ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

英国では、感染して入院した人の約40%が、少なくとも1回は接種を受けていた

2021年07月30日 19時26分02秒 | Weblog

「ブレイクスルー感染」、デルタ株で予想以上に増加か
(2021/07/30(金) 17:00配信 Forbes JAPAN)


 各国で接種が進められている新型コロナウイルスのワクチンは、高い割合で重症化を防ぐことが確認されている。だが、感染そのものを「完璧に」防ぐわけではない。

 実際のところ、2回のワクチン接種を完了しても起きる「ブレイクスルー感染」は、これまで考えられていたより多く発生している可能性がある。新たに出現した変異株、特に現在各国で優勢になっている「デルタ株」は、より多くのブレイクスルー感染を起こしている恐れがある。

 これが重大な問題なのかといえば、答えはイエスだ。まず、ブレイクスルー感染した人が重症化する可能性は、ゼロではなない。英国では7月20日、感染して入院した人の約40%が、少なくとも1回は接種を受けていたとする調査結果が公表された。

 また、オランダでも12日からの1週間に入院した人のうち、少なくとも14%が接種を完了した人だったと報告されている(75%は未接種、11%は発表時点で不明)。どちらも、デルタ株がワクチンに対し、いくらかの耐性を持つ可能性があることを示唆するデータだといえる。

 ブレイクスルー感染が起きていることのもう一つの問題点は、接種完了後でも感染すれば、本人が重症化しなくても、または無症状でも、他の人に感染を広げる危険性があることだ。

 オランダのウイルス学者らは先ごろ、複数の医療機関に勤務する接種完了者を対象に調査を実施。これらの人たちが再び感染し、未接種、または1回しか接種を受けていない同僚たちに感染を広げていたことを明らかにした。

 それだけではない。感染は接種を完了した人たちの間でも起きていたという。新たに感染したのは大半が未接種の人だったというが、ブレイクスルー感染した人が感染を広げるリスクがあることは、確認されたことになる。

 これが意味するのは、デルタ株は私たちに、恐るべき難題を突き付けているということだ。(米ファイザーやモデルナなどが開発した)mRNAワクチン、(英アストラゼネカなどが開発した)その他のワクチンは、重症化を防ぐという点で高い有効性を維持している一方、感染の拡大を防いではいない。

■「ワクチン頼み」では対応できない?
 イスラエルは先ごろ、ワクチンが感染者の重症化を防ぐ効果は88~91%とする調査結果を発表した。約4カ月前に公表された数値と比べて低下はしているが、大きな差ではない。

 一方、感染を防ぐ効果は、大幅に低下していた。7月上旬に同国の保健省や英国、シンガポールで公表されたデータでも、同様の変化が示されている。

■いま求められることは──?

 ジョー・バイデン米大統領は21日、ブレイクスルー感染の問題について尋ねられ、「起きる割合は非常に小さい。感染しても、生命を脅かすようなものにはならない」と答えた。そしてメディアは大半が、データに矛盾するこの見解を、そのまま伝えた。米紙ニューヨークタイムズもこの翌日、「ブレイクスルー感染の発生は“比較的まれ”」だとする記事を掲載している。

 だが、実際にはブレイクスルー感染は、珍しいことではない。オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM、米疾病対策センターに相当)の発表でも、同国で7月上旬の1週間に確認された陽性者のうち、9%はワクチン接種を完了しており、14%は1回の接種を受けていた。

 同国でワクチン接種を完了した医療従事者のその後の感染状況について調べたウイルス学者らは、屋内の公共スペースではワクチンを2回接種した人にも、マスク着用とソーシャルディスタンスの確保を求めるべきだろうと指摘している。

 米疾病対策センターは27日、各地で感染者が再び急増していることを受け、マスクの着用に関するガイドラインの見直しを実施したと発表。こうした地域では、屋内では着用するよう呼び掛けている。


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未来につなぐ転機か、

2021年07月24日 00時19分50秒 | Weblog

終わりの始まりか、東京五輪開幕

(2021年7月23日 20:31 日本経済新聞WEB)

 緊急事態宣言下の東京で、新型コロナウイルスの感染が急拡大する最悪のタイミングで五輪は開幕を迎えた。1年延期された末に、ほとんどの会場が無観客で開催される異例ずくめの「平和の祭典」は、日本のスポーツや五輪の未来に何を残すのだろう。

 コロナ下での開催を目指して迷走を続ける中で、五輪ブランドは失墜した。国際オリンピック委員会(IOC)の相次ぐ独善的な言動に日本国民は反感を募らせ、大会組織委員会は失態続き。開会式前日の22日にも、ショーの演出担当者が解任に追い込まれた。

 最大の痛手は、世界平和への貢献という崇高な理念を掲げる五輪が、その実態は特権を享受するIOC委員とスポンサー企業のための商業イベントにすぎないと思われてしまったことだろう。

 東京大会の組織委には国内68のスポンサー企業から3700億円を超える協賛金が集まった。2012年ロンドン大会の3倍以上と破格の金額。五輪はそれほど国民の支持率の高いイベントだった。だが、スポンサー各社の大半は、トップの開会式への出席を取りやめた。IOCのスポンサーであるトヨタ自動車、パナソニック、ブリヂストンも同様だ。トヨタは五輪関連CMも取りやめた。

 巨額の資金を提供しながら、大会を支援していることが逆に企業イメージを傷つける。こんな状況を招いたことが、世界的にもこれからの五輪に悪影響をもたらすことは避けられない。

 スポーツ界の責任も重い。本来なら開催都市のパートナーとして自国での五輪開催の意義を国民に丁寧に説明すべき日本オリンピック委員会(JOC)は、まったく存在感がない。大会を政治的に利用する思惑ばかりが目立つ状況を招いた。

