どす黒い雲が覆う黄昏の片隅で「あなた」は空気の淀んだ駅ビルの雑踏を彷徨う。獲物をさがして。唇をキツとむすんで。遠くで微かな雷鳴が響く。今日は、今日こそは、上玉の獲物にぶちあたる、と微かな望みを託して。 ![]() その時、ガラガラと鎖をひきづる様な音が背後から聞こえてくる。閉じたのだ。あのギロチン・シャッターが今、出口を完全に閉ざしたのだ。外海は暗い穴に落ちてゆく自分を感じる。呆然として、真っ赤な血に染まっていく両手を見つめ、ウエイトレス二人が、アイスピックと手の接合点に血止めをしているのがわかってくる。これから何が始まるのか考える気力もなくなっていく。絶望。絶望という奔流が彼の意識下からドッドッと音をたてて押し寄せてくる。 |
(遙か彼方のラブピース/S.いずみ 外伝)
寝転がっていた。汗が体中くまなく湧き出していた。真夏の太陽が大きな窓からにじんで見えた。 日光は、全身をなめていた。外のブロック塀に黒猫が、汚物みたいにへばりついて鳴いていた。 上半身を起こした。きみどりのTシャツがベットリと肌にくっついていた。近くの工場のサイレンが正午を告げた。 畳に散らばったガラクタをかきわけ、タバコを探した。昨夜、女が血で赤く塗ったタバコをガラクタの山から取りだして、しばらく指でもてあそんだ。 女は、冷蔵庫の扉にもたれて氷をかんでいた。唇が、きれいに光っていた。 「ボリ・ボリ」「グヂュ」「ガヂュ」 指で、いじくり、しわしわになった赤いタバコを、一息に呑み込んだ。喉が固くなった。肺が何やら濁ってゆくようだった。 ジェット機の音が聞こえたと思ったら、右耳からだけなので、“あっ又、耳鳴りか”と思った。 再び、左手で上体を支えながら湿った畳に横たわった。窓から又、真上でにじむ太陽が見えた。 「背徳って、おいしい?」 女は、蝉のように声を出した。切れ長で瞳が灰色がかった目が、白黒のTV画面みたいだった。 「あたしが、たらした血に染まりチェリーは、いまや内蔵へ。愛するあなたの内蔵へ。これで純粋にあなたは自殺する。動機があって?」 耳を強く畳に押しつけ、自分の鼓動を感じたかった。 「分からん。僕はリビドーが赤に固着しているのを知っている。小学生の時、朝礼で前に立ってた女の股間からケチャップのような血がしたたるのを見た。あれ以来どうしようもない。赤は僕を欲情させる。抑圧しようとすると赤いものをやたらに破壊したり喰いたくなった。昨夜、性交中に君の耳を喰いちぎったのも、赤い血を見てより強い快感を得たかったからだ。ぐふっ。ぐふっ。」 肺臓が、飛び出しそうな咳をした。息苦しく背筋の真ん中を中心に全身にふるえが走った。 「だから、赤いタバコを食べたのね。満足?」 この女は精神異常だ。自分の言葉なんて、雑誌からの無関連なコラージュなんだ。 僕?僕も狂ってるさ。確かにね。これで女が言い当てた通り純粋な自殺とは、いかなくなった。他殺だ。 赤に対する執着が、僕の中に静かな異常を作り出した。犯人は例の初潮だ。 「ねぇ満足?」「ねぇ、あなたぁ。君ぃ。僕ぅ。」 女は僕に、ずりよってきて、おぞましくも汗だくの下半身をへその上に乗せた。女は僕に顔を近づけて、キスして、呼吸があるのを確かめた。 女は軽薄で、冷酷で、損得でしか、ものを考えない。最後に僕の思考中枢を、この想念が走り抜けた。 僕は大きく女を乗せたまま、跳ね上がった。 そして体を反転させ、灰皿とコーヒーカップとサインペンの上に落ち、プロペラの回転の如く、手足を振り回し、全てを散らけた。肌は、露出面、全てがまんべんなく血まみれのように感じた。 女は冷蔵庫の後ろの小さな台所に退散し、上目遣づかいで、おびえていた。女は小さく、両足を、ぴったりとかかえこんでムンクの絵みたいに隅っこに座っていた。 6畳の狭い空気の中、様々な品物が、ほこりと供に踊った。 黒い帽子。ジョン・レノンにチャールズ・マンソンを張り付けたイマジンのジャケット。仏のおきもの。グラスの破片。灰。女が16の時書いた、いい(僕はとっても気に入ってた)詩集。サリンジャーの本。とても新鮮な光景だった。 引き裂かれ焼かれ、爆発しそうだった。僕の顔なんて想像するの・・イヤです。 苦しみが遠のくと、あたりは暗くなり、何の物音もしなくなった。 遠くに美しい光が見えるので、僕は生まれてはじめて素直に歩き始めた。何という感激だろう。 感激の涙は、胸から腹へ、ついにつま先へも達し、強烈な光は僕の中へ、僕は光の中へ入った。僕は死んだ。
