石の飛行機(4)

2020-05-26 07:15:27 | 童話
僕は朝ご飯を食べたらすぐに川原へ行った。宿題は昨日終わらせたので、朝から行けたのだ。
川原の石をたくさん集めて、僕の飛行機の隣りにジェット旅客機を作り始めた。小型のプロペラ飛行機より、ずっとずっと多くの石が必要だった。
どうして大きなジェット旅客機でないと外国へ行けないのかぁ、帰ったらお父さんに聞いてみよう。
やっと大きなジェット旅客機ができた。
僕は早く飛ばないと遠い外国へ行けないと考え、すぐに操縦席に乗り込んだ。

『エンジン始動、管制塔、こちらはJA123です、離陸の許可を下さい。』
『こちら管制塔です、離陸を許可します。』『出発。』ゴーとエンジン音がして僕はスラストレバーを引いた。キーンというジェットエンジンの音がして走り始めた。続いて操縦かんを引いて上昇した。グングン上空に飛んで行き、富士山が段々小さくなっていった。
『やあ、雲の上に出たから天気がいいや。』そして、水平飛行となったので、エンジンはゴーという音になった。『下はずっと海だね。大きな船が走っている、自動車運搬船かな。ここから自動操縦にしておやつを食べよう。』

おやつを食べている間にハワイが見えてきた。
『よし、ハワイをぐる~と回ったら家に帰ろう。』
そして、ハワイを回った後、しばらく飛んでいると日本が見えてきた。
『管制塔、管制塔、こちらはJA123です。着陸の許可を下さい。』
『こちらは管制塔です、着陸を許可します。』着陸してから僕は自転車で帰った。お母さんが、『とっくにお昼ご飯の時間が過ぎているでしょ、早く帰ってこないとダメじゃないの。』と言ったので、『ごめんなさい、ハワイまで行ったら遅くなっちゃった。』と、あやまった。

石の飛行機(3)

2020-05-25 08:26:44 | 童話
来週もプロペラの石の飛行機に乗ろう。
学校から帰って、宿題をしてから自転車で川原へ行った。僕の石の飛行機は無事だった。
しかし、もう遅いので飛行機には乗れないので見ただけで、すぐに自転車で帰った。
次の日も、その次の日も、僕は川原へ見に行った。そして、土曜日に宿題を終わらせてから、僕の飛行機に会いに川原へ行った。

飛行機が無事なので操縦席に座った。
『エンジン始動、ブルブル、ブルブル。管制塔、管制塔、こちらはJA123、離陸の許可を下さい。』
『こちら管制塔、離陸を許可します。』
『ブ~ン、離陸します。』
『今日もエンジンは快調だ。よし、今日は川の上流へ行き、山の上を飛ぼう。』
川幅が段々と狭くなってきた。向うに見える山の上を飛ぼう。操縦かんをいっぱい引いて上昇だ。ブイ~ン、山を越えたら湖が見える。あの湖まで行ったら帰ろう。『管制塔、管制塔、今からかえります。』
『こちらは管制塔、帰るのですね、了解しました。』
飛行機は無事川原に着陸した。僕は操縦席から降りて、自転車で家に帰った。

夕飯の時にお母さんに、僕の飛行機で湖まで行ったよと言うと、お母さんは『すごいじゃない。』と言ったが、お父さんは、『もっと大きな飛行機で外国へ行ってごらん。』と言った。僕は、明日はもっと大きいジェット旅客機を作ろうと考えた。そして、ワクワクしながら寝た。

石の飛行機(2)

2020-05-24 07:13:53 | 童話
次の土曜日に、また自転車で川原へ行き、石の飛行機のエンジンをかけた。
今日もエンジンは快調に回転し始めたので、ブレーキを戻し離陸の準備ができた。今日も快調にスピードが上がり、操縦かんを引くと離陸した。今日は前回より上空まで行こう。
『管制塔、管制塔、こちらはJA123です、応答願います。』
『こちら管制塔、どうぞ。』
『僕はこれから家の上を飛びます。』
『了解、気を付けて飛んでください。』
『はぁ~い。』