 

 結局、五輪を歓迎できないムードを変えるのは、無観客のスタジアムやアリーナで戦う選手たちの姿となるのだろう。人生をかけて準備してきた舞台。テレビを通じての観戦でも、必死で勝利を目指す彼らのプレーが生むスリリングなゲームは、それだけの力を持つと思っている。

 開催国である日本の選手たちは、コロナ下での大会開催に、申し訳ないと負い目も感じているはずだ。だが、今は余計なことに心を乱さず、ただ目の前の目標に集中すればそれでいい。そして戦いを終えた後、感謝とともに、考えることを忘れないでほしい。五輪の開催がコロナに苦しむ社会の負荷になるのは否定できない。金メダルを取っても、それは帳消しにはならない。

 ならばスポーツを通じてこれから社会に何を返せるのか。一人ひとりがその問いかけを常に意識すれば、この国のスポーツの未来は必ず良い方向に向かうはずだ。

 1984年のロサンゼルス大会で商業主義にかじを切った五輪は、理念とビジネスの両立という矛盾を抱えたまま巨大化を続け、そのひずみは限界に達していた。そしてコロナ禍はその実態を浮き彫りにした。

 感染症のパンデミックは今後もやってくると予想される。いや応なく簡素化を迫られる東京大会には、原点に回帰して五輪を未来にリレーする転機となってほしい。だが、五輪の「終わりの始まり」となるのかもしれない。


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世界のスタンダードの感覚を無視することの危険性

2021年07月23日 06時54分40秒 | Weblog

東京五輪はなぜ「呪われたオリンピック」になったのか
(2021・07・23(金) 6:01配信 Yahoo!ニュース)

 東京オリンピック・パラリンピックの開会式を前に、不祥事が噴出している。開会式の音楽を担当していた小山田圭吾氏が、障害者を虐待した発言で辞任したと思ったら、開会式・閉会式のショーディレクターだった小林賢太郎氏が「ユダヤ人虐殺」をギャグにした発言で解任された。

 今回のオリンピックは、昨年(2020年)、安倍首相が1年延長したときからトラブルが相次ぎ、世界のメディアから「呪われたオリンピック」といわれているが、その背景には組織委員会の抱えている矛盾がある。

■ 開会式の直前に出てきた「ユダヤ人惨殺」のコント

 今回のユダヤ人発言は「実話BUNKAタブー」というマイナーな雑誌の7月21日深夜のツイートから始まった。

 五輪開会式ディレクターのラーメンズ・小林賢太郎さんが、「ユダヤ人大量虐殺ごっこをやろう」とホロコーストをネタにしてる動画です。https://t.co/dkDSArte0r pic.twitter.com/KJx02obaC7

― 実話BUNKAタブー編集部 (@BUNKA_taboo) July 21, 2021 この動画は1998年に「あのユダヤ人大量虐殺ごっこやろうっていったときのな」というたった10秒のコントで、そのままだったら外交問題になったとは思われない。

 しかしそれを受けて防衛省の中山泰秀副大臣が、反ユダヤ主義を監視するサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)に連絡したことから騒ぎが大きくなった。

 これを受けてSWCは7月22日朝、「東京オリンピックの開会式のディレクターによる反ユダヤ主義の発言を非難する」という公式声明を発表した。

 オリンピック組織委員会は同日午前、小林氏を解任し、彼も「私が書いたコントのセリフに極めて不謹慎な表現が含まれていました」と事実を認めた。

■ 電通に丸投げされた新演出プラン

 東京オリンピックのトラブルの最大の原因は、いうまでもなく新型コロナウイルスである。これによって開催が1年延期されたばかりでなく、大会の規模が大幅に縮小された。このとき安倍首相が、1年延期したことが判断の誤りだった。

 ワクチンの普及する2022年に延期すれば、今回のような大混乱は防げただろう。2021年になっても2年延期のオプションはあったが、IOC(国際オリンピック委員会)の反対を押し切れなかった。

 これによって2021年のオリンピックは、通常の大会ではなく「非常事態」でやる宿命を負ったが、関係者にはその意識が希薄で、それまでの通常態勢の延長上で運営が行われていた。開会式と閉会式の演出企画チームの解散を決めたのは、昨年12月である。

 それまで開会式の統括は能楽師の野村萬斎氏だったが、このとき統括が電通出身のCMディレクター佐々木宏氏に交代して演出が縮小され、それまでの演出案が白紙撤回された。

 この一つの原因は、当初の演出案が高コストで、それを縮小するには電通が介入するしかなかったためといわれるが、その変更プロセスは不透明だった。特に多くのスタッフが契約解除されたため、不満が噴出し、内部告発が続発するようになった。

 変調が表面化したのは、今年2月に組織委員会の森喜朗前会長の「女性がたくさんいる会議は長くなる」という発言である。これ自体は失言ともいえないような冗談だが、関係者が海外メディアにリークして騒ぎが広がり、森氏は辞任に追い込まれた。

 今年3月には「オリンピッグ」騒動で、佐々木氏が辞任に追い込まれた。これも彼が昨年3月に演出の打ち合わせで、LINEで「渡辺直美への変身をどう可愛く見せるか」というアイディアの一つとして「空から降り立つオリンピッグ」という案を出しただけだが、それが今年3月になって週刊文春に掲載され、佐々木氏は辞任した。

 このLINEの情報を提供したのは、当初の演出案を書いた演出家のMIKIKO氏だといわれ、彼女はスタッフ交代について「組織委員会から何も連絡がなかった」と批判した。

 今回問題となった小山田氏も小林氏も、佐々木氏が連れてきたスタッフである(当初案では音楽は椎名林檎氏)。急な変更のため、電通のつながりで声をかけたものと思われるが、佐々木氏が辞任したあと統括の後任は置かず、準備は文字通り「無責任体制」で進められた。

