ウオッカ引退・・・。速報を見て一瞬目を疑った・・・。
今月末に行われるドバイワールドカップを目標にしてたのに何故!?って思ったら、先日のレースで昨年のジャパンカップに続いてまた鼻出血をしたらしいです。それじゃ仕方ないね・・・。
ウオッカはライバル・ダイワスカーレットとともに、ディープインパクト引退後の日本競馬界をずっと牽引し数々の名勝負を刻んできた、記録にも記憶にも残る馬だよ。
デビューしてすぐにG1・阪神ジュベナイルフィリーズを勝ってJRA最優秀2歳牝馬を受賞。阪神JFでの走りは凄かったが、それでもまだ「来年の牝馬クラシックが楽しみだ」くらいにしか思わなかった。大抵の人はそのくらいだろう。
3歳明けの2戦目チューリップ賞でダイワスカーレットと初対戦を迎える。ここから日本競馬史に残る名牝ライバル物語が始まったんだよね。チューリップ賞では3着以下をちぎってのデッドヒート。ウオッカが切れ味勝負でダイワスカーレットを上回り勝利。続く桜花賞ではウオッカの切れ味を封じたダイワスカーレットが勝利。
本来ならこの後は牝馬限定戦のオークスに進むはずなんだけど、ウオッカ陣営は日本ダービーを選択。牝馬のダービー挑戦は1996年のビワハイジ以来10年ぶりのことだったんだよね。勝つとなると半世紀以上も遡らなくちゃいけなかった。それぐらい無謀な挑戦だった。
でもウオッカは勝ってしまった。実に64年ぶりの快挙達成。ディープインパクトがいなくなりスターがいなくなった日本競馬界に新たなスター誕生。当時、その歴史的な快挙達成に競馬ファンは大いに盛り上がったものだ。
そしてウオッカの挑戦はまだ続いた。ダービーの興奮が冷めやまない中、夏のグランプリ宝塚記念へ出走した。私も歴史的名牝を見ようと阪神競馬場まで見に行きました。春のクラシック戦線が終わったばかりのこの時期に現役最強馬たちを相手にレースをするのは過酷なこと。事実ウオッカは引っかかったことと道悪の影響でデビュー以来初めて掲示板を外してしまう。
斤量差の恩恵があったにもかかわらずボロ負けしたことで牝馬戦線に戻るかと思えばそうじゃなかった。なんと、凱旋門賞へ挑戦することが発表された。確かに凱旋門賞を勝つには3歳時が1番良いと思う。日本以上に斤量差があるからね。だけどこの挑戦はウオッカの故障により叶うことがなかった。その直後に馬インフルエンザが発生したが、出国準備をしていたメイショウサムソンと違い、ウオッカはその影響を受けずに済んだ。不幸中の幸いだった。
凱旋門賞を断念したウオッカは牝馬3冠の最終戦、秋華賞へ出走した。ダイワスカーレットとの3戦目。しかし、4ヶ月ぶりの実戦だったせいか、いつもの切れ味が見られず、ダイワスカーレットどころか伏兵レインダンスにも負けてしまう。
エリザベス女王杯で雪辱すべく出走しようとしたが、当日になって出走取り消し。ダイワスカーレットとの勝負は次回へ持ち越しとなった。そして陣営はジャパンカップへ切り替えた。
ジャパンカップではドバイDFや宝塚記念を勝ったアドマイヤムーンや天皇賞春秋連覇のメイショウサムソンらが出走。ウオッカは歴戦の古馬達を相手に追い込むものの4着だった。
そして有馬記念。ライバル・ダイワスカーレットは2着だったが、ウオッカは初めて2桁着順になってしまう。ウオッカは牝馬でダービーを勝つという快挙を達成しながらJRA最優秀3歳牝馬の座をライバルに譲ることになってしまった。
明けて4歳。ドバイへ遠征することを表明し、年明け緒戦を京都記念にした。が、ここでも掲示板を外してしまう。この敗戦のせいか、鞍上の四位騎手は下ろされ、ここから武豊とのコンビが始まった。
4歳2戦目はドバイ・デューティフリー。昨年アドマイヤムーンが勝ったレース。得意距離のこのレースでウオッカは世界の強豪相手に4着と好走する。しかし、凱旋帰国初戦のヴィクトリアマイルでは牝馬限定戦にもかかわらず2着に敗れてしまう。
そして迎えた安田記念。武豊は先約のあったスズカフェニックスに騎乗のため岩田騎手が騎乗した。ダービーから約1年。ダービー以降1つも勝てずにいた馬がここで復活する。並み居る強豪を打ち破り1年ぶりの勝利の美酒を味わった。
秋初戦。鞍上を武豊に戻し毎日王冠に出走。これまで中団よりやや後方から一気に差す競馬をしてきたウオッカが一転して逃げる戦法に出た。ライバル・ダイワスカーレットに勝つための試行錯誤だったのだろうか。しかし、最後はスーパーホーネットの末脚に屈して2着に敗れてしまう。
