【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

平成23年度本予算は年度内成立 民主党は13年連続、野党・自民党は2年連続

2011年03月31日 22時33分58秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]平成23年度本予算の編成・審議でがんばったみなさん。左上から時計回りに、菅直人首相、野田佳彦財務相、櫻井充・財務副大臣(歳出)、尾立源幸・財務大臣政務官(歳出)、五十嵐文彦・財務副大臣(歳入)、吉田泉・財務大臣政務官(歳入)、玄葉光一郎・民主党政調会長大臣、細川律夫厚労相、平野達男・内閣府副大臣、中井洽・衆院予算委員長、中川正春・衆院予算委筆頭理事、前田武志・参院予算委員長。

 さて、年度末の夜です。私は月曜日に年度末にやらなければいけないタスクをやり終えて、この4日間はゆっくりしていました。何となく気が向かなく、3月10日に国会に行って、いろいろ取材して、あと、1つだけごあいさつ(おわび関係)を済ませて、民主党本部に行って、岡田さんの会見に出て、その後は、国会に何となく足が向きません。記者仲間はへとへとに疲れているだろうから、睡眠は十分にとれている僕のことをむかつくかもしれないし、イライラしている人も多い。なるべく出ない方がいい。もちろん、国会づとめで仲の良い人の親戚らが無事かどうかは確認していないのが気がかりですが、なんとか、自分のやるべきことをやろうと思います。

 一般会計で92兆4116億円の歳入見込みと歳出の限度額を計上した平成23年度本予算(一般会計、特別会計、政府関係機関)が2011年(平成23年)3月29日(火)、成立した。衆院で可決、参院で否決されたので、日本国憲法第60条により、衆議院の議決が国会の議決となりました。これに先立ち、先日のエントリーでもふれたとおり、両院協議会が開かれました。

 3月29日(火)の午後5時12分から、衆議院本会議が再開され、両院協議会の結果が報告されました。ちなみに、何度も書きますが、両院協議会はインターネット中継もないし、記者もアタマ撮りだけで傍聴は許されていません。この点については、当ブログとしては、その問題点を3月末に広く世論に呼びかけたい意向を持っておりましたが、ネット上などでその世論への高まりはありませんでした。それは当然のことですが、ねじれ国会はむこう2年以上続くわけですから、またの機会にしようと思います。

 再開された衆議院本会議では、中井洽さんが登壇し、休憩前に指名された衆院側の10人による互選で、「私、中井洽が両院協議会協議議長、中川正春君が副議長に選出された」としました。中井・中川コンビは、予算委員長と与党筆頭理事のコンビですから適任だし、また、三重県第1区、同県第2区のコンビでもあります。まあ、誰でも気付くでしょうが、菅総理(代表)から、国会・党運営をほぼ一任に近い形で任されている岡田克也幹事長と選挙区も国会事務所も近い議員を重要所に配置していたことが分かります。


[画像]両院協議会の結果を報告する中井洽さん、2011年3月29日午後5時過ぎの衆院本会議

 中井さんは「両院の一致をみず、成案を得るに至らなかった」と両院協議会の結果を報告しました。

 横路孝弘・衆議院議長は、「ただいま両院協議会協議委員議長の報告のとおり、平成23年度本予算は両院の意見が一致しませんでしたので、憲法第60条第2項により、本院の議決が国会の議決となりました」と宣言し、ひな壇の菅内閣がアタマを下げました。


[画像]本予算成立で頭を下げる菅内閣、衆院本会議

 この後、参議院本会議が再開し、自民党の林芳正さんが登壇しました。


[画像]林芳正さん、参院本会議、参議院インターネット審議中継

 林さんは、参院側の協議委員は「林芳正議長、岩城光英副議長で、衆院側は中井洽議長、中川正春副議長で、くじ引きの結果、両院協議会の議長には中井洽さんがつきました」と報告しました。この内容については衆院本会議での報告には入っていなかった情報です。衆院側(民主党側)が議長をとったから、両院協議会が早く終わったのであって、参院側(自民党側)が議長をとっていたら、もっと長引いたはずです。

 林さんは「衆院側からは、『平成23年度本予算は成長と雇用を重視する新成長戦略を盛り込んでおり、震災対策のためにも速やかな成立が必要だ』との意見があった。一方、参院側からは『震災があったのに、マニフェストを修正していない。また公共事業が減り、地方に冷たい予算だ』との意見が述べられた。その後、懇談となり、議事が終了し、成案(すりあわせ案)が見られなかった」としました。ちなみに、成案を可決するには、3分の2以上の賛成が必要です。衆参から10人ずつ協議委員が出て、3分の2なんてあり得ません。第23回参院選(2013年夏)の前までに、国会法改正が必要です。