 実質的に統括になった日置貴之氏は、開会式のスローガンを英語で「Moving Forward」として日本語に訳さず、「復興五輪」という言葉も入れず、組織委員会の橋本聖子会長は記者会見で「驚いた」とコメントした。

■ スポーツ選手とクリエイターの文化の違い

 今回の東京オリンピックが1964年と違うのは、開会式などのスタッフに音楽やダンスなどのクリエイターが多いことだ。この世界にはスポーツ選手のようにルールを守る文化はなく、小林氏のような危ないコントも劇場では珍しくない。

 ところが組織委員会は体育会系で、こういう文化がわからない。その微妙な判断を電通にまかせたため、その矛盾が開会式まぎわに噴出した。演出スタッフが発表された今年7月14日から1週間で、多くの不祥事が出てきた。

 この情報源の一つは、契約を切られた元の演出案のスタッフだろう。小山田氏の話は業界では知られていてネット上にも出ていたが、小林氏の動画はよほど事情に詳しくないと知っている人はいない。

 政府の危機管理も、お粗末だった。小山田氏の辞任までには5日かかって世界から批判を浴びたが、小林氏の動画については、その直後(深夜2時ごろ)に防衛省の副大臣がそれを直接SWCに通報した。

 SWCは日本語の動画を理解できなかったはずだが、日本政府の副大臣から通報されて「問題ない」とはいえない。非難声明には「小林が『ホロコーストで遊ぼう』と発言した」とか「障害者をジョークにした」という事実誤認が含まれていたが、組織委員会はそれを追認する形で小林氏を解任した。

 このようなちぐはぐな対応の原因は、オリンピックを延期したとき、路線転換が遅れたことにある。緊急事態宣言のもとで行われる大会は政府の危機管理と一体なので、本来は1年延期した段階で、あらゆる事態に政府として対応できるように組織委員会を改組すべきだった。それを逆に電通に丸投げしたため、責任不在になったのだ。橋本会長には当事者能力がないので、大会が始まると、さらに不祥事が出てくるだろう。


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身につけるものは自分の考えに合ったものにしたい

2021年07月22日 09時33分09秒 | Weblog

靴にも脱炭素の波、「緑の消費者」が生む新市場

(2021年7月22日 0:00 (2021年7月22日 5:05更新) 日本経済新聞WEB)

 

 大量生産、大量消費によって生み出される豊かさへの疑問が世界で広がりつつある。価格だけで選ばず、少しでも環境負荷の軽い商品を好む。そんな「緑の消費者」が生む新市場が企業の商品・マーケティング戦略に変化をもたらしている。
 若者向けのカフェやアパレル店が立ち並ぶニューヨーク、マンハッタンのソーホー地区。スニーカー店「オールバーズ」の旗艦店には20~30代の男女が集まる。飲食店勤務のヘンリー・アベリーさん(27)は、友人が履いているのを見て気になり、来店した。
 米オールバーズは環境に配慮したものづくりで若者を中心に支持を集め、いま最も注目を集めるブランドの一つ。靴や衣類にニュージーランド産の羊毛やサトウキビなどの天然素材を使用し、生産にかかる二酸化炭素(CO2)排出量を商品タグに明記している。
 アベリーさんもこうした取り組みに共感する。「身につけるものは自分の考えに合ったものにしたい」。オールバーズのスニーカーはミレニアル世代のアイコンとなり、2016年の創業ながら企業価値10億ドル(約1100億円)を見込むユニコーン企業に育った。

■欧米の動き速く

「ファッション産業は世界で排出される温暖化ガスの8%を占める」。スイスの環境コンサルティング会社クアンティスは18年、欧州全体とほぼ同等のCO2排出量をファッション業界が出していると指摘した。
 欧米の動きは速い。仏シャネルや米ナイキなどが19年に立ちあげた「ファッション協定」。使う電力の再生可能エネルギーへの転換を25年に50%、30年に100%にする目標などを掲げ、加盟ブランド全体のCO2排出量を19~20年に35万~45万トン減らした。
 ナイロン製のバッグや小物などで有名な伊プラダは21年末までに商品の全てを無限にリサイクルできる再生ナイロンに切り替える。
 一方で、トレンドに合わせて安価な商品を大量供給するファストファッションの代表格だった米フォーエバー21が19年に破綻するなど、環境負荷が重いとされるビジネスモデルが消費者の支持を得られなくなってきているとの見方もある。
 脱炭素の動きは排出量の多い発電や重工業に限らず消費者の生活に及び始めている。米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が今年、日本で実施した調査では「2~3割の消費者は値段が高くても環境負荷の低い商品を選ぶ」との結果が明らかになった。
 世界ではこの傾向がより顕著だ。スウェーデンの首都ストックホルム。地元食品ブランドのフェリックスは、脱炭素を意識したユニークな試験店舗を20年10月に開いた。

■排出量で値付け

 野菜など、並ぶ品は普通のスーパーと変わらない。違うのは値付けの方法だ。商品の値段はCO2の排出量に応じて決まる。顧客は1人当たりの排出上限を定められており、排出が少ない商品ならたくさん買える。
「気候変動の理由のうち4分の1は食料が占めるのに、どの商品が影響しているかを消費者が知るのは難しかった」。フェリックスは店舗開設の経緯をこう明かす。輸送などで多くのCO2を使う商品は高くなるため日々の買い物を通じて、消費者が排出量を意識でき、温暖化対策につながるとの期待がある。
 スーパーの商品の産地や廃棄物などを5段階で評価した「グリーン・コンシューマー・ガイド」が英国で出版されたのは1988年。「『グリーン』に対する消費者の意識はこれからさらに高まる」とBCGの森田章マネージング・ディレクターは話す。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)への消費者の視線を企業は無視できなくなっている。