女の通ったあと、ほこりに女型の穴があいたので、窓から他のほこりも、いっせいに逃げ出した。 女は、空き缶を男の睾丸に叩きつけてみた。女は、男が動かないままなのを見て、 “よくなった、少しは” と、小さく言って、男をまたぎ越し、窓わくに頬杖をつき、直射日光を浴びた。 ふと町を見下ろすと(ここは3階のお部屋です)やけに黒いシャツを着た人が多かった。 すぐ下で、熱気があった。見るとアパートの入り口から扇形に、数百人の群衆が、つめより合い、口々に何かを叫んでいた。 女の数は全体の1/3程で、最前部(つまりアパートの入り口)で口を固く結んでいるのは男で、リーダーらしいナルシスムを発散させていた。 入り口周辺の群衆は、ほとんどが黒シャツを着ていた。太陽が、にじんで見えたのは彼らの体の放つ蒸気(炭酸ガス?)のせいらしい。 彼らの叫んでいる言葉は、交錯し合って、よく聞き取れなかったが、意味はつかめた。 簡略化すると、こういうことだった。 -彼らは、この立可町の造船、出版、文化事業、貿易、を営み時には独立国家樹立のQ革命を趣味的理想としてかかげる、営利団体「立可命林会隊」の隊員たちで、又彼らは「理性と欲動の不平等視」に反旗を掲げ、唯一神であるQの超自然力によるメタモルフォセスを信じて疑わない、いわゆる「黒シャツ教」という団体でもあり、死んでしまったナオト(すなわち僕)の最も嫌悪する黒を、そのシンボルとして着用している。 -彼らは、この立可町のヘゲモニーを握っており、いわゆる「赤シャツ派」(この土地の立可山の中腹の細長い広場に古くから背徳神をまつる真っ赤な鳥居をかまえた流れ造りの破空神社を「理性と欲動の平等」に対する拒絶のシンボルとして、ナオトや他の志士たちにより結成された反「黒シャツ」の地下組織と言っていい)は、いまや黒シャツの懐柔作戦によって、ちりじりばらばら、壊滅状態にある。 ナオトの黒シャツへの異常なる激しい敵意は、おそらく、例の赤の固着から、やってきたのだろう。 でも、ナオトは死んだ。
女は、7才の誕生日から11才の誕生日まで、家の押し入れで大部分の時間を過ごした。 教師や医者やらは「自閉症」と断定し、なんとかカウンセリングや治療を行おうとした。 彼らは女を、押し入れから必死に外へ引き出そうとした。そのため女は、35回自殺未遂をやらかし、彼らの一般社会の倫理・常識の意志の力を、次第に弱めた。 女は彼らに干渉を受けるたび、「争いは嫌いだ」と言って自分の肉体をカッターナイフっで切りつけた。 女の母親は、女を産むと、すぐに事故死し、女は6才まで父親による特別な教育を受けた。(その教育の事は本編を参照) 父親は、女が小学校に入るとすぐに押し入れに入った事を大変喜んだ。父親は死ぬまで徹底して女の行為を応援した。 当然、世間の非難は父親に集中し、そのために父親は失語症になった。父親は民生委員たちなんかがやって来ると、常に無言で押し入れの前で、両手をひろげて立ちふさがった。 女の11才の誕生日、押し入れの外で大勢の人間の歩き回る音がした。父親が押し入れの戸にへばりついて守ってくれているのが分かった。 父親を罵倒する声が、いっぱい、いっぱい、飛び回っていた。中には校長先生や民政委員会の人や何とか保護協会、何とか調査団の人達もいるみたいだった。 その日は彼ら、強硬手段に出たらしい。父親が、大きくうめく声がして、部屋中で様々な音が聞こえた。 ひときわ騒ぎが大きくなった時、小さな爆発音が起こった。あたりが、奇妙に静まり返った。 女は空気に事故のただよいを、押し入れの中から察知し、そっと戸を開け、外をうかがった。人々が林のようにTVの回りを取り囲んでいた。 父親はブラウン管に首から上をすっぽりと埋め、ひくひく震えていた。 女は、騒ぎの中、そっと猫のように人垣をくぐり抜け、明るい陽光の下に出た。誰も女に気づかなかった。やわらかい初夏の風が町じゅうを走り抜けていた。 女は機械のような顔をして、仮面のような顔をした大勢の人の群れの中を駅に向かって歩いた。 