[画像]BS番組「“自”論多論 参議院発」のキャスターの丸川珠代、山本一太、両自民党参議院議員
冒頭、個人的なことですが、確定申告の作業が例年以上に遅れており、今週は更新が遅滞すると思います。こういう風に書くと、メンテナンスできない隙を突いて、コメント欄(当ブログは現在閉鎖中)を荒らされたり、他の政治ブログで攻撃されたことがありました。しかし、最近は自分自身、このブログで主張していることの「大枠」はおおむね正しいとの自信があります。なので、「更新が少ないから具合が悪いの?」と心配してくださる読者(もちろん名前もお顔も存じない方が9割以上)がいらっしゃいますので、事前にお断りしております。まずは、国民の三大義務をしっかりと。
ちなみに、時折、書いておかないといけないのですが、私が日本経済新聞社社員として「日経新聞」を書いているときは、つねに「裏取り」(役所の発表含む)があって書いていたわけです。が、このブログはあくまでも私個人が「推論」を書くブログです。もちろん、広く公開された国会の審議を現場やネットで傍聴した内容は、これは裏を取る必要がありませんから、そのまま書きます。例えば、新聞・テレビのように、裏を取らなければ記事に出来なければ、「郵政民営化のホントウのねらいは?」とか、「なぜ東アジア共同体がTPPになったか?」なんていうのは、そもそも記事にできません。既存メディアの記者が「麻生首相、漢字を読み間違える」と書いたのには、私は麻生さんのことをよく知りませんが、なかなか裏の取りようがないことを書きたい中で、ようやく裏をとれるファクト(事実)だったのでしょう。その隔靴掻痒はおおめに見るべきだと考えます。それはいいとして、私は、新聞やテレビが書かないことをこのブログで書きたいのです。もちろん公序良俗に反することは書きません。それは、このgooブログの運営者がNTTグループ(NTTレゾナント社)であることで担保されていると思います。今まで、NTTレゾナント社からクレームがついたことは一度もありません。とはいえ、新聞記者時代の習性で、実際には裏を取っていたり、ペーパーを入手したり、政治部特有の「知っていて知らないふり」もしているわけですが、基本は推論であり、感想であり、意見ですので、参考程度に読んでいただきたいのです。
さて、このエントリーを6日夜、書き始めた直後に、外相の前原誠司さんが首相公邸で菅直人総理に辞任の意向を伝えた、という速報ニュースが入ってきました。
これは、3月4日(金)の、ことし最初のTV入り参院予算委員会(基本的質疑1日目)での自民党の合計6時間強の質問リレーのラストバッターだった、西田昌司さん(京都選挙区)の質問で、前原さんの政治団体が、外国籍の方から、年間5万円の政治献金を、少なくとも4年間合計20万円以上を受け取っていたとし、政治資金規正法違反を問われものでした。前原外相は、外国籍(在日)の方であること、少なくとも5万円の受領があったことを答弁で認めていました。
自民党政権を思い起こすと、大臣のスキャンダルの進退をめぐっては、様々な理屈よりも、まず国会の状況が優先されていたと思います。「国会運営に混乱をきたした責任をとる」という理由で辞任し、そのまま、スキャンダルの本質は、本人も、野党も、マスコミもうやむやになったまま、幕を引いたこともたびたびありました。政治は不条理なものであると同時に「流れ」が大事です。2月・3月の予算審議、とくに今はねじれ国会の参議院で審議が始まったばかりですし、予算関連法案が衆議院に残っているという時点ですでに運営が混乱している状況です。審議の遅れは1日たりとも許されない。だから、前原さんの問題が、「自民党にもあった」だの、「金額がいくらだ」だの、そういう理屈でなく、審議の障害になりますから、辞任は当然です。また、さまざまな事情から、前原誠司さんという人にとってはむしろプラスになるように感じます。
