小沢グループ政務三役のうち、3大臣1政務官が辞任したことによる玉突き人事で、2期生で衆院大阪5区(大阪市此花区・淀川区など)選出の稲見哲男さんを政策調査会副会長(兼)総務部門会議座長に抜擢しました。2012年4月16日(月)の民主党役員会が決定し、17日の常任幹事会に報告しました。
稲見さんは第41回衆院選から民主党総支部長を務めていますが、2勝3敗。大阪市職員出身ですので、「自治労」など「地方公共連合」の支持を受けています。その稲見さんが昨年秋から日切れ法案を扱う重要委員会である「衆議院総務委員会」(原口一博委員長)の与党側筆頭理事を務めています。2期生が総務委筆頭理事ということは異例で、急成長企業民主党ゆえの人材難の窮余の策。総務委員会は地方行政を担当しており、自治労が配属され、しかも2期生ながら筆頭理事ということで、幹事長経験者周辺と「大丈夫かな」と心配しておりました。が、まったくの杞憂でした。こういうことがあるから、国会は面白いんです。
稲見さんの2012年8月9日(火)の3党合意後の、第177通常国会、第178臨時国会、第179臨時国会、第180通常国会の議事録をみると、7回総務委員会に登場しています。しかも驚くべきことに、稲見さんは衆院総務委員会に3回、参院総務委員会(藤末健三委員長)に4回名前が出てきます。参院の議事録の方に多く名前が出ているのは、野田佳彦総理も含めて衆院議員で他にいないのではないでしょうか。
3党合意が整い、菅直人首相辞任と民主党代表選、会期末が迫った2011年8月23日(火)の参院総務委員会では、自民党の坂本哲志さん、赤澤亮正さんとともに、衆院総務委員長代理として参院に。「東日本大震災に被災した自治体の合併特例債償還の特例法(衆院総務委員長提出、177衆法28号、平成24年法律102号)」と「運輸事業の振興の特例法(衆院総務委員長提出、177衆法27号、平成24年法律101号)」の答弁に立ちました。
第179臨時国会では、前国会から積み残しになっていた分も含む地方税法改正案2法案(閣法)について、衆院での民自公修正部分について、趣旨説明を参院総務委でしました。これは相当な重責です。
今国会では、年末までに成立させられなかった「国家公務員給与7・8%2年間削減法案」については、3党協議のうえ、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律案」(180衆法1号)を筆頭発議者として提出。2月23日(木)に参院総務委で趣旨説明、28日(火)に答弁して、成立。平成24年法律第2号として、2012年2月29日(水)に国事臨時代行の皇太子殿下が天皇の名で公布しました。前半国会で一般法案でしかも衆院議員提出の議員立法が予算より早く成立するのは極めてマレ。それは衆参ねじれと東日本大震災という国難だからですが、そういうときこそ、本物が仕分けされます。
第45回衆院選では、全国で8選挙区、大阪府内では4選挙区で公明党候補に民主党候補が勝っています。その一人である稲見さんですが、こうやって国会内でしっかりと仕事をする能力を示しています。私としても全くノーマークの人物でしたが、党の復興対策本部では福島県担当です。参院の議事録を見ると、野党からの質問もありますが、与党から稲見さんへの質問には毎回、自治労組織内の仲間が質問しており、政策、人脈ともやり手のようです。なかなか志を持って政治家になったようで、自治労組織内で推されて比例や選挙区に出ている人とは違うようです。骨のある人のように思われます。
このほか、郵政見直し法案(180衆法6号)の提出者の一人で、今週中にも参院総務委員会に出席すると思われる東京22区衆院議員で3期生、元外務政務官の山花郁夫さんが政調筆頭副会長に昇格しました。民自公修正で汗をかいている人を前原誠司政調会長も評価しているようです。当たり前のことですが。
西南戦争、紀尾井坂の変を経て優秀な若手への世代交代の針が回り出したのも明治11年のことです。民主党は結党14年です。58歳の岡田克也さん、54歳の野田佳彦総理も負けてはなりません。
力のある人は、衆院一体改革特別委員会の理事や委員に自ら名乗り出るべきでしょう。45人委員会なので、理事は民主党5人、自民党2人、公明党1人の狭き門になりそうです。
民主党幹事長の輿石東さんは2012年4月16日(月)の定例記者会見で、「委員長を中心に、今ご案内のような、理事を中心に特別委員会は動いていくでしょう。それに担当大臣は5大臣、4領域11本という中身になるわけだから、さあ修正をしようと言えば、その都度どういう形で修正ができるか、誰がやるか、そういうことはその委員会を中心にやっていくことは間違いないのだが、いろいろな形も考えていかなければならないと思っています」と語りました。まずは委員会に任せるものの、修正協議については、委員会外の政調、国対からも実務者を起用する考えがあることを示唆しました。
一体改革特別委員会で政府側の司令塔になる副総理の岡田克也さんは2012年4月17日(火)の定例記者会見で、「議論が始まってみないと、例えば、修正協議ということになるのかどうか、我々はなるのを期待しておりますが、そして、それはどういう形でやるのか、現場でやるのか、あるいは党で政調なり幹事長のところでやるのか、政調会長なり幹事長のところでやるのか、その辺はこれからの議論だというふうに思います」とし、幹事長と同調しました。そのうえで、「しかし、早く動き出すことは大事だというふうに思います」と強調しました。
実務者が集まれば、とびっきりの夏が来る。
私は4月26日(木)の小沢一郎さんの判決など全く興味がありません。
震災後日本は猛スピードで動いています。その結果は第46回衆院選でよりハッキリふるい分けられるでしょう。第46回衆院選、民主党用語ですが、蓮舫さんは参議院ということで、自民党にもお許しをいただいて、「仕分け解散」と呼びましょう。言うまでもなく、議員・候補者の仕分けです。稲見さんは第46回衆院選も公明党の、それもフレッシュな新顔と闘います。国会で働いている現職は、国会内の仕事ぶりで評価する有権者にならなければいけません。ただし、結論を言うと、「志のありやなしや」がすべてです。若干やはり学力と体力もありますが、2回~3回ほど選挙を重ねれば結果はすべて「志のありやなしや」ですから、まったくおそれることはありません。
新しい民主党が始まりつつあります。
新しい国会が始まりつつあります。
議員も有権者も、刮目せよ!
