旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

エル・ニーニョ

2016年12月19日 11時46分46秒 | エッセイ
エル・ニーニョ

 『エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。逆に同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。』国土交通省、気象庁のホームページを抜粋してみた。
 何故海水温が数度高いくらいで、エルニーニョ発生と大騒ぎし、それが世界で異常気象を起こすのか不思議だったんだ。エルニーニョ(El Niño)はスペイン語で「男の子」の意味。元々南米ペルーとエクアドルの間のグアヤキル湾やその近海で、毎年12月発生する海水温の上昇のことを指した。これは南東貿易風の弱化によって発生する。地元漁師の間で、ちょうどXマスの頃なのでイエス・キリストを指すと同時に「男の子」を意味する「エル・ニーニョ」と呼んだ。
 そして数年に一度、この海水温の上昇現象が大規模に発生し、太平洋東部の広範囲に及ぶとペルーの大雨、南米西岸の大不漁、さらにオセアニア・アジア・北米にまで波及する天候異常が報告されるようになった。海洋学者や気象学者の間で、元のニュアンスと場所がちょっと違うが、「エル・ニーニョ現象」と呼ぶようになった。
 さて物事には陰と陽、山と谷、オスとメス、金持ちと貧乏人があるものだ。エルニーニョの逆さまはラニーニャ(La Niña)「女の子」の意味だ。ラニーニャはエルニーニョ現象とは逆に、東太平洋の赤道付近で海水温が低下する現象を言う。エルニーニョとラニーニャは表と裏の関係だが、ちょっとした違いはある。
・ラニーニャによる海水温の低下は、エルニーニョによる上昇ほどは強くならない。
・エルニーニョの次の年にはラニーニャが現れることが多いのに対し、ラニーニャは2-3年と長期に渡ることが多い。
 漁師はラニーニャ、女の子が好きだ。アンチョビーナ(カタクチイワシ)はラニーニャの年に大漁になる。何故かは後で説明する。

 ペルーの首都リマは、日中は相当暑いが空気は乾燥してカラっとしている。最初にリマに行った時、折り畳み傘を持って仕事に行こうとホテルのフロントを通ったら笑われた。10年は降っていないぜ。海岸線は街の直ぐ先だが、そこには南極から流れてくる恐ろしく冷たいフンボルト海流が流れている。捕れる魚はカレイなど寒流系のものだ。貿易風は東風だ。東風とは東方からやって来て西に向かう風だ。東から吹いて西に向かえば西風になる。貿易風(東風)が大西洋から暖かくて湿った空気を運び、それが大アンデス山脈にぶつかり大雨を降らすから、山脈の東側の広大な地域は高温多雨、アマゾンの大密林になる。そして山越えした乾燥した風がリマの市内を吹き過ぎる。
 さて何でエルニーニョが発生するかというと、東風が強くなり西部に溜まっていた暖かい海水が東方に流され、東部では冷たい水の湧き上がりが弱まる。東風(貿易風)と地球の自転の効果によって、南米の東部沖では冷たい海水が、深いところ(数百m以上)から海面近くに湧きあがってくるんだ。それがエルニーニョでは弱まるわけ。
 ラニーニャの時は東風が強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積し、東部では冷たい水の湧きあがりが平常時より強くなる。深海から栄養分をたっぷり含んだ深層水が水面に湧き上がれば、魚は集まり大漁だ。
 エルニーニョの海水温の上昇は、通常では1-2度だが1997-1998年にかけては20世紀最大規模の5℃上昇した。その年、東日本、西日本では大暖冬、北海道では寒冬、欧州東部で洪水、北米で豪雨、東南アジアで少雨、全世界で高温であった。
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