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kipple
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「あ~あ、今日も又、嫌な一日が始まるのか。」 僕は寝床で思った。 僕は、今、中学3年生、博愛中学3年H組の一員だ。僕のクラスには、どうにもなんないイジメ・グループが5・6人いる。私立の男子校だから、当たり前のことだと思うが、嫌なもんだ。 それに、僕は、ちょっとトロくて、反応が遅いので、そいつらにバカにされるんだ。ちょっと顔を会わせると、僕に何かと命令したりする。 「おい!蚊!牛乳買ってこい!ゲーム持ってこい!」 とかである。 蚊・・・そう、僕のことを奴ら、そう呼ぶんだ。僕の名前が香山真一というからだ。腹が立つが逆らうと、みんなの前でバカにされるし、はたかれる。だから、僕は、じっとこらえて言うとおりにしているのだ。 ああ、ほんとに学校なんか行きたくないなぁ。 それでも、僕は顔を洗い飯を食らい、トイレをすませて、家を出た。僕の家は、阿佐ヶ谷。ここは、僕の天国だ。いつも学校から阿佐ヶ谷駅に帰ってくると、ほっと安心した気分になるのだ。 8時15分、学校のそばの中野駅に着いた。学校は、8時半から始まる。学校は駅から歩いて15分だから、みな、ちょうど8時15分くらいに着くんだ。 僕と同じ中学の生徒たちが、そばを通っていく。みんな、大きな体だ。僕なんか、身長155cmなのに・・・ 駅を出て同校生の列と一緒に歩いていくと、公園の階段を一人のメガネをかけて、重そうな荷物を持った、おじいさんが上ろうとしていた。 僕は見ていて、心が熱っぽくなって、そばへ行って荷物を持ってあげた。しかし、おじいさんは、いかにも頼りなさそうな目で僕を見るので、僕は自分をとても情けなく思った。それ程、僕は、弱々しいんだなぁ・・・。 8時32分、学校の門の前に来た。さっきのおじいさんのおかげで、2分遅れた。教室に行くと、もう学活をしている。しかたなくガラッと戸を開けて入ると、みんなが僕を見て笑ってやがる。 先生が、 「香山、お前、いっつも遅いなぁ。何か訳でもあるのか?」 と言った。 遅く行けば、それだけ学校にいる時間が短くなるじゃないか。 「お前、もう遅刻10回目だぞ!明日から10日間、罰当番だ。要するに掃除だ。8時までに来て、教室を掃いていろ!」 僕は泣き出したくなった。 嫌な顔をして席に着くと、先生が出ていった。僕の隣には、小佐見という奴がいる。そいつは、なかなか優しい奴で、僕はいつも好ましく思っていた。 その時、ボールが僕の頭にポ~ンとぶつかった。 「誰だ!」 「おい!蚊!ぼうふらのトロトロ野郎!てめぇ!「だ・れ・だ・!」だとぉ?」 クラスのいじめ隊の一人が投げたのだ。 「やいっ、てめぇ!ちょっと来いよ!」 僕は教壇の上に連れていかれた。 「あ~、むかつく!てめえ!誰に向かって、そんな言葉を吐きやがったんだ?もう一度、言ってみろよ、バカ!」 奴は狂ったように大声で叫いた。 「やめてくれよ」 僕は、言った。 「やめてくれよだと?!バカ。謝れってんだよ!ボコボコにして、ぶっ殺すぞ!」 奴は、ぶるぶる震えて怒声を発した。 「わかったよ、わかったよ。」 と、僕は言った。 「てめ~!」 そいつは、僕の顔を、2回、ひっぱたいた。 僕は仕方なく、 「ごめんなさい・・・」 と言った。 奴は、「これから気を付けろ」とか言って、自分の席に戻っていった。僕は恥ずかしくてたまらなかった。それと同時に怒りが、こみ上げてきた。 僕が、とぼとぼと席に着くと、尻が凄く痛い!さっきの奴が画鋲を置いていったんだ。僕は、ますます怒った。そいつの名前は聞いただけで、不快になる土屋という名だった。僕は心の中で、死ね、死ね、と思った。 その日は、ずっと土屋、ノートに土屋を残虐に切り刻むマンガを書きながら、死ね、死ね、と呪い続けた。 4時、やっと学校が終わった。学活も終わり、もう帰ろうとすると、後ろから大声で、 「おい!蚊!てめぇ、今日、俺のかわりに掃除していけ!」 と言われた。 そいつは平野という不良だった。僕は仕方なく、平野のかわりに掃除をした。みんな、かたまって、しゃべりながら掃除をしていた。・・・が僕は一人で隅を掃いていた。 何故か、僕は、みんなに好かれないんだ。僕が弱くてトロくてドジなせいだろう。 その日の夜だった。 僕は好きな岩井俊二の「ピクニック」という映画をしんみりと見ていた。 午前0時、僕は外に波の音を聞いた。 「なんだろう?」 カーテンを開けて外を見ると、そこにはいつもの真っ黒い夜は無く、どこまでも続く青い海、そして空、その上にポツンと僕の部屋が、浮いているのだ。 波の音は消えて、今は無音の世界。ふと見ると彼方に何かが浮いている。人だ! それは、僕自身だった。大空にたった一人で、うつむいている僕。 おもわず、僕は涙が、頬をなぞっていくのを感じとった。 