 西岡武夫議長は、「憲法60条2項による衆院の議決が国会の議決になります」と宣言しました。なお、参院本会議には閣僚はひな壇に出席していませんでした。 

 これにより、統一会派「民主友愛太陽国民連合」が民主党を結党した第142回通常国会(1998年1月12日召集)から第177通常国会まで、13回の本予算審査があったわけですが、すべて年度内に翌年度予算を採決し、成立しました。当たり前のようですが、55年体制で、日本社会党で「成田3原則」の成田知巳委員長-「改良主義」の江田三郎書記長のコンビが失脚した後から、社会党が抵抗野党化し、予算が人質に取られ、4月以降に予算成立が遅れ、暫定予算となることが続きました。また、自民党も第1次野党期最初の本予算審査となった第129通常国会(1994年1月31日召集)では、衆院での受理が3月4日、可決が6月8日、参院での可決・成立が6月23日となり、細川・羽田内閣の政治改革への圧倒的な世論は「村山自・社・さ闇討ち内閣」に倒され、自民党は連立パートナーを入れ替えながら、国民は自民党に2009年夏まで第2次与党期を与えました。そして、自民党の第2次野党期最初の第174通常国会では、 「3月24日」という極めて早いタイミングで、参院でも予算が可決しましたが、この自民党の対応については党内で批判があり、舛添要一・予算委筆頭理事が離党してしまうという後味の悪いものとなってしまいました。同時に、第1次与党期の民主党は、「細川内閣のトラウマ」から解消されましたが、会期終了後の第22回参院選で惨敗し、ふたたびねじれ国会となり、予算編成・審査を迎えました。

 政権交代ある二大政党デモクラシーのために、まずは、参院自民党の予算委理事が離党しないこと。これを期待したい。健全野党の第一歩です。

 そして、この予算は4月には補正案が提出される見通しです。とはいえ、やはり本予算をしっかり通しておかないと、議論の骨組みができませんから、マスコミなどの関心が低いとはいえ、平成23年度当初予算が、意義の少ないものである、などということはありません。

 訓政期にあるニッポン。2月17日の衆院予算委員会では、自民党の1年生議員とはいえ高岡市長の経験がある橘慶一郎さんが、「建設国債というのは設備資金、設備を導入するための資金、それでいろいろなインフラストラクチャーをつくるということであります。赤字国債は言ってみれば運転資金、資金繰りがつらいからそれを借りていく」としたのに対し、野田佳彦財務大臣が「赤字国債も建設国債も、借金としてはやはり積もっていくものでございますから(略)できるだけ抑制していかなければいけないのではないか」との答弁があり、橘さんは「私はそうは思いません。やはりそれぞれ目的が違う、そして、抑制するものはその目的によって抑制をしていかなければいけない、ここはぜひ指摘をさせていただきたいと思います」としています。私は橘さんの意見に賛成です。また2月28日(月)の集中審議では伊吹文明さんが「歳入と歳出の違い」について「歳出というのは『その金額まで「税金」と、そして将来の国民の税金である「国債」を使って良いよ』という権限を国会が政府に与えるものだが、歳入は見積もりに過ぎない」と述べていて、これも全く伊吹さんのいう通りだと思います。

 こういう予算を組む作業を、何度もできることは、訓政期にあって民主党にとっては幸運です。衆参予算委、財金委、本会議を見ていて、野田佳彦さんというのは相当に体力と精神力にすぐれたたくましい人のようですから、ぜひ、しっかり勉強して欲しいと思います。

 ところで、予算の年度内成立が新記録更新だ・・・と書いていますが、当たり前のことですよね。当たり前のことが当たり前でないのが、自民党長期政権であり、社会党が野党第1党だった55年体制だったわけです。

 民主党・国民新党が参議院で少数をしめるねじれ国会ということで、当ブログでも第177通常国会の「3月危機」を指摘してきましたが、なんとか乗り切ることができました。もちろん、3月11日午後2時46分、菅民主党の3月危機をはるかに上回る3月危機が、日本を国難に突き落としました。そして、福島第一原子力発電所の事故は、政権交代のない政治による癒着のずぶずぶのヘドロがもたらした人災だと私は考えています。小沢一郎氏が新進党を解党していなければ、もっと早く政権交代ができたのに。モノ言えぬムラ社会で横に習えで生きていく田舎者の知恵は、長年の長時間労働に培った付加価値と日本の信頼を欠損し世界に迷惑をかける最悪の結果となりました。慚愧に堪えません。




[画像]下半分のバナー(ワッペン)は、自民党の機関紙「週刊自由民主」からキャプチャーさせていただきました。


子ども手当つなぎ法が成立 昨年と同額で6月10月支給が確定 年長の市田議員、寺田議員が協力

2011年03月31日 17時16分12秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]子ども手当つなぎ法に賛成した市田忠義、寺田典城両参院議員、参議院ホームページの所属議員一覧から

 参議院は3月31日(木)午後4時から本会議を開き、午後4時45分から午後5時10分にかけて、「子ども手当つなぎ法案」(衆院民主党の城島光力さんら提出)を審議。押しボタン式ではなく、自民党の愛知治郎さんら82人の発議で、記名投票採決(堂々巡り)をしました。

