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元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「雨族」 断片20-焼却場Ⅳ~F・クラウネン:kipple

2007-11-09 00:28:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片20-焼却場Ⅳ~F・クラウネン


落合さんは微かな品の良い笑顔のまま、僕に近づいてきて乾いた手で握手をするとブルーのスーツの男を紹介してくれた。

「こちらは、{えふ}ぼっちゃまです。動力ぼっちゃまの双子の弟なんですよ」

やはり、F・クラウネンだった。落合さんは続けた。

「動力ぼっちゃまに双子の弟がいたなんて、ご存知無かったでしょう。ちょっとした事情がありましてね。{えふ}ぼっちゃまは生れるやいなやクラウネン家の手の届かない政府のラボに隔離されてしまいましてね ・ ・ ・」

僕は、その時、室内の冷ややかな空気が細かい氷の繊毛に変異した様に感じた。

F・クラウネンが突如として振り向いて突き刺さる様な声を発したのだ。

「落合!それ以上言うな!」

F・クラウネンは一言怒鳴るとナイフでザッパリと切り裂いたような口を閉ざして僕の顔を貫くように見た。

彼の眼差しは実際、僕を通りぬけ、背後の壁さえ通りぬけ、永劫の彼方の絶望的な暗黒世界を凝視しているみたいだった。

僕は、ごく必然的に彼の目を見返した。

そして彼の両目の色が違う事に気が付いた。

右目が、瞳孔がほとんど確認できないような古いコンクリート壁のような灰色で、左目が、薄いブルーだった。

彼はどう見ても人間ばなれしていた。

茶色の薄い眉毛に人工的にそげた頬。

僕は、これこそ誰もが冷酷な顔だと認めざるを得ないだろうと思った。

F・クラウネンは、僕に興味を失ったとでもいうようにふらふらと視線をずらし、ぼそぼそとつぶやいた。

「お前が{ロミ}か。兄貴に俺の事は聞いているだろう。俺は今どういう気分に陥っているかわかるか?」

僕は彼が何を感じているのか全くわからなかった。

死神とでも対話しているような雰囲気なのだ。

僕は細かく震えるように首を振った。

「俺はお前を射殺したい気分なんだ。兄貴は俺に射殺される時にお前の事を頼むと言い残していった。お前を援助しろとな。ところがお前は醜悪だ。平凡きわまりない中年男だ。貧相な特徴の無い顔、狭い肩、薄い胸、ふくらんだ腹、短い足、ぼさぼさの髪。先が思いやられる。いいか、これから俺はお前の相棒になるんだ。くそ!俺は兄貴の頼みごとだけは絶対守るんだ」

僕は傷ついた。

僕は、あまり人は嫌いにならないたちなのだが、F・クラウネンに関しては、すぐに潰れた芋虫よりも嫌いになった。

僕の方こそ彼を射殺したかった。

それに彼の言っている内容が僕には感情的にとても理解できなかった。

兄を射殺しておいて兄を敬愛している口調なのだ。

僕はその事を考えているうちに、何故か“ベラクルス”という映画を思い出してしまった。

バート・ランカスターがゲーリー・クーパーに撃たれニヤリと笑って死んでいく。

ゲーリー・クーパーはバート・ランカスターの事を敵対しながらも評価していて、それでも決闘しなければならない。

死にゆくバート・ランカスターがクーパーに誰かさんの事を頼むと言い残しても、それはそれで納得できるのだ。

ひょっとしたら、FとD・クラウネンの関係はそんなものだったのかもしれない。

しかし、F・クラウネンはどうみても、そんなタイプの人物には見えなかった。

でも、人は見かけによらない。




断片20     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片19-焼却場Ⅲ~落合さんが語った事:kipple

2007-10-26 00:22:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片19- 焼却場Ⅲ~落合さんが語った事


落合さんは、それから延々とごく平凡な中学生に向かって、とても非凡な話を始めたのだ。

「私はね、先月まで五十一才だった。ところが四十二年分が一ヶ月で過ぎていったのだよ。私はね、ある数学の絶対的な法則を偶然に発見したのだよ。話せば、とても長くなるんだけどね。私は、あるアフリカの古代宗教とナスカ平原の記号的な意味に注目してね、究極的な図形を完成したんだ。それは五点を軸とした三角形と付随する楕円 ・ ・ ・ 羊の角みたいなね ・ ・ によって構成されるんだよ。それは絶対的な宇宙の法則を解き明かしたのだよ。次元をね。次元を越えるんだ。この、物質的な現実連鎖の中で解釈すれば私は九十三才となるのだろうが、実は完全に違ったんだ。私は一ヶ月で四十二年分の年をとったわけではない。四十二年間の私は運命どおりに他の世界で四十二年を生きたのだ。その世界はどこだかは分からない。とにかく私はこの世界の一ヶ月前に運命どおりに、五点を軸とした画期的な三角図形をくぐって不可思議な深海世界に入ってしまったのだ。そこは限りなく海の底だった。誰が何といおうがとてつもない海の底だったのだ。それ以外は、まるで分からない。私は別にそんな事、気にもしなかった。どうして呼吸が出来るのか、とか、そういう類の事も気にもしなかった。とにかく私の研究がついに実ったのだ。そして全ては動力ぼっちゃまの言うとおり運命どおりなのですから。その深海世界の生物はとても美しく優しく誰も傷つかない。誰も死ななかった。彼らは私の、とても良い友人になった。彼らは自分たちを「メステル」と呼んでおりましたよ。主に彼らが人類と違うところは欲望というものが無い事だった。彼らは、増えもせず減りもしない。深海世界には始まりも終わりも無い。永遠なのだよ。彼らは、あらかじめ生れていない、だから死にもしない。永遠には初めも終わりも無く、唯、在り続けるのだ。しかし私には始まりがあった。私は別次元の永遠の世界に数学的な偶然から入り込み、地球時間で四十二年間滞在し、四十二才、年をとった。私の肉体は永遠を拒み続けたのだ。人間である私の欲望は永遠を拒み始めたのだ。私は開放が欲しかったのだ。私はまるで「オズ」の国からルビーの靴の踵を三度鳴らして「ノー・プレイス・ライク・ア・ホーム」と唱えて帰る時のドロシーのように「メステル」たちとの別れを悲しんだ。永遠を拒み、終決を望む私としては当然の帰結として、この世界に戻らざるを得ないのだよ。運命どおりにね。そして私は戻ってきた。四十二年、歳を取った五十一才としてね。」