はっと目が覚めると、もう朝の7時だった。 僕はいそいで、嫌な学校へ向かった。 その日も、いつもの・・・御多分に漏れず、嫌な1日であった。 牢獄・・・地獄・・・の繰り返し・・・。 ある日、いつものように、嫌な学校へ行った。・・・が駅からの道で、野良犬が、僕にくっついてきて離れないのである。僕は、とても可愛く思って撫でてやった。ちっちゃな小犬だった。このまま行くと、教室まで入って来そうだ。 僕は、この日、特別に学校も何もかもイヤだった。昨日、土屋たちに、よってたかって下級生の前でバカにされて、殴られたのだ。(その状況は、僕があんまり惨めなので、あえて記さない事にする) 僕は、この小犬が、可愛くてたまらなくなった。なんだか、僕に似ているところがあるんだもの。 そうだ。この犬と一緒に、いっそ家を出て・・・と、ちょっと僕は、そう思った。 しかし、そんな事では、ますます弱くなるだけじゃぁないかなぁ。それに金も無いし。結局、僕は、そんな考えを捨てた。自分でも自分を勇気がないな~と思った。 と思っているうちに、学校の前まで来ていた。犬は、まだついてくる。ふと時計を見ると、もう10分も遅れている。もう何だか、学校の中に入らなくても良いような気分になってきた。 僕は、今日、さぼろう!と思った。そう思うと一気に駅まで駆けて行った。小犬もついて来た。 「ああ、しまった。犬は電車に乗せることが出来ないや。」 僕は近くの文房具屋で大きな紙袋を買った。そして、その中に小犬を入れて電車に乗った。 “ゴトン、ゴトン”と電車は亀戸まで来た。 僕は犬を連れて降りた。何で、そんなところに来たのか、僕には分からなかった。ただ、なんとなく来てしまったんだ。 僕は、とぼとぼと歩いた。犬はチョロチョロと、ついて来た。 今、まだ9時半だった。家々が、ぎっしりと建ち並んでいて、どう見ても裏町という感じのところだった。 ずぅっと歩いて行くと川があった。何て言う川かは、知らない。僕は川の岸のコンクリートの上に座った。そうして、しばらく下水が川に流れ込んで、ゆくのを見つめていた。 この日は、やけに空が透き通って晴れていた。僕は、すこぶる気分が良くなってきた。犬は、しっぽを振り振り、僕に飛び付いてくる。僕は弁当を少し、犬に分けてやった。 僕と犬は、ずぅっと、そこに座って、川と、その向こうの家々を見ていた。僕は、本当に、一生こうしていられたらなぁ、そんな風なことを考えていた。 それは、何とも言いようのない気分だったのだ。真っ黒な川の水、その流れに、空き缶や運動靴などが、浮いている。そして、その向こう岸の道では、おじいさんが自転車をこいで通り過ぎていく。また、その向こうには、いかにも裏町といった感じの家々が、ずうっと遠くまで並んでいる。 昼頃なので、それらの家からは白い煙が、もうもうと立ちのぼっている。僕は、こんな光景に、この時、限りない感動を感じ取ったのであった。 ふと、僕は時計を見た。もう2時だ。 僕は立ち上がって、どこへともなく歩き始めた。しばらく、僕は、呆然として歩いていた。 すると、キ--ッ!と音がして、ガチャンという音が、続いて起こった。その方向を見ると、もう80才くらいのおじいさんが自転車ごと、ひっくり返っていた。 僕は、さっき川の向こうに見たおじいさんかな?と思った。しかし違うようだった。僕は、そばへ寄って、おじいさんを助け起こした。 どうしたんです? と聞くと、おじいさんはオートバイに跳ね飛ばされたそうだ。そう言えば、オートバイの音がした。もう自転車は、ひん曲がって使えなかった。 僕は、おじいさんを送って行くことにした。 そのおじいさんは、奥さんに死なれ、今は、一人で暮らしていて、毎日、ステレオの部品を何百個と作っては、お金に換えて貰っているそうだ。 僕は、さぞかし淋しいだろうな、と思った。おじいさんには昔、僕くらいの子供が、いたんだそうだ。でも、その子は、家出をして、今では生きているのか死んでいるのかも分からないそうだ。 僕は、おじいさんに同情して、涙が、ポロポロとこぼれ落ちて来た。それでも、まだ働いて暮らしている、おじいさんは偉いなと思った。 おじいさんの家は、アパートと言っても、陸橋の下で、ひどいものだった。おじいさんは、しきりに、有り難うと僕に言った。僕は、「元気でいて下さい」、と言って分かれた。 犬はついてくる。僕は抱き上げて何度も、撫でてやった。 回りの家並みの上から、赤い太陽が青い紙に、ぽつりと、赤い絵の具の液を落としたみたいに見えた。 家々の中からは、魚の焼けるにおいが漂ってきた。夕陽が、僕の顔を、真っ赤に照らしているのが分かった。 家々の建ち並ぶ細い道を歩いていくと、雑草が、ちょぼちょぼと生えている空き地があった。僕は、その空き地の中の大きな石に腰を降ろした。 今日の事を、もう一度、考えてみたかった。あの寂しさに耐えて、死を待ちながら、たった一人で暮らしている、おじいさん。僕は、また胸に何かが、こみ上げてきて、目頭が震えるのを感じた。 