 


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宇宙に飛び出す・・・のもいいけれど。

2021年07月21日 08時09分20秒 | Weblog

ごみ処理・野菜販売、1台で。ミダックと平野工業が移動車

堆肥に再生、農家に提供。浜松で食の循環目指す
(2021年7月21日 1:49 日本経済新聞WEB)

 

 産業廃棄物処理のミダックや自動車部品製造の平野工業製作所(浜松市)は、移動しながら生ごみを発酵処理し、野菜などを販売できるリサイクルカーを開発し、実験運用を始めた。スーパーや飲食店から食品残さなどを回収し、堆肥化して農家に販売。野菜の直売にも活用してもらうモデルで、浜松市から取り組みを広げたい考えだ。
 設備保守などのNTTフィールドテクノ(大阪市)が手掛ける食品のリサイクル事業「地域食品資源循環ソリューション」の一環として展開する。同事業の標準モデルではスーパーや食品工場などに発酵処理装置を設置するのに対し、ミダックなどは車で移動しながら処理する「浜松モデル」を展開する。
 リサイクルカーは平野工業が受託開発した。車両はトヨタ自動車のワンボックスカー「ハイエース」を採用。リチウムイオン電池を6基搭載したほか、天井に太陽光パネルを設置して電力を確保する省エネ対応とした。
 車内には環境事業のウエルクリエイト(北九州市)が開発した、食品残さなどの発酵分解装置を搭載した。1日に40~50キログラムを24時間かけて一次発酵処理できる。その後、リサイクル施設に運んでさらに発酵させ堆肥化したうえで農家に提供、販売する。
 車両の後部には野菜などを陳列するスペースを設け、リサイクル堆肥で生産した農産物の移動販売もできるようにした。装置を設けた空間は外に臭いが漏れないよう密閉した。後部のスペースには断熱材を使い、暑さで野菜が傷まないようにした。
 浜松市では食品工場やスーパー、飲食店などの事業所から、古くなった食品や野菜の切れ端など年間約3万6000トンの生ごみが出る。多くはリサイクルされずに一般ごみとして焼却処分される。ただ、環境意識の高まりとともに再利用の機運は高まっている。浜松モデルでは、店舗側が処理装置の場所確保などを気にせず、適当な時間に回収してもらえるメリットもある。
 ミダックなどは今春、リサイクルカーを使った実証実験を浜松市内で行った。遠鉄ストアから回収した生ごみを移動中に発酵処理した。臭いが漏れるなどの問題が起きないことを確認した上で、農業法人の青空農園(同市)が堆肥を使って生産した野菜を車両で販売した。「リサイクルを体現する車」として、市内の小学校で環境問題についての訪問授業も実施した。
 実証実験は終了したが、ミダックは生ごみなどの廃棄物を再生利用できるよう浜松市に申請する方針だ。市から指定を受けることで、小口の生ごみを回収・再生利用できるようにする。「リサイクルカーの事業性について検討したい」(ミダック事業管理グループの国弘彩グループ長)
一般的に生ごみは焼却処理よりもリサイクルする方が処理コストがかかるため、国弘グループ長は「リサイクルしながらコストを下げる方法を探りたい」と話す。
 ミダックは東証1部・名証1部上場企業。2021年3月期の売上高は57億円だった。平野工業は1980年設立で、自動車のカスタム部品を主に手掛ける。社員は18人。21年3月期の売上高は約2億円だった。


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ジョコヴィッチ、東京オリンピック出場を決断

2021年07月18日 02時00分36秒 | Weblog

東京五輪 ジョコヴィッチ、出場を表明 ケルバーは欠場
(BBC NEWS 2021年7月16日)

 テニスの世界王者ノヴァク・ジョコヴィッチ選手(34)が15日、東京オリンピックの出場を決断したと表明した。ウィンブルドン優勝後、出場は「五分五分」と話していた。
 ジョコヴィッチ選手は、今月11日にウィンブルドン男子シングルスで優勝した後、東京オリンピックの出場は「考える必要がある」と発言。可能性は「五分五分だ」と述べていた。
 新型コロナウイルスの影響で、オリンピックが無観客で開かれると発表されたのを受けての言葉だった。
 しかし15日になってジョコヴィッチ選手は、セルビアの代表選手団に「誇りをもって」加わると、ツイッターに投稿した。


●「ゴールデンスラム」望みつなぐ
 ジョコヴィッチ選手は今年のウィンブルドンで、男子最多タイ記録となる20個目の4大大会(グランドスラム)タイトルを獲得した。
 今年の全豪オープンと全仏オープンも制しており、同じ年のうちに4大大会すべてとオリンピックを制覇する「ゴールデンスラム」の可能性が出ている。
 女子では1988年にシュテフィ・グラフさん(ドイツ)が達成したが、男子でゴールデンスラムを成し遂げた選手はまだいない。

●ケルバーは出場辞退
 一方、アンゲリク・ケルバー選手(ドイツ、33)は、東京オリンピックへの出場を辞退した。
 ウィンブルドンの女子シングルスで準決勝まで勝ち進んだケルバー選手は、インスタグラムへの投稿で、「厳しい数週間」だったと振り返り、体が「休息を必要としている」と説明した。
 
