中日新聞(11月24日付)福井県版
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オバマブームに沸いた小浜市 “3度目の好機”生かす
オバマ氏が勝利した米大統領選で、発音が同じという縁で氏を応援し、大いにわいた小浜市。人口3万2,000人の小さな街ながら、その盛り上がりは内外で広く報じられた。ただなぜ、こうも盛り上がったのか。背景を探った。
盛り上がりの火付け役となった市民グループ「オバマ候補を勝手に応援する会」。事務局長を務めるホテル役員の藤原清次さん(56)は「正直、ここまで盛り上がるとは思わなかった」と振り返る。
会は今年2月、街の活気づけを狙って、藤原さんら3人で発足。知人らに声をかけ、シンボルマークであるオバマ氏の似顔絵や、のぼりをつくるなどして活動を始めた。
これが注目され、オバマ氏が予備選で指名獲得に向けて前進を続けると、市内の商店も反応。まんじゅうなど「オバマ」の名称を付けた商品が次々と生まれ、フラダンスの応援も登場し、急速に盛り上がった。会の会員も1,500人を超え、会の似顔絵入りTシャツは人気を集めた。
こうした動きに、会の発起人の一人で住職の玉川正隆さん(44)は「小浜では5年前の若狭路博を十分に生かしきれず、最近の連続ドラマ『ちりとてちん』ではブームに乗り遅れた感があった。自分たちもそうだが、市民にも『今度こそは』の気持ちがあったのでは」と指摘する。
ちりとてちんで観光客は増えているが、増加は放映が終盤に入った今春から。放映とうまく連動しなかった。商店や市民からは「今度は機会をしっかりとらえたい」「ブームを生かして街を盛り上げたい」などの声をよく聞く。小浜商工会議所の中野敦夫事務局長も「3度目のチャンスへの思いなどが現れたのでは」と話す。
もちろん発音が同じという親近感、「初の黒人大統領誕生か」というニュース性が市民の関心を高めた点もあるが、少なくとも過去への思いが背景にあるとはいえそうだ。
市の中心市街地の活性化計画づくりにかかわった川上洋司福井大大学院教授も「オバマ氏という外からのブームを取り込み、街を盛り上げようと考える市民の熱意を感じる。一定の効果は期待できるのでは」と話す。
ただ外部から「ふざけすぎ」との批判も出た。会は解散せず今後も活動を続けるが、関係者らは「みんな選挙を一つのきっかけに街を盛り上げようとしているだけ。正しく理解してもらえるようにしたい」と話している。
藤原さんは今回の盛り上がりを「小浜を活気づけ、知名度を上げた点で成功した」と話す。今後は市民らが成果をどう持続させるかが問われそうだ。
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