僕は、しばらく夕陽に照らされ、白い煙を上げて建ち並ぶ家々を眺めながら、思った。 さみしくて、惨めなのは、僕だけじゃないんだ。もっと・・・もっと・・・悲しみを持っている人だって、たくさんいる。 みんな、それに耐えて生きている。涙が、また流れた。犬の頭を、思いっきり撫でてやった。そうしていると、またしても涙が出てきた。 僕は立ち上がった。そして、近くの駅に向かった。その時の僕の顔は、学校の連中が見たら、さぞ、驚いた事だろう。 犬が、僕の前を走っていった。その小犬は車道に出て行った。 僕は、「あっ!」と思った。自動車が迫って来るのだ。 「あぶないっ!」 僕までも、思わず、車道へ飛び出してしまった。 僕は、犬を、ドンッと突き飛ばした。 そして、車は、僕を轢いた。 ・・・・・・静かだ・・・・・・ もう、薄暗くなった空が見える。それだけだ。他のものは、もう何にも見えない。ここは、どこなんだ?まだ、さっきの所にいるのか?広い空だ・・・・・・。 父と母の顔が、浮かんできた。父と海で遊んだのを思い出した。僕と弟は、迫る波に巻き込まれて、ひっくり返る。しかし、父は平気だった。波に逆らおうとしないから。父の笑顔が浮かぶ。しかし、何も聞こえない。 弟・・・弟と喧嘩した。弟の、まーちゃんは部屋にカギをかけて、僕を入れてくれない。・・・お母さんと服を買いに行った。お母さんは、茶色がいい、と言うが僕は黒が良かった。・・・家族で、お正月の御祝いをした・・・。 ・・・暗い・・・何かが、光っている。星か?・・・さっきの、おじいさんがいる。笑っている。楽しそうだ。そばに男の子がいる。おじいさんの子供だろう。良かったなぁ・・・。 犬が走ってくる。キョロキョロしてる。 おいっ!僕は、ここにいるんだ!ここだよ!・・・犬は行った・・・もう何にも無い。 僕は、どうしたんだろう。死ぬのか?・・・何だかカラッポな感じだ・・・。 僕が死んだって、友人たちは、何とも思わないだろう・・・父や母が可哀相だ・・・おやじ・・・また、僕は父を思った。 父と僕は、山道を歩いている。電柱に石をぶつけながら。石が当たったら進んでよいのだ。外れたら当たるまで投げる。父は僕を残して、どんどん先に行った。 ・・・もう真っ暗だ・・・犬は・・・どうなる・・・・・おとうさん・・・・許して・・・く・・・れ・・・・・ ・・・空・・・空・・・は・・・広い・・・な・・・・・ど・どう・・・して・・・今まで・・・気が・・・つかな・・・かった・・・ん・・・だ・・・・・
その少年は即死だった。ガードレールに叩きつけられ、地面に仰向けに、転がっていた。目を開け、食い入るように空を見つめていた。犬は、少年の死体の回りを、鳴きながら、ぐるぐると回っていた。人が、すぐに回りを取り囲んだ。 犬は、少年の顔を、ペロペロ舐めていた。救急車が来て、その死体を運んで行った。少年の両親は、泣き崩れた。 学校にも通知が行ったが、生徒たちは何事もなかったように遊んでいた。不良たちは、せせら笑った。葬式が、おこなわれ、5日後には、何事もなかったように、全て平常に戻った。当たり前の事だ。 小犬は少年の死後、3日目に、オートバイに跳ね飛ばされて死んだ。死骸は、保健所で焼かれた。今では少年を思い出す人もいない。 誰も救われなきゃ、誰も得ない。 すべては、平常に動いているとは、そういう事だ。 しかし、その後、何年か経って、あの川の岸に座っている少年と犬を見た老人がいた。その人こそ、あの時の老人だった。老人は優しかった少年の事を覚えていた。老人は、もしやと思って声をかけたが、その時には、誰も、いなかった。 |
島に住みたいと思っていた。オレの細胞に、微かな光沢が、島にゆけば必ず宿るだろうと思っていた。雑踏の中で、うらやましく、鳥と空を仰ぎながら、灰色の細胞を確かめる時、いつも、しっかりと島は怠惰に対する抗体となり、救った。 沼のような日々の中で、目覚める事は始点、寝る事は終点、そして、同僚と空騒ぎをして、胸に切り子のような不快のわだかまりが巣くう時、死点であった。 オレは虚弱であった。笑わぬ事を、死ぬ程望んでいたが、笑わぬ事は死ぬより恐ろしかった。かくしてオレは、いい奴で、頼りにならぬ奴で、ふがいのない男だった。 オレは悪い奴で、強情で、尊厳に満ちていたが、その通りに振る舞う事は、死点の中では不可能だった。オレは、人間と、社会生活に絶望し嫌悪していたが、その中にも、一つの理想があった。 それは少女の事だった。長い間、オレは、唯、少女という異生物全般に奇妙なユメを抱いていた。少女が、どうあるのか、その規定は無かった。唯、少女という存在、純真で優しく、又、不純で冷酷、そして、社会の暗黒への大いなる拒絶、又は、大いなる受容。それらの同居した、なめらかで柔らかい生き物。それを望んでいた。 だからこそ、少女との島への脱出こそが、オレの人生を差し照らす穏やかな光であり、希望なのだった。 オレは道端で、よく夕陽を浴びて栗色に髪を光らせる清冽な美少女たちに出会った。そして、その度にオレは、この少女は、もしかしたら・・・と思った。