おそらく後任は、野党時代から、前原さんとアメリカ人脈を一緒に培ってきた、現・外務副大臣(元党政調会長)が昇格するのではないかと、私は考えますが、総理の判断を待ちたいと思います。
ちなみに、ことし最初(第177通常国会召集日)の参議院本会議で、前原さんが外交演説を早口で読み上げて、「参議院軽視だ」と参院自民党から指摘があり、後日の本会議で謝罪しました。これは私は報道で知り、「やはり生き急いでいて、かつ、物事を最後までしっかり見届けない前原さんがまたやっちゃったな」と感じたのですが、後から、参議院インターネット審議中継のビデオライブラリで確認したら、必ずしもそのような感想は持ちませんでした。おそらく、参院自民党は前原さんを狙っていたんだと思います。1月24日に軽くジャブを浴びせ説いて、3月4日、参院自民党にとっては手ぐすねとって迎えたレギュラーシーズン開幕試合で、一気に「前原外相」を場外ホームランで吹っ飛ばしてしまった格好で、やはり参院自民党の力の強さだと思います。
歴史の激動期は、チャンスです。
変化の時代に、何かをしかければ、その後主導権を握れます。3月1日午前3時40分に衆院本会議で可決した平成23年度本予算(案)を、西岡武夫・参議院議長が3月2日に受け取り、衆議院公報・参議院公報・官報とも、それが残ってしまいました。私も憲法60条の「予算の衆院優越の30日ルール」を改めて、読むと、確かに、西岡議長のような解釈ができてしまう。しかし、これでは、1日どころから、10日間も、100日間も、参議院議長が受け取らないことも可能になってしまう、憲法のすきまであり、断じて許すことの出来ない愚行です。変化が激しいときには、本物が活躍しますが、偽者も暗躍します。これについては、身内である参議院民主党幹部も大反対。衆議院議長も声明を出しました。先週の参院民主党国対委員長の記者会見(http://www.dpj.or.jp/news/?num=19817)をビデオで見ると、記者が「もうこの際、憲法を改正しちゃったらどうですか」と質問する場面がありました。既存メディアの記者がこのような発言を記者会見でするのは珍しく、取材を通して、よっぽど腹に据えかねたうえでの発言だったのでしょう、私はこの記者を支持したい。
ところで、民主党本部のホームページでは、参議院「民主党・新緑風会」の議員会長、幹事長、国対委員長の3人の定例記者会見を見られます。ところが摩訶不思議なことに自民党本部ホームページの役員の記者会見(http://www.jimin.jp/jimin/index/kaiken.html)には、参議院の役員の記者会見は全く載っていないんですね。あるいは、動画配信専門の「役員記者会見チャンネル(http://ldplab.jp/station/1ch/)でも、衆議院議員ばかり。参院議員も参加している「影の内閣」(シャドウ・キャビネット)も、衆院議員ばかり。で、昨年8月の中曽根弘文・参議院議員会長就任あいさつというのが最後。
そんな中で、参議院自民党は、BS放送局で、30分間の「"自"論対論 参議院発」という番組をやっている。司会は丸川珠代さんと、山本一太さん。週1回の30分番組。「いったいどんな“討論”番組なのかな?」と、先週の放送を見たら、参議院議員会長(中曽根弘文さん)、参議院幹事長(小坂憲次さん)、参議院国対委員長(脇雅史さん)がゲスト。「あれ、政審会長は?」と思ったら、司会の山本一太さんが現在の参院自民党政審会長でした。で、脇さんをはじめ、かってバラバラにひたすら持論を述べまくる。“討論”番組ではなく、“宣伝”番組。数分で、見るの止めました。ちなみに、このBS放送局は好きなのですが、既存マスコミの経営の苦しさを垣間見る感じでした。ちなみに、この放送枠の買い取りは、参議院事務局が参院会派に所属議員辺り月65万円振り込む「立法事務費」が原資だろうと、推測しています。参院自民党は独自の職員も雇っていて、その給与体系は、自民党総裁(衆院議員)も知らないアンタッチャブルだということを聞いたことがあります。
