僕達の小さくて大きな森(9)

2019-10-14 09:33:42 | 童話
ある日、おじいちゃんに頼まれて庭の掃除をしていて、梅の木の根元の雑草を取っている時に、根元に何か動く物を見つけた。
『やぁ、人間君、元気?』
忘れていたあの小さくて大きな森の動物だった。
ゾウもキリンもチンパンジーもいるし、小さく点のように見えるのはカブトムシとクワガタだった。
『やぁ、みんな元気だったんだね。』
『うん、みんな元気だよ。君が引越しをしなくても良くなるようにしてくれたからね。』

『だけれど、みんなどうしてここにいるの?』
『僕達は、小さくて大きな森の中でしか生きていられないけれど、人間の君達に会いに来たんだよ。もう帰らないといけないけれどね。』
『僕と友達は、どうして君達に会いに行けなくなったの?』
『僕達の小さくて大きな森はね、小さな子供だけが行ける所なんだよ。君達は大きくなって高校生になったから、小さくて大きな森には行けなくなってしまったんだよ。』
『そうなんだ。今、友達を呼んでくるから、ちょっと待っていて。』
僕は急いで友達の家へ行った。
『今ね、小さくて大きな森の動物達がやって来ているので早くおいでよ。』
『えっ、あの動物達が来ているの?』
『そうなんだよ。』

僕たちは急いで庭の梅の木の所に来て根元にいる動物達に会ったが、小さくて大きな森に帰る準備をしていた。
『君達も帰る時はエンピツなの?』
『そうだよ、エンピツが無いと帰れないんだ。』
『僕達と同じだね。』
『うん、そうだね。』
『今度はいつ来てくれるの?』
『もう来られないよ。』
『残念だけれど仕方ないね。』
『じゃぁ帰るからね、バイバイ。』

キリンが『うわっ。』
ゾウが『うわっ。』
チンパンジーが『うわっ。』
カピバラが『うわっ。』
カブトムシが『うわっ。』
クワガタが『うわっ。』

そうして、動物達はみんな小さくて大きな森に帰って行った。
僕は今も梅の木を大事にしている、小さくて大きな森の動物達のために。

  おしまい