ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

明日の我が身とならないように・・・

2020年03月25日 01時06分23秒 | Weblog

明日の我が身とならないように・・・

イタリアの今を伝えるブログ

 

 

2月21日(金曜日)

イタリア北部のヴェネト州(州都ヴェネチア)で、

新型コロナウィルス感染による初の死亡者が確認される。

 

2月22日(土曜日)

在ミラノ日本領事館から注意喚起のメールが入る。

感染者が集中するロンバルディア州の10の市町村などで

宗教儀式を含むあらゆる公的イベントの中止、生活に必要不可欠な物資、

サービスを提供する仕事を除き、すべての労働活動を中断、学校は休み、

などなどの連絡。

あら、大変なことになった、とは思ったものの、

150キロも離れていない隣の州ではあるものの、ピエモンテ州トリノに暮らす私は、

この時点ではまだ対岸の火事気分。明日からカーニバル休暇で

アオスタへ家族でスキー。イタリア人は大げさに騒いで

パニックになったら面倒だから、明日、出発前にスーパーへ寄って

水やトイレットペーパー、パスタなどを少し多めに買っておこう。

(その後、私の予想は残念ながら的中し、ミラノでスーパーの棚がガラガラになった、

消毒液やマスクが市場から消えるなどが起こった)

 

2月23日(日曜日) 

スキー場は平和そのもの。アオスタは、ピエモンテ州とロンバルディア州の

どちらかも比較的近いので、両州のスキー客や別荘所有者が多い。

普通にバカンスを楽しみながらも、人が多いところは感染の危険があるかも? 

ということで、普通なら外食するところ、定宿のレジデンスで夕食を作って食べる。

こういうのを自粛というんだね。せっかくのバカンスなのに。

 

2月24日(月曜日) 

テレビではずっとコロナ関連のニュース。感染者がどんどん増え、

死亡者の増えかたも日本よりも早いようなのがちょっと気になる。

高校生の娘の学校から、ピエモンテ州も今週いっぱい休校の連絡。

もともと水曜日まではカーニバル休暇だから、たったの2日増えるだけだね、

残念ー、などと軽く言っている。

 

2月25日(火曜日)

3月初頭に予定していた、ロンバルディア州フランチャコルタ地域への

プレスツアーが延期の知らせ。イタリアが誇る発泡性ワインの生産者などを取材して

某誌に掲載予定だったのに、それもボツ。

トリノの中心街でAirbnb(エアー・ビー・アンド・ビー)として貸している

我が家のアパート、滞在中だったアメリカ人の学生さんが急遽帰国して行った。

これもコロナの影響。

 

2月26日(水曜日)

スキーから戻り、トリノの中心街で中華レストランをやっている友人に

メッセージを書く。1週間臨時閉店を決めたとのこと。コ

ロナウィルス先輩国である中国人の彼女は、イタリア人は

大げさに怖がって騒ぐわりに、予防策を何も取らない、と怒っている。

 

2月28日(金曜日)

日本の某婦人雑誌のイタリア旅行企画ペンディングの知らせ。

予想はしていたけど、とても残念。フリーランスの私にとっては、収入にも大きく響く。

そういえば、この企画を出す前に、取材候補地のツーリズムオフィスに連絡を取った。

数年前に別件でお世話になったところ。その時はとても対応がよく、

親切にしてくれたのに、今回もお世話になりたいとメールをすると、

けんもほろろな感じで断られたことを思い出す。

その時は、日本の方が状況が悪く、プリンセス・ダイアモンド号のことなどもあり、

感染しているアジアの国の観光客は来ないでほしい、

そんなふうに言われているような印象だった。ところがほんの2週間で、

状況が逆転して、もはやアジア人が怖い、でなくて

ロンバルディア人が怖い、なんて悪い冗談。

学校は来週火曜日まで休みが延長され、すぐに来週いっぱいと変更になる。

 

3月2日(月曜日)

