ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

あなたの子供は、

2021年08月29日 03時19分58秒 | Weblog

あなたの子供は、あなたの子供ではない。

彼等は、人生そのものの息子であり、娘である。

彼等はあなたを通じてくるが、あなたからくるのではない。

彼等はあなたと共にいるが、あなたに屈しない。

あなたは彼等に愛情を与えてもいいが、あなたの考えを与えてはいけない。

何故なら、彼等の心は、あなたが訪ねてみることもできない、

夢の中で訪ねてみることもできない明日の家に住んでいるからだ・・・。

(カリール・ギブラン/レバノン出身の詩人)


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ワクチン接種を終えた人もウイルスを他人に感染させる

2021年08月27日 21時33分55秒 | Weblog

デルタ株、ワクチン接種後感染者も感染広げる可能性、証拠を確認

鼻腔で増殖する新型コロナウイルスの量も感染性も未接種者と同等、予備的研究

(2021.08.24 NATIONAL GEOGRAPHIC)

 

 新型コロナウイルスのデルタ株は、規定回数のワクチンを接種した人の鼻腔でも、ワクチンをまったく接種していないときと同じように増殖しうることが、8月11日付けで発表された予備的研究の実験で確かめられた。増殖したウイルスが人に感染しうる点についても同程度だった。

 つまり、ワクチン接種を終えた人もウイルスを他人に感染させる可能性があるということだ。その可能性はあるだろうとこれまで多くの専門家が考えていたものの、実験で証明されてはいなかった。

「私の知る限り、ワクチン接種が完了した感染者(の試料)からヒトに感染するウイルスが培養されうることを示したのは、私たちが初めてです」と、米ウィスコンシン大学のウイルス学者で、今回の論文の著者の一人であるケイスン・リーマーズマ氏は語る。論文は、査読前の論文を投稿するサイト「medRxiv」で公開された。

 以前からインド、米マサチューセッツ州プロビンスタウン、およびフィンランドの病院でそれぞれ実施された研究でも、デルタ株にブレイクスルー感染(接種後感染)した場合、感染者の鼻に高濃度のウイルスが存在しうることは示されていた。そのため次に確認すべきことは、ワクチンを接種した人も、感染力のあるウイルスを排出するのかどうかだった。

 デルタ株は極めて感染力が強く、免疫を回避してしまうため、「非デルタ株に比べてワクチン接種後のブレイクスルー感染が起きやすくなっています」と、英ケンブリッジ大学の微生物学者、ラビンドラ・グプタ氏は話す。グプタ氏の研究室は、ワクチン接種を完了した医療従事者もデルタ株に感染することがあり、その鼻に高濃度のウイルスが存在することを最初期に報告したグループの一つだ。

 ウィスコンシン大学の研究結果が正しければ、ブレイクスルー感染した人は、その多くが発症しないまま、知らずにウイルスをまき散らすかもしれない。「これは警戒すべき発見です」と、今回の研究を主導したカタリナ・グランデ氏は説明する。氏は「マディソン市およびデーン郡新型コロナデータチーム」のリーダーを務める公衆衛生管理者だ。

 米スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・トポル氏は、デルタ株に感染したワクチン接種完了者が、発症前あるいは発症せずにウイルスを他人に感染させること、そしてこれが従来株よりも高い確率で起こりうることを懸念する。「ですから、ワクチン接種を受けた人にとっても、マスクの着用と感染対策は重要です」

 今回のような研究は、デルタ株が現在推定されているよりはるかに高い割合で拡大しうることを強調するものだと、米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの最高公衆衛生責任者(CPHO)イーサン・バーク氏は言う。3月25日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された氏の研究は、たとえ予備的であってもすぐに結果の出る検査を頻繁に行うことが、新型コロナの感染拡大を抑える上で非常に効果的であることを示している。なお、氏はウィスコンシン大学の研究には参加していない。

「今回の研究は1地域におけるものとはいえ、ワクチン接種を完了しているか否かにかかわらず、人から人へウイルスが感染する可能性について重要な知見を与えてくれます。このような知見が、特に検証および精緻化されてゆけば、組織が検査やソーシャルディスタンスの確保、ワクチン接種等に関する方針を立てる際に非常に役立つでしょう」とバーク氏は述べている。

■試料中のウイルスに感染性があるかを調べるには

 科学者らは、鼻腔内にあるウイルスのRNAの量を調べるために、Ct値と呼ばれる基準値を採用した(編注:Ct値は、PCR検査でウイルス遺伝子を増幅させる際に、その量が一定値に達するまでに要した増幅回数。つまり、Ct値が低いほど検体中のウイルス遺伝子の量が多い)。

 Ct値はウイルス量、つまり体内のウイルス粒子の数と関連する。ウイルス量が一定の値を超えると、感染者はウイルスを排出して他の人を感染させる可能性があると研究者らは推測する。

「新型コロナウイルスは鼻と上気道に感染します。ここは多量な抗体を長期間にわたって得ることが大変難しい場所です。免疫系は、これらの部位に高いレベルの量の抗体を作るようにはできていません」とグプタ氏は述べている。

 ウィスコンシン大学の研究では、いずれも検査で陽性反応を示したワクチン未接種の人とワクチン接種を完了した人、計719人を対象に、検査に使用した鼻腔用綿棒を分析した。その結果、対象となったブレイクスルー感染者の68%はCt値が25未満、つまりウイルス量が非常に多かったことがわかった。これは体内でウイルスが複製されている徴候だとグプタ氏は説明する。

 検体の鼻腔用綿棒に感染性のあるウイルスが存在するかどうかを確認するため、研究者らは、いずれも検査で陽性反応を示したワクチン接種済みの人と未接種の人、計55人の試料から採取したウイルスを、新型コロナウイルスに感染しやすい特殊な細胞内で培養した。その結果、ワクチン未接種の人の88%、接種済みの人の95%という、全員に近い人の試料で感染性のあるウイルスが検出された。

「試料を細胞に接触させると、感染した細胞は死にます。これは、そこにウイルスが存在し、感染性があることをはっきり示しています」とリーマーズマ氏は説明する。

 ワクチン接種を完了した人も大量の感染性ウイルスを作り出すとしたら、ワクチン接種を受けていない人と同じくらいウイルスを広める可能性があることになる。

■感染予防にはマスクとワクチンを

「現在は、感染性の非常に高い変異株の出現、免疫のない人の多さ、マスク着用をめぐる対立など、悪いことの重なった最悪の状況です」とグランデ氏は言う。

 米疾病対策センター(CDC)は、8月16~22日において米国の95.65%の郡で新型コロナの市中感染の危険が「やや高い」または「高い」としている。CDCが定義する「高い」とは、その郡の過去7日間の新規感染者が10万人中100人以上か、検査の陽性率が10%以上であることをいう。そのような地域ではデルタ株の感染から最大限に身を守り、また他の人に感染を広げることを防ぐために、室内で人前にいるときはマスクを着用するようCDCは推奨している。

 承認されたワクチンによって、新型コロナ感染症の重症化や死亡を防ぐことはできるものの、高齢者、免疫機能が低下している人、基礎疾患のある人では効果が大幅に低下する。

「デルタ株がどのように作用し、感染するのか、そして最終的にどうすれば家や職場、地域社会で身を守れるのかについて理解を深めるには、この変異株に関する情報がもっと必要です」とバーク氏は言う。「それがわかるまでは、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、定期的な検査やワクチン接種などの基本的な衛生管理が、感染のスピードを遅らせ、重症化や死亡を防ぐ上で引き続き重要な役割を果たすでしょう」


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歩く事と水分補給でエコノミー症候群を避ける

2021年08月27日 17時12分59秒 | Weblog

「家で歩いて」エコノミー症候群に注意

ーー感染症専門の矢野医師によるコロナ自宅療養の心得ーー

(2021・08・26 FNNプライムオンライン)

 感染症が専門の矢野邦夫医師(浜松医療センター感染症管理特別顧問)に新型コロナウイルスについてうかがいます。


◆感染者数のピークは?
Q26日の静岡県内の新規感染者数は548人でした。8月16日には感染状況について「まだ富士山の1~2合目」と答えていましたが、現在は何合目ですか。
矢野邦夫医師:
「まだ3合目。一日の感染者数は下がったようにみえるが高止まりしていて、いつまた上昇するかわからない。ピークはワクチ接種状況に左右されるので、かなり接種が進めば感染者が減ると思うが、今の段階では、どこにピークがくるかわからない。人の動きに左右されるので、外出や友人との食事などは控えてほしい」


◆緊急事態宣の効果は?
Q県内に宣言が発令されて1週間が経ちましたが、効果についてはどのように感じていますか。
矢野邦夫医師:
「新規感染者がこれまでのペースに比べ増えていないので効果があるようにみえるが、私の病院も含め臨床現場は、入院患者が増え満床に近く医療器具も不足し、緊迫が続いている」