父親が血の沼の中で息絶えて、最後のケイレンをした頃、民生委員のおばさんが、女が押し入れにいない事に気づいた。 彼らは、動転していたが、女のクラスの委員長である良治君は冷静だった。彼は、唯一人、女を探しに町に飛び出して行った。 女は駅前の古本屋で日本道路地図を見つけた時、良治君に発見されてしまった。 「どうして、こんなもの見てるんだ?」 良治君はきいた。 「もう終わったの。終わりは、しばらく続くの。でも次の時の用意をするのよ。」 良治君は意味がわからないので無視して、後からやってきた先生や委員会の人の手に女を預けた。 女の4年間住んだ押し入れの中には、宗教書と哲学書と文学小説と歴史書やらが、ぎっしりと積まれていて、壁には、みっちりと鳥の絵が描かれていた。 大人たちは女に何してたの?と聞いた。 「祈ってたのよ。」 女は答えた。
女は振り向き、彼に向けて笑った。リーダーは、目を大きくしてナオトの死体と、度を越して汚らしい部屋の様子と女を、ニワトリみたいな動作で見まわした。 「その耳は、どうしたんだ?血まみれだ。」 答えを待たず、リーダーはナオトの体にかぶさるようにして彼の生死を調べた。そして、ますます口を固く結んで彼は女を睨んだ。 開いたドアには黒シャツの男たちが規則正しく並んで、こちらの様子を見ていた。光線のせいか、彼らの目は、いちように金色に光っていた。 「自殺か?そうだな?タバコを喰って窒息死したんだ。コミュニティーで最初の自殺だ。死ぬくらいなら、この土地を出ていけばいいのに。せっかく我々も、譲歩に来たのに。」
リーダーの眉が、ねじれた。安心の表示のようだった。 「他の赤シャツの奴らも、殆ど承諾した。もしくは出ていった。この町も正常な人間だけになる。理性と欲動が均衡である我々だけが残るからだ。君も入信すれば、鍛錬によって我々の仲間になることもできる。君は、どうするんだ。」 女はジーパンを脱ぎ、自慰をはじめた。顔を愉悦に歪めて、切ない声を発した。欲動の優位をボディーランゲージで示したのだ。 「わかった。」 リーダーは一言、言うと隊員たちと供に、きっちりと足並みをそろえて去って行った。
女はナオトのキャッシュカードと現金を、小さなリュックに入れて、優雅な動作でアパートを、黒シャツ隊の連中の見送る中を出て行った。 その後で、黒シャツたちは、再びゾロゾロと、ナオトの死体の後始末にアパート内へ入っていった。彼らは、彼女や、赤シャツの思想に、最後の最大の敬意を示したようだった。
電車はガラガラで、ゴミひとつ落ちていず、窓から涼しい風が吹き込んできた。そして、よく揺れた。
遠くに帆船をずらりと並べて海が眩しく光った。
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3月初めだった。真っ青な空で、その大画面の真ん中にはジェット機の残した一本の境界線が引かれていた。 2日前に凄い、本当に物凄い季節はずれの暴雨風雨が、この東京を通過した。 僕はその時、傘と学生服のつやを失ったが、そのかわりに今日の青空を得た。 本当、空は底なしに透みきっていた。 昨日は都市をすっぽりと包んだこのグチョグチョ空気まで素晴らしかった。 でも、一日経つと、すぐこれだ。灰色の粒子が僕の頭と胸の中にズンズン入り込んでくる。 オキシダント濃度0.02PPM、ダイオキシンいっぱい、だそうだ。ああ、いまいましい。 と言っても僕には何も出来やしないし、する気もないがね。 そこいらの車を全部ふっとばしてやりたいよ。 八百屋の店先にペヨーテやダツーラやジムソン・ウィードやロコソフを混ぜてやりてぇや。 僕は、今、いや、僕らは、卒業式を終えて中学校前の銀杏並木を抜けて陰々揚々鬱々躁々とサンモール街の横道の商店街に飛び込んだ。 買い物に精を出しているババアどもの、その過剰とも思えるたくましさに「ぞっ」としながら口笛吹き吹き、今いるこの駅前の何とかスクウェアのアスファルトの上に、少しの息切れとともに、たどり着いたわけだ。 今日でとうとう鬱陶しい中学生活も終わりを遂げたわけで、僕は開放感からくる歓喜で殺人でもやりかねない程、幸福だった。