 この結果、投票総数240、賛成(白色票)120、反対(青色票)120の可否同数となりました。このため、西岡武夫議長は「可否同数のときは、憲法56条第2項により、議長が決するものとします」として、「議長の判断は可であります」として、議長の決定により、子ども手当つなぎ法は可決・成立しました。

 このほか、賛成多数で、国税つなぎ法、地方税つなぎ法、思いやり予算協定、金融円滑化法(亀井法)の延長、改正関税定率法、改正IMF・IBRD加盟法、改正内閣府設置法(地域自主戦略交付金=地方一括交付金)、改正地方交付税法、改正港湾法、改正踏み切り道改良促進法、「国会議員の歳費の3割削減法」も成立しました。

 これに先立つ厚生労働委員会でも、可否同数のため、国会法50条後段にもとづき、津田弥太郎委員長が「可」としました。衆議院は両院協議会や3分の2議決にそなえて、午後12時に始まった本会議を休憩にしていましたが、参議院でイッパツで決まりました。

 
[画像]挙手による採決で、可否同数となったため、委員長として「可決」を宣言した津田弥太郎・参院厚生労働委員長。津田さんの隣には、ボードを持った参院事務局職員の姿が。


[画像]子ども手当つなぎ法の委員会可決を参院本会議に報告する津田弥太郎委員長、2011年3月31日、午後4時45分ごろ。参議院インターネット審議中継からキャプチャ。


[画像]記名投票採決で、白色票(賛成票)を投じ拍手を浴びた寺田典城・参議院議員=オレンジ色の丸囲み。


[画像]集計する参議院参事たち。白色票と青色票がまったく同じ120票ずつなのが、画像からもうかがえます。

 これにより、4月~9月支給分の子ども手当は昨年と同様の金額が支給されることが確定しました。

 このほかにも、重要な歳入関連法案のつなぎ法や、歳出関連法(日切れ法案)が可決・成立し、「3月危機」と言われた、ねじれ国会での予算関連法案をめぐる攻防は一段落しました。今後は、まずは、歳入では、赤字国債の発行に関する臨時特例法案、歳出で間に合わなかった在外公館などの給与法案、そして、4月補正予算案、さらに6月末につなぎが切れる、国税、地方税それぞれの改正法案があります。そして9月末には子ども手当つなぎ法も切れます。また、税と社会保障の改革(消費税アップ)もけっして、政治スケジュールから吹っ飛んだわけではありません。

 私は6月22日(水)の会期末などありえない。秋の臨時国会を8月に前倒すというアイディアもないと思う。第177通常国会を100日間以上延長して、9月過ぎまで、いつでも政府からの緊急の提案に応じたり、質疑を通じて、与野党・衆参・政府内外がいろいろな情報を速やかに共有できるシステムを整えておく。それが危機管理だと思います。

 なお、3月29日(火)の午後4時過ぎ、衆院厚労委での審議で、厚労委理事および議運・国対の経験が長い、自民党の田村憲久さんがスピード質疑のなかで、法案提出者である、民主党政調会長代理で政務三役の経験がまだない、城島光力さんが答弁席で長広舌だったとして、「前段後段が長いというのは、問題がありますよ」と指摘しました。この自民党の国会運営の中堅エース格が「問題がありますよ」といった意味がどういうことか、民主党の政府外議員には、受け止めて、よく考えて欲しいと思います。

 
[画像]法案提出者として答弁した城島光力・民主党政調会長、2011年3月29日、衆院厚労委員会、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
 
 また、3月31日(木)の参院本会議での討論では、自民党の石井準一さんが平成23年度における子ども手当支払い法案(閣法)と、子ども手当つなぎ法案(衆法)に関して、「一つの国会のなかで、政府と与党で異なる法案が出たことは問題だ」と指摘したうえで、「ぶれる政府が現在の国難に対応できるわけがない」としたのも、説得力がある話でした。もちろん、「走りながら考える」(岡田克也幹事長)なかで、市田忠義さんや、寺田典城さんら人生経験のある70歳以上の議員、市田さんは満68歳ですが、戦前・戦中生まれでもある年長議員が助けてくれたわけです。なぜ困難なときに、57歳の岡田さんを、ギリギリのところで年長議員が助けてくれるのか。前に進む岡田さんの道がひらけるのか。まあ答えは言葉で書けば、これはカンタンです。カンタン過ぎるからあえて書きません。映画で、俳優が態度で表現しようとすると、これはとても難しいでしょう。民主党内に岡田幹事長の背中を全速力で追いかけながら、言葉でなく態度で示せるようになった議員が民主党内に数人だけでも、出てくれば、国難は乗り切れると思います。

 国会はノンストップで知恵を出すしかありません。前に進むしかありません。



[画像]下半分のバナー(ワッペン)は、自民党の機関紙「週刊自由民主」からキャプチャーさせていただきました。