話は僕の憶えている限りそのようなものだった。

落合さんは、その後も、そのような奇妙な体験談を幾度か僕に打ち明けた。

たとえば、自分には昔から異星人の友人がいて、彼は人類史以前の文明隆盛期の頃から地球に来ていて全宇宙の知的文明の資料を集めている{異星人の故郷はシャングリ星といい、異星人の名はRAという}とか、さらに数学と様々なオキュリティスムの呪術記号の研究を深めて次元の裂け目を作り、そこから恐るべき高次の世界を覗き見、全宇宙の白痴の支配者である《イミディア》という精神機械の末端を感知した、とか想像を絶するような体験談を僕相手に話したものだった。

僕は落合さんの奇矯な話をほとんど信じてはいなかった。

落合さんは、とても淋しかったのだと思う。

一人でずっと広い屋敷に居れば夢と現実の区別が定かで無くなる時があるのだ。

実際、落合さんは、僕にこそ、そんな話をするけれども、とても礼節をわきまえた謙虚で正直で分別のある人間なのだ。

誰に対しても、その態度を崩さず、いつも静かで落ち着いていて、きちんとしていた。

たぶん、それだからこそ、どこかに捌け口が欲しかったのだろう。

小さな狂気の領域を、僕という無害な男に噴出させてバランスを保っていたのだ。

でも、幾度か僕は落合さんの言っていた事が全て事実だったとしたら?と考えた事がある。

疲れ果てて眠れない時などに、延々と考え続けた時がある。

何故なら落合さんは彼の言う究極の数学からくる体験談以外に、決して、どんな細かい事でも嘘をついた事が無いからだ。

彼の性格の特質として嘘をつけないという傾向があるんだ。

だいぶ前だが、そう思って、彼の話してくれた様々な体験談にちりばめられた言葉やその意味を、僕は夜を徹してNECのPC9801にデータ入力し、分類し、体系ずけてみた。

それは宇宙の異常な多次元構成の断面図であり、落合さんの巨大な諦観を物語っていた。

正常な健全な意味づけなどは、とても望むべくも無く、グロテスクでデタラメで広大な虚無の断片が白痴の支配形態という基盤上で漂白しているだけだった。

僕は白痴の宇宙体系の謎など、本当はどうでもよく、実は落合さんの言った 「君は特殊なんだ」 という言葉が気にかかって仕様が無かった。

僕が落合さんの話を事実だと考えたのは、それなら僕の特殊性というものが、それとどう関わっているのかがとても気になったのだ。

僕はこの現実社会の中では、どう考えても、つまらない平凡な男だし、おかしな友人を持っていたのと、その影響で人生に対して巨大な諦観の洗礼を受けてはいるものの、それ以外にはちっとも特殊なところなんてありはしないのだ。

まぁ、いいか。

とにかく火葬場には落合さんとF・クラウネンがいたんだ。




断片19     終


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「雨族」 断片18-焼却場Ⅱ~落合さん:kipple

2007-10-25 00:36:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片18- 焼却場Ⅱ~落合さん


落合さんは自分が究極の数学を極めたと信じていた。

彼はクラウネン家の執事として幼い頃から個室を与えられ{彼は戦災孤児だった}、夜な夜な奇妙な研究に精を出していたのだ。

僕が中学生の頃だから、あれはもう十八年くらい前の事だ。

僕と落合さんがクラウネン家の広い屋敷内で二人きりになった事があった。

その時、彼はシックでシンプルな薄暗い書斎に僕を呼び寄せ、こう言った。

「ロミくん。君くらいの若者は、たいてい与えられるべき方向を模索しているものだ。君がそう思っていなくても、たいていの君と同じ年くらいの若者は導いてくれる何かを期待している。」

「落合さん。僕もそうです。たとえ動力君みたいな友人がいてもです。」

僕は、その頃とてもおしゃべりだったのでよく考えもせずに口が語るにまかせていた。

薄暗い書斎の電灯{ふふふ}が薄笑いを浮かべているようで僕はハッとした。

いままで感じた事の無い落合さんの側面が僕に迫りつつある事をぼんやりと理解したのだ。

「ロミくん。違うんだ。君は違う。私は君は、君と同じ年くらいの若者とは全然違うと思うよ。君にはあきらかに異界の特質がある。気づいていないだろうが君は特殊なんだ。」

僕はよく憶えている。

落合さんは電灯の黄色い投影に「コレクター」のテレンス・スタンプみたいな笑みを浮かべて気味悪く僕を触発した。

「落合さん。僕は特殊じゃない。ちっとも特別なところはない。変な友人を持っていることを別にすれば僕は平凡きわまりない若者だ。「猿の惑星」と「ダーティーハリー」に感激して「ビートルズ」を始終聴いている。幽霊も、UFOもツチノコも見たことないし、油すましに遭った事もないよ。」