 テニス界ではこれまでに、ウィンブルドン準々決勝で敗退したスイスのロジャー・フェデラー選手(39)も、「芝コートのシーズン中、残念ながら膝が悪化した。そのため、東京オリンピックを棄権しなくてはならないことを受け入れた」として、不参加を表明している。
 イギリス女子ランキング1位のヨハナ・コンタ選手(30)と、同男子1位のダン・エヴァンズ選手(31)はともに、新型ウイルスの検査で陽性とわかり、東京行きを辞退した。
 エヴァンズ選手の代わりとして、北京、ロンドン、リオデジャネイロとオリンピック3大会連続でイギリス代表になったジェイミー・マリー選手が、男子ダブルスでニール・スクプスキ選手とペアを組むことになった。
 マリー選手は、元男子世界ランキング1位のアンディ・マリー選手の兄。東京オリンピックに兄弟そろって出場する。

 


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safe and secure games for everybody・・・バッハIOC会長

2021年07月18日 01時27分21秒 | Weblog

7月13日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は、東京2020組織委員会の橋本聖子会長を表敬訪問し、日本人の安全を訴えた。

 

――And now our common target is safe and secure games for everybody; for the athletes, for all the delegations, and most importantly also for the Chinese people......Japanese people.

和訳:

――そして今、私たちの共通の目標は、すべての人にとって安全で安心な大会であることです; 選手たち、すべての代表団、そして最も大切なチャイニーズ・ピープル(中国の人々)......(あ、いや)ジャパニーズ・ピープル(日本の人々)にとってです。


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地面で卵焼きを作らないで!

2021年07月16日 07時21分57秒 | Weblog
デスバレーで地球上最高気温に限りなく近い、灼熱の摂氏54℃を記録
(Yahoo!ニュース 2021・07・14  22:30配信)
 
 
 米・カリフォルニア州にあるデスバレー。死の谷と名付けられた海面下86メートルのこの谷は、アメリカでももっとも暑く、カラカラに乾燥している場所。そんなデスバレーの7月9日の気温が54.4度に到達。地球上で最も暑い気温のひとつと記録されました。
 
 アメリカ国立気象局によると、デスバレー国立公園では続く10日、11日も54度を記録。「この異常な気温は冗談ではありません。外へ行く時は十分に気をつけて、危険な状況下に自らを置かないこと!」と注意を呼びかけています。
 
DEATH VALLEY UPDATE ?️High temp at Death Valley today = 130F.⚠️ If this says anything about how hot SAT-SUN will be, HEED THESE WARNINGS. Do not put yourself, nor first responders in danger this weekend!This observed high temp is considered preliminary & not yet validated. 
 
― NWS Las Vegas (@NWSVegas) July 10, 2021 
 
 暑さで有名なデスバレーでは去年の8月にも同じ54.4度を記録していて、デスバレーにとって2020年と今年2021年は疑う余地もなくこの地球上で一番暑い気温を叩き出している年だと言えます。これまでにこの気温を超えた歴代の最高気温は1913年7月10日同じデスバレーで記録された56.7度。そして1931年7月7日にチュニジアのケビリで記録された55度があります。1913年のデスバレーの56.7度に関しては「気象学的にありえないほど」と気象歴史学者に評されています。
 
 アメリカ国立気象局は2021年の6月をアメリカ史上最高に暑かった6月として記録していますが、今回の記録的熱波は数ある気候変動の影響のたったひとつで、この先もっともっとひどくなると言われています。人間が原因となる気候変動以外でこの異常な熱波は起こり得ない、この先はこの状況が「異常」ではなくなってくるかもしれないと気象科学者たちは話しているそうです。

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「酸素が逆効果になる」という、ずっと気になっている事

2021年07月15日 23時41分34秒 | Weblog

新型コロナウイルス感染症から回復しても肺には深い傷跡が残る

(Gigazine 2020年04月24日 23時00分)


 軽症から重症まで多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を診察してきた医師が、「COVID-19から回復した健康な元患者の肺が、不可逆な損傷を受けた」という事例を報告しました。

Uni-Klinik Innsbruck: irreversible lung damage in corona patients | En24 News
https://en24.news/en/2020/04/uni-klinik-innsbruck-irreversible-lung-damage-in-corona-patients.html

 オーストリアにあるインスブルック大学病院の上級医であるフランク・ハルティヒ氏は、同院の救急科の責任者として、無症状の人から集中治療室に入った人まで多くのCOVID-19患者を診察してきました。その中には6人の現役のダイバーがいましたが、全員が「病院での治療は不要」と判断されたため自宅に戻され、数週間の自主隔離の後回復しました。ハルティヒ氏らが回復後の経過観察を行ったダイバーは全員、せきやダイビングのパフォーマンスの低下が見られる以外は健康そのものだったとのこと。

 そこで、ハルティヒ氏がダイバーの肺をCTスキャンで調べたところ、驚くべき結果が出ました。まず6人中2人の肺は大きく機能が低下しており、負荷がかかるとすぐに血中の酸素が低下してしまうようになったとのこと。また、ぜん息の患者に見られるような症状も観察されました。残りの4人のダイバーについても、肺の変化が見られたとのことです。

 この結果についてハルティヒ氏は、「私は20年の経験がある救急医ですが、若い人の肺がこんな状態になっているのを見て言葉を失ってしまいました。CTスキャンの結果を取り違えたのかと思って、改めてレントゲン撮影をさせてもらったことさえあったほどです」「これは衝撃的で、何が起こっているのか理解できません。彼らはおそらく生涯の患者として、定期的な診断を受けるべき状態になってしまいました。当然、ダイビングはもうできません」と話しました。

 ハルティヒ氏によると、これまでの段階ではCOVID-19の長期的な影響がどの程度残るかはなんともいえないとのこと。しかし、COVID-19から回復したダイバーの診断結果があまりにも悪かったことから、「完全に回復すると考える事は難しい」とハルティヒ氏は指摘しています。

