南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

利他のすすめ

2011-07-22 21:24:04 | 読書
利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵
大山泰弘
WAVE出版


鳩山元首相が所信表明演説で引用した「4つの幸せ」の発信元の著者の本です。
教師になるという夢を捨て、体調を崩した父の経営する小さなチョーク工場を渋々と継いだ若社長の下に、ひとりの養護学校の先生が訪れるところから始まります。
知的障がい者を雇ってほしいと何度も頭を下げる先生に対して、彼はこう言い放ちます。
「そんなおかしな人を雇ってくれなんて、とんでもないですよ。
それは、無理なご相談です」
この言葉には、彼らを蔑むような気持ちさえ込められていました。
しかしあきらめずに通い続ける先生に根負けして、二人の少女の就業体験を受け入れることとなります。
1959年のことでした。

就業体験の2週間はあっという間に終わりました。
何事もなく終わったと正直安心した社長のところにある社員がやってきました。
「こんなに一所懸命やってくれるんだから、私たちが面倒見るからあの子たちを雇ってあげてください。
これは、社員の総意です」
唐突な申し入れに戸惑いましたが、社長はみんなの要請に応えて、二人の少女を正式に採用します。
これが社長を変えていった貴重な出会いでした。
あれから約50年、今では、社員の約7割を知的障がい者が占めながら、業界トップの会社に成長しました。

この二人の少女は本当に一所懸命働きました。
雨の日も風の日も、満員電車に乗って通勤してきます。
そして、単調な仕事に全身全霊で打ち込みます。
施設にいれば楽に過ごすことができるはずなのに、こんなにつらい思いをしてまでなぜ工場で働こうとするのだろうか?
社長には不思議でたまらなかったそうです。
その社長の疑問を解いてくれたのが法要のために訪れた禅寺の住職です。

前触れが長くなりましたが、この社長の問いに対する住職の答えが「働くことで得られる4つの幸せ」です。
含蓄のあるいい本です。

表紙の裏にあった言葉もよかったですよ。
「人生とはシンプルなものだ―。
この世に生を受け七十八年。
自らの人生を振り返ったときに、しみじみそう思います。
“利他のこころ”で生きれば、必ず幸せになれる。
これに尽きるのです」