再び落合さんは{ふふふ}と笑った。

「ロミくん。君には自分の特別な部分が一生分からないかもしれないな。私はあえて言わないが、胆に銘じておくとよい。君は特別だ。」

                         ○

僕は、今になって、かつて十代の頃に、同じような事を二人の女の子に言われた事を思い出した。

僕の特別な部分が何か、それに気づかないと、どうなるのか。落合さんは、あえて言わないと笑いながら気を使ってくれたが、今になって考えると、僕は恐ろしかった。

三回もの「雨族」宣告は、聞きたくない。杞憂かも知れない。しかし、もし、その時、その言葉が出たら、やはり僕は戦慄しただろう。

                         ○

そして、僕は少し気味が悪くなり、憂鬱な気分になって黙り込んだ。

しばらく、不愉快な沈黙の幕が降り、二人は幾年代もの独特な臭気に包まれて木製の軋む椅子にじっと座っていた。

僕は視線を本棚に延々と並ぶ古代の宗教やアフリカの原住民の記録文書などにぼんやりと這わしていたが、落合さんは僕の顔を貪り尽くすように見つめていた。

「ロミくん。私は何才だと思う?」

落合さんはしばらくして、そう言った。

「五十才」

と僕が冷たく答えると、落合さんは口を V の字に曲げて首を振った。(⌒V⌒)

「私はね、九十三才なんだ。そうは見えないだろう?」

僕は「うん」と言った。

僕は恐くなってきた。

何だかとんでもない事態に陥りそうだった。

そして、実際、そうなった。




断片18     終


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「雨族」 断片17-焼却場Ⅰ:kipple

2007-10-24 00:50:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片17- 焼却場Ⅰ


鉄の扉は思いもかけぬ軽さで開いた。

僕と小雨は一緒に、そのすきまから内部を覗き見た。

中は、真っ白だった。

真っ白の中に真っ白のお棺がおかれ、両側に、二人の男がいた。

ひとりは真っ白い肌に眠っているような眼をジッと一点に据えている高い男だった。

僕はすぐにわかった。

D・クラウネンとは似ても似つかなかったが、彼はF・クラウネンに違いないと思った。

彼は僕が入っていってもピクリとも動かず、じっとお棺を見つめていた。

いや、見つめていたのかどうかは怪しい。

彼の目は見ているのか、ただ目を見開いているだけで何も見ていないのか、よくわからない。

そんな目だった。

彼はブルーのスーツを着て僕に側面を向けて突っ立っていた。

そして、死臭を漂わせていた。

僕はその死臭を感じて、彼がF・クラウネンである事と、D・クラウネンを撃ち殺したのが間違いなく彼であるという事を確信した。

もう一人は、すぐに僕の方を振り向き、微かに笑顔を浮かべて、
「やぁ、{ろみ}さん。落合です。久しぶりです。」
と言った。

僕の名も日本語としては発想しにくい。

{呂見}と書く。

落合さんは、クラウネン家の執事で僕も幼い頃から知っていた。

クラウネン家がD・クラウネンの両親の死とともに崩壊し始めてからもずっとクラウネン家のこまごまとした、いわば残務整理をやっていた。

朽ち果てていく広大な屋敷の中でD・クラウネンとともに、様々な資産削りをやってきた。

クラウネン家は昭和の初期までは多摩地区一帯の大地主で放蕩遊民の生活を何不自由なく謳歌していたのだが、三十年くらい前に小平にある千五百坪の屋敷地を残して全ての土地を売却しつくしてしまった。

彼らの唯一にして無二の欠点は、新しい収入という事を鯨の肛門についてほども考えなかった事だと思う。

しかし、クラウネン家の誰が働いたところで固定資産税を埋め合わせるだけの収入が得られたとは思えなかった。

でも、落合さんはがんばったのだ。本当にがんばったのだ。

こまごまと最小限の支出に気を使い続けたのだ。

株式の配当や預貯金の利息でなんとかがんばった。

でも残ったのは銀行預金と証券類と絵画や骨董品だった。

それから、三十年間かけて、それらの財産は殆んど売り尽くし、今度は僅かな利息収入だけで生計をたてていた。

このままいけば僕はあと十年で完璧に 0 になると思っていた。

しかし、D・クラウネンが死んでしまった今、すべては最後の親族にして相続者のF・クラウネンにかかっているのだ・・・、このままクラウネン家の放蕩と衰退の歴史をだらだらと語っていてもしょうがない。

やめだ。

とにかく落合さんは、その小平の屋敷で昭和の前期からずっと執事をやってきた人物なのである。

彼はもう還暦を軽くクリアしているはずだ。

しかし、ふさふさした白髪と深く皺の刻まれた笑顔は僕にはとても若々しく思えた。

 


落合さんは、とても実直でおだやかな、ディケンズの小説に出てきそうな感じの執事なのだが、とても奇妙な人物でもある。




断片17     終


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「雨族」 断片16-新・霧暮れⅥ-駐車場:kipple

2007-10-23 01:12:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片16- 新・霧暮れⅥ-駐車場


ヨゼフ・Kは、僕の足をペロペロ舐めた。

僕は裸足でいつも運転する。特に意味は無い。

僕のやる事には殆んど、特に実際的な理由なんか無い。

僕は裸足でアクセルを踏むのが好きなのだと思う。

何か倒錯的で自己破壊的な気分にひたれる。

どうしてだか、とても自分を無力に感じる。

僕は、僕を、無力と感じる事が好きなのだ。おそらく。

僕が、僕のいままでの人生において全て無力であった事に復讐をされる事を望んでいるんだ。

おそらく。

D・クラウネンは全てを知っていた。

出来事のすべてを。

しかし、その意味は知らなかった。

出来事を全て知っている友人を持つということは、僕を長年にわたって何もわからない無意志、無気力の男にしてしまったのだ。

僕は、おそらく世界中で最も信ずる方向を失った人間のひとりだろう。

 