 入院は不要だと判断されたほど症状が軽かった人の肺が大きく損傷していた原因は不明ですが、一部の医療関係者は「人工呼吸器を使用した人が急に症状が悪化してしまうことと関係があるのではないか」と考えています。例えば、イタリアでは人工呼吸器を使用した患者の多くが死亡してしまうという事例が見られました。そのため、アメリカの医療現場ではできるかぎり人工呼吸器を使用するのを遅らせる試みが行われているとのことです。

 イタリアと同様の現象は、ハルティヒ氏が勤めている病院でも観察されています。「血中の酸素濃度が低い人に酸素を吸入させると症状が緩和されますが、数時間後には多くの患者が重度の肺不全に陥って集中治療室に入ってしまいます」とハルティヒ氏は述べました。

 こうした経験から、ハルティヒ氏らは「酸素がなんらかの引き金になっているのではないか」と感じているそうです。例えば、ダイバーの間ではNitroxと呼ばれる酸素と窒素の混合ガスが使用されてきました。これは、低下した酸素濃度を回復させて潜水可能な時間を延ばす目的で使用されていますが、ハルティヒ氏によると「肺の組織がまだ酸素に対して敏感な時に使用すると危険な作用をもたらす場合がある」とのこと。

 前述の6人のダイバーが、回復後にNitroxや酸素ボンベなどを使用したダイビングを行ったかは不明ですが、ハルティヒ氏は「酸素が逆効果になることもあります」とコメントしました。

 ハルティヒ氏はダイバー向けの雑誌に掲載したレポートの中で「COVID-19から回復した人は、たとえ軽症しか出ていなかったり、回復後に受けたダイビングのテストに合格したりしたとしても、ダイビング専門の医師に徹底的に検査してもらうべきです」と記して関係者らに対し警鐘を鳴らしました。またダイバーでなくても、COVID-19から回復した人は、肺の損傷の具合が明らかになるまで夏場のスポーツのトレーニングなどは控えた方がいいとのことです。


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物語

2021年07月11日 16時11分05秒 | Weblog

人生には2つか3つの物語しかない。
しかしそれは何度も繰り返されるのだ。
その度ごとに初めての時のような残酷さで。
(ウィラ・キャザー/米・作家)

■記憶に刻まれたスポーツシーン(3)

 2019年7月12日、ロサンジェルス・エンゼルスの選手全員が背番号「45」と「SKAGGS」と名前が記されたユニフォームを着用し、試合に臨んだ。そして、この試合でエンゼルスは継投によるノーヒット・ノーランを達成。試合後、選手たちはマウンドへ足を運ぶと、次々と着ていたユニフォームを脱いで盛り上がった場所に並べていった・・・。11日前の7月1日午後、テキサス・レンジャーズ戦に向けた遠征の際に宿泊先ホテルで意識不明状態で発見され、急逝したエース、タイラー・スカッグス(享年27歳)の死後初めてとなった本拠地での追悼試合後のことだった。

 


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ハートがあるかどうか

2021年07月11日 15時59分10秒 | Weblog

人は負けながら、勝つこともできる。
勇敢に闘いさえすれば、敗北は恥ではない。
ハートがあるかどうかだ。
(アーネスト・ヘミングウェイ)

■記憶に刻まれたスポーツシーン(2)

 2018年サッカーのワールドカップ・ロシア大会決勝トーナメント1回戦で、ベルギーに敗れた日本代表のロッカールーム。ベルギーに敗れてベスト8進出を逃した直後、日本チームのロッカールームに入ったFIFAのジェネラルディレクター、プリシラ・ジェンセンズは、「入口側の棚の上にはロシア語で「スパシーバ(ありがとう)」のメッセージが書かれた紙が残されていた」とのコメントとともに、この写真をTwitterに投稿した。


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誰かに倒されたあと、

2021年07月11日 15時47分02秒 | Weblog

「リストンは臆病者かな?」
「まだわからないな」パターソンは言った。
「誰かに倒されたあと、彼がどうするか見てみないと。
(ゲイ・タリーズ『敗者』)

■記憶に刻まれたスポーツシーン(1)

 女子マラソンが競技種目に新たに加わった1984年のロサンゼルス五輪。優勝記録は、ジョーン・ベノイト(米)の2時間24分52秒。そのベノイトのゴールから約20分後、競技場の観客が目にしたものは・・・、ふらつきながらゴールに向かい歩み続けている一人の選手の姿だった。その様子から熱中症にかかっていることは誰の目にも明らかだったが、トラックサイドの係員に対しアンデルセンはゴールする意思表示をし、歩みを止めようとしなかった。トラックサイドの医師のほうもアンデルセンがまだ汗をかいていたことから、身体の恒常性が保たれていると判断、ゴールラインを割るまで競技を続けさせた。
 アンデルセンの右足はほとんど動いておらず、右手はぶらつき夢遊病者のような中、競技場の大観衆の声援の後押しを受けて、競技場に入ってから5分44秒後、2時間48分42秒の37位で完走を果たした。

 


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運を拾って・・・

2021年07月11日 09時49分31秒 | Weblog

他人が、ポイと捨てた運を拾っているんです。

 

(大谷翔平/ロサンゼルス・エンジェルス・・・マウンドを降り際に、気がついたゴミを拾ってポケットに入れたことについて問われて・・・)


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「mRNAワクチン」で人類を救ったカタリン・カリコ博士の物語

2021年07月11日 00時33分19秒 | Weblog

「知っているということは、危険なことでもある。知らなかったからこそ、できてしまったということがある」

(Yahoo!ニュース/山田順 2021/07/05 17:37 )

 日本でいま接種されている新型コロナウイルスのワクチンは、ファイザー/ビオンテックとモデルナの2種類。どちらも「m(メッセンジャー)RNAワクチン」で、このタイプのワクチンは人類史上初めてつくられたものだ。そして、その生みの親と言われるのが、ハンガリー出身の生化学者カタリン・カリコ(Katalin Karikó)博士。
彼女がいなければ、「mRNAワクチン」は誕生しなかった。

