JOC理事・山口香氏からも「五輪延期を」
JOC内部からも開催に異論
(2020/3/19 19:49 日本経済新聞 電子版)
1988年ソウル五輪女子柔道銅メダリストで、日本オリンピック委員会(JOC)理事を務める山口香氏が19日、日本経済新聞の取材に対し、新型コロナウイルスの感染拡大で開催が危ぶまれている東京五輪・パラリンピックについて「アスリートが満足に準備できない今の状況では、延期すべき」と語った。27日に東京都内で予定されるJOC理事会でも、同様の意見を述べる考えがあるという。
五輪選手団を派遣するJOCの理事が、延期や中止を公に発言するのは初めて。既に海外の新旧メダリストらがSNS(交流サイト)などで開催に疑問の声を上げているが、開催国の日本からも上がり始めた。
山口氏は、予定通り7月の開幕姿勢を崩していない国際オリンピック委員会(IOC)について「アスリートを危険にさらしている」と批判。「報道などで欧米の様子を見る限り、選手が通常のトレーニングを続けられる状況にあると思えない。それでも『試合がある』と言われれば練習するのがアスリートの性(さが)で、この状況で『準備を続けてほしい』と言うIOCは、アスリートよりも違うところを見ているのではないか、と言われても仕方がない」と語った。
スペイン・オリンピック委員会の会長も「不平等な状況が生じる」と同様の理由で延期を主張している。日本でも海外遠征から戻ったバドミントンやフェンシングの選手が自宅待機を強いられている。
山口氏は、全国の自治体に海外チームの事前合宿取りやめの連絡が相次いだり、26日から始まる聖火リレーも体調不良の人は沿道で応援しないよう要請されたりしている現状も、延期を主張する理由に挙げた。
「五輪が他のスポーツイベントと違うのは、スポーツを通じて世界平和を実現する理念を掲げていること。世界の人々が楽しめない状況で開催すべきではない。ここで開催を強行して『オリンピックだけ何なんだ』と、五輪そのものに疑問の目が向けられるのが一番怖い」と危惧した。
IOCは17日に「大会まで4カ月以上ある現段階で抜本的な決定を下す必要はない」との声明を出した。東京の準備状況を監督するジョン・コーツ調整委員長は、オーストラリアのメディアで開催可否の判断期限を設けない意向だと報じられたが、山口氏は「いま延期を決定できない理由があるとしても、判断のデッドラインは示すべき。マラソン・競歩の札幌移転のように、IOCによる突然の発表は許されない」と主張した。