緑を雨に震わせている樹木の群れに挟まれた細い道を、僕の車は痙攣するように、ぶるぶるがたがた進んでいった。

僕の車は進んでいたが、僕の気分はぐんぐん後退していくかのようだった。

僕が、ヨゼフ・Kの頭をなぜながら煙草を吸うと、煙は僕の視野を薄くふさぎ、その中から小さな白い火葬場が現われてきた。

僕のシビックは青いボディを誰もいない、くもりガラスの表面のような狭い駐車場に、沈み込むように停止させた。

砂の落ちるような雨音の他、そこには何も無かった。

僕は、煙草を揉み消し、吸殻入れに放り込み、裸足を黒い革靴に忍び込ませ、ヨゼフ・Kを車に残して、傘をささずに静かに外に出た。

そして細かい雨の中を火葬場に向かった。

途中で一度、僕は立ち止まり、雨をさけながら、本日42本目の煙草に火をつけ、あたりを見回した。

動くものは雨以外になかった。

僕は、ふと静かにここで死んでしまいたいと思った。

誰もいない山の中の小さな火葬場の小さな駐車場で静かな雨にうたれて何の理由もなく死んでしまう。

僕の死体は、この風景にとてもマッチするだろうと思う。

そんな事を思っていると、急にどうしようもない暗い気分に襲われた。

この小さな駐車場に足元からズブズブと沈んで憂鬱の底無し沼に呑み込まれてゆく。

僕は、煙草をくわえたまま、
“ああ、車のトランクには、ガムテープとゴムホースが入っていたな、ガムテープでホースを固定し、車の中に引き込んで、ガムテープで車を密閉し、ハンドブレーキをかけて停車したままアクセルをガムテープで固定し、睡眠薬を飲んでリクライニングで横たわって、排気ガスを充満させれば、ウトウトしながら、全てを終わりにできるだろう”
そう思い、ぼんやりと自分の青いシビックを見た。


・・・一瞬、僕は自分の目を疑った。


僕の青いシビックの前に、突然、巨大なウンコが出現したのだ。ゆうに僕の車の二倍くらいの大きさがあった。

僕が、呆然と立ち尽くしてると、今度は、青い翼をはためかせて天使が3人、現われた。

3人の可愛らしい女の子の天使は、呆然としている僕の視界の中で、サッサと巨大なウンコをホウキとチリトリとゴミ袋に入れて片づけ、小雨の中を翼をはためかせて空中に舞い上がった。

そして、一瞬、僕に向かって、3人揃って振り向き、輝く満面の笑みを浮かべると、雨空に染み込むように消えていった。

僕は煙草をくわえたまま、しばらく立ち尽くしていた。

何だ?あれは、なんだったんだ?僕は幻覚を見たのか?いよいよ、そこまできたか。

幻覚にしろ、白昼夢にしろ、気が狂ったにしろ、とにかく底無し沼に沈みこんでゆくような憂鬱なドス黒い暗い気分は、僕の内奥の遠く遠く、小さな塵のように萎んでしまった。

アホらしくて死ぬ気も失せたってところだ。

そもそも、僕の運命プログラムは、こんなところで死ぬようには組まれていないはずなのだ。

この小さな駐車場で自分の車の中で自殺する?

ありえないはずだ。

それは、そうしようと思ってもできないはずなのだ。

僕の死は僕の意志を無視して、すでに定められている。

僕は少し苦笑しながら、煙草を落とし、丁寧に革靴で揉み消し、運命どおりに白い小さな正方形の建物に向かって行った。

その雨に霞む建物はなんとなく母の死んだ町病院を思い出させた。

僕の筋肉はちゃんと、僕を鉄扉の前まで運び、パチリとパズルのように風景にはめ込ませた。

風景とはパズルだと思う。

全てが定められた運命どおりにパチリパチリとはめ込まれてゆくのだ。

一瞬とは実は、ジグソーパズルの事なんだ。

僕は、ちゃんと知ってるぜ。

僕の手は運命どおりに冷たく、湿った茶色い鉄の扉に触れた。

僕は、運命どおりに笑った。

何故だかは分からない。笑うべきところなのだ。

誰も彼も皆、何もわかりゃしない。

いつでも、どこでもそうなのだ。

それで、皆、ある日、突然、死んでいってしまう。





断片16     終


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「雨族」 断片15- 新・霧暮れⅤ:kipple

2007-10-22 06:08:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片15- 新・霧暮れⅤ-六月三十日


僕は愛犬のヨゼフ・Kを助手席に乗せ、細かい雨の反射作用で銀色に輝く県道を気の遠くなるような沢山のカーブを繰返しながら、その火葬場へ車を走らせていた。

対向車はほとんど無く、時折ギッシリと乗客を詰め込んだ観光バスとすれちがった。

何故、この時期にこのような何の見るべきものの無い山の中を乗客を満載したバスが走っているのか僕には、いくら考えてもわからなかった。

唯、バスは幾度か正確な間隔をおいて僕の青いシビックとすれ違い、雨で白く霞む下り坂を、音も無く遠ざかって行った。

僕は、その理由を色々と考えた。

どこかの大会社の研修施設みたいなものがこの山のどこかにあって、社員のほとんどが、そこで行なわれている自己啓発セミナーに強制参加させられているのかも知れない。

この山の上の方に何かの宗教上の重要な・・・たとえばベツレヘムやルンビニのような・・・場所があって信者たちが全国から集まり奇妙な儀式を行なったのかも知れない。

太古の邪教を狂信する新興宗教団体だ。悪魔崇拝者たちかも知れない。

いや、実は彼らは、すべて地球を侵略しにきた凶悪な異星人で、山の上で観光バスのレプリカ(実は変幻自在の人類虐殺メカ)を組み立てて、全人類皆殺しのために大挙して繰り出したのかもしれない。

いや、自殺志願者たちが集団自殺の場所を探して、ひと気の無い、淋しいところを探して、いつまでも回り続けているのかも知れない。

あるいは、恐るべき偶然により、たまたま大勢が、この何もない山に集まってしまっただけかも知れない。

ひょっとしたら僕の幻覚なのかも知れない。

僕の観光バスをめぐる思考は限りなく続き、おかげで友人の死について、また友人の死後の僕の事に関しての諸々の想念・憂鬱な感慨や孤独感は細かい雨の情景の彼方で小さく、こっそりと潜んでしまっていた。

しかし、吹き荒れる観光バスに対する思考嵐の遙か遠くの方から、じっくりじっくりと漁火のように近づいてくる一つの気になる疑問があった。

次第に、それは観光バスに対する思考迷路を押し退けて、僕の意識の沃野を占領し始めた。

考えてみると、それは僕が、この山に入ってから、意識の片鱗でずっと奇妙に感じていた事なのだ。

それは音がないのだ。

あるいは僕の聴覚が何らかの・・・D・クラウネンの死の重みか?・・・精神的な疎外を受け、音という概念を忘れてしまったのかもしれない。

僕は、よく考えてみたが、観光バスの思考ループに入る以前から、一時間ほど音を聞いたという記憶が無かった。

僕たちは本当に音を聞いているのだろうか?