◆自宅療養者の注意点は?
Q26日も浜松市で1人が死亡していますが、自宅療養中の場合、重症化をどう防ぎ、どのような体調の変化に注意すべきでしょうか。
矢野邦夫医師:
「このウイルスはエコノミー症候群を合併しやすい。家で安静にしていると、ふくらはぎに血栓(血の塊)ができ、それがちぎれて肺に飛んで呼吸ができなくなる。エコノミー症候群を防ぐには、まず家のなかで歩いて、歩けなければ足を上にあげるなどして、ふくらはぎに血栓ができないようにしてほしい。それと水分補給。このふたつがエコノミー症候群を避ける大きな手段」


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A Iが人間に勝つ時代の中で・・・

2021年08月27日 04時27分39秒 | Weblog

法務分野でも進むIT化&AI利用の未来

(2) 米国におけるAIリーガルテックの状況について 

 情報通信技術を利用したサービスを提供する企業は,世界的にも米国がけん引する状況にあり,世界の時価総額トップ 10 の企業のうち半数以上が米国のIT企業となっている。日本国内の法規制との関係でも,近時 GAFA と称される大手米国企業に対する独占禁止法の適用,プラットフォーマー規制の議論がされたことで,注目が 高まりつつある。 
 そして,リーガルテックについても,米国は,日本と比較して,主に弁護士や企 業法務部員で構成されるリーガルマーケットの規模(なお,英語でリーガルサービスを提供する他の国の市場の規模も視野に入れることができる)がそもそも圧倒的に大きいこと,また,シリコンバレーに代表されるようなスタートアップ企業とその支援をする VC などのエコシステムが整備されていることもあり,非常に多くのリーガルテック企業が存在している。以下に示す様々なサービスの類型ごとに記載をした「カオスマップ」は,サービスの種類が多く,かつ様々な企業が取り組んでい る状況が鳥瞰できるものとなっている。以下では,出典を 「https://catalyst.com/research_item/legal-tech-market-map/」とする海外で作成されたカオスマップで見られる企業について日本の状況も対比しつつ,そのサービスを紹介する。 
 カオスマップも開きながら,以下を読み進めていただきたいが,これらの企 業中には,AIに関連する技術を活用しているものも多く見られる。BtoB サービスすなわち,弁護士事務所又は企業法務部に提供するサービスから見ていきたい。 
 たとえば,「kira」や「Luminance」は,主に大手の企業法律事務所をターゲットとして,デュー・ディリジェンスやディスカバリーにおける文書解析を支援するツールである。米国では訴訟において大量の文書,メール等の電磁的記録を整理し,包括的に開示が求められ,これらの手続準則に違反した場合の制裁が重大であるというディスカバリー手続が存在するという特徴があり,従来から膨大な量の文書を分析するという需要があった。このため,大量の文書を自然言語処理などの技術を用いることによって分析し,一定の項目や問題点を抽出するという技術が普及している。なお,このような文書解析に関するサービスは,後記(3)でも述べるが,日本 国内の訴訟では必ずしも一般的に利用される状況ではないものの,例えば不正調査・対応の事案等では,日本でも利用が広まりつつある。 
 さらに,「LawGeex」はリクルートがファンドを通じて出資したことで日本でも話題となった,AIを活用して契約書を分析するサービスである。2018年に LawGeex のAIツールがベテラン弁護士 20 人と 5 通の秘密保持契約(NDA)のレビューで対 戦したところ,所要時間において,弁護士が 92 分かかったレビューについて, LawGeex は 26 秒でレビュー結果を出し,正答率においても,弁護士が85%であったのに対し,LawGeexは94%であったと報じられ,「ついに契約書の分野でもAIが人間に勝った」と大変な話題になった。日本国内ではAI技術を用いた新たなサービスの導入が遅れている面と,さらに日本語に対する自然言語解析の遅れもあり,まだ実際に類似するサービスが利用されている例は少ないが,後述のように,日本のスタートアップ企業も現れつつある。 
 さらには,「Seal」は,DocuSign とも連携し,会社のデータベースに格納された全ての既存契約書を条項単位でグローバル検索し,他の契約書と比較,さらに「自動更新の事前予告日」といったような項目の差分を抽出して表示するなど,契約書の管理において画期的なサービスを展開している。日本国内の法律事務所でも,部分的に文書管理用のソフトウェアを導入する事例は増えつつある。 
 そして,ROSS Intelligence は,IBM のコグニティブコンピュータ「Watson」をベースにした人工知能を活用し,依頼した調査内容を理解し,法令や判例のデータの中から関連するものを見つけ出して,推論し,根拠のある答えを返答するサービスである。当初は破産法に限定してサービスを提供していたが,現在では対応する法律分野を広げているようである。 
 こうした米国を中心とする海外のリーガルテック企業は,いずれも数千万ドル単位で資金調達を行っている。 
 また,消費者が利用できるようにする BtoC サービスとしては,英国出身の学生が開発した「DoNotPay」というサービスが,LINE のような会話形式のチャットに答え ることで,交通違反の反則金を取り戻すための異議申立て書類を作成するという機能を提供している。このサービスは,公開後 21 か月で 25 万件利用され,16 万件の異議申立てに成功したとされている。その後,米国 50 州におけるデータ侵害やフライト遅延や荷物の紛失における補償といった分野までサービスを拡大しているようである。日本では個別の法律事務所等が,例えば交通事故等の類型的に損害額の目安を判断できる訴訟について,部分的にその目安額を判定するサービスを部分的に提供しているにすぎない。 

 

(3) 日本におけるAIリーガルテックサービスの現状 
 日本においても,たとえば,企業不祥事における従業員のメールのチェックなどは,これまで弁護士が業務として行ってきた。しかし,株式会社 FRONTEO が提供する人工知能エンジン「KIBIT」が,メールの内容や文脈まで読み取って,不正に直接言及していなくても,不正を示唆したような内容のメールを抽出するという機能を提供している。この他特許の侵害調査や,コンプライアンス・チェックや,不適切なコミュニケーションなどを自動的にAIが判定し,抽出するプロダクトも存在する。身近な例では,クレジットカードの不正取引検知については,従来からニューラルネットワークが用いられており,比較的安定して運用がされているほか,例えば金融庁の実証実験ハブにおいて,問題行為のレビューの全部を人間が行わず,その一部をこのようなプロダクトの検証結果を前提として実施することも,業規制との関係で適法に実施し得るとの検証結果も公表されている。こうした自動ツールがアルゴリズムによってスコアを算出するので,人間は一定のスコアに達したメールなどだけを確認すれば,膨大な作業が圧倒的に効率的となり,作業時間を大幅に短縮することができるほか,内容にもよるがアルゴリズムによる作業が人間の作業よ りも高い割合で問題検出ができる場合もある。 
 また,契約書などの法律文書の作成やレビューについてもAIによる自動化が進みつつある。2018年には,GVA TECH 株式会社,株式会社 LegalForce といったAIによる契約書レビューサービスが,相次いで資金調達を行ったことが話題となった。 (GVA TECH は 1.8 億円,LegalForce は 5 億円(累計で 6.1 億円))。 
 GVA TECHが提供する「AI-CON」は,契約書のテンプレートも提供し,ドラフトからリスク判定,修正,交渉までをサポートするサービスである。契約書をアップロ ードすると,1 営業日以内にフィードバックが届き,契約類型の条項ごとに有利不利などを 5 段階で判定し,修正条文案を提供する。 
 他方で,「LegalForce」も同様にAIによる契約書レビューサービスであるが,こちらは,Wordのアドインとしてファイルそのものから直接操作することができることが特徴である。契約書の内容を,条項ごとに判定し,リスクがある場合にはアラートを出す。リスクに応じた修正条文案が提示されるので,これらを踏まえて Word ファイルを直接修正することになる。さらには,類似した契約であれば規定されている条項が抜け落ちている場合,これも提示するという機能を有している。また, 条項検索という機能も備えており,あらかじめ格納していた契約書の中から,必要となる条項を,検索して提示する。これによって,契約書ファイルをいくつも開いてお目当ての条項文案を探すという作業から解放されることになるだろう。 
 また,株式会社ロゼッタが提供するサービスは,機械学習を活用して法律文書や契約書を,短時間に高い精度で翻訳するものであり,既に多くの法律事務所や企業で導入されている。今や翻訳は人が行う作業ではなくなりつつあると言ってよいだ ろう。 
 さらに,大量の文書を分析して特定の事項を抽出するような作業や,新規取引に当たって過去に締結した契約書の中から抵触する条項を見つけ出す作業,大量の文書を単純に翻訳する作業は,往々にして膨大な時間とコストを費やすものである。 
 こうしたルーティーン作業を,現在の自然言語処理技術や機械学習を活用したサービスによって,遠くない将来においては,驚くほど短時間で正確に行うことが可能となるだろう。 
 こうした比較的単純なルーティーン業務は次々と自動化されていき,最終的には,人が行うのは最終チェックやさらにより高次の法的分析や,それらを元にした意思決定,もしくは対面での面談により,依頼者に納得や安心感を与えるためのやりとりなど,一部の業務に限定されていくものと思われる。 

