記録によると平成21年10月7日、今日が手術のための入院日だ。そのちょっと前の9
月14日から29日までの2週間ほどは術前の抗がん剤治療で入院していたから、退院
後1週間ほど自宅で休養し、また入院ということになる。
入院手続きは『がん相談窓口』と隣り合わせのような所で行う。余り間のない入院だか
ら慣れたもので、余裕をかました牢名主のような気位で行った。元来の寝つき不良、人
のイビキ寝言にはとても敏感なので、ゆっくりできる個室をお願いした。普通個室は42
00円/日、ランクが上の個室は8400円/日と倍の値段だが、大きなソファーもあり見舞い
客が来てもゆったりできそう、また家族が泊まることが出来るのではないかと思うほど。
この部屋の何よりも魅力的だったのはLANが設置されていることだ。ネットがつながれ
ば入院中の退屈凌ぎや、色々な調べごとに便利だったと思う。術後の最後の頃は余
りにも退屈でLANのある部屋に代えて欲しいと申し出たら、退院間近で叶わなかった。
この度の入院は翌々日の一大イベント、食道と胃の噴門部の摘出手術のためで、明
日は手術の準備で忙しいから、本当にくつろげるのは今日だけだった。抗がん剤治
療で癌の硬化縮小が見られたものの、最初に自覚症状が出た7月中過ぎごろと比べ
ると、状況はかなり悪化してきており、このまま放置していたら、あと数週間で食べ物
が通らなくなりそうとの予測は簡単にできた。
しかし、食べる時に注意深く、注意深く食べれば詰まりを避けることもできたし、それ
以外に何の症状も無かったので、傍から見れば病人らしからぬ振る舞いをしていた。
食べ物が詰まる、この苦しみから解放される手術だから、ジャンヌダルクに出会った
ような、『いざ、いざ参ろう』、こんな気分だった。
難病や、手術に耐える健気な赤子の姿は私の勇気の源になり、手術の不安は金輪
際なし、むしろ待ち遠しいくらいだった。
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