誰もいない森の中で大木が倒れました、音はしたでしょうか。

そんな気がしてくる。

あるいは、この世界は瞬間瞬間がフィルムの一コマのように無数に集められていて、今、この瞬間だけがシリウスの誰かさんピックアップされプレイバックされているにすぎないのかも知れない。

過ぎ去りし日々も来たりし日々も順列的な意味は無く、ただ再生された現在によって眺められる残像なのかもしれない。

そう思うと現実とは瞬間以外のなにものでもないのだ。

我々はつねに瞬間に拾い上げられ、現実の連続を錯覚しているのだ。

僕は、よく分からない。何もかもよくわからない。

僕らは訪れ来る瞬間を絶対に拒むことができないということだ。

何故ならば瞬間など存在しないからだ。

無こそ、瞬間であり、そこに永遠の秘密も隠されている。

おそらく。





断片15     終


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「雨族」 断片14―世界を救う者~首吊りの唄:kipple

2007-10-20 01:40:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片14―世界を救う者~首吊りの唄


うまれながらにしてからだが弱く

うまれながらにして気が優しくて

うまれながらにして正しい精神を持ち

うまれながらにして不器用で

うまれながらにして不細工で

うまれながらにして親にも捨てられ

うまれながらにして正直もので

うまれながらにして美しい心を持っていた

高尚なる者。
天から、この世界に授けられ捨てられ拾われ、福祉事務所の手続きにより、清水市近郊の児童養護施設「夢の木学園」に入園す。


☆十三年後☆
赤ん坊のまま捨てられた僕は、市の養育施設の御世話になり、3才くらいから、10年くらいに渡って、職員の人たちや民生委員の教育係の人たちのみならず、同胞のはずの年下年上の親無しやネグレクトのチルドレンたちの喜びと幸福の的にされました。

毎日毎日、色んなコトをされました。

主な日課は、裸にされて、教練室の真ん中で、好きな女の子や皆に囲まれ殴られ蹴られ、ウンコをさせられます。
みんな、凄く楽しそうです。

ケースワーカーや民生の委員や同年代の仲間たちに、つねられたり、ツバをかけられたりしながら、毎日、屋上から裸のままゴムロープで吊るされます。

そして、下からゴムホースで水をかけられ、屋上からは施設の下水からバケツで汲んできた濁った廃液を浴びせられます。

それが日が暮れ始めるまで続いて、ロープを放され地面にベタっと落とされると、みんなゲラゲラ(^▽^)笑って喜んでて(^▽^)、凄く楽しそうです(^▽^)。

最後に皆の楽しい笑い声と一緒に教練室に引きずられて行って、昼間した自分のウンコを食べさせられます。

それが、だいたい僕に課せられた、十年くらい続いてるメインの日課です。
ほかにも色々あるんですけど、いっぱいありすぎて、いちいち挙げてたら大変なので、はぶきます。

そうして、今日も、金属バットで叩かれながら自分のウンコを食べさせられる事になったのですが、どうしてか、今日に限って、どうしても嫌になっちゃったんです。

どうしても、ウンコをみんなの前で食べるのが嫌で嫌で仕方なく涙が出てきて、ああ、自分は何て嫌な人間なんだ、ちゃんと食べれば皆、喜んで楽しく笑って幸福になれるのに、どうして、今日に限って僕はできないんだ。

僕は、そんな悪い自分が嫌になり、みんなのためだと、一生懸命、ウンコを食べようとするのですが、どうしても、自分でも分からないくらい自分が拒否するのです。

僕の身体は、両手両足をバタバタさせて、思いっきり嫌がりました。

嫌がり続けていると、サックつきのパンチや靴の先に鉄の釘が付けてあるキックが、あちこちから飛んできます。
それでも嫌がると、カエルの解剖用のメスで指と爪の間を切られたり、机や椅子の角で身体中をどつかれ頭も顔もどつかれました。

特に僕の大好きなヒロミちゃんはギャアギャア(^▽^)笑って、僕の口唇をペンチで潰して椅子の足を突っ込んでくるんで、バキバキ鳴って上下の前歯が折れて血がいっぱい出ました。

すると皆、汚い、汚いと言って色んな物をぶつけてきて、養護教員のマサコ先生とタクヤ先生がキャアキャア(^▽^)笑いながら近くにいた年下組の5~6人の優等生のイケメンの男の子とエロかっこいい女の子に、『誰でも使える力のいらない強力安全ペンチ』と、『誰でも使える力のいらない強力安全植木鋏』を持たせて、僕の口から突っこんで顎を挟むと、皆の “せ~の!” の掛け声とともに、下顎をバラバラにされました。
ガリゴリ!グシャ!っと音がして凄く痛くて、次第に痺れて顔半分の感覚が無くなりました。

床を見ると、血があたり一面に飛び散って、真っ赤っかです。みんな、困った顔をしています。

ああ!最初から自分のウンコを食べていればこんなことにならず、今日に限って嫌がった自分が悪い、皆喜んで幸せになってたはずなのにと自分を責めたのです。

皆も、“死ね死ね死ね死ね死ね、お前がいると、その血でバレる、死ね死ね死ね、死ね死ね死ね死ね死ね、教えてある首吊りの木に行って首吊って死ね”と言います。

民生委員の福祉係の人も園の先生たちもネグレクトな子供達も孤児の先輩も後輩も同輩も、みんなで大合唱です!
“死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね”