しかし、歩調をゆるめ、目を期待に細めるオレを見向きもせずに、果実の甘く涼しい香りを残して彼女たちは、オレを見捨てた。 そのたびに、オレの身体中に凝固したゼラチン状の蒼海が、いっきょに地の果てへ落下して砕け散るのだった。 少女は、オレの支えに近かったが、断言して、性欲とは別個のものだった。オレの性欲は淫らで頭の軽い健康な女にのみ、ほこ先を向けた。少女は、それらの条件をたとえ充たしていたとしても、少女である限り、除外されてしまうのだった。 オレは、ある蒸し暑い7月のはじめ、パタンと本を閉じるように大学を辞めてしまった。別に理由はなかった。親はオレの為に惜しげなく金を使うし、オレが大病を患ったわけでもない。ただ、望んだから辞めてしまった。それは衝動という事だったのかもしれない。わけの分からぬ甘ったるい温泉状況への反逆なのかもしれぬ。 甘い反逆。そうさね。オレは皆に、甘い甘いと言われ続けてきた。甘ったれた自分を認識したからって、どうなる?苦しいだけだろ?人は個体どうしだし、どーせオレには、いつものオレしかいないんだ。認識して、それだけ。知ったからって何も変わらない。行くとこへは、どーせ行くのだ。甘さを利用しまくって、衝動の自由を守り続けるのだ。当たり前だろ?そんな事。 さて、辞めてしまってから、どこでも同じように、親や血縁者どもがズーズーしく、オレの自由なる心域に侵入し、圧迫するんだ。不自由な人形どもめ、オレまでをも、腐った御社会形式のロボットにしようと計っていやがる。オレの自由を汚染し、潰そうとしやがる。糞どもめが。 ある日、オレは自宅に軽薄で肉欲的なチャラチャラとブランド物を身につけた自意識の強そうな女を引っ張り込んで、両親のベッドの上で朝まで、まさぐり合った。一晩中、ハードにぶち込み続けた。 こういう女は、ちょっとスカしたレストランでスカしたイタ飯でも喰わせて、強引に求めれば、必ず、すごすごついてくる。 オレとブタ以下女は、太陽が、てっぺんに来る頃、目覚めた。女の顔は、むくんでいて、まさしくブタ饅頭に見えた。気色が悪く、吐きそうになったので、オレはなるべくブタ饅頭淫売女を見ぬようにして、思いっきり嫌悪を込めて絞め殺した。 それからオレは、ブタ女の死体をクローゼットの中にあるダストシュートに突っ込み、今までオレがしてきたブタどもの地下の安息所に勢い良く落としてやった。 これで両親も含め、100匹以上、オレはブタをしてきたわけだ。オレは、喜びのあまり、ついつい雄叫びを上げながらコサックダンスを踊ってしまった。 延々とコサックダンスを踊ってると、何やら外で大きな拍手が起きたので、分厚いカーテンを引き開け、湿気でにじんだ窓ガラスから外を見下ろすと。白い男が黒い服を着て、タオルをしぼるパントマイムをやっていた。 オレは室内の強烈なクーラーの冷気を窓から放ち、その寒風をカミソリのように感じ、鋭い快感に破笑し、蒸し暑い炎天下の中でパントマイムを続けている白い男に、白い冷気の息をはいた。 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ オレは、やや満足し、窓を閉じ、ビンビンに冷房を効かせ、石油ストーブをつけて、その上でシチューを煮立たせ、フローリングの床の上に、その煮立ったシチューを降ろし、パンをひたして食べ続けた。もちろんポークシチューだ。もちろん材料は地下のブタどもだ。パンを赤黒いシチューにひたして、吸うように喰らい、口中から食物が無くなると、生きているのを確かめようと、じっと時計の針を見ていた。 その動作を何十回も続け、黄色い太陽が、ひらひらと天使の羽のような光を放ち、石油ストーブに消費された酸素が、オレを苦しませ始めた頃に、テーブルの向かいの鉄扉が開き、配達夫が、やってきた。 配達夫は、よく光る白手袋を、ちらちら動かし、オレの目線を、彼の大切な伝票に誘導し、位置づけた。卑小な奸計だ。オレは白々しくスローな動作で、言葉を放つ事をせず、ハンコを出した。配達夫の目が、小狡い狐のように黄色く光るのを、オレは見逃さなかった。 配達夫は、加速装置をONにしたような動作で、捺印を押え、いつの間にか、オレの手にはハンコが戻り、すでに彼はドアーの四角い立体スクリーンから消え失せ、そこには白い大きな荷物だけが、寝ぼけたように立っていた。 そしてオレはハンコを、テーブルの上に放り投げ、荷物を引き入れ、ドアーを閉ざした。籐椅子の上に、白い大きな荷物を置き、オレは再び、なまぬるくなったシチューを、すすり始めた。 そうしながらもオレの目は計らずとも、ずっと、籐椅子の上の物体に向けられていた。奇妙な引力だ、と思った。凍てついたように部屋は動かず、時計だけが固い音をたてていた。 オレは、少し変だと気づいた。(ずるずると赤黒いシチューを吸いながら、ぼんやりと荷物を見つめて) 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 なんのことだ?
