人混みだぁあ! 青空だぁあ!
「野良犬顔した純な奴!」
白い広場に10才くらいの少女が立っていたぁあ! 少女は大きな口を開けていたぁああ! 少女は、薄目で街灯のハトを見つめていたぁあ! ハトが飛び立ち、影が少女をかすめたぁああ! 暖かい、のどかな午後だったぁあああ! ベンチに青白い顔をした青年が寝ていたぁあ! 青年は26才だったぁあああああ!!! 青年は黒い背広姿だったぁあああ! 青年は白いくしゃくしゃのワイシャツを着ていたぁあ! 青年の髪型はアフロなパーマだったぁあああ! 「遊戯シリーズ」の松田優作みたいなアフロだったぁあ! まるで死にかけた野良犬みたいだったぁあああ! 青年は起き上がって煙草を吸ったぁああ! ハイライトだったぁぁあああ! “プファァアアぁああああああああ!!” タバコの煙がゆっくりと空に昇って行ったぁあああ!!! 青年は、それを見つめている少女に気づいたぁあ! 青年は、笑みを浮かべて少女を呼び寄せたぁああ! 少女は、このこのと、やって来たぁああああ! 青年は優しく少女に話しかけたぁあああ! 「君は何を、していたんだいぃいいいいい??」 そして、少女は、 「とりっ、とりっ、とり!!!」 っと言って笑ったぁああああああ!!! その少女の余りの美しさに青年は虜になったぁあ! 輝く少女に魅とれながら青年は再び話しかけたぁあ! 「おかあさんは?」 すると少女は森の方を指差して言ったぁあああ! 「あ~、あーっ、あ~っ!」 青年は何だか、おかしいなと感じたぁああ! 青年は少女の身元を確かめようと彼女のポケットを探ったが、 何もなかったぁぁあああ! それから、しばらく青年と少女は話したぁあ! そして青年は少女が少し知恵遅れだと気がついたぁあああ! 青年は少女を手放したくなくなってきたぁああ! 青年は少女を自分の小さなアパートに連れていったぁあああ! そして青年は少女と一緒の生活を始めたぁあああ!
涼子という女性の世話になっていたぁあああ!
新聞を変える度に貰った優待券がいっぱいあったぁあああ! 毎日、毎日、青年と少女は、豊島園に行って遊んだぁああ! ぐるぐるぐるぐるメリーゴーランドに乗って回り続けたぁああ! 少女はグルグル回るメリーゴーランドが大好きになってしまったぁあ! 2人で毎日ぐるぐる回っていると、まるでトラルファマドール星の 動物園の檻の中で宇宙の終わりまで一緒にいるみたいだったぁあ! 青年も少女も幸せだったぁああ! 今までの人生で一番、幸せな時間だったぁあああ! 毎日2人で笑い合って、永久にぐるぐる回っていたかったぁあ!
青年は、ぐるぐる回って帰って来ると涼子の置き手紙を見たぁあ! “さよなら、あなたはもう絶対に私の人生に関わらないで下さい” と!書いてあったぁああああああああああ!あああ! 豊島園の優待券も尽きてしまっていたぁあああ! 青年は家財道具を全て売り払い、知人に借金をしまくったぁあ! 青年と少女は再びメリーゴーランドでグルグルまわったぁああ! だが、何だか・・・何だか・・・気持ちよくなかったぁああ! 何故だか・・・何故だか・・・幸せな気分になれなかったぁああ! 青年は、少女に言っぁああ! 「僕たちは少しグルグル回り過ぎたんだよ。人生に疲れ気味なんだよ。 しばらく都会を離れて、海に行ってのんびりしよう!」 翌日、青年は少女を連れて伊豆の海に出掛けたぁああ! 2人は海のすぐ近くの旅館で、のんびりと暮らし始めたぁあ! 今度は浮き袋でグルグル回ったぁああ! 毎日、毎日、浅瀬で波に揺られて、お互いを回し合ったぁああ! 少女は無邪気に喜んでいたぁああ! 幸福そうだったぁああ! しかし、青年は何だか浮き袋でグルグルと回れば回るほど、 憂鬱な気分になっていったぁああああ!! 