(4) リーガルテックによってもたらされる構造変化 
 これまでの弁護士や法務部員は,法令や判例などの法律に関する専門知識を習得し,それらを用いて助言や回答を行うという形で一定の価値を提供してきた。しかし,今後はそうしたリーガルアドバイスについても,AIを補助的に用いて,最終的にはAIにより回答していくことが現実味を帯びてくるだろう。プログラムは,もちろん構造上の問題を含む場合もあるものの,大量のデータを高速で処理することが可能な上,長時間稼働しても疲れを感じることもなく,またケアレスミスをすることもない。したがって,大量のデータの処理や分析については,現時点でもプログラムが得意とする領域を中心に,人間がプログラムと競争をしても容易に勝つ ことはできず,今後はプログラムの利用に適する範囲がさらに拡大していくことが 想定される。 
(出典:BCG“How Legal Technology will change the business of law”) 

 ボストン・コンサルティンググループが発表した『Legal Tech Report 2016』と いう報告書では,法律事務所は,少数のパートナーが多数のアソシエイトを管理しつつ収益を上げてきたピラミッド型モデルから,パートナーの人数は変わらないものの,アソシエイトの一部がアウトソーシングやテクノロジーによって置き換わる ことによって人数が減少したロケット型モデルに変わっていくのではないかと予想されている。このような人の業務のうち,比較的単純な業務,反復して実施が必要な業務等が,人間ではなくプログラムないし機械により実施されてくるということは,法務分野だけではなく,その他の業界でも非常に広く生じていることである。 
 こういった状況を踏まえると,将来像においては,法律や契約のスペシャリストであるだけでは足りず,案件そのものをマネージャーとして推進するプロジェクト マネジメントスキルや,問題が生じた場合にそれを解決するスキルではなく,問題が生じないようにすることも含めて提案サービスを提供できるスキル,さらには,リーガルテックサービスを導入・活用することのできるテクノロジースキルが求められていくことと思われる。 
(第21回弁護士業務改革シンポジウム【第2分科会】 やっときた!もうすぐ実現,e裁判。 次はAI考えよう )より抜粋


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再掲:この1年余で最も信頼が置けると感じたCOVID-19症例報告

2021年08月27日 03時08分27秒 | Weblog

自衛隊中央病院:ダイヤモンド・プリンセス号患者の症例報告

2020年03月23日 07時11分21秒 | Weblog

自衛隊中央病院
からの報告:新型コロナウイルス 感染症(COVIDー19)について


 当院におけるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から搬送された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)104症例のまとめです。

背 景 
 当院は第一種感染症指定医療機関として、2020年1月30日より武漢からの帰国チャーター便の有症状搭乗者を皮切りにCOVID-19疑い症例及び確定症例の受け入れを行い、2020年3月5日までにダイヤモンドプリンセス号船内感染症例と都内探知症例を含む計112症例(うち1症例はPCR陰性であるが臨床診断)を経験した。このうち2月25日まで観察し、報告に同意の得られたダイヤモンドプリンセス号からの搬送104症例について報告する。 
 なお、本報告は、COVID-19が現在進行中である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症であり、その経験・知見を可能な限り医療従事者と共有することが社会的に意義あるものと判断されることから当院ホームページに掲載するものである。 

症例の特徴 
 症例の特徴を表1に示す。患者の平均年齢は68歳で男女比はほぼ半々であった。国籍は17の国と地域と多様であった。48%に基礎疾患あり、高血圧が最も多かった。クルーズ船の乗員と乗客が混在しており、乗員は30~50代が中心で、乗客は70代が中心であった。乗客の健常時のADLは自立しており、総じて「普段は元気な高齢者」という印象であった。なお、104症例全例が、船内の検疫における咽頭スワブPCR検査でSARS-CoV-2陽性を指摘されていた。 


臨床症状、所見、治療、重症度 
 入院時及び観察全期間における臨床症状、所見、治療(酸素投与の有無)、重症度を表2に示す。無症候性陽性者の割合が高く、軽症例が41.3%、重症例は26.9%であった。入院時に有症状であった症例のうち最も多かった症状は発熱で全体の28.8%であった。全観察期間を通して最も多かった症状は咳嗽で全体の41.3%であった。酸素投与が必要となった症例は13.5%であり、そのうちの約半数がいわゆるネーザルハイフローやNPPV(注1)などの高流量酸素投与を必要とした。気管挿管による人工呼吸管理を必要としたのは1例であった。観察期間を通して全く症状や所見を認めなかった症例は全体の31.7%で観察期間中の死亡はなかった。
注1) NPPV:Noninvasiv Positive Pressure Vetilation非侵襲的陽圧換気療法 


考 察 
 当院に搬送された症例は、無症状あるいは軽微な症状を有するPCR陽性者が非常に多かった。軽微な症状を有する者についても、そのほとんどが一般診療の基準に照らし合わせれば、医療機関を受診するような病状ではなかった。当院の症例はダイヤモンドプリンセス号で感染した患者の一部ではあるが、このことからは、無症状あるいは医療機関を受診しない程度の軽微な症状のSARS-CoV-2感染者は多数存在すると考えられる。2020年2月27日にWHOのテドロス・アダノム事務局長はCOVID-19について「鼻汁はあまり出ない。90%の人は発熱し、70%は空咳を伴う」とその症状の特徴を述べたが、これは有症状者に限った話と捉えるべきである。この背後には多数の無症状、または、軽微な症状のみの者がいると考えざるを得ず、事務局長が指摘する症状がなければCOVID-19ではない、あるいは可能性が下がると言えるものではない。すなわち、プライマリケアの場において必要とされる症状スクリーニングによる臨床診断の精度向上は、非常に困難である。 

 
 無症状の感染者であっても、胸部単純CT検査にて異常影が観察されることがある【1】。当院でも来院時のCT検査では全体の67.0%、無症候性陽性者及び軽微な症状を有する症例に限定しても、約半数に異常陰影を認めた。陰影は両側末梢胸膜下に生じるすりガラス様陰影が特徴で、胸部単純レントゲン写真では異常を指摘できない症例が多かった(Fig1,Fig2)。無症候性陽性者及び軽微な症状を有する症例で、CT検査で異常影を認めたうち、約3分の2はそのまま症状が変化することなく軽快し、約3分の1は症状が増悪した。増悪する場合の画像変化は、経過とともにすりガラス様陰影の範囲が広がり、徐々に濃厚なair-space consolidationを呈することであった(Fig3)。我々は無症状あるいは軽微な症状にもかかわらずCT検査で異常陰影を認める病態を「Silent Pneumonia」と呼んでいる(Fig4)。「Silent Pneumonia」から「Apparent」になる際は、発熱や咳嗽の増悪や呼吸困難の出現ではなく、高齢者ではSpO2の低下、若年者では頻呼吸の出現で気付くことが多かった。
 また、症状増悪は初発から7~10日目であることが多く、比較的病状はゆっくりと進行した。このため疾患の増悪に気付きにくい恐れがあり、このことが、高齢者の死亡率上昇に関係している可能性も考えられた。COVID-19の死亡のリスクファクターとして年齢と基礎疾患の有無とする報告が多いが【2,3】、クルーズ船以外の症例を含めた自験例では、重症で救命できた症例の中には、基礎疾患もなく、年齢もそれほど高齢でない症例が少なからず見られている。しかしながら、これらの症例に共通する因子は不明であった。


PCR要請、自覚症状なし、CT上肺炎像→→Silent Pneumonia

 「Silent pneumonia」に関連して、無症候性を含む軽症者でも画像変化が認められることから、CT検査がPCR検査よりも感度が高いという報告がある【4,5】。当院で経験した症例においても、無症候性を含む軽症者のCT検査で異常所見が認められている。また、クルーズ船内で濃厚接触となる同室の家族や友人等がPCR陽性で、本人もCT検査で明らかに他の症例と類似する両側末梢のすりガラス様陰影を認めるにもかかわらず、PCRが陰性となる症例を一定数経験した。そのような症例において、繰り返しPCRを実施すると陽性になる症例もあれば最後まで陰性のままの症例もあった。また、退院確認時の2回連続のPCR検査も、1度目は陰性であるにもかかわらず、2回目が陽性となる症例を数多く経験した。これらの経験から、PCR検査の感度はさほど高くないのではないかと考えられた。明確な検討はできていないまでも、感覚的には70%程度の感度ではないかと思われた。しかしながら、当院のように全例CT検査(注2)を行うかどうか、判断は難しいところである。 
 注2) 当院では病院施設の構造上、一般患者とCOVID-19患者の動線を区別するため、一般撮影ではなくCT検査を実施した。

