僕達の小さくて大きな森(1)

2019-10-06 09:12:32 | 童話
去年、僕の投げたボールがおじいちゃんの大切にしている盆栽という小さな植木に当たり、植木を折ってしまったことがある。
だから、僕が家にいる時にはおじいちゃんは植木を大事にして片付けているが、今日は片付けるのを忘れて出掛けたみたいだ。

僕は友達とボールが植木に当たらないようにキャッチボールをしていたが、僕の投げたボールが植木の方に飛んで行って植木に当たりそうになった。
しかし、その時ボールが見えなくなった。植木には当たらなかったので植木は壊れなかったが、ボールが見つからない。
『危なかったね。』
『うん、危なかったね。』
『だけどボールはどこへ行ったのかなぁ。』
『見つからないね。』
『植木に当たりそうになったのが見えたのに、急にボールが見えなくなったね。』
『ボールが急に小さくなって植木の所にぶつかったみたいに見えたよ。』
『もう一個のボールをそっと投げてみようか?』
『うん、だけど植木が壊れるとおじいちゃんに怒られるからソッと投げてよ。』
『うん、分かった。』

友達が植木に向ってボールをソッと投げた。
その時、ボールが小さくなっていき、植木に当たりそうなったが、ボールは見えなくなってしまった。
『やっぱりボールが小さくなったね。』
『うん、そうだね。今度は僕が投げてみるね。』
僕は持っている最後のボールをソッと投げたが、やっぱりボールが小さくなって見えなくなってしまった。
『今度はボールが小さくなっていったのがよく見えたね。』
『うん、そうだね。』
『今度はボールではなくエンピツを投げてみようか?』
『そうだね。』

僕は机の上に置いてあるエンピツを持ってきて植木に当たりそうなくらいまで近付けた。
その時エンピツがブルブルと震えたのて、僕はビックリしてエンピツを離した。
するとエンピツは小さくなって見えなくなってしまった。
『ああ、ビックリした。』
『そのままエンピツを持っていたら、どうなったのかなぁ。』
『僕達も小さくなって、見えなくなってしまうのかなぁ。』

『もうおじいちゃんが帰ってくると思うのでキャッチボールは止めよう。』
『そうだね、ボールも3個無くなってしまったので、キャッチボールもできなくなってしまったしね。』
『僕はもう帰らないといけないので、また明日、学校から帰ったら遊ぼうか。』
『そうだね、3個のボールも明日探そうね。』
僕は植木が気になっていたけれど、ボールは明日探すことにした。