■半世紀前に確認されたmRNAの存在

 mRNA(メッセンジャー・アールエヌエー)の存在は、半世紀前から知られていました。最初にその存在を指摘したのは、フランス人の生物学者ジャック・モノーとフランソワ・ジャコブで、この2人は1965年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。その後、この研究を引き継いで、アメリカの遺伝生物学者のマシュー・メルセンが、mRNAの存在を実証しました。
 彼らの功績は、DNAに書かれた情報がmRNAを介してタンパク質の合成にいたるという分子レベルの仕組みを解析したことです。

 東欧の小国ハンガリーの女性生化学者カタリン・カリコ博士は、この仕組みに注目しました。mRNAがタンパク質を合成するという仕組みを利用すれば、将来必ず医療に貢献できると考えたのです。当初、彼女は、がん治療にmRNAが利用できればと思っていたと言います。

■900ポンドをぬいぐるみに隠して渡米

 カリコ博士は、1955年生まれ、今年で66歳。
 ハンガリーの首都ブダペストから東におよそ150キロ離れた地方都市ソルノクで生まれ、近隣のキシュウーイーサーラシュ市で育ちました。実家は貧しく、父親は精肉業を営んでいました。
 小さいころから非常に優秀で、大学は最難関校の国立セゲト大学に進み、卒業後はハンガリー科学アカデミーの奨学金を得て、地元の研究機関の研究員となりました。その間、RNA(リボ核酸)の研究で博士号を取りました。
 ところが突如、政府からの研究資金が打ち切られることになり、アメリカ行きを決意します。1985年、カリコ博士は夫と幼い2歳の娘とともに渡米します。

 当時はまだ冷戦時代。ハンガリーは、西側への通貨の持ち出しを厳重に制限していました。しかし、アメリカにツテがないカリコ一家は、生活費を持ち出さなければ暮らしていけません。そこで彼女は、娘が大事にしていたクマのぬいぐるみのテディベアの中に、全財産の900ポンドを隠したのです。 
 渡米後、彼女はペンシルベニア州のテンプル大学で研究員となり、その後ユーペン(U.Penn:ペンシルベニア大学)に移って、助教授となり、mRNAの研究に没頭しました。

 しかし、彼女の研究は評価されませんでした。
 そのため、研究費もしばしば削られたと言います。そんななか、HIVのワクチン開発の研究をしていたドリュー・ワイスマン教授と知り合い、彼と共同で、2005年、今回のワクチン開発に道をひらく画期的な研究成果を発表したのです。しかし、これもほとんど注目されませんでした。
 こうして、2010年にはmRNAの関連特許を大学が企業に売却してしまったため、彼女の研究は事実上、頓挫してしまいました。

■ドイツのビオンテックが研究に着目

 失意の彼女を救ったのが、ドイツのバイオ企業ビオンテックでした。2011年、ビオンテックは、彼女をドイツに招き、研究を続ける契約を結びました。
 ビオンテックの創業者のウール・シャヒン博士と妻のエズレム・テュレジ博士は、ともにトルコ系ドイツ人。2人とも医師で最先端医療の研究者だったので、彼女の研究の価値を見抜けたのです。

 mRNAは、体内で炎症反応を引き起こしてしまうため、長年、薬などの材料として使うのは難しいと考えられていました。しかし、カリコ博士とワイスマン教授の共同論文は、mRNAを構成する物質の1つ「ウリジン」を「シュードウリジン」に置き換えると炎症反応が抑えられることを指摘していたのです。
 ここに、ビオンテックのシャヒン博士は着目したのです。

■いまやビオンテックの株価は天井知らず

 新型コロナウイルスの表面には「スパイクたんぱく質」(spike protein)と呼ばれる突起があり、ウイルスはここを足がかりとして細胞に感染します。mRNAは、この突起の部分のいわば「設計図」にあたり、ワクチンを接種すると、これをもとに細胞の中でウイルスの突起の部分だけが体内でつくられます。
 そして、この突起によって免疫の仕組みが働き、ウイルスを攻撃する「抗体」がつくられるのです。

 2020年3月、ビオンテックはアメリカの製薬大手ファイザーとmRNAを用いた新型コロナウイルスワクチンの開発を開始すると発表し、世界を驚かせました。新型コロナウイルスの感染が全世界的に拡大する前のことです。当時、日本では、クルーズ船の感染で大騒ぎでした。 
 アメリカ政府は、多額の補助金を出し、mRNAワクチンの開発に賭けました。ビオンテックは2019年にナスダックに上場していましたが、いまやその株価はワクチン開発の成功で天井知らずになっています。

■モデルナもまたカリコ博士の研究に注目

 モデルナのワクチンも、カリコ博士の研究に基づいてつくられています。
 モデルナは、2010年にハーバード大学の生化学者デリック・ロッシ博士によって、ボストンで創業されました。ロッシ博士は、カリコ博士の2005年の論文を読んで、即座に「これはノーベル賞に値する」と直感したと言います。

 ロッシ博士はカリコ博士と同じく、早くからmRNAの医療への応用を考えており、MIT(マサーチューセッツ工科大学)のロバート・ランガー博士を引き入れて研究を開始しながら、資金集めに奔走しました。クラウドファンディングの技法を使いましたが、資金集めと経営に大きな貢献をしたのは、フランスからCEOとして招いたビジネスマンのステファン・バンセル氏です。

 アメリカ政府は、国防省傘下の「DARPA」(防衛先端技術研究計画局)をとおして、2013年からモデルナに資金援助をしてきました。また、今回は、保健福祉省傘下の「BARDA」(生物医学先端研究開発局)をとおして、いきなり9億5500万ドルの補助金を出しました。