暗く重く、回りながら砂の中に沈み込んでいくような気がしたぁあ! ある夜、青年は少女に暗い目をして話したぁあああ! “もう、お金がない、だからもうすぐ僕たちは死ぬんだよ”とっ! それを聞いて少女は、キャッキャッとはしゃいでいたぁあああ! そして“メリーごぉおおお!”と、叫んだぁああぁぁ! 次の日、青年は旅館で精算し最後の金で豊島園に少女を連れてったぁあ! 2人は再びメリーゴーランドに乗ってグルグルまわったぁあ! 無邪気に喜ぶ少女を見て青年の目からはポロポロと涙が落ちたぁああ! メリーゴーランドから降りても青年はグルグル回り続けたぁあああ! 空も地べたも、辺り一帯もグルグルグルグル回っていたぁああ! そして、ふと気づくと青年は少女を雑踏の中に見失っていたぁああ! 大変だぁあああああああ! 青年は何時間も血眼になって少女を探し続けたぁあああ! しか~し!青年は次第に “この方がいいんだ!この方が良いんだ!”とつぶやきだしたぁあ! そして、青年は、少女を探すのを諦めて、遊園地を出たぁあああ! 青年はトボトボと外の大通りを歩いていったぁあああ! すると!車道の向こう側から青年を指差して、 “きゃぁあああーーー!きゃぁああああーーーー!” と、叫ぶ少女を見つけたぁああああああ! 少女は青年に向かって車の流れの中に飛び出したぁああ! 青年もすぐにダシュし、車の流れから少女をかばったぁあ! 青年は清掃局の車に足を踏み潰され、気絶したぁああ! が! その瞬間、血だらけの彼を見つめる天使のような少女をみたぁあああ! 青年は、“ああ、自分は幸福だなぁ”と思って意識を失ったぁあああ! そして青年は、その少女と2度と会うことは無かったぁあああ!
義足になった青年は田舎の両親のもとで、静かに暮らしていたぁあ! 来る日も来る日も、夕暮れに、彼は海浜を散歩して過ごしたぁああ! ある日、青年は突然、東京へ出掛けたぁあああ! そして豊島園のメリーゴーランドに乗ってぐるぐる回ったぁああ! 天使のような、あの少女の事を思い出して回り続けたぁあああ! ぐるぐる回りながら彼は思ったぁああ! “俺は出来るだけ「純」な人間になりたいぃぃぃい!” “俺は知恵遅れになりたぁぁあああいぃぃぃいいい!” “俺は死んだ人間と子供しか愛せないぃぃぃぃいい!”
青年は散歩の途中で元気に遊ぶ子供たちと知り合ったぁああ! そして次第に青年は、その子供たちと仲良くなっていったぁああ! 青年は散歩の途中で、その子供たちと遊ぶようになったぁああ!
子供たちは逃げて逃げて、岬の突端にある灯台に昇っていったぁああ! 子供たちは灯台の梯子を昇って一番上の見晴らし台に到着したぁああ! 義足の青年は死にそうに息をつきながら昇ったぁあああ! そして、やっとの事でそこに到着したぁあ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁぁああ! 子供たちは、疲れて座り込んでる青年を取り囲んだぁああ! そして無抵抗な青年の義足をいじりだしたぁあ! 子供たちは、ついに義足を外して、下の海に投げ捨てたぁあ! ポイッと簡単に投げ捨てて天使の様に笑ったぁああああ! 日が暮れて、子供たちは青年を一人残して、去っていったぁああ! 次第に薄暗くなる中で青年は降りる事ができずに、もがいたぁああ! そして、青年は灯台の最頂上の見晴らし台で一人夜を迎えたぁああ! 真っ暗だぁ!真っ暗だぁ!! 真っ暗な闇の中、何かが灯台から落ちる音がしたぁああ! 何かが海の中へ、 「ボッチャン!」 と落ちる音がしたぁあああああああ!
青空だぁあ! 都会だぁあああ!
おわり
KIPPLE(叫ぶ痴呆の会) |
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