ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

画期的治療薬(ブレークスルー・セラピー)の意味

2021年06月29日 06時35分25秒 | Weblog
 
エーザイのアルツハイマー薬レカネマブ、FDAが画期的治療薬に指定
 
2021年6月24日 6:00 JST  Bloomberg
米バイオジェンと開発、第3相試験を実施中 
脳からアミロイド除去する仕組みの新薬では2つ目 
 
 エーザイと米バイオジェンは23日、米食品医薬品局(FDA)がレカネマブ(開発コード:BAN2401)をアルツハイマー病の画期的治療薬(ブレークスルー・セラピー)に指定したと発表した。レカネマブは現在、第3相試験が実施されている。
 アルツハイマー病患者の脳内に蓄積したアミロイドβ(ベータ)と呼ばれる物質を取り除くことで認知機能の低下を遅らせる仕組みの両社の薬としては2つ目。アデュカヌマブ(製品名「アデュヘルム」)は今月、FDAに承認された。
 
 発表資料によると、画期的治療薬への指定は、軽度認知障害(MCI)あるいは軽度アルツハイマー病の患者を対象とした第2相試験の有望なデータに基づいて行われた。早期アルツハイマー病の症状がある1795人の患者を対象とした第3相試験は2022年9月末までに完了する見込みという。
 画期的治療薬は深刻ないし生命に関わる病気の治療薬の開発・審査を迅速化するための制度。指定を受けた新薬候補がFDAに承認されることを意味するものではなく、実際に画期的だと既に判断されたわけではない。

 


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レカネマブ、米食品医薬品局(FDA)から画期的な新薬候補に指定

2021年06月29日 06時15分14秒 | Weblog

エーザイ、認知症薬候補 米当局が優先審査へ

2021年6月24日 10:51 日本経済新聞WEB


 エーザイは24日、米バイオジェンと共同で開発するアルツハイマー病治療薬候補「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)から画期的な新薬候補に指定されたと発表した。審査期間が従来の10カ月から6カ月程度に短縮される。現在は最終段階の臨床試験(治験)を進めており、2023年3月期中にも承認申請をする可能性がある。

 レカネマブはエーザイが07年から開発に取り組むアルツハイマー病治療薬候補。14年からは早期のアルツハイマー病患者を対象に有効性を探る第2相治験が実施された。投与量の多い患者の8割で原因物質とされる「アミロイドベータ」が大きく減少したという。症状の悪化も、投与しなかった場合に比べて3割抑制できた。
 FDAの指定を受けたことで、審査期間の短縮に加え、承認申請前から開発計画への助言を受けられるなどのメリットがある。エーザイは最終段階の治験を日本、米国、欧州などで進めており、22年9月末までに結果が出る見込みだ。その後データの有効性を確認し、23年3月期中にも承認申請に進む可能性がある。
 7日には別のアルツハイマー病治療薬「アデュヘルム(一般名アデュカヌマブ)」でFDAの承認を取得している。アデュヘルムはレカネマブと同様にアミロイドベータを減少させる効果があるとされている。


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東京五輪はなぜ・・・?(2)

2021年06月29日 05時46分58秒 | Weblog

五輪・パラ組織委新任理事アンケート 白石弥生子 東京都障害者スポーツ協会会長の回答全文
2021年6月26日 20時40分 東京新聞TOKYO WEB


 本紙実施の、東京五輪・パラリンピック組織委員会の新任理事12人(全員女性)に対するアンケートに回答した4人のうち、白石弥生子 東京都障害者スポーツ協会会長の回答全文は以下の通り。

  ◇     ◇     ◇
 今回のアンケートの質問には、組織委員会として方針を出している事項、また今後の状況を見て方針を出す事項があり、そのことに理事がアンケートで個人的意見を述べるべきではないと私は思います。(問1,2,3,7)
 問6については、議事録で発表されるもので個人的に感じたことを述べるべきではないと私は思います。
その他の質問について、回答できる範囲で回答します。
 
◆問4
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら医療専門家が、開催時のコロナウイルス感染拡大について懸念を表明していますが、どう考えますか?
 □懸念はない  □やや懸念がある  □非常に懸念がある  ☑その他
理由:
 色々な立場の医療専門家が示されている(又これから示される)見解は、真摯に受け止めることが必要と思います。
 