オレは大粒の涙を流していた。島だ。オレは島に、少女と島に行きたいんだ。でも、いつもこうなんだ。オレは「水」なんだ。オレは超平和主義なんだ。どんな人間だってオレを透明な水の姿に見るんだ。オレは無表情だが、何に対しても人一倍おびえる。そして、いつも、こうして、こっそりと泣くんだ。
分かってる。分かってるんだ。
されたブタたちの呪い。
(「犬の覚醒」とリンク) ↓ ブタどもの呪いが、いつもオレと少女を妨げるんだ |
薄水色の朝もやが、ふんわりと覆い被さった灰色の広い国道の両側には、焼けただれた赤色の荒地が内蔵のように、ひしめいていた。赤い地面に生えた死人の舌のような枯れ草が、まるで誰かを手招きしているかのように風にふるえた。 死人の舌は、赤い地面に点々とまだら模様をつくっていた。生物は一匹も見る事はできなかった。 赤い荒野の遙か遠くに、朝の霧と陽光に輪郭を消されている山々の頂が、下界を見下ろす神の訓示のように、又は悪魔の歯のように、静かに地上から生えていた。 薄水色の靄は、次第に透明に近づいていった。B10号国境線は、靄の中に、グサリと突き刺さっていて、まるで無間地獄へでも通じているかのようだった。その地獄から、靄の中から、しだいにしだいに黒い小さな点が現れた。 ほとんど無色に近くなった靄の中で、黒い点は、大きくなっていった。ゆっくりと黒い点は、その本来の外輪を靄の中で顕現させていった。ハイウェイは、ずるぅ、ずるぅ、と血をすする様な、その足音に身を固くして、その役割を果たしていた。 もやは、もう地面に80%くらいは吸い込まれていたので、視界は60秒前の5倍くらい広がった。薄れた靄の裏には、黄ばんだミルクの皮の様な空があった。そして、その空の真ん中(地面の真上)、には目玉の様な奇妙な雲が浮かんでいた。 太陽は無かった。目玉雲が太陽の代わりをつとめていた。 道路の黒い点は、すでに点ではなく人の形に変わっていた。彼は黒い機械を左手に下げて、足をけっして真っ直ぐにする事なく、歩いて来た。舗装道路の中心を。 彼はサングラス(真っ黒け)を顔に、ぴったりくっつけていた。 彼は血液の様な口紅を塗っていた。 彼は黒い、光を吸い込む背広を、無関心そうに前を大きく開けて着ていた。 彼は背広の下に、しわの多く刻まれた、紙の様なワイシャツをつけていた。 彼は、その上に金色の十字架のペンダントを首から垂らしていた。 彼は、時計をしていなかった。 彼は、指の指輪をはめていて、その指には5cmほどの長い青い爪がのびていた。 彼は黒いズボンに黒いベルトに黒いドタ靴をつけていた。 彼は機械を持っている左手に、ほくろの入れ墨をしていた。 彼は全体的に見ると「死神」そっくりだった。
目玉雲が一瞬、まばたきした様だった。私は、ちょっと口の端を曲げ、首を傾け、自分の存在理由を考えたが、全くわからない事に唖然とした。そして、私は唖然とするのには、もう慣れきっているはずだと気がついて、その自分の演技をケラケラと声を出して笑いものにした。そのうち笑う理由が、わからなくなり、私は口を閉ざした。十字架が、ぶらぶら揺れた。 赤い大地の遠い地平線から突風が土煙を巻き起こしながら、この国道に向かっていた。赤い突風が、ここへ到達するまで、あと10分もかからないだろう。 私は、ゆっくり、道路、ひんやりしたアスファルトに腰をおろした。そして、例の黒い機械を股の間に挟み、PLAYボタンを押した。 機械からは、数十匹のセミの合唱が飛び散った。私の周囲5m程は、セミの鳴き声に全て包まれた。私は機械を股に挟んだまま、仰向けに寝そべった。 そして、私は、ピッタリ接着された黒いサングラスを、空いた左手でビリビリと、剥がした。何か、とても薄い、ナメクジの様なモノがサングラスの裏にへばりついていた。よく見ると、それは私のまぶただった。私は自分のむき出しになった眼球を想像して悲しくなり、再び、サングラスを元通りに、貼り付けた。 セミの大合唱が、私を嘲笑する群衆の声の様に聞こえた。私は、少しノイローゼ気味なんだと、確信して思った。私は、ずうっと上の上の目玉雲を見つめて、自分の存在を考えた。空は青く成長していた。 そして、私は目玉雲の下の端っこに、金色の太陽を発見し、戦慄した。私には、それらいっさいが、カエルの卵に見えたのだ。明るい底なしの青空に、ぽっつん、ぽっかんと大きなカエルの卵が浮いているなんて、私の健全な精神を否定するようなもんじゃぁないか。私は重度精神障害者が、はっきりと自分が異常だと気がつく、その時の恐怖に等しいだろう戦慄を覚えたのだった。 私は息を強く吹き出して、頭を左右に一回振り、もう一度、自分の存在を考えた。しかし、私の存在は、どうにも私の存在を無くしてしまうかに思われた。私の存在は、私の存在自体の邪魔をしているのだ。 その時、私は赤い風に攻撃を受けた。私の回りは、薄い赤色に染まった。赤い風の、その地鳴りの様な響音は、私の機械からセミの声を奪い、セミの声がコンクリートに浸みいる静けさをも破壊した。 静寂を愛している私は憤怒のために、憤怒を呼び起こすために、静寂を愛する理由を考えた。(でも、どうやら、それには静寂を愛する事の確認によって自分の存在の理由の一つに、結びつけようという下心も、あったようだ) 考えているうちに、私の体の右半分が(風側に向いているため)、じょじょに、スプレーを噴きつけられた様に細かく赤く染まってゆくのが、わかった。
私は上半身を、そうっと起こし、赤い風が過ぎ去ってホッとした事を表現するための表情を10通りくらいやってみた。どれも上出来だ、と思った。暑かった。機械は作動を拒否していた。 私は立てた足の中に、頭を挟み、「前世が、あったんだから絶対に今の私は存在しているんだ」と、考察し、ジワジワと疫病が広がるみたいに笑い始めた。私の悩みは、どうにか解決された様だった。私は、活力がこみ上げて来るのを感じた。そして、私は、今、生きて【在る】のだと強く思った。 私は勢いよく立ち上がり、右手をサングラスに翳して、国道を、遙か遠くを、地平線に沈んでいるあたりまでを見渡した。金色の十字架が、チカチカ揺れていた。
