木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

シンデレラレッスン(1)

2013-06-23 17:21:53 | 将棋
ご無沙汰しております。木村です。
いろいろ忙しくなかなか更新できない日々が続いておりました。

本日よりブログを再開したいと思います。
これまでいろいろ悶々と考えたのですが、
やはりブログというのは日々の日記風に書いていくものと決意し、

「今朝、そうめんを食べた。そうめんはつゆにつけて食べるものと
 深く反省した。」

的な日常の風景を切り取っていこうと思います。

*******************

さて、それはさておき、実は先日、
中村太地六段が我が家に来訪してくださりました。

うちの娘(5歳)は、1月より将棋をはじめ、
3月より八枚落ちの訓練をしてきたわけであります。

なお、うちでは、八枚落ちの特訓を
「シンデレラレッスン」と呼んでおります。

将棋の駒を並べ、詰むや詰まざるやを悩むレッスンを
シンデレラレッスンというのもなんなのではありますが、
将棋界の王子こと中村六段が教えてくださるということで、
やはりこれは、シンデレラレッスンであったと。

しかし、中村六段は、王子と呼ばれていますが、
その攻めの気風からして、将棋界の第一師団司令、
いや、将棋界の冬将軍的な二つ名の方が正しいのでは・・・。

と、それはさておき、本日より、
私の娘が、将棋界の攻撃責任者、中村将軍に挑んだ戦記を掲載しようと思います。


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第一話 開戦

我が家の和室であるが、
異様な雰囲気につつまれていたわけである。

 娘 VS 中村六段。

記録係は、筆者の教え子。
立会人は、同僚の商法専攻の准教授。
そして、読み上げ係は、片上理事という豪華メンバー。

さすがに、プロの所作は美しく、
上手中村六段が、徐に駒箱を開け、「王将」から並べてゆく。

上手が「王将」を置くと、下手は「玉将」
続いて「右金」、下手も「右金」とペースを合わせて並べる。

なんとも荘厳な雰囲気である。
娘、所作を学ぶとよいですよ。はい。
父と指すときは、「ごめん、いま洗濯物干しているから
並べといて」的なこともありますから。
将棋の神様、ごめんなさい。

・・・閑話休題。

今回使用した駒は、竹風作・菱湖書の彫埋駒。
勢いあるシャープな文字の踊る作品である。

筆者が駒を選ぶ際、とてもこだわったのが、やはりトラフである。
確か数年前の名人戦だったか。
虎のごとき威風堂々の文様に、菱湖の書が躍るその駒は、
筆者の心に、駒かくあるべし、という根本規範を刻んだのであった。

また、盤であるが、我が家に脚付き盤はなく、卓上サイズ。
国産榧にこだわった逸品である。
(但し、和室でやるには高さがたりないので
 ピクニック用机・・・この話はいいだろう)


・・・閑話休題といった割に、全然本論に戻っていない。閑話休題。

そんなことを思っていると、駒がならべ終わり、
中村六段が、8枚の駒をしまってゆく。
飛車、角行、香車・・・。どんどんさみしくなっていく上手陣。

最終的に、

歩歩歩歩歩歩歩歩歩

   金王金

とこうなるわけである。

一見すると、どうやっても下手が勝ちそうであるが、
これがまた、そうでないのが将棋のすごいところである。
きちんとした戦略を勉強していないと、
有段者にはまず勝てない。

邪悪な有段者の中には、初心者をつかまえて、
「ほら、これなら勝てそうだろう」といって、
今日のランチを賭けさせるなどという輩もいる。要注意であり、
消費者法でも対応の必要な分野といわれている。

とはいえ、娘は、今日のこの日までに、いろいろ対策を勉強してきた。
筆者は、8枚落ちの常道たる棒銀を教えてきたわけだが、
娘は創意工夫が好きらしく、中村六段のNHK杯の雄姿から学び、
ある日突然、「居飛車穴熊」をやってきたことがある。

ナメていた筆者は、好きに組ませたのだが、
遠い、硬い、王手がかからないの穴熊三点セットで、
と金三枚つくって、角までとったのに惨敗。

今日はどんな戦法でゆくのだろうか、というわけで、初手。

「初手、中村六段、△3二金。」

片上理事が、読み上げる。

理事で六段の先生に、棋譜を読み上げさせるとは
なんちゅう娘じゃ、と思いつつ、次の手を見守る。

「下手、▲7六歩」。

というわけで、オーソドックスなスタート。
ちなみに、中村六段の初手を見て、娘は
「アレ?父と同じ手だ」と思ったそうである。

娘よ。八枚落ちの上手の初手というのは、
そこに金をあがる以外になく、それ以外の手だと
簡単に角になりこまれてしまうのだ。

以下、
△72金、▲26歩、△42玉、▲25歩
△25歩、▲22金、・・・と18手ほど進んで第一図。



棒銀の意思表示である。

              続く。





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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ザッキー)
2013-06-23 22:16:43
あとは、撮影班と大盤解説の女流棋士がいれば完璧ですね(もう一人の解説は木村草太先生?)。
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豪華 (ノシ)
2013-06-23 22:51:39
何だかすごいメンバーですね。
返信する
Unknown (騎虎の勢い)
2013-06-26 03:24:51
「棒銀の意思表示である」という表現の使い方が面白いですね。一見すると、法学用語による筆者のオリジナル表現のようで、しかし実は、将棋界ではお決まりの言い回しです。将棋界の文体を知らないが、法律を知っている、という読者にとっては、若干違和感のある使い方だと思われ、それを筆者がわかっていて楽しんでいるようです。
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>みなさま (kimkimlr)
2013-07-08 15:44:23
>ザッキーさま
いや、大盤が抜けています。

>ノシさま
そうなのですよ。
詳細は、また次号っす。

>騎虎の勢い
「将棋好きの意思表示です」
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