そして天皇賞・秋。ウオッカとダイワスカーレットの最後の対決(このときはこれが最後になると思わなかったが)。近年の名勝負といったらまずこの天皇賞・秋を挙げる人が大半だろう。それだけ凄まじい戦いだった。私はウオッカの応援に東京競馬場まで行った。あのときのスタンドの興奮は今でも覚えている。凄かった。涙が出るほどに感動したレースだった。着差はハナ。わずか2センチの攻防でウオッカがレコードで勝った。しかし、負けたダイワスカーレットも強かった。ぃゃ、サラブレッドの能力としてはダイワスカーレットの方が上かもしれない。彼女の安定感はウオッカにはないものだ。逃げてもバテないスタミナがあり、普通に走ってるだけで逃げる展開になってしまうスピードもある。実際、ウオッカの鼻がダイワスカーレットの前に出たのはゴール板を通過する瞬間だけだったという。ダイワスカーレットに無くてウオッカに有るもの、それは”華”だろうと私は思う。見るものに大きな期待や感動を与えてくれる。だから皆ウオッカが好きなんだ。
その歴史的名勝負のあと、ジャパンカップに出走するも、3着に敗れる。このレースでウオッカの4歳時のレースは全て終了した。
5歳。ウオッカは再びドバイの地へ向かった。しかし、前哨戦も本番もボロボロに負けてしまう。もう彼女はピークを過ぎてしまったのか・・・?誰もがそう感じた。しかし、彼女の物語はまだまだ終わらなかった。
帰国初戦のヴィクトリアマイル。ダイワスカーレットが引退した今、牝馬限定戦では絶対に負けられない。得意距離の1600メートルでウオッカはファンの度肝を抜くパフォーマンスを見せる。マイルのG1で7馬身差の圧勝。距離が短いほど着差はつかないものだが、実に7馬身。牝馬に敵はいないと言わんばかりの圧勝劇だった。そしてこれでG1・5勝目。メジロドーベルと並ぶ歴代牝馬トップタイの記録。しかも牝馬限定戦ばかりだったメジロドーベルとは違ってウオッカは牡馬相手に勝ったG1が3勝もある。G1を勝つことさえ難しいのに牝馬が牡牝混合G1を3勝している時点で凄いことだった。
ヴィクトリアマイルの圧勝劇から3週間後。連覇を狙う安田記念。ここでウオッカ&武豊はピンチを迎えてしまう。前が壁になり抜け出せなくなってしまった。前方では後輩ダービー馬ディープスカイがまもなくゴールするところだった。誰しもウオッカの負けを覚悟した瞬間、ウオッカは前の馬の壁をぶち破り、あっというまに先頭を走るディープスカイを追い抜き、1着でゴールした。凄かった。ぶっちゃけウオッカがまともにレースが出来たのはラスト100メートル。絶望的な位置からディープスカイをかわしてしまうのだから凄いとしか言いようがない。オグリキャップのマイルチャンピオンシップを見ているかのようだった。
天皇賞・秋の連覇を狙うウオッカは秋緒戦、毎日王冠に出走した。昨年のように逃げるウオッカ。しかし、カンパニーにかわされ2着。昨年と同じパターンで負けてしまった。
続く天皇賞・秋。前走の反省からかウオッカは後方策を取る。だがこれが裏目に出てしまい、カンパニーとスクリーンヒーローに後塵を拝してしまう。カンパニーには2連敗だった。このときのカンパニーは確かに強かった。鞍上の判断ミスだったような気がしないでもないが、ウオッカはやはりマイルがいいんじゃないか?と大半の人は思っただろう。私もその1人だ。だけど、ウオッカはそれを否定するかのレースを次のジャパンカップで披露した。
ジャパンカップ。3歳時から挑戦し続けていたこのレースでウオッカは再び記録を打ち立てた。鞍上に外国人騎手ルメールを迎え、先行策をとる。そして直線抜け出し、このまま圧勝するかと思いきや後ろから1歳下の菊花賞馬オウケンブルースリが猛然と追い上げてきた。ゴール板を通過したときにはオウケンブルースリのほうが有利かと思われたが、ウオッカは残っていた。昨年の天皇賞・秋同様に3センチ差の勝利だった。これでウオッカはG1・7勝目。シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクトに続いて4頭目のG1・7勝馬となった(JRAのG1レース限定)。牝馬では当然史上初の快挙。この馬を超える牝馬はもう現れないんじゃないか?と思った瞬間だった。
この後、有馬記念に出走予定だったが、ジャパンカップで鼻出血し、出走することが出来なくなった。が、ファン投票で3年連続1位は史上初の記録となった。
明けて6歳。3度目のドバイ挑戦。そしてそのドバイ遠征を最後に現役を引退することが発表された。そのドバイ緒戦で初めてのオールウェザーに戸惑ったのか8着に破れ本番に暗雲がたちこめた矢先、再び鼻出血を発症し、現役引退が発表された。
デビューしてから4年ちょっと。ずっと応援し続けてきたけど、ここまで一線級で戦い続けた牝馬は初めて。私の中でも好きな馬トップ5に入るのは間違いない。有終の美を飾れなかったのは残念だけど、これからは母親として日本の競馬ファンを楽しませてくれるはず。
ダイワスカーレットとのライバル物語は子供たちへと引き継がれる。
ブラッドスポーツと呼ばれる競馬のこれが1番の楽しみと言えるね。
ウオッカ、ひとまずお疲れ様でした。今まで感動をありがとう!元気な子供を産んでね!!
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