目玉雲の内部を金色の太陽が、ゆっくり動いていって、私の真上に高く高く上昇し、広大なゼラチン状の青空の真ん中にたどり着いた時、ジープは私の前方300メートル程のところに近づいていた。 ジープは薄い赤煙を尻から吐き出し続けていた。私は、ごく自然に、その車に向かって右手を突き出した。そして、くるくる回した。そして、叫んだ。 「私を、ここから助けてくれ!」
再び私は、舞き上げられた道路上の少量の赤い砂塵に包まれねばならなかった。薄赤の煙の中からドアを開ける鈍い音が聞こえ、やがて赤煙が消えていった。赤煙が消滅すると、ジープの後部にもたれかかって、だらしなくニタニタ笑っている男が、はっきりと現れた。そこで、私もニタニタ笑い返すと、彼は突然、笑うのをやめた。どうやら御機嫌を損ねてしまったらしい。 私は、すっかり変色した例の機械を左手で持ち上げて、笑いながら、その男に近づいていった。機械は、すでに赤く染まっていて、私が一歩踏み出すたびに、パラパラと赤い粉を落としていた。汗も、したたり落ちた。 「暑いですね。」 私は彼に向かって話しかけた。 「フン、まぁな。でも、こいつ(とジープを顎で示した)で走ってりゃぁそうでもねぇよ。」
「実は私、ちょっと困っているんですよ。そのう、何故私が、こんな所にいなけりゃならないのか・・・」 私は恐ろしさのあまり、全身海の底にいるよりも、もっとびしょぬれの汗をかき、声尻が震えた。何故だ。何故、私の影が・・・? 「へぇ、そうかい。そりゃ、こんなとこに一人ぼっちじゃ困るわなぁ!町まで、まだ100キロ以上あるぜ!」
そして突然、
「あんた、どっから来たんだぇ?」
「私は、病院から来たんですよ。」
「あのなぁ、あんた、俺は、どこから来たか聞いてんだよ。町の名だよ!まったく。俺をからかってんのかよぉ。」
「いいえ。そんな。私は、ただ本当に、混乱してしまって。ああ、病院にいた事は確かなんですが。それが、どこなんだか、さっぱりわからないんですよ。病院の名は、たしかコギト病院だったんですが。ええ。」
私は、目を見張った。そして、運転している男も、この世界も、私自身も、私の心的宇宙の中で、急速に不確かなモノに感じらていくのがわかった。衝撃的であった。私は、聞いてみた。 「このジープは、どこに向かって走っているんですか?」
「・・・町。町に向かってるに決まってるじゃ・・・いや?町?ってどこだったけ?え?俺はいったい・・・何をしてるんだ?あ、あ、あの丘が・・・」
「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 「天才とは気まぐれの名人のことで、無意識の気まぐれ度数が天才指数になる」 そして最後に黒い機械は、ガチャガチャと細い導線のような無数の工作手で私の全ての細胞を「記憶の開封前」に再編成し、私と同化した。
↑ (「寒い朝のブタ」とリンク) 犬が目覚めるためにゃ、誰かの記憶を奪うのだ |
一匹のハエが白い地面に足を捕らわれた。 ハエは空中に飛び出そう、出そうと細い足で、地面に結び付けられた小さな黒い肉体を振り回した。 地面は強力な粘着力で、決して足を離してくれなかった。 黒い点が原子の回転に似た動作を迫る死に向かって続けているのを知っているものは誰もいない。 ハエは狂ったようにもがき、絶叫した。 塗りたての横断歩道のペンキの上で、しばらくして小さな倒壊音が起きた。 ハエの身体はペンキに埋もれ、静かに、しかし、凄まじい抵抗の末に、そのペンキの中へ落ちて行ったのだ。 静かな時が、死骸の上を過ぎてゆき、次第に乾いて固まるペンキの中でハエは乾燥していった。 幾日かが経ち、その上を踏みつけた少女がいた。 少女は不思議な感覚に、ほんの一瞬おそわれたが、それが何だか少女に分かるはずも無いし、気の狂いそうに短い時間の中で少女は今の感覚を忘れてしまった。 空は限りなく広がっていた。 少女は、その広がりを、目を通して頭の中で、より広げる事ができた。 少女の内部は、今まさに、無限の虚空なのであった。 そこには雲も風も太陽も無く、果てしない空だけの世界であった。 少女は白痴だった。 しかし少女は自分だけの、まぎれもなく純粋な世界を完璧に作る事ができたのだ。 少女は、いつも黒い服を着ている神様という男と、小さなアパートで暮らしていた。 少女は神様を、とても愛していた。 神様は放浪癖があり、時には2~3ヶ月程帰らぬ時があった。 今も少女がアパートのドアを開けると、さびしい、さびしい、誰もいない夕暮れの部屋がポッカリと口を開けて彼女を待っていた。 少女は畳の上に寝転んで、窓の外の赤いせんこう花火のような太陽を見続けた。 隣りの部屋の女子大生が食事を運んできてくれるまで。
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醜い岩が幾千も、つらなる海岸で、神様は少女が見ている夕陽を、やはり見続けていた。 神様は膝の上の携帯演算機の鍵盤上で目にも止まらぬ速さで両手の指を動かしていた。 目で少女が今見ている夕陽を見つづけながら、神様は激しく鍵盤を叩いてセルを集めていた。 未だかつて存在した全てのセル、存在しなかった全てのセル、存在するはずのない全てのセル、空想された全てのセル、存在してはいけない全てのセル、これから在り得る全てのセル、これから在りえない全てのセル、無限のセルを集め、解析し起動させ融合させ続けていた。 神様は、夜が静かに訪れるまで、セルを集め続けていた。 ホテルに戻って、神様は、ロビーで夕刊を取り上げ、ソファーで読むと、ギョッと目を剥き、独白を始めた。
三島由紀夫と吉田松陰は似ている! 世界は終わりかけている! 今、私の目の前で! ゆっくりとフェードアウトしてゆく! 人々は、パタパタと通りを歩き! 鳥は音をたてずに空に満ちている! 空から100000000000000本が1本に見える、おばけ煙突を! 真っ暗くなる前に見たい! 昔、夢の中で聞いた鐘の音が、今、よみがえる! 目の前には、ぎっしりと活字が並んでいる! 視界は、どんどんズームアップされ! スポットライトを浴びて、1つの文字が拡大されて迫ってくる! 死という文字だ! 死は、どんどん大きくなる! そして、黒いインクの タ の部分に迫り! 最後には、真っ黒で、何も分からないほど、拡大され!