◆問5
国内で新型コロナウイルス感染症が広がる中で大会を開催する意義が、国民に伝わっていると考えますか?
 □大いに伝わっている  □ある程度伝わっている  ☑あまり伝わっていない  □全く伝わっていない  □その他
理由:

◆問8
大会後に国内の新型コロナウイルスの感染状況が悪化した場合、理事会は責任を問われると考えますか?
 □問われる  □問われない  ☑その他
理由:
 法的知識が十分ではないため、分かりません。

◆問9
大会の開催経費は1年延長とコロナ対策で膨らみ、現在は約1兆6000億円とされています。しかし、チケット収入の減少やコロナ対策費の増加で、赤字も懸念されています。収支の見通しについて、どう考えますか?
 □良好だ  □やや懸念がある  ☑非常に懸念がある  □その他
理由:
 
◆問10
理事会は今春、12人の女性理事が新たに加わり、体制が一新されました。理事会の議論や決定に、新理事の意見が反映されたと考えますか?
 □常に反映された  ☑やや反映された  □あまり反映されなかった  □全く反映されなかった  □その他
理由:
 
◆問11
新しい理事として、組織委をどう変えようとしてきましたか。試みや成果を自由にお書きください。
 理事に選任された時期は、既にこの事業の最終段階でした。これまでの経緯(組織の全容、他関係機関との関係、計画と実績、予算・決算など)を詳細に把握することは私には困難です。その上で、私は理事会において、自分が感じている疑問や意見を発信するよう心掛けています。
 また、今回の理事選任で特に私たちに期待されたのは、東京2020大会を機に、日本社会が多様性を認める社会に変わることだと思っています。ダイバーシテイ&インクルージョン社会に向けてムーブメントを起すことについての意見交換の機会に参加し意見を言っています。


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東京五輪はなぜ・・・?(1)

2021年06月29日 05時26分11秒 | Weblog

五輪・パラ組織委新任理事アンケート 來田享子 中京大教授(スポーツ史)の回答全文
2021年6月26日 20時41分 東京新聞TOKYO WEB


 本紙実施の東京五輪・パラリンピック組織委員会の新任理事12人(全員女性)に対するアンケートに回答した4人のうち、來田享子
らいたきょうこ
教授(スポーツ史)の回答全文は以下の通り。

  ◇     ◇     ◇
◆問1
大会で来日する海外選手・関係者の人数を削減し、約9万人としましたが、どう考えますか?
 □妥当だ  □もう少し削減するべきだ  □大幅に削減するべきだ  ☑その他
理由:
 このアンケートにおける「もう少し」「大幅」という言葉が具体的にどのようなレベルを指しているのかよくわからないので、「その他」とした。従来の大会規模に対して、現状でもかなりの削減にはなっているが、削減すべき人数は、感染拡大状況や感染予防対策との兼ね合いから、可能な限りリスクが減るように検討される必要があると考えている。
 
◆問2
大会の新型コロナウイルス感染防止対策について、どう考えますか?
 □妥当だ  □やや懸念がある  ☑非常に懸念がある  □その他
理由:
 新型コロナウィルスは、どこまでやっても100%の正解がわからず、さらなる知見の蓄積が必要な相手だと思う。大会が終わるまで、常に、非常に懸念がある、という構えで取り組むことが重要なのではないか。
 
◆問3
大会の医療従事者の人数を見直し、1日最大医師230人、看護師310人としましたが、地域医療への影響についてどう考えますか?
 □影響はない  □やや影響がある  □非常に影響がある  ☑その他
理由:
 自身の周囲にも参加する医師がいるが、この方たちは、整形外科の専門医を中心に、日頃からスポーツドクターとして活動している方である。日常的な医療への影響はないとご自身が判断されているのではないかと考えている。看護師に関しては、影響の有無について判断できる根拠を持ちあわせていない。医師・看護師はそもそも人々の生命を守る仕事であるため、地域における感染が拡大し、地域医療に影響があると判断すべき状況下では協力することができず、上記の人数での運営はできなくなるかもしれない。
 