背広やらセーターやらワイシャツやらダウンジャケットやら糞趣味の悪いトレーナーやらの服装の上に、ちょこんと乗っかった幾つもの薄汚れた丸くて黄色い点が、駅から延々と、途切れることなく吐き出されて来る。 その黄色い点人間は、僕と1回、坂と3回、角と2回、ぶつかって、ぶつかるたんびに彼らは「へのへのもへじ」を作った。 坂と角というのは僕の友人の名で、僕は私茂(シモ)と言うんだ。 僕らは、そのアスファルトの上で、かなり長い間話し込んだ。 30分も話した頃、ついに立ち続けていたため、足がガタガタいいだしたので、僕は話にケリをつけるために、少し焦らねばならなくなった。 それに「へのへのもへじ」の多さに圧倒されて、気が遠くなりそうだったのだ。 そして太陽の光もかなりの攻撃力だった。じりじり汗をべとつかせやがる。 話がまとまらないのは、殆ど角のせいだった。 僕らは「これから、どうするか?」を話し合っていたのだ。
僕「あれは凄い映画なんだぜ。そこいらの、オシアワセな映画なんか、あれの前じゃすっ飛んじゃうぜ。」 角「俺はイヤなんだよ。2時間も暗闇の中でじっとして目を疲れさせるなんてのは。映画ってのは、だいたい長すぎるんだよ。かったるい」 僕「じゃあ、何がしたいんだ?」 角「何か汗をかきたいんだよ。なぁ、坂。」 坂「俺は、どっちでもいいんだよ。そうだな、どうしようか。そうだな俺も映画はイヤだな。」 角「そうだ!ボーリングがいい。ありゃ、すっきりするぜ。」 坂「俺も、その方がいいと思う。」
映画とボーリングを比べて、どうして坂の野郎に、どっちがいいなんて結論を下せるんだい?それ程奴は自分のはっきりした意見なんてものは何も持ってないんじゃないか。 角の野郎の方が俺よりも強引で、論争した時には俺よりも強いだろうという低脳な考えから坂の奴は、角の意見に味方したにすぎないんだ。 自分で何が正しいかなんて見極めるなんて、その糞の詰まった頭骸骨じゃ、できやしねぇんだ。 いつも、どっちか強そうな方へひょこひょこ阿呆みたいに、くっついていきやがって。安全だよなぁ。いつもお前は。 それでも僕は(たぶん今日の天気のせいだろう)いつもの様に不愉快な気分でパンパンに膨れ上がり爆発しそうには、なれなかった。 僕は、 「それじゃ2人が言うなら、そうしよう。それで、いいや。」 と、微笑みを作って元気よく同意した。 『パ-ン』と突然、何かの破裂する音が聞こえ、僕と角が、まっさきに振り向き、坂は僕らの様子を見て 【彼らが振り向いたんなら、俺も別に振り向いてもかまわないだろう】 なんて思ったんだろう。ちょっと遅れて奴も振り返って首をのばした。 スクランブル交差点の真ん中あたりで、青い野球帽を目ぶかにかむった6才くらいの少年が、3つ持っている風船のうちの赤いやつを、踏んづけていた。 近くで耳を塞いで、怖がっている仲間の少女を誇らしげに、サディスティックに、ねめつけて、彼は「ゲラゲラ」と青空に向かって笑い転げた。実に楽しそうだ。
僕と角も無視したので、坂も2人の顔色を見て無視する事にした様だった。坂にとって何より重大なのは僕らから外れない事なのだ。 おそらく今度の破裂音が拳銃で、少女が射殺されていたとしても坂は僕らから外れない方を行動選択しただろう。僕らが無視すればそれに従うだろう、ま、射殺されようと干渉する気は、どんなバカにもありゃしないだろうが。
僕はオキシダントを吸い込み、薄くかすんだ太陽に向かって吹きつけた。 何故かと言えば、その時僕には太陽が大空にぽっかりと、あいた穴に取り付けられた通気口の様な気がして、それを信じたからなんだ。
僕には回りの風景が黄色く、たそがれ時の砂漠の様に目に映った。 実際、頭に力を入れて注意力を高めて見れば、それは青空の下でちゃんと息づいていたのだが、力を抜くとすぐに黄色く染まり始め、廃墟の様に僕の目に映じた。 僕は、もういいかげん、疲れてきた様だった。実際この時僕は、こう思った。 「この雑踏には存在だけで人間を自殺か殺人行為にしむける能力がある」 歩いているうちに、とうとう僕は不愉快になり、頭がバンバン膨らみ始めたみたいだった。 それでも卒業して、やっと地獄の様な中学校の束縛から開放された事を思い出すと、いくらか気持ちもやわらぐってなもんだった。
