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ミステリ感想-『百舌の叫ぶ夜』逢坂剛

2022年02月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
断崖から落ち、記憶を失った男は復讐のため、自分が誰なのかを必死に探る。
銀座の繁華街で起こった爆発事件で、公安刑事の倉木は妻を失う。
テロか、それとも事故か、休暇命令を無視して倉木は独自の捜査を始め、事件の裏には凄腕の殺し屋の影がちらつく。

1986年文春2位、直木賞候補、日本推理作家協会賞候補、本格ベスト33位、東西ベスト(2012)97位

~感想~
復讐のため静かに闘志を燃やす謎の男と倉木のパートが、時系列入り乱れながら描かれる。
当時はかなり斬新な手法だったようで、作者はあとがきで「死んだはずの人間が生き返ったからといって、くれぐれも短気を起こして投げ出さないでほしい」と注意喚起している。
それだけ凝った構成なのはもちろんのこと、1986年刊行のハードボイルドとしては破格の本格ミステリ的トリックがいくつも仕掛けられておりそれにも驚かされる。「十角館の殺人」が1987年だから、新本格派の前年にこれはすごい。
特にある事件の犯人は予想だにしないもので、明かされた時には唖然とした。本格ベスト100で33位は伊達じゃない。
ハードボイルドも読めるミステリ好きにはちょっと試して欲しい傑作である。

余談だがドラマ版の「MOZU」は原作の何がどうなってこうなったんだよというくらい改変されているが、一番不可解なのは倉木の妻の名前が 珠枝→千尋 になっていること。珠枝は昭和の名前っぽいからとかじゃないだろうな。
娘が かほる→雫 になってるのは昭和すぎて仕方ないと思うが。


21.2.11
評価:★★★★ 8

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