 血液生化学検査所見では、COVID-19群と非COVID-19群において、CRP、LDH、AST、eGFR、Naに有意な差があり、リンパ球減少が観察されるとの報告がある【6】。しかしながら、当院では、無症状あるいは軽症例では、検査値異常を認めないことが多かった。また、他疾患との鑑別においても特に有用と考えられるような所見は得られなかった。一方、当院においても重症例ではリンパ球減少が認められた。我々の症例からは、接触歴や渡航歴を有しCOVID-19が強く疑われる症例では、AST、LDHの上昇とリンパ球数減少が揃えば、PCRでも陽性となる可能性が高いと考えられた。 

 当院で経験したクルーズ船からの症例の約86.5%は軽症のまま軽快した。しかしながら13.5%の症例に酸素投与が必要であり、その半数は高流量酸素投与が必要であった。重症化に関しては、発症から7-10日目から緩徐に進行するものがほとんどであったが、病勢のピークアウトにも時間がかかり、その後の軽快も非常にゆるやかな印象である。当院においては、観察期間中幸いにも死亡例はなかった。中等症~重症化しても適切な酸素投与を実施するなどの対応をとれれば救命可能な症例は多いと考えられた。なお、重症症例においては、ロピナビル/リトナビル(商品名:カレトラ)、ファビピラビル(商品名:アビガン)、シクレソニド(商品名:オルベスコ)、ペグインターフェロン アルファ-2a(商品名:ペガシス)、リバビリン(商品名:レベトール)等を患者及び家族の同意を得た上で、院内において適応外使用についての所定の手続きをとり、日本感染症学会の「COVID-19 に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第 1 版 (2020 年 2 月 26 日)」を踏まえて使用した。しかしながら、使用症例が少数であること、重症例にしか使用していないことから、その効果について言及することは困難である。

 当院は、これまで第一種感染症指定医療機関として平素から感染症患者受入れ訓練を実施するとともに、防衛省の医療機関として首都直下型地震等を想定した大量傷者受入れ訓練を実施してきた。今回の100例を超える感染症患者の受入れにおいては、この2つの訓練のノウハウを活用し対応した。また、平素、感染症診療に携わっていないスタッフの動員に対しては、病院ICT(注3)スタッフのみならず全国の自衛隊病院感染管理認定看護師の協力を得て、N95マスクフィットテストやPPE(注4)着脱訓練を行い、ゾーニング要領を徹底して感染管理の質の維持に努めた。ダイヤモンドプリンセス号からの患者は全員退院したが、スタッフの発症あるいはPCR検査陽性は確認されなかった。この事実からは感染管理の重要性が明らかであるとともに、COVID-19確定症例とわかって対応していれば院内感染は起こりにくい可能性も示唆される。現在までに報告されている院内感染事例はCOVID-19の診断がなされる前に生起していることが多く、院内感染を防ぐためにはいかに疑い、診断するかが大きく関わってくると考えられる。なお、当院では多数の患者を受け入れたため、陰圧室は不足し、患者の多くは陰圧機能のない一般病室に収容した。このため、ウイルス量が多く、ネーザルハイフローや人工呼吸器などのエアロゾル発生機器・手技を多く必要とするであろう重症例から陰圧室を使用し、ゾーニングを徹底した。標準予防策に加えて接触感染予防策、飛沫感染予防策を実施し、マスクは原則N95マスクを使用した。アイガードの徹底に加えて脱衣に熟練を要するいわゆるワンピース型PPEは用いず、アイソレーションガウン使用を標準とした。さらに挿管時にはPAPR(注5)も装着した。 

注3) ICT:Infection Control Team 感染対策チーム 
注4) PPE:Personal Protective Equipment 個人防護用具 
注5) PAPR:Powerd Air Purifying Respirator 電動ファン付呼吸用保護具 

 今回クルーズ船の乗員乗客として、日本も含めて計17の国と地域という多様な国籍の患者を短期間に多数受け入れた。このため、患者とのコミュニケーション及び各国駐日大使館との調整・病状説明等に膨大な通訳所要が発生し、全国の自衛隊部隊等から通訳の支援を受け対応した。入院症例は軽症者が多かったため、本国との連絡手段を確保するとともに母国語で情報収集したいとの要望に応える必要がありwifiルーターを設置した。病院食に対しても様々な要望があり、献立を工夫する等、患者サービスの向上に努めた。また、PCR検査の実施においては、提出から結果の確認まで最長1週間待たされる等、困難を極めた。そのような折、国立感染症研究所及び陸上自衛隊対特殊武器衛生隊にPCR検査の面で非常に大きな助力をいただいた。今回の受入れを乗り切ることができた要因の一つであると考えている。 
 
 今回のCOVID-19症例の多数受け入れは当院にとって大きな挑戦であったとともに、しばらくは継続すると予測されるCOVID-19への対応も含めた今後に向けて大きな経験、財産となった。これから来るであろうCOVID-19の拡大期、蔓延期に向けて、ホームページに目を通していただいた医療従事者の皆様に当院の経験が少しでも役立てば幸いである。 
 
自衛隊中央病院感染対処隊診療部
新型コロナウイルス感染症対応チーム一同
チーム長:自衛隊中央病院第2内科部長・感染症内科
1等海佐 田村 格


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end up quitting tennis

2021年08月27日 02時38分05秒 | Weblog
マッケンロー、大坂なおみがテニスを辞めてしまうのではないかと危惧
(Jun. 05, 2021, 03:00 PM BUSINESS INSIDER)
 
●ジョン・マッケンローは、自身のライバルだったビヨン・ボルグのように、大坂なおみがテニスを辞めてしまうのではないかと心配していると語った。
●1980年代、当時26歳だったボルグはテニスを楽しめなくなった、燃え尽きたと言って、突然引退した。
●「今の大坂は、似たようなことを感じているのではないだろうか」とマッケンローは自身のポッドキャスト『Holding Court』で語った。
 
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 ジョン・マッケンローは6月3日(現地時間)、自身のライバルだったビヨン・ボルグのように、大坂なおみがテニスを辞めてしまうのではないかと心配していると語った。テニス界は大坂の会見拒否とメンタルヘルスに対する懸念への対応を誤ったと指摘した。
 大坂は5月31日、全仏オープンを棄権した。大坂は、30日に行われた1回戦でパトリシア・マリア・ティグに勝利した後、記者会見を欠席したことで1万5000ドル(約165万円)の罰金を科されていた。
 全仏オープンの開幕直前、大坂は自身のメンタルヘルスを守るため、大会中は会見に応じない考えを示した。大会を棄権するにあたり大坂は、2018年以降「長い間うつ病を患っていて」メディアに向かって話をする前には「大きな不安の波」を経験してきたと明かした。
 フランステニス連盟は、大坂がメディア対応の責任を果たさない場合は、失格処分などさらなるペナルティーを科すと脅した。大会のツイッター公式アカウントも大坂を批判したようだが、投稿はその後、削除された。
 「わたしたちのスポーツを非常に心配している。ここ数日の出来事を見て、さらに心配になった」とマッケンローは自身のポッドキャスト『Holding Court』で、解説者で実の弟でもあるパトリック・マッケンローに語った。
 「なおみが最初にしたことは、権力者たちに考える材料を与えたとわたしは思っていたが、彼らは強力かつ威圧的なもので対抗しなければならないと感じたようだ。そして今、彼らのやったことは誰にとってもプラスにならなかった」
 「なおみはプレーしないと決めた。彼女は自分の気持ちをさらけ出した ―― これは外部の人間が知ることができたという意味では良かった。ただ、これで今後もさらに注目を集めることになると思う。彼女にとっては難しくなるだろう」
 マッケンローは大坂の会見拒否への対応はやり過ぎだとして、主催者側を批判した。
「わたしの意見としては、権力者たちが彼女を出場停止などで脅すようなことまでやる必要はなかった。それはスポーツにとって大きなマイナスになる。そして、それが彼らのやったことだ」
 
 グランドスラム通算7勝を誇るマッケンローは、今回の一件で1983年に26歳で突然テニスを辞めてしまったボルグを思い起こしたと語った。
 
 スウェーデン出身でグランドスラムで11勝したボルグは、1981年の全米オープンの決勝でマッケンローに負けた。ボルグは表彰式を待つことなく、コートを後にした。
 引退を発表した数日後、ボルグはニューヨーク・タイムズに、もうテニスを楽しむことはできない、燃え尽きたと語った。
 マッケンローは、大坂にも同じことが起こり得るのではないかと恐れているという。
「大坂が(テニスを)続けられなくなる危険性もある」
「彼女に何が起こるかは誰にも分からない。本当に心配だ。ビヨン・ボルグはこれまでにわたしたちのスポーツが経験した最高の出来事の1つだったのに、彼がゲームから追い出されてしまったように感じるからだ」
 「そして今の大坂は、似たようなことを感じているのではないだろうか」
 
[原文:Naomi Osaka could end up quitting tennis early just like the 1970s icon Bjorn Borg did, John McEnroe says]

 


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未来を作る力

2021年08月26日 09時55分42秒 | Weblog

人が発する言葉、記述する文書には、未来が含まれています。
人は「感覚」という偉大なセンサーでもって言葉や文章から様々な事象の予兆、未来を読み取ります。
言葉には未来を作る力があるーー
これには、自然言語解析に携わるなかで、確信を持っています。