『只今の待ち時間:2時間です』 2時間! 僕らは場内のロビーにたたずみ、再び話し合いを始めた。ピンの倒れる音が結構、快く僕の耳に響いていた。倒れる音って何て気持ちいいんだろう。 僕は破壊的な音や映像や話が、大好きなんだ。凄く気持ちがいいんだ。みんな壊れてしまえばいい。出来るだけ派手にね。いや、じっくり地味にでもいいや。 考えてみれば僕に限らず人間は皆、破壊が大好きなんだぜ。 スポーツなんてのも相手を破壊する為の楽しみなんだし、僕の知ってる奴らは皆、映画のどこに興味を惹かれるかって言ったら、すぐに生命の破壊だって答えるよ。 決まってら、当たり前すぎる。どれだけ派手に残酷に肉体を損壊させるかって事以外に興味ある?実際。 皆、主人公なりなんなりが巨大な銃で、(いや武器は電動ノコだろうがハンマーだろうが何だっていいけど)ぶっぱなしてあらゆる物をぶっ壊したり、善人だろうが悪人だろうが無垢なる市民だろうが、その肉体生命をバラバラにちょんぎったりドカンと破壊したりするところになると、うれしそうに目を輝かすんだから。 角が話しかけてきた。 角「おい、2時間も待つんだってよ。」 僕「ちぇっ。今日は土曜日だったんだなぁ。どうする?」 坂「さあ、どうしようか。」 角「今、3時か。始めるのが5時とすると、30分くらいしかできねぇな。たった30分のために阿呆みたいに2時間も待ちたいかい?」 僕「ボーリングがいいって言ったのは、お前たちだぜ。そっちが決めろよ。」 角「おい、坂、どうするか?」 坂「俺は、どっちでも良いよ。角にまかせるよ。」 角「やめよう、やめよう。2時間も待つなんて、俺たちに何をやってろって言うんだ?」 僕「それじゃ、どうする?」 角「今から帰るってのもバカらしいしな。せっかく今日はめでたい日なんだしな。学ラン着たままじゃ酒も飲めないし。」 僕「今からなら、ちょうど例の凄い映画に間に合うぜ。」 角「いったい何でそんなにその映画が見たいんだ?どこが凄いんだ?その映画は。」 坂「凄い、凄いってシモはもう見たんか?見てないんだったら君は何故凄いなんて評価できるんだ?」 僕「えっ。イヤ、僕は見てやしないよ。でも宣伝でね。幾つかのシーンをちょっと見たんだよ。先を詰めたこんなでっけぇショットガンを主人公が相手の顔に1cm位の近距離からぶっぱなすんだよ!それに何せ10万人以上人が死ぬらしいぜ!強制集団自殺なんてのもあるってよ!凄いぜ!」 坂「それが凄いのか?血が出りゃ凄いのか?人が死ねばいいのか?残酷度が高けりゃ君は満足なのかい?とにかく俺は、どうでもいいけどね。」 僕「坂、何が言いたいんだ?驚いたな。君が、そんなこと言うなんて・・・いいかい、人間てのは流血が大好きなんだぜ。しかし僕らが皆、実生活で殺人や流血を楽しむなんて事しだしたら世の中メチャクチャだ。だから、それを法でおえて、その代わりに映画やら小説やらマンガやらゲームやらスポーツやらで、暴力や血や殺戮を見せつけてくれて僕らの精神を少しでも充たし癒してくれているんじゃないか。だから僕らは実際にこの手で他者の血を流す事なく、代わりに流してくれるそれらのものによって満足を得なければならないんだよ。それらによって破壊や殺人、または自殺の欲求を抑えなきゃならないんだよ。」 坂「まあね。そうさ、俺には何だっていいんだよ。」 角「坂?何だか無気力極まりないじゃんか、お前。ダメだぜ、そんなんじゃ。とにかくシモ、お前は変な考え方してるなぁ。とにかく、何かわかんねぇけど、お前の考え方は・・・陰険だよ。」 僕「ちぇっ。みんな真実を知るのが怖くて陰険なんて言葉で片づけちまうんだ。臆病者。だから、いつまでたっても人間は偽善のかたまりなんだって事。」 角「出ようぜ!こんな所で、ぐだぐだ話してたら頭に来ちまうぜ。その映画でもいいからとにかく何か時間を埋めようや。映画見に行こう。なぁ、坂。」 坂「うん、ああ。」
とにかく僕は驚いた。坂の奴が僕に面と向かって反論したのは初めてだった。来い、殺してやる。 もしかしたら坂の奴は前から僕に反感を持っていたのかもしれない。来い、殺してやる。 僕と角の意見が衝突すると決まって坂の奴は、角の側に味方したし、もしかしなくても絶対にそうだ! 坂は僕に反感を持っている。そしていよいよ奴は攻撃体制に出てきたって訳だ!来い!ぶっ殺してやる!