 モデルナも、2018年にナスダックに上場しています。まだワクチンを1つもつくっていないにもかかわらず、「ユニコーン」(スタートアップしてからの10年以内で企業価値が10億ドル以上になる企業)となり、いまやその株価の時価総額は9000億ドル(約9兆9000億円)に迫っています。

■今年か来年のノーベル賞の最有力候補

 イギリスの「ガーディアン」紙は、「研究者としての環境を求めてクマのぬいぐるみにわずかなお金を隠してアメリカに渡った研究者が、いまではノーベル賞の有力候補と言われている」と、賞賛しました。

 NHKのインタビューで、カリコ博士はこう語っています。
「物事が期待どおりに進まないときでも、周囲の声に振り回されず、自分ができることに集中してきました。私を『ヒーローだ』と言う人もいますが、本当のヒーローは私ではなく、医療従事者や清掃作業にあたる人たちなど感染のおそれがある最前線で働く人たちです」

 


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我々が注意しなければならないのはスタジアム周辺だ

2021年07月03日 07時18分24秒 | Weblog

WHO幹部、欧州での感染再拡大を警告 交流の増加などが要因と
(2021年7月2日BBC NEWS)

 世界保健機関(WHO)のハンス・ クルーゲ欧州地域事務局長は1日、欧州での新型コロナウイルスの感染状況について、約2カ月にわたり減少傾向にあったがこの1週間で感染者数が約10%増加したとし、新たな感染拡大のリスクが高まっていると警告した。

 クルーゲ氏は新型ウイルスのワクチン展開が停滞していることや、新たな変異株、社会的交流の増加などにより、新たな感染拡大のリスクが高まっていると指摘した。
 また、サッカー2020年欧州選手権(ユーロ2020)が「スーパー・スプレッダー」になり得る危険性もあるとした。ユーロ2020をめぐっては英スコットランドで先月、試合観戦やイベント参加を1回以上した人のうち1991人の感染が確認された。ロンドンやロシア・サンクトペテルブルクから帰国した数百人がウイルス検査で陽性となった。
 WHOで緊急対応を担当するキャサリン・スモールウッド氏は、試合の開催都市に対し、ファンの移動を監視するためのさらなる対策を求めた。

 スモールウッド氏は「我々が注意しなければならないのはスタジアム周辺だ」とし、「試合後に何が起きているのか。観客が混雑したバーやパブに行っているのかどうか」を注視するために、試合前後の移動の監視が重要だと言及した。

■デルタ株の感染者が増加
 インドで最初に確認された新型ウイルスの変異株「デルタ」は、欧州の多くの国で感染拡大の最大の脅威だと捉えられている。欧州連合(EU)の疾病管理機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、デルタ株が8月末までに感染の90%を占める可能性があると予測している。
 ロシアではこの3日間で記録的な死者数が確認されている。1日だけで672人が死亡し、2万3543人が感染した。首都モスクワでの新規感染者のほとんどはデルタ株に感染しており、保健当局は欧州で新たに特定された変異株「 デルタ・プラス」も確認されているとしている。

 ユーロ2020の開催地であるサンクトペテルブルクでは、準々決勝(スイス対スペイン)前夜の1日、過去24時間に死亡した人の数が115人となった。
 フィンランド保健当局は6月21日にサンクトペテルブルクから帰国したファンのうち約400人の感染が確認されたことを受け、ロシアへの渡航を控えるよう呼びかけた。

■「無責任な」UEFA
 欧州サッカー連盟(UEFA)はドイツのホルスト・ゼーホーファー内相に「無責任」との烙印(らくいん)を押された。ゼーホーファー氏は、サポーター同士がハグをするなどしたことがウイルスの拡散につながったのは明らかだと指摘。特に、準決勝と決勝でブダペストとロンドンのスタジアムに約6万人のサポーターを入れたことを批判した。
 「なぜUEFAが分別のある対応をしないのか、私には説明できない。(中略)私は、商業主義のせいではないかと思っている」と、ゼーホーファー氏は記者団に述べた。UEFA側は、スタジアムへのファンの動員数を決めるのは「管轄している地元当局の責任」だと主張している。

 スコットランド公衆衛生庁(PHS)は6月30日、同18日に開催されたスコットランド対イングランド戦のため、ロンドンに移動した人のうち1294人が感染していたと発表した。また、そのうちの397人は試合が行われたロンドンのウェンブリー・スタジアムの中で、試合を観戦していた。
 イギリス全体では1日、1月以降で最多となる2万7989人の感染が確認された。同国では成人の62.7%が2回のワクチン接種を完了している。
 ポルトガルでは新規感染者の増加幅が2月以降で最大となり、2日からリスボン、ポルトなどで夜間外出禁止令が出されている。
 20代の発症率が急増しているスペインでは、人口10万人あたり最大366人が感染している。
 ドイツでは今月、デルタ株が感染の70%以上を占めると予想されている。すでにデルタ株が拡大しているイギリスやポルトガルからの渡航者に対する隔離措置を緩和する可能性がある。

■ワクチン接種の状況は
 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月30日、国民に対し、ワクチンを接種するよう呼びかけたが、これまでに1回の接種を受けた人は16%にとどまっている。
 モスクワの診療所ではブースター(追加免疫)接種を開始したが、地元メディアの報道によると、少なくとも1種類のワクチンの在庫がなくなってしまったという。
 WHOの クルーゲ欧州地域事務局長によると、中央アジアを含むWHO欧州地域事務局の管轄地域では、予防接種を受けた人は24%にとどまっており、高齢者の半数と医療従事者の40%が感染に対して無防備な状態にあるという。


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