旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

100キロハイク   

2016年09月13日 09時10分03秒 | エッセイ
100キロハイク   

 冒険家の植村直己氏は北極圏単独犬ぞり旅行に備えて、北海道から九州の端まで3,000kmの徒歩旅行を51日間で行った。一日60km弱だ。うん、こういう距離感って大切だよね。「だから植村は素人なんだ。」「北極圏と文明国日本とどう繋がる?」批判は簡単だが、自分で命を賭ける訳でなければ黙っていて欲しい。植村氏にとって体で覚えた3千キロの距離感が大切なんだ。
 秀吉の〝中国大返し〟は200kmを7日間だから一日30kmほどの行軍だ。武器を携行して、次の日には山崎の合戦だからこれは早い。比叡山の「千日回峰行」は6年目に一日60km x 100日、7年目に84km x 100日、山中30km x 100日。一日84kmを連続100日は化け物だな。
 自分にとって目安となる距離は百キロだ。埼玉県本庄市から、東京は高田馬場まで一昼夜かけて歩いた。大学のサークルが主催するイベントで、略して100ハイ。ネットで見たら今でもやっているね。記憶では23時間かかって昼前に大学にたどり着いた。数百人が参加して何ヶ所か休憩所が用意してあった。夜中はその内の一つ(体育館のような所)で、3時間ほどゴロ寝をしたように思う。
 途中で脱落する奴は、最後尾で自動車部が拾って近くの駅に運ぶ。完走(歩)率は6-7割か。女の子は10人中2-3人だが、彼女達の完歩率は8-9割だと思う。女は強い。ほとんどアスファルトの国道を歩くのだが、時速4kmなんてまどろっこしいものではない。時速6-7km/h、最初の数キロは走る、走る。休憩後も最初は走る。夜中に大人数で行列をなし、先頭は旗まで持って異様な光景だ。土日にかけて行われたので、夜中に並走する暴走族の兄ちゃんも、「ん、なんだ?」
 飯はどうしていたのかな、覚えていない。結局、長距離は足の裏の勝負だった。靴との相性が物を言う。地下足袋の参加者がいたけど、あれは吉だったのか、凶だったのか。脱落するケースは、疲労よりも足の裏のダメージ(マメ、血マメ)によることが多い。自分も途中でマメを針でつぶして水を出し、バンドエイドを貼って歩いた。まあ空手で足の裏は鍛えていたのだが、流石に100kmは長い、23時間はキツイ。翌日、翌々日は疲労困憊、筋肉痛でヨレヨレだった。けれども100キロを一日で歩いたという感触は残っている。それが財産になる。


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