僕の家が見える。お父さんが自動車を洗っている。お母さんは家の中だから見えないや。
どんどん上空になって、僕の住んでいる町全体が見えてきた。校庭では野球部のみんなが練習をしている。

もっと高く上がってみよう。駅が見えてきた。大勢の人が乗り降りしている。今日は土曜日だから会社の行き帰りしている人より買い物をしている人の方が多いなあ。

あっ、もう帰る時間のチャイムが鳴り始めた。今日は随分上空まできたなあ。これより上の方は明日の日曜日にしよう。
僕は川原から自転車で家に向った。

日曜日の今日は雨が降っているので石の飛行機には乗れない。僕は仕方が無いので飛行機の本を見ている。遠くまで行くときの旅客機や貨物専用機、そして、スピードの速い戦闘機、いろいろな種類があるんだね。ほとんどがジェットエンジンだけれど、僕の石の飛行機はプロペラだ。僕はプロペラの飛行機の方がカッコいいと思う。家にあるゴム動力の飛行機もプロペラだ。

石の飛行機(1)

2020-05-23 07:30:26 | 童話
小学生の僕は乗り物が大好きだ。
自動車、電車、船、飛行機、全部好きだ。
自動車に乗れば、助手席で運転している様子をずっと見ている。
電車では、一番前の車両に行き、運転手さんのスピードを上げる方法や、ブレーキを掛ける方法を真剣に見ている。
児童公園に置いてある蒸気機関車や電車や消防自動車の運転席で運転手になっている。
しかし、飛行機は僕の住んでいる町の近くの公園に無いし、本物は操縦席に入れない。僕は、今は写真を見て操縦を想像して楽しんでいる。

ある日曜日に、僕は自転車で近くの大きな川に行き、石を並べて飛行機を書いた。
そして、操縦席に座りエンジンをかけた。
ブルブルブルブル、エンジンがかかったので、次はスラストレバーを引いた。
ブ~~ン、とプロペラが高速で回転し始めた。そして、車輪のブレーキを戻すと機体が走り始めた。どんどんスピードが上がってきたので操縦かんを引くと機体がフワッと浮いた。
やった、離陸したのだ。あとは上空に向って一直線。離陸に成功したので、今日はもう帰ることにして自転車に乗った。

なぜだろう(5)

2020-05-22 09:00:35 | 童話
「今度は外のお花でやってみようよ。」
「そうだね、公園へ行ってみようよ。」
「そうしよう。」
「公園のお花さん、お話しできますか?」
「ああ、できるよ。ここで君達が来るのを待っていたよ。」
「公園のお花もお話しができるんだ。」

「ねえお花さん、大人はなぜ君達とお話しができないの?」
「大人の人も子供の頃は、僕達お花とお話しができたんだけれど、大きくなったからお話しができなくなったんだよ。」
「ふぅ~ん、そうなんだ。だけれど、大人の人はそれを知らないの?」
「みんな大きくなると忘れるんだよ。」
「そうなのか。」
「僕達も大きくなったら忘れるのかなぁ。」
「そうだよ、忘れるよ。」
「いやだけれど仕方ないのかな。」
「じゃ、今の内にみんなでいっぱいお話しをしようよ。」
「そうだね。だからいっぱいお話しをしようね。」

「おはよう。学校へいってくるよ。あれっ、玄関の花がしゃべらないや。僕はもう大きくなったのかな。友達の所のお花も、昨日お話しをしなかったと言っていたね。」
「やぁ、おはよう。君んちのお花はお話しをしなくなったの?」
「なぁ~に、お花がお話しをするハズがないじゃないか。」
「えっ、昨日までお花との話しをしていたじゃないか。」
「僕は知らないよ。」
「僕も明日になると、お花とのお話しを忘れてしまうのかなぁ。」

そして次の日、僕もお花とのお話しを忘れてしまった。だけれど、僕の妹はお花とお話しをしていると言っている。

     おしまい