トミナガのクラスの議論は、紛糾していた。
そこに、思わぬ解釈が提出されることになる。
実行委員からの通知は二通。
「チーズ入りハンバーガー」の自粛要請。
「チーズバーガー」の実施要請。
よく見ると、前者の自粛要請については
衛生的理由からの乳製品禁止、という経緯はあるものの
趣旨・目的は明示されていない。
このため、自粛要請には解釈の余地があった。
トミナガのクラスには、
ヤマグチ(仮名・17歳当時)という若者がおり、
この若者は、日々屁理屈を述べ、
それを非難されると「屁理屈も理屈のうち」と返答。
クラスメイトを非難(「お前嫌われてるぞ」と攻撃)しているとき、
周囲から非難(「お前だって嫌われてるぞ」と非難)されると、
平然と反論 (「俺が嫌われていることと、あいつが嫌われていることは矛盾しない。
よって、今の発言は、論点をずらしているだけである。」)。
このような、まぁ、端的にいって、普段は話をしたくない人物だったが、
その日は違った。
ヤマグチの解釈は、まさに、通達をそのまま読む、というものだった。
すなわち
「チーズ入りハンバーガー」をメニューに加えることはできないが、
「チーズバーガー」は加えてよい。
実行委員の通達は、全く同じ内容のメニューが、
別の名前で同時に提供されることの不合理を回避せよ、という趣旨のものだ。
これがヤマグチの理解である。
(もっとも、そもそもチーズバーガーに加え、
チーズ入りバーガーをわざわざ用意しようとする人間がいるか、不明だが)
確かに、同じメニューが別の名前で同時提供されると、ややこしいことこの上ない。
そういえば、私の学食では、
月見うどんとは別に、うどん+たまごトッピングというメニューがあり、
しかも、前者よりも後者の方が値段が・・・。
(ふむ。チーズバーガーではないが、
同じ内容のものが、別の名前で提供される事態は、珍しくないかもしれない)
・・・この話は長くなるのでやめよう。
とにかく、これで無事、トミナガのクラスは学園祭を迎えることができた。
さて、話を森林法に向けると、恐らく、最高裁がいいたかったのも
そういうことだったのではあるまいか。
分割できない共有の形態として、既に法は、会社法(当時は商法)という
洗練されたメニューを用意している。
そこに、分割請求権禁止の共有なる良くわからないメニューを加える必要はない。
(どうやら、日本の立法者もうどん屋と志を共有しているらしい)
仮に、森林を安定的に共有させたいなら、
分割できない共有ではなく、
会社の設立を強制すればよい。
これが森林法判決の、あまり明示的には言われていない、
というか、判決に内在はしていたが、ほとんどの人が目をそらしてきたメッセージなのではなかろうか。