(守本正宏/(株)FRONTEO CEO)


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船で電気を運ぶ

2021年08月25日 07時10分47秒 | Weblog

ZOZOの元COOが再エネの新会社、風力+IoT蓄電池で世界に送電
(2021/08/20 WWD JAPAN)

 

 ZOZOのテクノロジー部門を率いて「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」や「ゾゾマット(ZOZOMAT)」「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」などを仕掛け、今年6月に退任したZOZO元取締役COOの伊藤正裕氏が渾身の新事業立ち上げを発表した。8月18日にオンライン事業説明会に登壇し、新会社パワーエックス(PowerX)の発足と、再生エネルギー事業に賭ける思いやその可能性について語った。
 「船で電気を輸送。洋上風力発電の爆発的普及を実現する」をミッションに掲げるパワーエックスは、洋上風力でつくられたクリーンな電力を直接バッテリーに蓄電し、電気運搬用に自社開発する船舶「パワー・アーク(Power ARK)」で、海上から世界中の変電設備まで無人で電気を運搬する送電事業を行うもの。それに先駆け、国内に大型電池工場を設け、「電気をつくる、溜める、運ぶ」のサプライチェーンを設計・構築することで、自然エネルギーの爆発的普及を狙う。
 設立の背景について、「世界的な脱炭素の動きや、EV車の急増などを踏まえて、再生エネルギーの普及のためにはは、さまざまな拠点をつなぐ新たな送電問や系統の拡充が重要課題だ。日本のエネルギー拡大促進のために、新しいテクノロジーを開発し、電気の蓄電と送電にイノベーションを起こしたい」「グローバル展開も構想している。送電をさらに遠距離化することで、国境を超えた大陸間のクリーンエネルギー輸送なども実現が可能になる」と伊藤パワーエックス社長兼CEO。
 海洋発電は、有力な再生エネルギーの一つとして注目を集めている。ただし、従来型の海底ケーブル方式では、海底の掘削による環境負荷が大きく、大規模な敷設工事が必要となる。また、洋上風力施設は建設時間やコストなどの観点から海岸から15~20キロメートル程度に設置することが一般的だ。一方、エネルギーをそのまま船舶で運べるようにすることで、「環境や自然に著しく優しくなる」ことや、海洋ケーブルから解放されることで「風力の強い沖合に設置できる」など設置場所の自由度が向上するなどの利点がある。「海で囲まれた日本の豊富な自然エネルギーのポテンシャルをより活かすことが可能となる」。地震や津波、集中豪雨などの自然災害の多い日本において、有事の際に現地に速やかに航行し、「非常用電源としてそのまま使用することで、命を救うことにもつながる」という。
 船舶の自主開発や、エネルギー輸送の実現は10年越しの事業となる。また、電気運搬船には大型蓄電池を大量に、低コストで積載する必要がある。そこで、まずは国内に大型電池自社工場を建設し、船舶用電池、電気自動車(EV)急速充電器用電池、グリッド電池などの大型蓄電池の製造・販売を行う。では、セルを製造するのではなく、電池のパッケージングをオートメーション化する。
 「再生エネルギーには必ずカタリスト(媒介者、促進者)が必要で、サプライチェーンが必要だ」。脱炭素社会、自然エネルギーの普及にともない、大型蓄電池の需要が飛躍的に伸びることも大きなポテンシャルだ。パワーマックス(Pawer MAX)事業で「電池を大量に製造することでコストを下げ、今後拡大する蓄電池需要に対応する。まずはこれを収益源として売り上げを稼ぎ、長期ビジョンの実現を目指したい」。工場には100億円前後を投資予定。来年建築を開始し、23年にはテスト生産、24年に本生産を開始予定だ。
 最近、ガソリンスタンドやコインパーキング、商業施設の駐車場などにEV車用のチャージャーが設置されるケースが増えているが、従来では高圧電線を引いてきて固定チャージャーを作る時間とコストがかかっていた。一方、パワーマックスの再生エネルギー畜電池は軽自動車程度のコンテナ型を想定しており、「スーパーやコンビニ、小売店、レストランの駐車場などにポンと置くだけ。コンビニで買い物をしている10分間で急速充電できる」と、日常生活の導線上での利活用を提案。さらに、「IoTで、すべての使用状況と寿命を把握できる。据え置き型ではないので、使われていない場所のものはすぐに移動させられるため、消費者の欲しいところにかならずある状況が作れる」という。
 共同創業者で取締役会長を務める鍵本忠氏は医師で、再生医療事業を行う東証マザーズ上場企業のヘリオスの創業社長。社外取締役には、ルノーや日産自動車、テスラモーターズ出身で、現在は電池ベンチャー世界大手のノースボルト(Northvolt)の創設者兼 COO のパオロ・セルッティ(Paolo Cerruti)氏や、元 Google 幹部のシーザー・セングプタ(Caesar Sengupta)氏、米国 Goldman Sachs 元パートナーで、2008 年から世界最大規模の環境系 NGO「ザ・ネイチャー・コンサーバンシー」のCEOを務めてきた、金融と環境問題の専門家であるマーク・ターセク(Mark Tercek)氏ら、国内外の大物が就任するなど、世界的なプロフェッショナル人材で固めている。
 具体的な構想からは1年ほどだが、伊藤社長兼CEOは「イノベーションやテクノロジーに挑戦することが大好き」で、長年、「『テクノロジーを通して日本や世界の課題を解決し、社会に貢献したい』と考えてきた。もともと海や船が大好きで、海洋国家である日本で、海洋エネルギーの普及に貢献できると考えた」とも明かす。生涯を賭け、電気の燃料を運ぶ時代から、電気そのものを運ぶ未来へとイノベーションを起こし、クリーンエネルギーの爆発的普及を目指す。
(松下久美)


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みんなアスリート

2021年08月23日 13時27分46秒 | Weblog

身体さえあれば、みんなアスリート。

(NIKEのスローガンの一つ)

 


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自戒を込めて・・・

2021年08月22日 18時24分55秒 | Weblog

■コロナ感染者の行動歴より(8 月 16 日~18 日)

(1)50 代女性:愛知県の実家に親族10人程度が集まり、お墓参り後に一緒に食事。

(2)30 代女性:九州の実家に帰省。他県からも親族が帰省し、親族5人で会食。後に他県から来た親族の陽性が判明。

(3)20 代男性:発症前に県内の実家へ帰省し、友人5人と居酒屋ハシゴし飲み歩き。

(4)10 代男性:実家がある関東へ帰省。帰省先で友人と複数日に渡って遊興施設や観光地を訪問。

(5)20 代女性:発症前に、関西の友人宅に滞在し友人宅でのパーティーに参加。 パーティー参加者8名のうち5名の陽性が後に判明。

(6)10 代女性:友人3人とカラオケし、その後、別の友人3人と三重県へドライブ。 同日夜にさらに別の友人3人とカラオケし、その4人全員が陽性判明。

(7)20 代女性:発症前に複数回、友人親子の家へ家族で遊びに行く。友人宅ではマスクなし。また、友人2家族と計11人でとリゾート施設でバーベキュー。

(8)20 代女性:友人3人と名古屋市の居酒屋で飲食。うち1名が後に陽性と判明。

(9)20 代男性:発症前に、三重県のナイトクラブでパーティーに参加。

(10)20 代男性:発症前に夫婦で結婚式へ参加。その後の2次会から4次会まで参加。

(11)20 代女性:発症前に友人と4人で朝から晩まで遊ぶ。その後も複数の友人と会い、県内又は県外で会食を繰り返していた。

(12)10 代男性:発症前に友人を自宅に呼んで4人で食事し、その後麻雀。後に会食及び麻雀のメンバーに感染者がいたことが判明。

(13)20 代男性:38度以上の発熱があったにも関わらず、友人と居酒屋で飲食。

(14)30 代男性:友人10人と名古屋市内で会食。そのうち1人が発熱していた。

(15)20 代女性:自宅や河川敷で友人とバーベキュー。また複数日に友人と県内で飲み歩く。

(16)20 代男性:発症前に友人8人で集まりバーベキュー。その後カラオケを行った後、飲食店で飲食。

(17)20 代女性:発症前にSNSで知り合った6~7人で県内の河川敷でバーベキュー。


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今が、次の文明システムへの転換期

2021年08月22日 17時50分45秒 | Weblog

人類史、迫る初の人口減少 繁栄の方程式問い直す


(2021年8月22日 11:00 日本経済新聞WEB)

 人類の爆発的な膨張が終わり、人口が初めて下り坂に入る。経済発展や女性の社会進出で、世界が低出生社会に転換しつつある。産業革命を経て、人口増を追い風に経済を伸ばし続けた黄金期は過ぎた。人類は新たな繁栄の方程式を模索する。

 世界人口は2064年の97億人をピークに減少する――。米ワシントン大は20年7月、衝撃的な予測を発表した。
 50年までに世界195カ国・地域のうち151が人口を維持できなくなる。国連は「2100年に109億人となるまで増え続ける」と試算していたが、出生率が想定以上に落ち込む見通しだ。