なぜ、参議院はこうなのか。理由はカンタンで、目立つことが少ないからです。参議院は日本の混乱期に、存在感を発揮するために、採決で造反し、年に1回前後のTVのスポットライトを浴びてきました。
例えば、第128通常国会の1994年1月21日の参院本会議。細川内閣の政治改革関連4法案を採決。この日の本会議には偶然にも、小選挙区論者だったとされる元総理・元衆院議員、田中角栄さん逝去に対する弔詞を全員起立で原文兵衛議長が読み上げてから、スタートしました。そして、採決結果は「投票総数 248 賛成118 反対130」でまさかの否決となりました。与党社会党の参院議員が大量に造反しました。このなかには、「湾岸戦争に反対する浪曲師の参院議員」も派手なスーツで高々と青票(反対)を掲げて投票しました。
また、第162通常国会の2005年8月8日には、郵政改革関連6法案を「投票総数233 賛成108 反対125」で否決しました。扇千景議長の指名で、賛成討論に立った世耕弘成さんの「どうぞ皆さん、賛成よろしくお願いいたします!」との呼びかけに、ナント中曽根弘文さんらが反対票を投じました。このときに小泉純一郎首相の後見人である森喜朗元首相は「だから、(復党間もない扇さんでなく)中曽根を議長にしておけと言ったじゃないか」との趣旨の発言をしたとの報道がありました。また、中曽根さんとともに反対票を投じた自民党議員のうち、2人は、70歳手前で亡くなった元国会議員の奥さん。1人は自民党副総裁の後継者で労働大臣・運輸大臣をやりながら比較的若く亡くなり、もう一人は大富豪でしたが、法務政務次官の後、入閣前に亡くなり、その奥さんがおのおの、後を継いで出てきました。ただその2人の女性議員はあまり参議院で目立った実績があったような気がしません。おそらく初当選以来初めて、TV局のぶら下がり取材を受け、「中曽根先生と投票行動を共にします」と述べたのはいいのですが、「アタシ反対!」との言葉には、ことの重大さが分かっているのかと感じざるを得ませんでした。この2人の女性議員は、その後入閣せず、国会から去っています。そして、この8月8日、扇議長は「よって、六案は否決されました。これにて休憩いたします」と宣言した後、議事録は、「休憩中衆議院が解散され、同時に本院は閉会となった」とさみしく書いてあります。
ところで話は急に変わりますが、赤坂プリンスホテルって今月で閉館なんですね。あのクリスマス・イルミネーションが見られないとは寂しい限りです。西岡議長も寂しいでしょうね。
話は戻って、まとめます。要するに、参議院は目立ちたいという心理がある。ですから、今国会で、テレビ入りで、参議院自民党は、BSも良いですが、国会内でばんばん、ディベート術を発揮して欲しい。昨年秋の第176臨時国会では、参議院インターネット審議中継の方が視聴数が多かったという報道があります。
2ちゃんねるでは、「最近はバラエティ番組よりも、国会中継の方が面白いよ」「吉本新喜劇よりも笑える。いや、ホントウは笑えないんだけどさ」というような書き込みが多数ありました。今までは、ハッキリ言えば、NHK国会中継も、そこが衆院か、参院か、考えないで見ていた方が多いと思います。それが、「おいおい、これ、まだ参院初日なんだぜ。自民党強烈過ぎるだろう」という2ちゃんねるの書き込みは、かなり全国民の感覚に近いでしょう。
しっかりホームランで目立ち、参院の注目度は、史上最高になっています。しかし、その風は急速に変わる可能性があります。基本的質疑の後も、集中審議がおそらく3~5回は入るでしょうから、しっかりと自民党は徹底的に議論で勝って欲しい。スポットライトを浴びて、ストレスと持てる力を発散してください。TVだけではありません、今はインターネットがあります。TV中継無しの、参院本会議、参院財金委、参院総務委もしっかり史上最高の注目度で見られているということを、くれぐれも理解して、予算関連法案の採決をめぐる本会議ではしっかりと良識の府として国民のために行動してください。