九月からの新学年の授業の準備ノートの作成を始めた。まずは毎年更新する参考文献表から手を付けた。
日本語のみで行う「日本文明・文化」で取り上げるテーマは毎年少しずつ変えるので、それに応じて参考文献も変わる。来年度初めて導入するテーマは「武士道」。これは修士の読解テキストとして新渡戸稲造の『武士道』を選んだことと関連している。「武士道」という言葉は、それこそこの新渡戸の名著のおかげで欧米でもとてもよく知られているが、それだけに歴史的な武士の実像についての誤解もうんざりするほど多く、いかがわしい出版物やでたらめな言説も数かぎりなく、学生たちもそれに影響されていることが多い。少しでもそれを修正できればと思う。とはいえ、本格的にこのテーマを取り上げれば、一年かけても足りない。そのために参照すべき文献も少なく見積もっても数十冊になる。それはとても無理な話だ。
そこで、『葉隠』のみを取り上げることにした。そのために購入したのが、講談社学術文庫版(2017年)とちくま学芸文庫版(2017年)。どちらの版も全三巻で、詳細な注と現代語訳が付いている。異なった底本を採用しており、個々の文言についての解釈を異にするだけでなく、現代語訳の方針も異なる。学術文庫版は全三巻で総頁二千二百頁を超えており、学芸文庫版も千七百頁を超えている。ざっと読むだけでもこの一夏では足りない。授業でもごく一部に触れることしかできないが、『葉隠』のテキストに即して、そこに示された武士道の思想に少しでも迫りたい。参考文献は、小池喜明『葉隠 武士と「奉公」』(講談社学術文庫 1999年)、相楽亨『武士道』(講談社学術文庫 2010年)、三島由紀夫『葉隠入門』(新潮文庫 1983年)のみとする。
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