それで、僕は自殺を決意したのです。みんなのためです。悪いのは僕だから仕方ありません。


真っ赤な夕暮れの中を一人で、近くのひと気の無い枯れ山に向かいました。

前から教えられていた首吊りの木が見えてくると、冷たい風が吹いてきました。

荒れ野を走る冷たい風が、絵画的遠近感を僕と、その奇妙な石と、木に垂れ下がった首吊りの縄の作り出す、この真っ赤な風景に、やけにボウッと、眼球にゼリーを、はりつけたように、僕に対して、ぼんやり印象づけています。

僕は一直線に首吊りの木に向かいましたが、途中で、巨大なウンコが二つも僕の目の前に落ちてきました。

施設の建物の半分くらいの大きさだったので、ちょっとビックリしました。

何だか分かりませんが、気にしません、避けながら木の下に辿りつきました。

さぁ、皆のために、これから僕は死ぬのです。
血みどろの首に縄をかけて、ギュ!っと締めました。

きっと、そうする事が皆の喜びであり幸せなのでしょうから。


【首吊りの唄】(作詞:作曲:唄:kipple)


ケラケラケラケラ ケラケラケラケラ

笑い声が聞こえてきます 
きっとみんなの笑い声です
みんな喜んでいるのです
僕は、これから、この奇妙に積み重ねた石の上に乗り
一、二、の、三!で跳ね上がるのです
赤一色の空に向かって、跳ね上がるのです
そして、落ちる。僕は落ちる。
僕は、蓑虫の如く、ぶらさがり 少しづつ 少しづつ 落ちてゆく
僕の首が、細くなり
僕の鼻から口から耳から、じゅるじゅると白いモノ、赤いモノ
空に混じるのだ
真っ赤な空の仲間入りをするのです

ケラケラケラケラ ケラケラケラケラ

又、笑い声が聞こえてきました
とても苦しいけれど、これでみんなが幸せになれば、ソレで良いと思います

みんな、サヨナラ、幸せになってね

 


バサバサバサバサバサバサバサバサバサ
3天使飛来。

ホウキとチリトリとゴミ袋を各自持ち、お掃除開始!

“あ~あ、また効果無かったねぇ。あれ?彼の幽体は?もう上に行ったの?”

“え?ばかねぇ~!彼は、雨族じゃないってば!即行天界よ~!”

“テっちゃん、しっかり!彼は、ほら、あれなのよ。聖者ってか、救世主って言うか、そんな感じの人よ!時折、神様が落す微かな救いってヤツよ。”

“あ、そーか!俗に言う「究極ペット」の涙ってヤツね!きゃぁ~!最高位天使様の出動だったんだわ。えぇ~!じゃぁ、人間たちは、自分たちを救ってくれる人を、イジメ殺しちゃったんだぁ・・・バカでぇ~!”

“ほんと!救いようが無いとは、まさにこの事よねぇ!”

“ねぇ気づいてる?神様のウンコがだんだん大きくなってるよね”

“うん、形も崩れてきてるし量も多くない?下痢っぽいのも多いよね”

“こんなことばっかしだと神様どんどんオカシクなってきちゃうよね。今度のは、けっこうヤバくない?”

“うんうん、そうよね。最近、この系統の世界、感じ悪くない?ねぇ、何だか嫌な予感しない?”

“する”

“する”

“ま、一応、片付け終わりね。帰りましょう”

バサバサバサバサバサバサバサバサバサ
三天使、宵闇の宙に舞い消える。





断片14     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片13―諸君!~転生演説会:kipple

2007-10-19 00:24:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片13―諸君!~転生演説会


ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ・・・・・・

“う~しっ!う~し!うし!うし!うっしゃ~!
  OK!OK!OK!OK!OK?OK?

 御静粛に!
 いいかなぁ~!いいですかぁああ~!

 聞いてくれ!聴きたまえぇぇえええ~っ!

 諸君!諸君っ!
 諸っ君!諸っ君っ!しょくぅぅ~~ん!

 コホン!君たち!
 君たちは!何度も!何度も!人として生まれ出でてぇ!
 一度でも!たった一度でも!
 いいか!たったの一度でいいから!
 本当に!心の底から!楽しかった事があったのかぁ!
 社交辞令や、おべっかや、お追従ではなく!
 本当に心の底から、楽しかった事が!
 たったの一度でも! あったかァー!”