■世界人口は過去200年に急増したが減少局面に

 30万年の人類史で寒冷期や疫病により一時的に人口が減ったことはあるが、初めて衰退期がやってくる。ワシントン大のクリストファー・マレー保健指標評価研究所長は、出生率が回復しなければ「いずれ人類は消滅する」と予言する。
 危機は目の前にある。1960年代後半に世界の人口増加率はピークの2.09%に達したが、2023年には約80年ぶりに1%を割る。17年には15~64歳の働き手(生産年齢人口)の増加率が1%を下回り、すでに世界の約4分の1の国で働き手が減り始めた。
▼「母親になりたかったけれど……」。イランの首都テヘランの子供服店経営者アザデさん(37)は子供がいない。父は11人兄弟だったが、いまやイラン女性の大学進学率は日本を上回る6割超で、少子化が進む。
▼17年に高齢化社会に入ったベトナム。1月から定年を段階的に引き上げ、28年までに62歳にする。高齢化の暗雲が途上国を覆う。
▼「反移民」を掲げる東欧ハンガリー。人口減で労働力が足りず、排除したはずの外国人の労働許可を緩和した。19年の外国人就労許可数は4年前の約6倍。もはや移民なしで社会は回らない。

■米欧に続きアジアでも少子高齢化で働き手が減る

 最も顕著なのは中国だ。来年にも人口が減り始め、2100年には現在の14.1億人から7.3億人に激減するとワシントン大は予測する。同じ年に日本など23カ国の人口が半分以下に縮む。
「米中の国内総生産(GDP)は逆転しない」とウィスコンシン大の易富賢氏は予測する。複数の調査機関は2030年前後に中国のGDPが米国を上回ると試算しているが、易氏は中国の人口統計が1億人以上水増しされているとしてGDP逆転は起きないとみる。
 新型コロナウイルスが退潮に拍車をかける。20年の日本の出生数は前年比3%減の84万人と1899年の調査開始以来最少。雇用や医療などに不安が広がり、米国も361万人と41年ぶりの低水準だった。米ブルッキングス研究所は「失業率が1ポイント上がると出生率は1%下がる」と分析する。
 人口は繁栄の基盤だった。1800年の英国。産業革命により経済成長と食糧の大量生産を実現し、医療・衛生環境も大幅に改善した。100年後の人口を約4倍に増やし、英国が世界に覇権を広げる原動力になった。
 1800年に約10億人だった世界人口はいまや78億人。人口が爆発的に増えたのは人類史で直近の200年間だけだ。急膨張した人類は、破綻を危ぶんだ。ローマクラブは1972年、人口増と環境汚染で100年以内に「成長の限界」を迎えると警告した。
 流れを変えたのは女性の教育と社会進出が加速したことによる出生率の低下だ。女性1人が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)は17年現在で2.4と、人口が増えなくなる2.1の目前だ。

■各国で所得が増え柊生率が低下した

 人口減時代は新たな難題が待つ。人口増が前提の年金や社会保障制度は転換を迫られる。労働者が減れば過去の経済成長モデルは通用しない。
 ただ見方を変えれば、人口爆発の副産物だった環境問題や資源枯渇の危機は和らぐかもしれない。雇用を奪うとの抵抗もある人工知能(AI)などのデジタル技術は、生産性を引き上げ労働力不足を補う武器になる。
 いち早く人口減に突入した日本にとっても改革のチャンスだ。従来の発想を捨て、人口減でも持続成長できる社会に大胆につくり変えられるか。歴史人口学者の鬼頭宏前静岡県立大学長は予言する。「次の文明システムへの転換期。乗り切るか没落するかの分かれ目だ」

■技術革新と医療で人口急増 豊かさ、出生減招く

 ホモ・サピエンスがアフリカに登場してから約30万年。これまでの人類の総出生数は約1000億人とされる。人類の繁栄は2つの「革命」がきっかけだった。
 1つは約1万年前の農業革命。地表が氷で覆われた寒冷化が終わりを迎え、農耕と家畜飼育が始まった。人類は狩猟採集から定住に移り、各地で文明が誕生していく。ただ人類は緩やかな増加を続けながらも、現在のような繁栄には至っていなかった。
 次に人口爆発の端緒となったのは約200年前の産業革命だ。1769年、ワットが蒸気機関を発明したことで、人類は化石燃料から莫大なエネルギーを得られるようになった。1820~60年に石炭の生産は10倍になり、その後の100年でさらに10倍に増えたとされる。
 1906年のハーバー・ボッシュ法の発明も大きい。空気中に豊富に含まれる窒素と水素をアンモニアに変える技術で、化学肥料の大量生産を実現した。人口増加に追いつかなかった食糧生産を飛躍的に伸ばした。医療水準の向上や上下水道の普及なども死亡率を下げ、英国の乳幼児死亡率は1880~1910年の30年間でほぼ半減したといわれる。

■途上国でも人口増加率は急低下

 米ワシントン大によると人類は2064年に97億人でピークを迎え、もはや人類が増えることはない。人口が減り始める理由は、世界で予想以上に進む少子化だ。
 女性1人が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は、発展途上地域で1950年代前半の6から2010年代後半に2.6まで急減した。女性の教育と社会進出が進んだのが要因とされ、多産を望む若者が減った。
 少子化は一人ひとりの人生の選択が積み重なった結果で、押し戻すのに成功した国はほぼない。人口増加率は1960年代後半の2.09%をピークに、すでに約1%まで落ち込んでいる。


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なぜデルタ株は脅威なのか

2021年08月18日 01時51分27秒 | Weblog

あらためてコロナ感染対策の徹底を

(2021/08/12National Geographic)

 

 米国疾病対策センター(CDC)によれば、デルタ株は既知の呼吸器系ウイルスの中でも感染力が非常に強く、ほかの変異株よりも重症化を引き起こしやすいと考えられ、抗体を回避する能力も高い。米国が新型コロナの第4波と向き合う中、ずっと懸念されていたデルタ株(インドで初確認)の危険度について、多くのことがわかり始めている。

 米国では、ソーシャルディスタンスやマスクのガイドラインが緩められたり、一部地域でワクチン接種が進んでいなかったりするせいで、デルタ株が急速に主流となった。CDCのデータでは、今では新規感染者の93%以上を占めている。また、デルタ株は世界135カ国に広がっていると世界保健機関(WHO)は8月3日に発表した。(参考記事:「デルタ株が急拡大、ワクチン接種率の低い地域ほど危険」

 CDCによると、デルタ株の広がりやすさは水痘(水ぼうそう)に匹敵する可能性がある。もしそうであれば、麻疹(はしか)よりわずかに下回る程度だと、最も感染力の強いウイルスのひとつを引き合いに出してまで警告を発している。

「デルタ株の感染力の強さと、上気道での複製能力の高さには驚かされます」と米エモリー大学のウイルス学者メハル・スザー氏は言う。

 デルタ株はそれ以前のものに比べて感染力が非常に強いため、CDCは2021年7月27日に新たなガイドラインを発表し、ワクチン接種後であっても「感染が広がっている地域にいる場合は、屋内の公共の場ではマスクを着用する」ことを推奨するとした。

 

■どれほど広まりやすいのか

 新型コロナのような感染症がどの程度広がりやすいかを判断する際、疫学者は、「基本再生産数(R0)」という指標を用いる。1人の感染者が平均で何人の未感染者に感染させるかを推定した値だ。

 過去のパンデミック(世界的大流行)におけるR0を正確に割り出すのは難しいが、1918年のインフルエンザのパンデミックでは、1人の平均的な感染者が病気を移したのは2~3人、つまりR0は2.0~3.0だったと考えられている。コロナウイルスについては、2002年に起こった最初のSARSのR0は3.0、2012年に初めて確認された2番目の中東呼吸器症候群(MERS)は0.69~1.3だった。

 7月29日に発表したワクチンに関する報告の中で、CDCはデルタ株のR0は5~9.5と推定した。この数値は、中国の武漢で確認されたオリジナルのウイルスの2.3~2.7や、アルファ株(英国で初確認)の4.0~5.0より高い。先に述べたように、水痘の9.0~10.0に匹敵する可能性がある。

 R0が1.0よりも大きくなれば、感染者の数は理論上、未感染者がいなくなるか、あるいは回復して集団免疫を確立するまでずっと増え続ける。R0が1.0よりも小さければ、流行の収束が見込まれる。

 オリジナルの新型コロナウイルスであれば、自然感染またはワクチン接種によって人口の67%前後が免疫を獲得すれば集団免疫に到達すると、2020年11月に医学誌「Lancet」に発表された論文では見積もられていた。

「デルタ株の場合、その値は80%を大きく越えて、90%近くになるのではないかと推定しています」と、8月3日に米国感染症学会が行ったメディア向けの説明会で米アラバマ大学バーミンガム校の医学部助教リカルド・フランコ氏は述べている。