そして 死 が、はじまる。
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-プロローグ-
ワタ氏は、走っている電車の窓から観測する遠近物質の、電車の窓側から計測する速度の違いを利用し、地球を基準に宇宙空間で2機の宇宙船を相当の距離を置いて、それぞれ、地球と火星の軌道の中間地点をお互い正反対側に猛スピードで突っ走らせたのであ~る! もちろん観測衛星を、そこに置いたー!
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何十年も過ぎた!しかーし、2機の宇宙船は帰って来なかったぁー!どっか行ったぁー!地球と火星の軌道の中間を、秒速30万Km(光が1秒間に進む速度) × 30000で走行したのであーる!本来ならば、1秒も、たたないうちに出発点を通過するはずなのだー! もーう、その計画グループは解散しちゃってぇー終わっちゃってー、ワタ氏も忘れさられたぁ~! 2つの宇宙船は、いずこへ消えたのかー!当時の学者たちは一応、議論したー!彼らは、途中で何かと衝突したか、また軌道を外れたか、何らかの故障で爆発したか、または、コンピュータの計算が狂って片方は過去へ、もう片方は未来へ、とんでもない年代を飛び越えたのかー! 結局、そんな議論は何も立証しないという事になって、終わりになったー! しかーし!ある場所に、ひとつの重大な結果が、ある事を、誰も知らなかったー! ゴビ砂漠の洞穴の壁の一つの絵に、地に埋もれた巨大な宇宙船と、その一片が明確に描かれていたー!そして、そこには、1つの言葉が書かれていたー!・・・・・しかも日本語だったぁー! ![]() |
-エピローグ-
(私は例のワタ氏である。宇宙船は出発するとほぼ同時に動力部に故障が起きた。それは出発後30分くらいだった。私と乗務員たち5人は、それぞれ空気ボールで脱出することにした。我々が脱出口から抜け出る時、船は大爆発をおこした。私のあとに続く5人は宇宙空間に投げ出され、思いっきり苦しんで死んでいった。私は、運良くそのまま、そばの惑星に無事、不時着した。) そこの外景といえば、まるで砂漠全体をタイルか何か、光るボードで覆ったようだった。真っ白にテカテカと光っていた。私は外気を検査してみた。窒素が約78%、酸素が21%、アルゴン1%、CO2 0,03%、他、ネオンヘリウム。 ほぼ地球の大気と同じである。やはり、ここは地球か。それにしても、何て妙な景色だ。私は空気ボールから抜けながら思った。その光っている床みたいなものは、ステンレスのようだった。叩いてみると、反響はなかった。空には太陽が輝いていた。少し暑いようだ。風もなく、音もなく、見渡す限り、のっぺらとしたステンレスの砂漠だ。気が変になりそうだ。 しかたなく、私は当てもなく歩き出した。しかし何10キロ歩いても辺りの景色には何の変化も見られなかった。私は、残り少ない非常用宇宙食を喰った。喉が、カラカラだ。 それから何時間たっただろう。もう陽が落ちて、そろそろ夜が近いようだ。さっきから気づいていたのだが、時々、遠くに黒い点が、ちらちら見える。ソレは生物のようだった。 私は、その黒い点を目指して歩いた。ソレは、こちらに、だんだんやってくる。私も、ソレに向かって歩く。だんだん姿がはっきり見えてきた。わかった。それは人間らしい。やはり、人間だ。もうすぐ、そこまで来た。 私は声をかけた。 「・・・・・」 しかし反応は無い。私はソレに触ってみた。やはり人間だ。しかし、ソレは私の事を無視して、どんどん行ってしまった。まるでロボットのように。 しばらくの間、私は、そこに立ち尽していた。 ・・・・・・・何かの音がした。 と思うと、私の回りのタイルのようなものが持ち上がり、私を四方八方、取り囲んだ。そして、私を包み、地中へ・・・・・
まるでプラネタリウムの銀河のように小さな光が無数に点滅する闇の中で、その光のひとつが近づいて来た。光の正体は携帯電話だった。携帯電話が私に話しかけた。 「この太陽系第3惑星・地球は、約5万年前に我々によって支配された。我々は、この星の住人を必要な数だけ残し、あとは始末し、残った人間の脳を切り取り、我々の回路の1部として働かせている。あなたが、さっき見たアレがそうだ。アレらは生きた機械だ。ちょうど、1つ、故障があるので、あなたを使う。」 薄れていく意識の中で、私は、子供の頃に遊んだ夕陽のあたる原っぱを思い出していた。真っ赤なドロドロの太陽、じゅるじゅるじゅるじゅるオレンジの空いっぱいに煮たって溶け出してこぼれ出してきそうな夏の太陽が、そこにあったぁーーー!ドロドロ、じゅるじゅるのとてつもない大さと迫力で真っ赤にバチバチ燃えながら覆い被さってくるみたいだった夏の夕暮れのとろける太陽が、あっという間に携帯電話に変わって私の目の前にやってきたぁー!