あるあるある~!毎日スッゲ~楽しい~!スッゲ~楽しい~!スッゲ~楽しい~!スッゲ~楽しい~!メッチャ楽しいよ~!人生最高!メッチャ楽しい!メッチャ楽しい!メッチャ楽しい!人生最高!
人生丸ごと大万歳~!心の底から大万歳~!人生丸ごと大万歳~!心の底から大万歳~!人生丸ごと大万歳~!心の底から大万歳~!
いっぱい!いっぱい!あるよ~!楽しい思い出!いっぱい!いっぱい!楽しい思い出!いっぱい!いっぱい!楽しい思い出!いっぱい!いっぱい!
人間万歳!人であるからこそ!心から人生を楽しめるのだ!人間万歳!人間最高ー!人であるからこそ!心から人生を楽しめるのだ!ああ!素晴しきかな人生よぉっ!
今!ここにいるだけでマジ、チョ~楽しくない?スンゲエ楽しいよな!みんな!チョ~楽しいよ!チョ~チョ~楽しいよ!チョ~チョ~チョ~楽しいよ!マジ、チョ~チョ~チョ~チョ~楽しい!
太平洋戦争だってオニギリ一個にありついただけで心の底から幸福になったし、シベリアでもシケモクを一服しただけで全身が温まり、心の底から幸福感があふれてきたね!心の底から楽しめるものが何も無いなんてぇのは、贅沢者の言う戯言だぁぁあああ~っ!
生きていれば、そこいらじゅうに心の心の心の真に心の底から楽しめることなど!無数にある!楽しい事は無数にある!楽しい事は無数にある!楽しい事は無数にある!楽しい事は無数にある!楽しい事は無数にある!無いと言うなら苦労がたらぁ~ん!
お~~~!たまにヤな事あるけどさ~!嫌な事1円楽しい事千円!嫌な事百円楽しい事百万円!嫌な事十円楽しい事一億円!嫌な事1円楽しい事一兆円!
そうそう!たまぁに嫌な事だってあるけどさァ、そんなの丸めてポイで、楽しまなくちゃ~!人生は楽しむためにある~!
人生、C調で楽しみやがれってんだぁ!アホンダラー!人生、C調で楽しみやがれってんだぁ!
人生は最高の娯楽よ!楽しめないヤツはバカ~!人生は最高の娯楽!人生は最高の娯楽!人生は最高の娯楽!
生きると言う事は、心の底から湧きいずる宝の山を歩くが如しっ!
ねーみんな、人生って最高に楽しいよねぇ~!ラーイフ・イズ・ビューチフル~!わ~んだふる~!

ザワザワザワ最高!ザワザワザワ人生!最高!ザワザワザワ最高!ザワザワザワ人生!最高!ザワザワザワ最高!ザワザワザワ人生!最高!ザワザワザワ人生最高!ザワザワザワ人生は楽しさそのもの!ザワザワザワ!楽しい事!すなわち、人生そのもの!幸福そのもの!ザワザワザワ人生は楽しさそのもの!ザワザワザワ!楽しい事!すなわち、人生そのもの!ザワザワザワ人生は幸福そのもの!ザワザワザワ!心からの幸福!すなわち、人生そのもの!ザワザワザワ最高!ザワザワザワ人生!最高!ザワザワザワ最高!ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ・・・・・・

 

 

“・・・そ・・・そ・そうっすか・・・い、いやぁ、いいんすよ・・・ハァ・・・そうっすか・・・んじゃ、お・オレ、か・帰る・・ね・・・・・”

 

コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ・・・・・ くるりっ!

“このォ!低能バカ猿どもがぁ~!地獄に落ちてケツの穴でも焼かれちまえ~!バッキャロ~!!!”
ズダダダダダダダダダダダダダダダダ~!
εεεεεεεεεεεεεεε=┏(; ̄▽ ̄)┛


◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
ここは、どこでもない。本音の世界。
本音による本音の主張。
ここにも、一人、いた。
一つの世界が終わっても、無限の世界で無限の人生が繰返される。
たとえ!無限の世界が全て消滅しようとも、輪廻の輪から解き放たれぬ限り、また、世界は無限に再生され、人生は繰返される。
輪廻の輪から解き放たれる事を願った本音の主張が、ここで一つ、軽く却下された。
輪廻の輪は再び回り出す。くるり。くるり。くるり。雨族は人にしか生れ変わることができない。
永遠に輪廻の輪を人として巡り続けるのだ。
それが嫌だと言うのなら・・・
人に満足するか、雨族を回避するか、それとも・・・全てを雨族に・・・
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎






断片13     終


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「雨族」 断片12- 新・霧暮れⅣ:kipple

2007-10-18 00:43:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片12- 新・霧暮れⅣ


僕はかなりショックを受けた。

全知無能力者で五万年間の人類データ送信者の遺伝子を引き継いでいる彼に死が訪れるというのは、とても奇妙な気がした。
僕は聞いた。

「いったい、誰が君を撃ち殺すんだって?」

「F・クラウネン。僕の双子の弟。」
彼はニヤリとして舌なめずりをした。

「双子?双子の弟?初耳だ。君には双子の弟がいたのか?何なんだ?そいつは無知全能力者か?何故、今まで言わなかった?そのFってのはなんだ。君の名前が{動力}で、Dであるように、そのFも又、誰も発想できないような名前なのか?」

彼はごく軽い調子で落ち着き払って、正確に僕の4つの質問に答えてくれた。
「僕には二卵性双生児の弟がいた。奴は無知でもなければ全能力者でもない。彼は物事を結びつけ解説する者だ。僕の死後、君の為にね。僕は今まで言わないと決まっていたから言わなかった。Fっていうのはイニシャルじゃない。彼の名前はひらがなで{えふ}と書くんだ。以上。」

僕はそれはそれで納得した。
しかし彼の死に対しては納得したくなかった。彼は僕の唯一の親友だった。

それなら、どうして、それを回避しようとしないのか、と僕は無理を承知で尋ねてみた。
「それは、そう決まっているんだ。宇宙の法則を変えたら何もかもメチャメチャになる。星々が君のにきびになったり、0.0001秒の間に宇宙のはじめと終わりを三十億回行ったり来たりして、太平洋と同じ分量のサッポロビールを吐いたりする。それは、いけない、君もちゃんと餓死しなければならない。」

思った通りだった。そういう事なんだ。決められているんだ。
僕らに決定権は皆無なんだ。変更不可なんだ。

でも僕はショックを受け、涙ぐんでしまった。
とても、とても悲しかった。

人間は先の事を知ってはいけないのだ。とても虚しくなる。
死んでしまいたくなる。

彼は僕にそのような事を話すべきじゃないのだ。

しかし、彼に言わせれば、僕にそれを話す事も決まっていて、未来を知ってしまうということも、僕の人生というプログラムの一部なのだ。
それは、おそらく先行き、何かに繋がっていくのだろうと思う。
F・クラウネンが結び付けていくのかもしれない。犬と一緒に餓死するまでの何かに。