自粛ムードのおかげで、北イタリアのレストランが経営難に陥っているという。

特にチャイニーズレストランは客足が激減で、一時閉店の店も多いらしい。

そんな中、一部の人たちは「大げさに騒ぎ立て、

経済にダメージを与えるなんて馬鹿げている。

いつも通り、好きなレストランへ行き、好きな時間を過ごそう」と宣言したり、

SNSに投稿したりしていた。

トリノで、中国人から支持の高いチャイニーズレストランの一軒が、

連日イタリア人で満員になるという現象も起きているという。

イタリア語でいう「ソリダリエタSolidarieta' 」、助け合いの精神というわけだ。

感染者数 1835人 死亡52人

 

3月3日(火曜日)

自粛ムードでレストランが閑古鳥という今なら、普段は予約が超困難店も、

予約取れたりして? しかも値段も下がっていたりして? と思いつく。

フードライターという職業柄、ミシュランの星付きレストランなども

たくさん食べ歩いている私だが、未だ、どうしても行けていない一軒で、

予約超困難なある店のサイトを見てみると、やっぱり! 

ガラガラではないけれど、予約可能日がカレンダーに並んでいる。

友達を誘って行くことにして予約を入れる。

家から車で行って、12席しかない店でおとなしく食べて帰ってくるだけ。

何の問題もないでしょ。

それにしても仕事はすべてキャンセルで暇なので、

娘のために桜餅を作る。今日はひな祭り。

 

3月4日(水曜日)

250キロも離れた遠くの高級レストランへ行って、何百ユーロも使うより、

こんな時だもの、地元トリノのレストランでお金を落としてあげたほうが

いいのかも、とモデナの有名レストランを予約したことを

ちょっと後悔し始める。どうしよう。

感染者数 2706人 死亡107人

 

3月5日(木曜日)

仕事の打ち合わせに、雑誌社のオフィスへ。

久しぶりに会った親しい編集者が、ハグもキスもなしの挨拶

イタリア人にとっては、「会いたかった」「会えて嬉しい」などの感情を

自然にスキンシップで表現できないのはもどかしいらしく、

照れたようにモジモジしてる。

これが感染防止のための最近の流行り(っていう?)。

でも、こんなこと、役に立つかな?

私は日頃から、多くのイタリア人が、鼻や口を盛んに触り、

爪を噛み、鼻をほじる(人前でだよ!)人が多いのが

とても気になっているのだけど、それは感染拡大に関係ない?

 

3月6日(金曜日)

トリノ在住の日本人の友人宅にランチにお呼ばれ。

大勢人が集まるところは避けたほうがいいけれど、

個人宅で2人だから安心。美味しい和食をいただきながら、

仕事がなくなって暇なはずなのに、ネットのコロナ情報ばかり見てしまって

何もできない、やる気が出ない、頭変になりそう、という話になる。

大学で教鞭をふるう知的な彼女でさえもそんな状態なのか。

いったいみんな、どんな思いで過ごしているんだろう。

彼女のイタリア人のご主人が外出から帰ってきて、

やあ、久しぶりとハグ&バーチョ(頰同士をくっつけあうキス)。

え、いいの? と思うけど、まあ、いいか。

 

 

3月7日(土曜日)

ミラノを州都とするロンバルディア州全体がレッドゾーンで、

その他、ヴェネト州(州都ヴェネチア)やエミリア・ロマーニャ州(州都ボローニャ)、

そして私の住むピエモンテ州の一部の、合計14県がレッドゾーンに指定され、

出入りが禁止されるというニュースが夕方飛び込んでくる。

友人のシングルマザーK子ちゃんは、レッドゾーンに指定された街で息子と二人暮らし、

ソムリエをして生計を立てているのに、18時以降はレストランやバールは

営業禁止という。病気も怖いけど、暮らしのこと、どんなにか不安だろう? 