◆問4
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら医療専門家が、開催時のコロナウイルス感染拡大について懸念を表明していますが、どう考えますか?
 □懸念はない  □やや懸念がある  ☑非常に懸念がある  □その他
理由:
 この間、メディアで提供される専門家の判断にも、様々な見方があり、見解には温度差があるように見受けられる。感染症の医療専門家だけでなく、人流に関するシミュレーションなどを行える専門家などの学術的知見を得て、懸念される状態を最大限に見積もって大会の準備を行うべきだと考えている。こうした対応は、コロナ禍でのオリンピック・パラリンピック大会だけのことではなく、危機管理の観点では常識だと考えている。
 
◆問5
国内で新型コロナウイルス感染症が広がる中で大会を開催する意義が、国民に伝わっていると考えますか?
 □大いに伝わっている  □ある程度伝わっている  □あまり伝わっていない  □全く伝わっていない  ☑その他
理由:
 開催の招致段階から、オリンピック・パラリンピックにおける大会が理念を持つ国際的な社会運動の一部であることは、メディアでもほとんど報じられてこなかった。新型コロナウィルスの感染症という特殊な事情がないような、いわば平時の状況下で、日本の市民にとって大会の意義は何か、という共通理解がなされ、その上で招致することが決定される必要があった。問5の質問の前提として、大会開催の「意義」に関する理解があってはじめて、新型コロナウィルスの感染症拡大という新たな条件を加えた中での「意義」に関する議論は成立するように思う。
 大会を開催することによって、オリンピック・パラリンピックという社会的な運動に参画することの意義は、他者から伝えられるものではなく、主体的にとらえるはずのものであり、また主体的にとらえることができるよう、大会関係者は働きかけるべきだと思う。その働きかけとは、意義に関する「正解らしき」言葉を述べることではないと考えている。この大会にどのような意義があるのか、意義はないのか、意義はないから返上すべきではないか、という対話の中から、日本の市民にとっての大会の意義は生み出されていくのではないだろうか。繰り返しになるが、本来ならば招致段階でなすべきことだったと思う。そうした理解に立てば、大会開催まで40日という時期になってのこの質問(問5)自体が、空虚なものにも感じられる。
 
◆問6
大会開催に反対する世論、専門家の懸念が強い中、理事会は延期や中止についても議論しましたか?
 □議論した  □議論しなかった  ☑その他
理由:
 理事会では延期や「中止」に触れる発言はあった。延期については、市民やスポーツ界に与える様々な影響を勘案すれば、難しいという理解がなされている。また、メディアの方から「中止」という言葉でお尋ねをいただくことが多いが、開催都市契約上、日本の政府・東京都は「返上」を申し出ることはできるが、中止の決定はIOCによるものであることが理解される必要がある。その意味で、理事会において「中止」という言葉を用いた方は、オリンピック大会の仕組みを十分に理解していない可能性があると受け止めた。
 組織委員会は、大会の準備と運営に携わる組織であるため、どのような手立てをとったとしても開催ができない(たとえば、新型コロナウィルスの感染拡大がなかったとしても、大規模な災害やテロ行為が発生することはあり得る)と判断した場合に「返上」を申し出ることはできると考えている。現段階では、どのような手立てをとったとしても開催ができない、とまでは言い難いため、返上に関する議論は出ていない。
 
◆問7
大会の開催可否について、どう考えますか?
 □観客を入れて開催するべきだ  □無観客で開催するべきだ  □延期するべきだ  □中止するべきだ  □感染状況を見て判断するべきだ  ☑その他
理由
 前回までの理事会では、状況判断のためのさらなる情報の収集と公表、政府との相談、メディアを通じての市民との対話を行うとのことであった。感染症対策ラウンドテーブルもまだ開催される予定であるため、それらの情報を得て、自分なりの考えは固めたい。
 個人的には、無観客という選択肢は否定していない。日々の努力を積み重ねた若者が、互いの努力を讃え、さらに自らを高めるために世界から集まり、そのような次世代の姿を世界が祝福する、ということが、オリンピック憲章におけるオリンピック・ムーブメント上の大会の位置づけである。この解釈からすれば、観客が自宅でテレビを通してその姿を共有するという方法でも、大会は一定の役割を果たすことができると考えている。また、個人的な選択肢としては、「延期するべき」という選択肢は持っていない。一方で、組織委員会が「返上するべき」という選択肢も現段階では否定するものではなく、国内外で変異ウィルスが拡大することにより、これまでの感染防止対策の知見ではコントロールが難しい状況が発生したら、返上もあり得ると考えている。選択肢のうち「感染状況を見て判断」というような心の構えでは、これだけの大きなスポーツイベントに関する判断が遅れると思うので、この選択肢を選ぶことはないと思う。
 