ひょっとしたら僕の幸福に。

でも僕は、その何かを知りたくなかった。

絶対に知りたくない。

彼も教えようとは決して、しなかった。

僕はカフェバーを出て、函館の雪の舞う町で生きている彼と最後のサヨナラをする時、ひとつ質問をした。

とても気になった事があった。
「ねえ?君が死んだ後は人類の消滅を誰が記録し送信するんだ?これからがクライマックスだろ?」

彼は大きな雪の舞い落ちる夜空にトムコリンズの白い息を拡散させながらポツンと言った。

「後継者はだいぶ前に生まれている。僕は遺伝子を彼女にしこんだ。僕は高校生の時に精子を確実な精子BANKに提供した。複雑なルートを通じてアメリカの人口受精専門の医療機関に提供した。僕の精子は無精子症の夫の代行精子となり、その夫婦に美しい娘をさずけた。そして、その後、その夫婦はお互いの不和から、ある日殺し合い、娘は孤児となり日本人のとある富豪に引き取られ日本に連れてこられ、大事に育てられた。しばらく前に彼女は蒸発し、誰も行方を知らない。その富豪はとても悲しんでいる。しかし彼女は消えてしまった。彼女は、ある場所で夢を見ている。夢をね。半年後に目覚めるよ。」

彼は、とても悲しい顔をしていた。とても、とても深い悲しみをたたえていた。

僕は彼と小学生の同級生だった頃から親しい友人関係を続けていたが、そんな表情の彼は初めて見た。
三十三年間続けてきたように全知であり、記録者を続ける彼の生活は終わるのだ。

彼は僕たちと同じように、ただ死に、他人が彼の仕事を引き継ぐ。


そして半年が過ぎ、彼は死んだ。

二卵性双生児のかたわれ、F・クラウネンに撃ち殺されて・・・。
彼の魂に幸あれ。

僕は彼と、とても楽しい人生の幾つかのひと時を過ごし、とても虚しい人生の意義を教わった。
僕の人生には三十三才にして、大きな終止符が刻印された。
絶対的予言者である親友の死という蹄鉄が打ち付けられた。

僕は、とても、とても悲しかったが生きてゆかねばならない。
そう、決まっているのだから。

できれば、愛犬と一緒に淋しく餓死なんてしたくない。

僕は夢を見るのだ。

生きて生き続けて、いつか幸福をつかむ夢をね。






断片12     終


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「雨族」 断片11- 新・霧暮れⅢ:kipple

2007-10-17 00:06:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片11- 新・霧暮れⅢ


彼は、よく言ったものだ。

誰も未来を変える事はできない。

すでに全ては決められているからだ。

彼は人類の最後さえ知っていた。
僕にも喜んで教えてくれた。

実際、僕には人類の最後なんて関係ない。
今、生きている人間の誰にも関係ない。

むしろ知っているほうがスッキリすると思うし、人類の最後に心ときめかす人間は、いっぱいいると思う。
それは、それ程、遠い先の事ではない。
もちろん僕らは生きてはいやしないが・・・。

ある日、時間と風景のバランスが狂い始め人類は順列的因果配列から放逐される。

誰も苦しまないし、気づかない間に全ては終わる。
簡単に言えば消えてしまうのだ。
純粋な意味でパッと消えてしまうのだ。

彼は言った。
「せいぜい、それまで皆、楽しく生きることだ。すでに決められている事を楽しく生きるんだ。人類の構築した生活のシステムなんて決定的に無意味なんだ。政治、経済、法律も常識も流行も家庭もコンピュータ・ネットワークも芸術も何もかも完全にパァだ。君や僕らは何のために存在しているのか?その答えは実にシンプルだ。私たちは何のためにも存在していないのだ。単に空中に浮くシャボン玉のようにぎっちりと仕組まれた時間と風景のなかに単時的に漂っているだけの事なんだ。無意味に存在し、無意味な存在に無意味な付加価値を期待するのが僕らの存在のすべてなんだよ。」

彼は、そのような絶対的な真実と思える事の数々を僕に語った。

彼は実際は大馬鹿者のように見えたが恐るべき性格の軽い全知無能力者なのだ。
そして僕の無二の親友で、さらに人類のデータ通信者なのだ。

彼によるとデータ通信は五万年前から次々に全知無能力者に引き継がれてきたそうだ。

彼は新しく、彼の生きた三十三年間の人類史を自分の死体の焼却と同時に送信する。
五万年間、通信者は皆そうしてきた。

自分の生きた時代の全ての情景を記録し送信した。

彼の脳髄が焼かれ消失する時、短い電脳波がシリウス目指して出発する。
その短い電脳波には三十三年間の人類俯瞰図が入っている。

シリウスに住む誰かさんたちは、それをビデオのようにして再生して楽しむのだそうだ。
僕たちは少なくとも彼らシリウスの誰かさんたちの娯楽の一つという無意味な存在の付加価値を持っているわけだ。

有り難い事だ。

しかし、人類のビデオはまだ完結していない。
彼は死んでしまったし、まだ人類は順列的因果配列から放逐されていないからだ。

一瞬のクライマックスが残されているのだ。

まだまだ後継者がいるのだ。

僕はいくら考えても彼が全知無能力者である事と、シリウスへのデータ送信者である事の関連が理解できなかった。

彼は二卵性双生児の弟であるF・クラウネンに山の中で撃ち殺され小さな焼却炉で焼かれる事になる半年前の豪雪の函館で、新しく開発したソフトウエアを生命保険のあらゆるデータを扱う下請けの関連会社に納めに行った僕を呼び出して、深刻な笑顔をして軽い口調で話した。

彼は再びトムコリンズを、僕は再びサッポロビールを飲んでいた。

「あの、さあ。僕はもうすぐ死ぬからね~。六月二十八日に伊豆の山の中で、F・クラウネンに撃ち殺されるからね~。」

彼は、ちびちびとトムコリンズを爪を噛むように飲み、ニヤニヤ深刻に笑っていた。






断片11     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)