 

■初感染ではウイルス量が1000

 デルタ株にはじめて感染した人は、別の変異株と比べて、鼻腔ぬぐい液中に約1000倍のウイルス粒子(専門家はこれを「ウイルス量」と呼ぶ)を保有しているという研究結果が、査読前の論文を投稿するサイト「Nature Portfolio」に7月24付けで発表された。「この増加率は極めて高いものです」と、 米スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・トポル氏は述べている。

 理由のひとつは、デルタ株が鼻の中でよりすばやく複製するためだ。7月23日付けで論文投稿サーバー「medRxiv」に発表された査読前の論文によると、感染者に接触してから検出可能なレベルに到達するまで、武漢で発見されたオリジナルのウイルスは約7日かかっていたのに対し、デルタ株の場合は平均4日弱だという。

 ワクチンを接種した後でさえ、デルタ株に感染した場合は、それ以外の変異株の10倍のウイルス量が生成されるという査読前の論文が、6月22日付けで「Nature Portfolio」に発表されている。ワクチン接種をした人たちのウイルス量が、ワクチン接種をしていない人たちとほぼ同じであるという報告も、7月31日と8月1日に「medRxiv」に発表された未査読の論文を含め、複数ある。

 デルタ株はまた、スパイクタンパク質の681番目の位置にある変異のせいで、細胞を破壊する能力に優れている。この変異は世界中のほかの変異株にも見られ、進化のゲームチェンジャーになると考えられている。

 このP681Rという変異によって、デルタ株や近縁のカッパ株(インドで初確認)は、感染した細胞が他の細胞と融合するためにウイルスが侵入しやすくなる。それが感染を加速させる一因となっているという論文が、7月19日付けで未査読の論文の投稿サイト「bioRxiv」に発表された。

 ウイルス同士が融合するこうした「合胞体(ごうほうたい)」は、エイズのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などほかのウイルスによっても形成される。「細胞培養実験により、デルタ型は新型コロナウイルスと比較してより大きな合胞体を示すことがわかっています」と、論文の著者の1人である東京大学のウイルス学者、佐藤 佳氏は言う。

 また、デルタ株のスパイクタンパクでは変異がいくつも起こっており、それによって免疫反応を回避する能力が増していると見られている。

 

■重症化を防ぐワクチン、問題は持続期間

 幸いなことに、新型コロナワクチンはデルタ株に対しても有効だ。「どのワクチンもかなりの効果を示しています。とりわけ重症化を予防します」とカナダ、トロント大学の感染症疫学者ジェフ・クォン氏は言う。

 米モデルナ社および米ファイザー社のワクチンが、デルタ株に対する予防効果を保っていることは、多くの研究によって証明されている。ワクチン接種状況とともに感染例のデータを追跡している州では、ワクチンの接種を終えていない人たちが新規感染者の90%以上を占めている。

「ワクチンが、入院に至るほどの深刻な病状悪化のリスクを大幅に減らすのは確かです」と、英エジンバラ大学の初期医療の専門家アジズ・シャイフ氏は言う。

 CDCは、新型コロナのワクチンはデルタ株による感染リスクを3倍、入院・死亡のリスクを10倍低下させると、7月29日のワクチンに関する報告で発表した。

 しかし、全国的に検査が不十分であることから、デルタ株やその他の変異株がどの程度広がっていて、ワクチンが実際にどれほど有効かを正確に知るのは難しい。集団の中でデルタ株の感染率が上がれば、ワクチンの接種を済ませた人たちであっても、いわゆる「ブレイクスルー感染」を起こしやすくなる。

 7月21日付けで医学誌「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、英アストラゼネカ社およびファイザー社のワクチンを2回接種した場合、デルタ株による症状に対してそれぞれ60%、88%の予防効果があるとしている。

 米国で投与されているワクチンの大半(モデルナ製とファイザー製)は、最大限の保護効果を得るには2回の接種が必要とされる。これらのワクチンは、1回のみの接種ではデルタ株に対する効果が著しく低いと、パリ、パスツール研究所ウイルス・免疫ユニットを率いるオリビエ・シュワルツ氏は言う。

 デルタ株などの新規変異株に対する有効性に関するデータを受け、ファイザー社は同社ワクチンの追加接種の承認を目指している。モデルナ社もまた、最新のmRNAワクチンの追加接種の試験を行っている。米食品医薬品局(FDA)は、近々新型コロナワクチンの追加接種計画をまとめると見られている。

 ドイツでは、弱い立場にある人たちを対象に、mRNAワクチンの追加接種を9月に開始する予定だ。一方で、追加接種は、富裕国と貧困国の間にある新型コロナワクチンの格差を拡大してしまう。

「WHOは、少なくとも9月末までは追加接種を停止し、最低でもすべての国で人口の10%がワクチン接種を終えられるようにすることを求めます」。WHOのテドロス事務局長は記者会見でそう述べた。(参考記事:「コロナワクチンの追加接種はまだ不要、科学者らが主張する理由」

 イスラエル政府が発表した初期のデータによれば、ファイザー社のワクチンの有効性は6カ月以内に低下する可能性があるという。ただし、ワクチンの設計者は抗体反応を長く持続させるのは難しいことを最初から知っており、これは意外なことではない。

 SARSやMERSのウイルスに対する抗体は1、2年で減少した。一般的な風邪を引き起こすコロナウイルスの場合、抗体の保護効果が持続するのは3~6カ月で、1年以上になることはまずない。

 米国で行われたある研究では、モデルナ社製ワクチンの2回目接種の後、中和抗体が6カ月にわたって血液中に高濃度で残ることが示された。論文は7月7日付けで「New England Journal of Medicine」に発表されている。

「これらの抗体は、ほとんどの場合、(デルタを含む)多くの変異体を中和します。ただし、抗体反応は時間の経過とともに弱まっていきます」と、この研究を主導したエモリー大学のスザー氏は述べている。

 

■ソーシャルディスタンスとマスクも重要

 米国では新型コロナワクチンは無料で接種が可能だが、8月10日の時点で接種を終えたのは人口の50.3%(1億7000万人弱)に過ぎない。このままではコロナウイルスは感染と進化を続け、予想よりも多くの接種後感染(ブレイクスルー感染)を引き起こし、新たな変異株を生み出す可能性がある。

 デルタ株にブレイクスルー感染した患者は、ワクチン未接種の人がデルタ株に感染した場合と同程度の感染力を持っているとの証拠も出始めている。「ワクチンには保護効果がありますが、ワクチン接種済みであっても、ワクチン未接種の人またはお互いから、大勢の人がウイルスにさらされていることは明らかです」とトポル氏は言う。

 ただし、ワクチン接種を終えた人たちの1%以下に起こるブレイクスルー感染の大半は、軽症あるいは無症状感染だ。米国で接種を終えた1億6400万人以上のうち、2021年8月2日までにブレイクスルー感染して入院あるいは死亡した患者は7525人にとどまっている。

 ブレイクスルー感染を起こしやすいのは、感染した患者と頻繁に接触する医療従事者、高齢者、がん患者や臓器移植経験者などの免疫力が低下している人たちだ。ブレイクスルー感染はまた、大勢が集まる場所、レストラン、人の多い職場、屋外・屋内でのパーティといった、人と密接に触れ合う状況で起こりやすい。

 ソーシャルディスタンスの保持やマスク着用などは、ワクチンの接種とともに、ウイルスの広がりを抑える有効な戦略だ。「たとえワクチンを接種しても、感染したり、ウイルスを人に移したりすることはあります。そうなれば、変異株にさらに多くの変異や進化の機会を与えることになります。ウイルスにそうした機会を与えないようにすることが重要です」と佐藤氏は言う。

 


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パンデミックが変える世界(01)

2021年08月17日 08時07分53秒 | Weblog
小売とレストラン業界の自動化が劇的に加速
・・・人手不足やコスト削減圧力に対応
 
(2021年6月25日 U.S. Frontline News)
 
 指触操作やキオスク、ヘッドレス・コマース、ドローン、配達ロボットは、小売会社やレストランの現在と未来を決定づける技術応用だ。人員不足や業務効率化の圧力がその背景にある。専門家たちは、両業界において自動化の動きがこれからさらに強まり、その需要に応えるソリューション群の開発に注力する新興企業らが成長する、と予想する。クランチベイス誌が報じた。
 
■目的特化型に照準するウィングス
 マサチューセッツ州拠点のロボティクス新興企業ウィングス(Wings)は、心理学的要素に照準した研究室を開設し、レストラン向けの自動化システムを開発した。
「われわれは、研究の結果、厨房内で場所を取らないロボティクスを開発した」と同社のヘイサム・アル=ビーク創設者兼CEOは話す。
 同社は、目的特化型のロボティクスに重点を置いている。天井から下に伸びる機械腕が料理人の手を一切必要とせずに注文食をすばやく調理するといった自動化システムが同社の典型的な製品だ。
 