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1998年。何て半端な年だ。今年は過程なんだよ!次の段階に至る過程なんだよ! でも来た。知ってるぜ!僕は、知ってるんだぜ! 誰かが、停止してしまった春の風景を、数千万のバタフライナイフで切り刻んだんだ! ザック、ザック、ザック!!ってな! そんで、無数の春の傷跡の中から、春の血=夏が、にゅるにゅるにゅるにゅるとゲル状に流れ落ちてきて、一挙に変えちまったんだ! そして光たちが、天から、したたり、ふんわりとした空気の音が流れ始めたんだ。
この考察は、その少女の蚊の鳴くような、アンチテーゼから始まった。 ◯ 実際、誰も、時をかえられないし、時はやって来て、人を殺す。 「時は、やってくるものじゃない。僕らが、時を迎えているんだ。」 「僕らが、時を作りだしているんだ。」 野蛮な少女は、大きな琥珀色の瞳から、ろうのように涙を流した。そして、くるっときびすをかえすと、少女はモノクロのエーテルゾーンの中に、サッサと姿を消してしまった。バックレやがった。何て冷酷な・・・今度会ったら、絶対、強姦してやる。 僕はタバコに、ゆっくりと火をつけ、一息で9/10を吸い、汚れた廃墟の戸口に向かって、?マークのように背を曲げて歩いた。 そして夏の輝く光のシャワーを全身で浴びながら、遠いビル群を見つめながら考えた。
すべての生命は、運命の車輪から逃れられない! すべては泡!、かりそめのものだ!うたかたよ・・・ 奴らが理解できないもの、それは人間の無力さだ。僕は弱くて小さい。宇宙にとっては、なぁんの意味もない。宇宙の過程は、僕に気づかない。」
汗が、灰色のホコリと供に、僕の身体中に浮き上がる。 1998年、夏、時は僕を置き去りにするのか? 1998年、夏、僕は、熱され、どろどろ溶け始めたアスファルトにズブズブと沈みゆくのかぁあああああ! あついんだよー! あっちぃぃぃ~! あちー!あちー!
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コポレ君は、ある日、横須賀に寄港中のアメリカの軍艦を爆破しました。 それも、たった一人で、超能力を使って、艦長の首をぶった切り、彼らの武器を逆さにして、空中に浮かせて、攻撃し、惨殺し、艦内を血まみれにしてから爆破しました。 これはコポレ君の、何となく衝動的な気まぐれだったのでした。 “がんばぁれぇ!9番!がんばれぇええ!9番!”と彼は叫びました。 燃え上がる船を背に、コポレ君は群衆の中に一人の美しい女を見つけました。
さっそくコポレ君はマンションの階段を駆け下りて、彼女を追っかけました。 追っかける途中、コポレ君は犬に噛みつかれ、足を傷つけました。動物たちは彼の危険性を知っているのでした。 足から血を流し、追っかけ続けたコポレ君でしたが、商店街で美女を見失ってしまいました。 コポレ君は人混みにもまれ、次第に正気を保てなくなり、叫びました。 「俺は孤独だ!孤独だぁああああ!」 コポレ君が頭を抱えて、しゃがみ込んだ時、北の空から爆音がし、空にキノコ雲が上がりました。 商店街ではパニックが発生し、コポレ君は踏みつけられ、泣き出しました。 そして何となく、近くにいる人間たちを殺し始めました。コポレ君の回りには死体が増えてゆきました。 数時間経って、人々が去り、夕闇の中、死体の山の中にコポレ君は立っていました。 ボ~ッと赤い月を見つめて、コポレ君は歩き始め、涙を流しながら言いました。 「俺は淋しい。淋しい。誰も俺をかまわない。俺の帰るとこはない。」 コポレ君は、そうつぶやきながら歩き続けていました。 そのうち、後ろに小さな足音を感じてコポレ君は振り向きました。そこには例の美女がいました。 「こんにちは!あたし、ポコルよ。」 「あなた、あたしをつけていたでしょう。」 コポレ君は人と、こんな会話を長いことしてなかったし、自分を偽ろうとする気持ちに罪悪感を感じたせいもあって、口がきけませんでした。 「日本は終わりね~。」 と女は笑いました。 コポレ君は自分が許されたのと、その優しい笑みとに、激しい内的な感動を受けました。彼の心の奥から、今まで無かった不思議な熱いものが、こみ上げて来るのでした。 それに近くに誰もいませんでした。2人きりで、2人は、2人きりゆえに親近感を覚えたのかも知れませんでした。 ポコルさんはコポレ君のアパートにやって来て、2人きりで一緒にベッドに寝っ転がってTVを見ました。 何だか、コポレ君は、とても暖かい気持ちに満たされ幸せでした。 TVでは臨時ニュースを放映していました。 -千葉県に落ちた核兵器は北朝鮮のものらしく、自衛隊の迎撃の輪をくぐって、一発だけ国内に入ってしまい防ぎようが無く・・・-
コポレ君とポコルさんは、その後、一生、2人幸福に暮らしました、とさ。
アトミック・ラブ・アフェア アトミック・ラブ・アフェア ちょ~っラブラブよ~ |
オイラ おっちゃん、おっちゃん、天気うらないの、おっちゃんよぉ、明日の天気を占っておくれよぉ!明日は、おいら、ピクニックに行くんだぁ!雨なんて降らないよなー!
占い師 よ~し!たぁーっ!はいっ!明日は、雨が降る天気じゃない!
オイラ ほんとか!
占い師 はい、はい!私は絶対に嘘は言いません! ☆ そして次の日
ザーーーーーー ザーーーーーー ザーーーーーー (雨の音)
オイラ バァーロォォオオ!ぶおぶおっ!何が明日は雨が降らねぇだ!雨がザーザーザーザー降ってんじゃんかよぉぉお!ぶぉぉぉおおおっ!
占い師 いいえ、私は雨が降らないとは言いませんよ。 私は、明日は、雨が降る天気じゃないと、申しました!
オイラ え~い!って事は、雨が降らねぇんだろぉぉお!
占い師 だから、私は “明日は、雨が降る。 天気じゃない。” と申し上げたじゃござんせんか!
オイラ あっ!途中で切るんでやんすか! こりゃ失礼! あっしの間違いでござんした!
がちょ~ん!
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「秋の夜の手紙」 (私は、ついに到達した!新たなる白痴宣言!)
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