予約したレストランがあるモデナもレッドゾーン。当然、キャンセル。

 

3月8日(日曜日)

朝、フェイスブックやテレビのニュースを見ていると、

昨夜、ミラノから南イタリアへ逃げるように帰って行く人が大勢いたとのこと。

東京と同じく、「地方出身者」が多いミラノで、中部、南イタリア出身者たちが、

マンマの、家族の側に帰るため、移動禁止令が実施される前に

慌てて電車に飛び乗ったということらしい。

一番感染度の高いロンバルディアから、ウィルスをお土産に持って行って

いいと思ってんの? などと大きな批判を浴び、

帰った先でも自宅隔離を強いられたり、家に入れてもらえない人もいたという。

こうしてイタリア全国へウィルスが運ばれて行った。

同時に、ミラノではスーパーの棚が空っぽになったとか、

それはフェイクニュースだとかの情報が錯綜する。

 

3月9日(月曜日)

犬友達のティツィアーナにしばらく会っていないので、どうしている? 

とメッセージを送ったら、なんと、彼女の義理の弟が感染して重症化し、

ICUに入院中という。重症化するのは高齢者ばかりだと言われていたのに! 

コロナウィルスの恐怖が、現実のできごととして急に近づいてきた。

しかもすぐ隣のロンバルディア州はレッドゾーンに指定され、

州全体が隔離状態。

今夜予定していたトリノの日本人友達5-6人を招いての飲み会、

やらない方がいいのでは?と思い始める。

私の娘は、軽い喘息持ちだから、呼吸器疾患の既往症がある人は

若くても注意が必要と言うコロナウィルスに、万が一でも

感染させるわけにはいかない。娘もそれを当然知っていて、

はっきり言わないけれど、怖がっているようだ。

ニュースで見る限り、一番感染の激しいロンバルディア州では、

一気に感染者が増えたため、病院のICUベッド数も医療スタッフも足りず

混乱している。そんなところに入院する羽目になったら怖すぎる。

しかも今夜、飲み会に招いている友人のうちの数人はレストラン関係者で、

普通の人より多く人と接しているし。

断りの電話を入れると、ドタキャンなのにみんな快く同意してくれた。

それにしても、こんな時だからパーっと飲もうよ、と計画したのは、

たった5日ほど前のこと。数日で、状況は急激に悪化している。

そしてその夜には、全イタリアがレッドゾーンとなり

(その後、レッドゾーンという呼び方から、保護地区という名称に変更)、

仕事、必要最低限の買い物、健康上の理由以外では

外出を控えることを「強く要請する」という政府の通達が出る。

外出する場合は、指定の用紙に必要事項を記入し携帯すること、

違反した場合は高額な罰金、逮捕もあり得る、とのこと。

この措置は3月25日まで続く。

 

3月10日(火曜日) 

イタリア全国の5カ所の刑務所で、面会が禁止されたことを不満に暴動が起こる。

たった2-3週間、面会できないぐらい我慢してよ、

と外部の人間は思うのだが、狭いところに大勢閉じ込められている

彼らからすれば、感染の不安などストレスは最高潮なのかもしれない。

そういえば中国の刑務所で集団感染、というのがあったっけ。

駐在員の奥様方を対象に私が開催しているお料理教室も延期。

駐在員の方々は続々と帰国されているよう。

政府がチャター機を出すかも、という噂も流れる。

後に日本政府の発表で、チャーター機の可能性は低いとわかるが、

それぐらい逼迫した恐ろしい事態の真っ只中に私はいるのね? 

 

3月11日(水曜日) 

今日からはさらに対策が強化され、イタリア全国で、スーパーや食料品店、

薬局、新聞スタンドを除く全ての店舗、レストラン、バールが営業停止。

「イタリアの未来は、私たちみんなの手にかかっています。

それぞれが、自分の役割を自覚して、責任を果たしましょう。

私たちの大切な人、両親や子供達、祖父母の健康が危険に

さらされているのですから」というコンテ首相の言葉を思い出し、

今はただ、外出しないで我慢するのがイタリアを助ける、と肝に銘じる。

薬局へ行く必要があったので、法令が出されてから初めて外出。

街は、駐車してある車が少なような気もする?という程度で、

人も歩いているし、普通に見える。まずは薬局へ。店内では床に

テープが貼ってあって、1メートル以上客同士が近づかないよう工夫されている。

薬局の次に近くのスーパーへ行こうとすると、外まで行列ができている。

混んでいるのではなくて、人混みができないように、入店制限をしているのだ。

 