◆問8
大会後に国内の新型コロナウイルスの感染状況が悪化した場合、理事会は責任を問われると考えますか?
 ☑問われる  □問われない  □その他
理由:
 これまでの理事会の様子から、理事は、組織委員会という組織が準備してきた内容をほぼ追認する形式のことが多く、理事会はそれに対してアドバイスをする、という役割を担っているように思われる。感染状況に対する観客上限の決定は、日本の国民の命を守る観点から、最終的には政府の判断に委ねられると思うが、感染状況の悪化に対しては、理事会は道義的責任を問われてもいたしかたがないと思う。
 その思いでこれまでも意見は述べてきたつもりである。
 
◆問9
大会の開催経費は1年延長とコロナ対策で膨らみ、現在は約1兆6000億円とされています。しかし、チケット収入の減少やコロナ対策費の増加で、赤字も懸念されています。収支の見通しについて、どう考えますか?
 □良好だ  □やや懸念がある  ☑非常に懸念がある  □その他
理由:
 延期前に予定されていた開催経費の詳細を把握できていないため、一市民の感覚として、当初の予定よりは支出が大きくなっているだろうとは考えているが、そのために補填された費用の範囲の中で準備・運営するのが組織委員会の仕事であると考えている。
 
◆問10
理事会は今春、12人の女性理事が新たに加わり、体制が一新されました。理事会の議論や決定に、新理事の意見が反映されたと考えますか?
 □常に反映された  ☑やや反映された  □あまり反映されなかった  □全く反映されなかった  □その他
理由:
 理事会での新理事の発言に対しては、翌回の会議で多くの場合、フィードバックがあることから、意見を述べて終わりになっているという感触ではない。ただし、多くの国内外の組織や企業等との関わりの中で、新型コロナ感染症対策を行いながらの準備を進めなければならない関係上、理事会で報告があった段階では、変更しづらい内容もあり、やむを得ず反映されないこともあると考えている。
 一方で、ジェンダー平等やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のムーブメント活動に関しては、理事に対する丁寧な聞き取りや有志による個別のミーティングでの意見聴取などが行われており、かなり反映されるようになってきたと思う。
 以上のように、内容によって反映されやすいことと、反映されにくいことがあるため「やや反映された」と回答した。
 
◆問11
新しい理事として、組織委をどう変えようとしてきましたか。試みや成果を自由にお書きください。
 まずは自分自身がオープンに議論を行う姿勢を示すこと、他の理事の考えに耳を傾けることを実践しようとした。それを受け入れる雰囲気が橋本会長や武藤事務総長、従来からの理事の方たちにはあったので、理事会は長くなっても、各自が意見を述べることができている。これについては、私個人だけでなく、多くの理事が組織委を変えようとした結果だと考えている。
 ジェンダ-平等とダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のムーブメント活動においては、担当部署に自ら頻繁に情報提供をするなど、積極的にコミュニケーションをとろうとしてきた。多くの新理事が自分の専門性をどう活かせば良いか考え、組織委にコンタクトをとってきたと聞いているので、同じ思いの方は多かったのではないかと思う。その結果として、小谷実可子スポーツ・ディレクターをリーダーとするジェンダー平等チームやD&Iのチーム、有志の理事やその他の関係者が相互にミーティングを開催する動きも発生している。
 個人的には組織委の理事でありオリンピック史の研究者であるという双方の視点から、メディアからの取材依頼にはできるだけお応えするように心がけている。着任した際に、組織委員会が何をしているのかよくわからない、情報がない、という意見をたくさん聞いたし、自分自身もそう感じていた。一人の力は小さいかもしれないが、少しでもそうした状況は改善したいと考えて取り組んでいる。また、取材依頼に応えることで、多角的なものの見方を見失わないで、組織委にフィードバックすることもできると考えている。


