旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

ケンカ考

2015年07月07日 17時28分50秒 | エッセイ
ケンカ考

 男は強くなくちゃ。ケンカに勝たなくちゃ。
学生の時、早稲田松竹で見た高橋英樹の『けんかえれじい』、格好良かったナー。観客がセリフに共感して、劇場がどよめいたもんな。
自分が子供の時は、いかにも頭でっかちでひ弱なガキだった。小学校高学年になって、何かのきっかけでライバルのシバ×君と取っ組み合いになった時は、どうしていいか分からず、ただ相手の服を両手でつかんでいたが直ぐに下にされた。明らかに負けでみんなに見られた。
他校の不良に絡まれた時は、友達と二人でいたのに自分だけがターゲットにされ、何も出来ずにやられて泣いた。幸か不幸か中・高でケンカ実戦をした記憶はない。高校最後の年に見たブルース・リーの『燃えよ!ドラゴン』で男の本能に火がついた。アッチョー。中華街で人民服とヌンチャクを買ったもんね。
大学二年で空手を始め、二年弱で黒帯(初段)を取った。だけど、アレレ随分ブルース・リーの技とは違う。後ろ回し蹴りなんてやんないぞ。練習って型ばっかしじゃん。それでも若くて体力もあり、空手のおかげで自信がついた。海外に出ても素手のケンカなら負けない、狭いEVの中なら無敵だと思っていた。ところが実勢に殴りあう場面にまで発展することは無かった。むしろ空手をコミュニケーションの道具にして、人気者になったことは良くあった。
ケンカの技術はある程度身につけていて自信もあるのだが、実際にどこまで使えるのかは分からない。もうすぐ六十になる身で、体の柔軟性も失われてきていて、電信柱を前に上段回し蹴りのケイコも、ここ十年来全くやっていない。ところがどっこい、先日ケンカに巻き込まれた。詳細は省くが、夜遅く若いよっぱらいに絡まれ一発殴られた。その後は男を押さえ込み、手も足も遠慮なくブンブン振り回してくる相手に馬乗りになり、壁に押し付け振り回したが、観客も多くこちらから殴ることは出来ない。
自分が傷つくのはいやだが、人間の本能として相手を傷つけることにもためらいが生まれる。約束組み手で相手が受けることが分かっていても、かなり意識的にやらないと腕が縮こまるものだ。結局観客に抑えられわめく相手を背にして駅に向かった。ところが次の日、鏡を見て魂消た。一発だけ当たったヘナチョコパンチで目の上がプックリ腫れ上がっている。コブになってそのせいで目が細くなり両目がチンバになっちゃった。今日も夜勤で良かった。
今回は相手が弱すぎた。ケンカに勝った爽快感は無いが、冷静に対処した事には満足している。アノネ、こんなチンケなケンカ話でゴメンね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする