米国をCOVID-19対策強化に駆り立てた2枚の図表
公開日時 2020/03/19 04:52 ミクスonline
シリコンバレーにShelter@Home(不要不急の外出自粛・自宅待機)命令が出たことはすでにレポートした通りである。では、不要不急の外出とは何か?体調不良で医療機関へ、慢性疾患の治療薬のリフィルを受け取りにドラッグストアへ、食材の買い出しにスーパーマーケットへ、足の確保にガソリンスタンドへ出かけること等に加え、健康管理・維持のためにウォーキングやジョギングに(1人または家族のみ)出ることも容認の範囲、さらにいかにも米国らしいのは「犬の散歩」が容認されていることだ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
◎米国の患者増加曲線はイタリアに酷似
米国の行政当局がここまで対策強化を急いだ理由の1つが上に掲載するグラフである。グラフは確定診断患者が100人を超えた時点からの患者の増加率曲線を国別に示したもので、ピンクが米国である。
データの出処はミクスOnlineでもすでに何度か報じたジョンズホプキンス大学のCOVID-19追跡ダッシュボードである。(出典:https://coronavirus.jhu.edu/map.html)
グラフを一覧するだけでも明らかなとおり、米国の患者増加率曲線は、感染拡大を食い止めるのに成功したと言われているシンガポールや香港の増加曲線にではなく、対策が遅れて患者が急増したイタリアやイランに酷似している。
米国の過激なまでのself-isolation(個々人に他者との間に距離をとらせる)あるいはShelter@Home政策は、今後の米国の感染者増加率をイタリアやイランよりも下げるための苦肉の策である。
◎感染テスト率の低い米国と日本
下図は、人口100万人あたりのCOVID-19ウイルス・チェック実施数の各国比較である。米国が最も実施率が低く、次いで低いのが日本である。
(出典:https://www.vox.com/policy-and-politics/2020/3/13/21178289/confirmed-coronavirus-cases-us-countries-italy-iran-singapore-hong-kong)
米国では今後ウイルス・テストを強化する計画である。テスト件数が増加すれば当然ながら確定診断患者数も増加すると予想される。米国が国民の隔離政策とも言うべき強硬な感染防止策の実施に踏み切った背景には、おそらく、今後テストが普及し、その結果、万一感染者数がうなぎのぼりとなった場合にも国民をパニックさせないための予防対策を講じておくべき、との政策的配慮があるものと考えられる。パニック予防で終わってくれれば言うことはないのだが、今後の感染拡大は予断を許さないものがあるというのが米国の有識者の共通認識である。