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世耕弘成さんら参議院自民党・参議院みんなの党・新党改革の3会派は、前田武志国土交通大臣と田中直紀防衛大臣に対する問責決議案を2012年4月18日(水)、橋本雅史・参議院事務総長に手渡しました。参議院公明党は提出に加わりませんでした。2大臣セットの問責決議案提出は3回連続。2人とも参院議員である大臣への問責は貴族院から衣替えして以来、初めて。両院制に関する歴史的な局面になる可能性があります。
◇
岡田克也副総理は2012年4月17日(火)の定例記者会見で、前田武志国土交通大臣が公選法の事前運動と公務員地位利用に抵触する行為があったのではないかと指摘されていることについて、「軽率であったということは言えると思います。ただ私、前田大臣、初当選のときから1期先輩で、政治改革とか、あるいは同じグループでずっとやってまいりまして、いろいろな意味で御指導いただいた方で、非常に公選法違反とか、そういうこととは無縁の存在であるというふうに私自身は思っております」と述べました。そのうえで、「今回のことは大変残念な、御本人にとっても残念というふうに思っておられることだと思います」としました。
同じグループとは、「経世会(自民党竹下派)」、「改革フォーラム21(自民党羽田派)」、「新生党」、「新進党興志会(羽田・細川グループ)」のことです。「太陽党」結党には岡田さんは不参加。新進党解党後の民政党結成でまた一緒になり、民主党統一大会に参画。「政権戦略研究会(羽田グループ)」に2人とも参加していた時期があり、岡田さんが脱退した後も、前田さんは同グループの「座長」を務めました。前田さんは昨年9月、「素交会(鹿野グループ)」立ち上げに参画しました。ともに15年間の野党暮らしに耐え、政権奪取に成功しました。
[写真]新生党結党記者会見。後列の左から松尾官平さん(後に参議院副議長)、北澤俊美さん、永野茂門さん、田村秀昭さん、釘宮盤さん(現大分市長)。前列左から、石井一さん、奥田敬和さん、羽田孜党首、渡部恒三さん、左藤恵さん。
[写真]右上から時計回りに、新生党結党メンバーで民主党で活躍する、羽田孜最高顧問、小沢一郎さん、渡部恒三最高顧問、藤井裕久最高顧問、北澤俊美副代表、岡田克也副総理、前田武志国土交通大臣、奥田敬和初代両院議員総会長(故人)、石井一副代表。
岐阜県下呂市長選について、民主党岐阜県連幹部からは「前田大臣ではなく、まず山田良司・衆院議員が議員辞職すべきだ」との声が上がっています。地方の首長選の細かい事情には言及しないことにしています。ただ、元々民主党系の候補者だった石田芳弘さんは、市民派の選挙をしたくて、党の推薦を拒否。地元総支部も県連の仲間に対して、「応援演説に来ないでください」と呼びかけていたそうです。また総支部長(比例復活の衆院議員)と山田良司・衆院議員(比例東海ブロック単独)はともに下呂出身ながら、元市長の山田衆院議員の方が地元では圧倒的に基盤があるという「逆転現象」があったようです。また前田国交大臣は「応援演説に行く」と伝えたところ、石田候補から「来ないで欲しい」と断られたという話を聞いています。誰がそこを申し込んだのか。その時点での情勢は五分五分だったとされています。なので、山田衆院議員の国交大臣の封筒・名刺付きでの地元建設業協会、下呂温泉組合長への「しめつけ」は逆効果で、「すべて台無し」「山田は議員辞職しろ」と大騒動になり、敗戦、大臣問責ということになりました。さらに山田議員は、「代表派閥「花斉会」(野田グループ)」の所属で、すべてが踏んだり蹴ったり。
輿石東幹事長も2012年4月16日(月)の定例記者会見で「(前田さんは)国会に来てもう長い時間いるのに軽率だった」とたしなめました。
そのうえで、「参議院の自殺」につながりかねない、問責連発について、「問責決議は法的な拘束力はないということが1つ。だから安易に問責は打つべきでないと、私は野党時代に、打つ側だったときに、申し上げてまいりました」「なぜ辞任しなければいけないのかと。そういうことです。ある議員か、秘書だかなんだか知らないけれども来て、「これに署名してくれますか」と。それを軽率、うかつにも署名してしまった、それだけのことでしょう。本人はそう言っているわけですから。中身は何も知らないと。そのまま署名してしまったと。だから、そういう点は軽率だったのではないかという責任、その部分の責任は問われるでしょうが、それが公選法違反だということにはならないでしょうと、そういう理解だということです」とし、問責→辞任の連鎖にくさびを打ちたい意向を示唆しました。
結果として、憲政史上初めて与党第1党の幹事長が参院議員であるという第180通常国会の配置が両院制改革のエポックメイキング(歴史を画する画期的な場面)になる可能性があります。うんざりしてばかりいないで注目しましょう。
最後に、参院内閣委員会(芝博一委員長)に議席がないにもかかわらず、17日(火)の「新型インフルエンザ対策特別措置法案(180閣法58号)」の質疑に加わった(委員外質問)舛添要一さんの新党改革が問責決議案提出者に加わったことは遺憾だ、と申し添えておきます。
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