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我々が手にするアルツハイマー病に対する最初の治療薬

2021年06月29日 04時55分13秒 | Weblog

アルツハイマー病新薬アデュカヌマブ 開発責任者は語る=下山進

2021/6/22 05:00(最終更新 6/22 05:00) サンデー毎日


 アメリカの製薬会社バイオジェンの開発部門の最高責任者アルフレッド(アル)・サンドロックは、米国時間の6月7日の午前11時、その報せをうけたあと、涙が止まらなかった。
 アルは、その日自宅にいた。そこにFDA(米食品医薬品局)とのやりとりをしている部署の女性からのメールが入ったのだった。
「承認された!」
 アルツハイマー病の進行そのものに直接介入する初めての疾患修飾薬「アデュカヌマブ」が承認された。
 私は、アデュカヌマブの開発にいたる、アルツハイマー病の治療法開発の歴史を今年1月に『アルツハイマー征服』という著書にまとめていた。アルも、取材をした一人だ。
 このアデュカヌマブという薬は難産の薬だった。
 そもそもの始まりは、1996年、サンフランシスコの医療ベンチャー「アセナ・ニューロサンエンス」の科学者デール・シェンクの天才的な閃(ひらめ)きによるものだ。
 そのころまでにアルツハイマー病が起こる原因について「アミロイドカスケード仮説」というものが有力になっていた。
 それは、アルツハイマー病というのがドミノを倒すようにして起こるというもので、最初に、脳内にアミロイドβというタンパク質がたまる。それがたまっていくとβシート構造状に固まり神経細胞の外に付着してくる。これがアミロイド斑(老人斑)というものだ。ついで神経細胞内でタウというタンパク質が固まって糸くず状の「神経原線維変化」というものになる。そうすると神経細胞が死んで脱落していく。すると、認知症の症状が出てくる。
 デールは、このドミノの最初の一枚を抜けば、あとのドミノは倒れないのではないか、と考えた。しかも、その抜き方をワクチンという方法を使って抜けないかと考えたのだ。
 アミロイドβそのものを人体に注射をすれば、それに対する抗体ができて、アミロイド斑は分解されるのではないか。
 そして実際に、アルツハイマー病の症状が出るマウスを使って実験をしてみると、アミロイド斑はきれいさっぱり消えたのである。
 人類は初めてアルツハイマー病の進行を逆にした! この実験の結果が、ネイチャーの1999年7月8日号に掲載されると、科学コミュニティーを超えた大反響となる。
 バイオジェンに入社して2年目のアルも、このデールらの論文を読んで、アルツハイマー病の創薬をやってみようと思ったのである。
 デールが開発したワクチン「AN1792」は治験の過程で、急性髄膜脳炎という深刻な副作用が発症してしまい、開発は中止される。
 ワクチンが有害なのであれば、そこで生まれる抗体そのものを直接投与すればいいという考えの第二世代の抗体薬も、失敗につぐ失敗だった。
 デールの会社はその治験の失敗から、開発部門が閉じられ、会社自体も他社に吸収されてしまう。デール自身もすい臓がんを発症し、2016年には逝去する。
 アルツハイマー病の治療薬の開発は、未踏の山の頂(いただき)をアタックするのに等しい。様々な隊が様々な登攀ルートから山頂を目指す。ある隊は途中で遭難し、またある隊は引き返す。捏造事件を起こし自壊する隊もあった。が、そうした先行した隊が踏み固めた登攀ルートを見ながら後に続く隊は頂を目指した。
 アルもその一人だった。アルはデールの失敗した治験を注意深く見ていた。
 たとえば薬の用量。デールは治験をした時に起こった謎の副作用へのおびえから、薬の容量を1ミリグラムまで減らしていた。しかし、アルの時代にはその副作用がコントロール可能だということがわかってきていた。なので、最高用量を10ミリグラムまであげた。
 また、技術革新を最大限に利用した。アルの時代には、脳内のアミロイドβの量を微量の放射線を出す物質を標識とすることによって測るアミロイドPETという技術が開発されていた。これを使って、アミロイドβがたまっている本当の患者をスクリーニングした。デールの時代の治験に入った患者の実は2~3割はアルツハイマー病の患者ではなかったことが後にわかっている。
 こうした治験の設計が奏功し、評価項目を達成することができたのだ。
 6月15日の朝、Zoom越しに、アルは、デール・シェンクの名前をあげながら、「われわれは多くの先行する科学者の肩のうえに乗っている」という言葉の意味を振り返った。
 アルは、報せを受けてから1時間半止まらない涙の中で、なんで自分は泣いているんだろうと思った。会社につくと、苦楽をともにした同僚がハグをし、そして彼ら、彼女らも泣いていた。
 ただし、承認は条件付きだ。
 FDAはアミロイドの量を減らしたことは治験で証明されたとしたが、認知機能への効果は証明していないという判断。薬を市販していいとする一方、もう一本治験を課すことを承認の条件とした。その治験で認知機能に対する効果が証明できなければ、「承認を取り消す場合もある」(FDAのレター)。
 頂は、まだはるか先だ。
 が、この承認で、患者とその家族はアルツハイマー病に対する最初の薬を手にすることができる。そしてこの薬が使われることで様々なことがまたわかってくるだろう。