3月12日(木曜日)

家から車で20分ほどのショッピングパーク内にある、

オーガニック専門のスーパーへ食料品などを買いに行く。

夕方のいつもは渋滞する道路がガラガラ。到着すると、

広い駐車場には数えるほどしか車が止まっていない。

スポーツ用品店、家電量販店、インテリアショップなど、

いつもは人気の店も、全て閉まっている。

不安が胸に迫り、涙が出る。25年暮らした大好きなイタリア、

どうなってしまうんだろう。

感染者数 12839人

死亡 1016人

 

3月13日(金曜日)

中国から30トンの医療品と医師団が到着。中国とイタリアの

経済的つながりを批判し、中国をコロナウィルス発生の元凶とするのは仕方がないとしても、

中国政府への批判と、中国人個々人への悪口をごちゃ混ぜにした

ヘイトスピーチまがいの日本人の発言をSNS上で頻繁に見かける。

今はそんなことよりも、

ありがとうと受け入れて、一人でも多くの命を救ってほしい。

18時にはフラッシュモブ(ゲリラパフォーマンスの一種)。

バルコニーでそれぞれ歌を歌ったり、楽器を演奏したりが、

いつしかイタリア国歌合唱になっていく動画を見た。

国歌を歌うなんてベタではあるけれど、こんな時は胸に迫る。

 

3月14日(土曜日)

昼の12時に、みんなでバルコニーに出て、

必死の体制で頑張ってくれている医療従事者たちに拍手を送ろうという

フラッシュモブがある。私はトリノ郊外の森の中に暮らしていて、

それを目にすることはできなかったけれど、家で一人、心の中で拍手を送る。

普段は残業なんて絶対しないイタリア人たちが、

感染の危険もあるというのに、一人でも多くの命を救おうと必死で戦ってくれている。

先が見えないこんな状態で何もやる気が起きず、

家でダラダラ過ごしているしかないのが、本当に申し訳ないと思う。

でも医療ばかりは、専門家でないと手も足も出ない。

 

3月16日(月曜日)

とても水準の高い医療技術を持つというキューバの医師団が到着。

いったいどれだけ飛行機を乗り継いでやって来てくれたのだろう。胸が熱くなる。

先週までは、イタリアがヨーロッパ圏内での感染の目玉と言われていたが、

数日前からスペイン、フランス、イギリスなどにも拡大が始まっている。

そして北米にも。

今現在、イタリアでは食料品店と薬局を除く全ての店が3月25日まで一時閉店、

4月3日までが幼稚園、学校が休校という措置が取られているけれど、

それまでに終息はあり得るだろうか。世界はどうなってしまうんだろう?

自分の仕事の見通しも、娘の高校卒業国家試験(7月予定)と秋の大学入試は?

感染者数 20603人 うち9268人は自宅隔離

死亡 1809人

回復 2335人

 

3月18日(水曜日)

北イタリアのベルガモなどでは、高齢者が次々と感染し重症化して、

病院のICUも治療設備も医療スタッフも足りていないという

悲痛なニュースが毎日のように流れてくる。

今日はついに、1日の死亡者が400人を超えるという事態に。

ベルガモ市内では埋葬する場所も棺も足りなく、

遺体を軍のトラックに乗せて他所へ運び出しているという

あまりにも悲しい報道もあった。

亡くなった方々は、感染症であるがために

家族に看取られることも、別れをすることもなく

一人ぼっちで入院生活を続け、そして亡くなったのだ。

お葬式すらしてあげられない家族や親しい人たちの

悲しみは計り知れない。

こんな悲痛なこと、これ以上広がりませんように、

祈るしかできないのが歯がゆいばかりだ。

 

(ピエモンテの幸せマダミン2)さんのブログより


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死んだ人がいるんですよ

2020年03月25日 00時07分14秒 | Weblog

死んだ人がいるんですよ。何でみんな出世するんですか。赤木さん以外みんな出世したじゃないですか。黒川さんもそうですよ。アベ総理を守った人は何で優遇されるんですか?

(福島瑞穂・・・2020・03・23参議院予算委員会)


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