■取り残された自動化分野は厨房だけ
 アル=ビーク氏は、外食サービスの近未来について、「分散型かつ自己組織化ロボティック・システムの独特な集合体」になる、とみている。
 食事サービス市場では近年に、店内サービスやドライブスルー、オンライン注文による持ち帰り、オンライン注文による出前といった各種の消費手段が普及したが、食事をつくる過程は何も変わっていない、とアル=ビーク氏は指摘する。
 レストランに残された自動化または合理化の部分は厨房にある、というのが同氏の考えだ。
 
■低賃金という慢性的要因にパンデミックが重なる
 外食業界ではここ何年間か人員不足が課題となっている。低賃金という慢性的要因もあるが、最近については新型コロナウイルス・パンデミックも主因だ。
 パンデミックによる大打撃を受けた過去1年半については、非常に寛大な失業保険や政府給付金によって、働きに出るより無職のままで家にこもる人が増えた。そのため、制限つきながらも営業再開したレストランでは人材確保に苦労を強いられている。
 米国では、計3200ドル(1回目は1200ドル=約13万円、2回目は600ドル=約6万6,000円、3回目は1400ドル=約15万円)の給付金に加え、一般に週あたり600ドルの失業保険が給付され、パンデミック中には、通常なら半年間の失業保険給付期間が大幅に延長された。そのため、低賃金労働者らの一部は、職場復帰や再就職するよりも失業保険をもらい続けるほうが高収入になる。
 
■小売業界で進む「ヘッドレス」化
 一方、ヘッドレス・コマースでも自動化が急加速している。
 ヘッドレス・コマースとは、文字通りに解釈すれば「頭のない商取引」を意味する。小売業界においてヘッドレスは、フロントとバックエンドを切り離して運営するプラットフォームを指す。
 例えば、API(application programming interface)を活用した機能連携設計によって受注情報をバックエンドに自動送信できるようにし、バックエンドでの処理と小売現場の運営を分離することでバックエンド・システムに左右されることなくそれぞれの改善や改良を自由に実行できるようにする。
 サンフランシスコ拠点の新興企業ファスト(Fast)のドーム・ホーランド共同創設者兼CEOは、小売業界においてバック・オフィス業務の自動化が加速するとともに、オンライン買い物と同じような「魔法のような支払い体験」を消費者に提供するようになっている、と話す。
 
■「ヘッドレス支払いは今年最大の変化」
「小売業界とレストラン業界はパンデミックによって激変した」とホーランド氏は指摘する。
「レストランは、来店者たちにQRコードをスキャンさせることでメニューと注文をオンライン化した」「それによって店員と来店者の物理的接触を避けることを可能にした」
 似たようなことは小売店でも起きている。「多くの商店は、デジタル注文やオンライン決済を来店者に提供するようになった」「小売業界にとってヘッドレス支払いはおそらく今年最大の変化となる」とホーランド氏は話す。
 
■ウェブサイトで検索せずに商品特定および購入を簡単に
 ファストは、「ファスト・チェックアウト」という機能を小売会社向けに提供している。例えば、消費者がテレビで見たブレスレットを買いたいと思った際にすぐに買えるようにするために、ファスト・チェックアウト・ボタンをモバイル・アプリケーションに組み込むことで、クリックひとつで簡単に購入できるようにする。
 消費者は同機能を使うことで、ウェブサイトを検索することなく、また、外に一歩も出ることなく、気に入った商品をすぐに買える。

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デルタ株、感染力は水ぼうそう並み

2021年08月15日 08時49分56秒 | Weblog

デルタ株の感染力、インフルの4倍 ~「新しい危険なウイルス」~
(2021・08・13(金) 18:36配信 時事通信)


 猛威を振るっている新型コロナウイルスのデルタ株について、米疾病対策センター(CDC)は、感染力が水痘(水ぼうそう)並みに強いとの見方を示している。水痘は極めて感染力が強いため、小児科の医師からは「コロナ対策の前提が一変した」と指摘する声が上がっている。
 「水痘並みの感染力があるということは、季節性インフルエンザの4倍以上の感染力があることになる。水痘の感染力を示す基本再生産数は8~12。インフルエンザや従来型の新型コロナウイルスは、1.5~2とされることを考えると、デルタ株は別のウイルスと考えるべきだ」。

 小児の感染症に詳しい神奈川県警友会けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師(小児科)はこう指摘した上で、「CDCによると、デルタ株は1人の感染者が周囲の8人以上に感染させてしまうということ」と説明。従来の新型コロナウイルスが周囲の1~2人に感染させていたことと比較して、強い感染力を示す点を強調した。

 このデルタ株の比率が上昇するにつれて、東京都の感染者数は8月上旬に前週比80~90%増と爆発的に増えた。菅谷医師は「インフルエンザの4倍以上の感染力を持つデルタ株が主役となったのだから、当然の結果。これまでの経験や常識は通用しない。マスク、手洗いなどは重要ではあるが、これだけでは十分な効果は期待できないだろう。このデルタ株は、これまでの新型コロナとは別の新たな危険なウイルスと捉えるべき。つまり、状況は一変したと言えるのではないか」と指摘する。  

 さらに、デルタ株の感染者は咽頭部のウイルス量が従来型の1000倍に増加すると言われ、ウイルス量の多さから重症化リスクも高くなると考えられる。

  実際、デルタ株の感染者で入院が必要となる確率は、従来型に比べて2.2倍、死亡は2.4倍に増加するとの報告がカナダからあるほか、シンガポールや英スコットランドからも同様の情報がある。このことを受けて、CDCも「感染者はより高い比率で重症化する」と指摘している。デルタ株が当初言われていた「感染者数が増えても、重症者数が増えないから恐れる必要はない」との見通しは否定されることになる。

 同様にCDCのリポートによると、現在、日本で接種されているワクチンは95%と非常に高い発症予防効果があるとされてきたが、デルタ株に対しては60%台に低下する。最近、日本でも2回接種した医療従事者の感染が頻繁に報告され、ワクチン接種をしても感染、発症することが明らかになった。ただ、重症化予防効果はデルタ株に対しても90%以上あるとされ、接種の重要性自体は変わりないという。

 菅谷医師は「これまではワクチン接種を進めることにより、社会全体で集団免疫を獲得して、新型コロナの流行をコントロール可能と考えられてきた。しかし、現実にはワクチンを2回接種しても発症することがかなりあり、米国のマサチューセッツ州では感染者469人中、74%の346人がワクチン接種を受けていた=出典1=」と指摘。日本でも今後ワクチンの接種率が上がる一方で、接種から半年程度でワクチンの効果が大幅に低下する恐れがあるとして、「集団免疫は難しくなった」と分析する。対策の早急な見直しを求めている。

出典1
Brown C, et. al. Outbreak of SARS-CoV-2 Infections, Including COVID-19 Vaccine Breakthrough Infections, Associated with Large Public Gatherings -Barnstable County, Massachusetts, July 2021. MMWR. 2021、{ In July 2021, following multiple large public events in a Barnstable County, Massachusetts, town, 469 COVID-19 cases were identified among Massachusetts residents who had traveled to the town during July 3-17; 346 (74%) occurred in fully vaccinated persons.}


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高致死率ラムダ株2週間報告せず

2021年08月15日 08時33分59秒 | Weblog

「もっと早く問い合わせがあれば答えた」自民党外交部会長が番組で釈明
(2021年8月12日 22時23分 東京中日スポーツWEB)

 12日のBS―TBS「報道1930」に自民党外交部会長を務める佐藤正久参院議員(60)が出演。致死率の高い「ラムダ株」が東京五輪開幕の7月23日に国内で初めて解析され、国際機関に報告しながら、8月6日に一部報道されるまで明らかにならなかった件について「早く発表すべきだったが、政府の中でも情報が共有されていなかった。(8月6日に厚労省が明らかにしたのは)報道機関から問い合わせがあったから答えた」と釈明した。
 番組では羽田空港で陽性反応が出た30代女性からラムダ株を解析、7月26日に国際機関に報告したという国立感染症研究所の「日本では懸念すべき変異株、注目すべき変異株のどちらにも指定されていない」とのコメントを紹介。五輪があるから発表しなかったのではと問われた佐藤部会長は「(検疫は)もっと早く問い合わせがあれば答えたという感覚。ラムダ株に対する意識の高さがなかった。空港検疫で見つかったとあれば発表すべき。それは内閣官房関係者も同じ意見だ」と語った。
 続けて「空港で陽性になった人のゲノム解析は全て行っている。それで今回ラムダ株が見つかった。市中では見つかっていない。感染研は今では注目すべき変異株に指定している」と発言した。
 番組に出演した国際医療福祉大学大学院の松本哲哉教授(58)は「ラムダ株はすでに中南米を中心に広域に拡大している。そういう株が日本国内に入ってくれば、出た時点できちんと公開し、デルタはあまりにも増えたので、今度はラムダへと体制を切り替えるものだと思う。五輪の時期だからということかもしれないが、早めに公開しなかったというのは何かの意図があったと疑われても仕方がない」と指摘した。


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