ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

脳は変わってきたのか?

2005年12月14日 22時24分58秒 | Weblog
 もう2005年もわずかになってしまった。来年日本で開催されるバレーボールの世界選手権に向けての小冊子作りに時間が取られ、なかなか本来の企画が進まない日々に苛立ちながら、ここまで来てしまった。
 今日は久しぶりに、著作を進めていただいているIさんに会いに東中野に出る。近況報告を聞きながら、心落ち着く時間を持つことができた。
 そのIさんが某局の元会長宅に取材があるということで、その終了を待って喫茶店で時間をつぶしている間、大きな薄型テレビからは、耐震偽造の証人喚問がずっと映されていた。一様に人間らしい怯えや恥じ入る気持が伝わってこない映像を気にしながら、読みかけの1冊を3分の2ほど読み進む。
 人を傷つけたり、独裁者になったり、愛したりする“危険な”脳はどうして作られるかについて書かれた吉成真由美氏の『危険な脳はこうして作られる』。テレビに映される顔にも、その危険な脳が隠されているように思わざるをえなかった。
 小学生が誘拐されたり、殺されたりといった殺伐とした事件が続くが、そのたびに、両親の育て方や学校や社会の対応の仕方が問題とされる。だが、そこに脳の病気という視点が欠けているという指摘にうなずくことが多かった。
 吉成氏の指摘によると、その脳の病気、スキゾフレニアは、どこの国でも人口のおよそ1%が患っていると言われ、その計算でいくと日本でも少なくとも100万人にのぼる患者がいることになるということだ。現実社会での人間関係というものの把握がうまくできなくなって、引き籠もってしまったり、情報を統合して思考するということができず、行動が非常識で非論理的、せつな的になってしまう人や、動物を虐待してしまう少年少女の50%近くが、両親にスキゾフレニア患者を持っている、ということである。それを病気として捕らえて治療していかないと現代の不可解な事件の真実は捉えられないのかもしれない。と、MIT(マサチューセッツ工科大学)の脳および認知科学学部を卒業し、ハーバード大学大学院で脳科学を専攻した元NHKディレクターだった吉成氏は伝えたかったのか?
 喫茶店には、仕事の途中らしいサラリーマンの2人連れが立ち代り入れ替わりしていった。「かわいそうだよな。あんな年寄りをいじめなくたって・・・」「あんなこと責められたら、俺たちの仕事だって、やってられないよな」「本当に調べて、全国の半分が強度不足ってわかったら、全部補償できるのか」「個人住宅で不良住宅買わされたって、自己責任じゃないかよ。自己責任だろ」「責めてるほうだって、結構悪いことやって、あそこまでなったんじゃないの」
 耳に残って、今も思い出せる言葉を並べてみる。

 それで、先の吉成氏の著作に戻るのだが、あとがきに書かれていた、こんな言葉に惹かれて、この本を手に取ったのである。

人々は往々にして理不尽で非論理的で自己中心的なものです。
 それでも許してあげなさい。
あなたが親切にすれば、結局自分の得になるからやってるのさと噂するでしょう。
 それでも親切にしてあげなさい。
成功すれば、偽りの友と本当の敵を作るでしょう。
 それでも成功しなさい。
正直で率直なら、人はだまそうとするでしょう。
 それでも正直で率直でいなさい。
何年もかかって築き上げたものを、一晩で壊されることもあるでしょう。
 それでも築き上げなさい。
平静と幸せを見つければ、必ず嫉妬されるでしょう。
 それでも幸せでいなさい。
あなたが良い事をしても、人はすぐに忘れてしまうでしょう。
 それでも良い事をしなさい。
力を尽くしても十分な結果は得られないかもしれない。
 それでも力を尽くしなさい。
何故なら、最終的にはすべてあなた自身の問題であって、
 けっしてあなたと他の人々の間の問題じゃないのだから。(マザー・テレサ)

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