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黙っていては取り残される。発言しないと生き抜けない(三浦知良)

2021年06月15日 14時11分09秒 | Weblog

サッカー人として
(日本経済新聞WEB  2021年6月4日 5:00 )

 サッカーに関することなら、何であれ質問には応じるべきだと思ってきた。会見という場を与えてもらえることは、喜ばしく、幸せなのかもしれないな、と。
 そうはいっても意地悪な質問にも遭うし、誘導尋問で嫌な気持ちになりもする。これは会見自体が悪なのではなく、やり方や仕切り方の問題なのだろうね。
 人前でしゃべること自体が苦手な選手もいる。それでいて何万人もの前でプレーするのは平気な人もいて、不思議な心理バランスにも思えるけれど、それだけ人の心は多様なんだよ。
 会見を肯定的に見られるのは、僕がネット社会に深く関わっていないからかもしれない。今や一つの言葉への反応が多すぎて、ひとりで受け止められる限度を超えている気がする。批判も評論も過剰、一つの発言で犯罪者扱いされかねない。こうなると言葉をものすごく選ぶようになる。みんな、本音を言わなくなる。差し障りのないやり取り。
 そりゃ、会見は面白くなくなるよね。30年前ならプライベートは一切答えない人もいて、会見での攻防もおおらかだった。「正直に語れない場だとしたら、やる必要性を感じない」という声も、あるんだろうね。
 僕自身はブラジルで戦うことで、コミュニケーションの場数を踏むことができた。黙っていては取り残される。発言しないと生き抜けない。監督からの「FWは守備も助けろ」との指示を日本人なら「分かりました」と聞くだろうけど、あちらでは「俺はやらない」と主張する人間が必ず出てくる。「そればかりでは俺が点を取れない。取れなければたたかれ、誰も助けてくれない。誰も褒めない。だから俺は得点に集中する」。なかなか言えないよ、こんなむき出しの本音は。
 おびただしい言葉が飛び交うのに、ネット上に本音は実は少ないという指摘もある。一方で誹謗(ひぼう)中傷の多くは本気で発せられてはいないらしい。軽い一言が巡り巡って人を追い詰める。言葉の怖さを、僕らはコントロールすべきなんだろう。
「気が沈むし、人にも会いたくないよ。どうもメンタルが……」。あるとき親族にぼやいたら、あきれられた。「あなたは心の問題というより、適応しすぎ症状よ」
 どういうことなのかね、まったく。僕だって話したくないときもあるよ!
(元日本代表、横浜FC)


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ただ楽しんで続けなさい・・・

2021年06月11日 03時59分26秒 | Weblog

彼女は私に、ただ楽しんで続けなさいって言ったでしょうね。勝っても負けてもいいから、コートに立つたびにベストを尽くして、テニスに集中して、ただプレーすればいいのよって・・・。これだけの活躍をして、これだけ試合に勝った私に、彼女だったらなんて声をかけてくれるかなっていつも思います。もう彼女の声を聞けないことや、彼女に話しかけてもらえないことがとても悲しい。彼女は、私がこれだけ高いレベルでプレーできること、こういう試合でも戦えることをずっと知っていたような気がします。でも、それがもっと早くに実現しなかったのがすごく残念です。このような試合をしたいと、ジュニアの頃から思ってきました。そして、今日、できました。もし負けていたとしても、私は、今日の自分を誇りに思います。人生と同じように、戦い続けることが、いちばん大切なことですから。


(6月10日、全仏オープンテニス準決勝で3時間18分の熱戦を制して、ノーシードから初の決勝進出を果たしたバルボラ・クレイチコヴァ・・・今は亡き恩師・ノボトナ=1998年ウィンブルドンの覇者で、2017年にがんとの闘いの末に49歳で死去=に触れて・・・)


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