋なのかなあ、山小屋だったら温かいし、風で飛ばされる心配も無く、安心して寝られるなあ。』
人間に踏みつぶされないようにして近付いて行くと、やっぱり山小屋で、たくさんの登山者がいた。

僕が山小屋の中でも暖かい高い所で休憩をしていると、登山者の一人が僕を見つけて、
『こんな所にカタツムリがいるよ、風で飛ばされてきたのかなあ?』
『ちがうよ、僕は自分で登って来たんだよ。』
『えっ、こんな所まで登って来たの?』
『うん、途中までトンボ君とチョウチョさんと一緒だったけれど、あとは、ここまでは僕ひとりで登って来たんだよ。』
『どこへ行くの?』
『みんなと同じで、頂上へ行くんだよ。』
『カタツムリさんは、なぜ富士山に登るの?』
『テレビで富士山を見ていたら、どうしても登りたくなったからだよ。』

『ここまで、何日くらいかかったの?』
『1年くらいかな。』
『お家に帰るまで、どれくらいかかるの?』
『これから頂上まで行って下りて来るころに寒くなるので、また岩の穴の中で温かくなるまで寝ているから、お父さんとお母さんのいる所まで、あと2年くらいかかるかな。』
『わぁ、すごい、頑張ってね。そして、気を付けてね。』
『うん、ありがとう。』


最新の画像もっと見る

コメントを投稿