坂たちは、僕と殆ど口を聞かなくなり、ポップコーンを嫌がらせのように大きな音で喰らいながら、その映画の残酷描写を楽しんでいた。 映画館の暗闇の中で奴らの「くっ、くっ」という笑い声が絶え間なく続き、特に大量殺戮のシーンでは膝を叩いて喜んでいた。 僕は何だかポツンとしてたんだよ。回りが真っ暗で映写機の音がカラカラ聞こえてくるような感じなんだ。 この歌舞伎町のど真ん中の巨大な映画館に僕ら3人だけが映画を見ていて、外の世界はとっくに滅びてしまっている・・・そんな気分なんだ。
僕は異常なのかな? そして、僕は、自分の事を偽悪者め!と罵った。ふふ、とんだ偽悪者さ。 ま、だから、どうしたって事もないけどさ。じゃあ、殺されてやろうか?
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kipple
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創世記 皆の者、聞くが良い・・底知れぬ悪転に終わりは無い、 神も悪魔と交じわり、混濁の中に、人の子よ、気楽な笑いを見出すだろう。 底無しの腐敗は空虚な快楽へと続いてゆく。
下なるものも同じく続く、 よって中間なるものは無い。よって上と下というものも無い。 (自家撞着という言葉があるが、すでに言葉という者はイミディアの中の幻覚で、それ自体は無い)
まばたきの内にポンと暗闇が生まれた。 (まばたきが、終われば当然それは失せる)T×Sというものだ。
塵と供に時と空間は交互に入れ代わり次第に広がり分岐した。 その終わり無きもののどこかで、まばたきの間に光が暗闇に侵入した。
イミディアをもつものは時と空間を統一し、そこに中間(グレーゾーン)という概念があらわれた。 そして上なるものと、下なるものが・・・。 イミディアをもつものにより時と空間はピッタリと一致したので、それは消滅した。
この最初にしてイミディアをもつモノは、大いなる者、創世者である。世界の源なり。 それはイミディアスである。
時と空間は無い。全てイミディアスの夢である。 ドリーム・コスモスがイミディアスの空想によって時と空間の錯覚をドリーム・コスモスに生まれたものに与えられる。 イミディアスは自己と交わる事により、ドリーム・コスモスの中にミニイミディアスを生む。
ミニイミディアスは時を空想し空間を空想し次に他者を空想した。 ミニイミディアスは「ゾロアスター」とイミディア内の空想された他人に自分を呼ばせた。 ミニイミディアス=「ゾロアスター」は、そして世界と時と空間の全てを創った。
ミニイミディアスたちは全て「ゾロアスター」の全ての中に散らばった。 かくして全ては初めの創世者と後から来た創世者たちによって、7つに分割され再編成された。 7つのゾーンが重なり合うにつれ、ミニイミディアスたちは記憶を徐々に失い、創世者たる事を忘れた。
彼らは今も生きている。 しかし、遙か昔、7人目のイミディアスをうみしのち、 非なる光は闇にフィルターとしての光の通路を押し戻され、供にイミディアスは消失した。
かくして全ては本質的に無い。 全ては、かつてあったものの夢の中の夢である。 初まりと終わりは一緒である。
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