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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

取材の自由について

2012-05-09 07:05:26 | Q&A 憲法上の権利
大将軍様からのお便りです。

取材の自由と筆記行為の自由 (大将軍)
2012-01-17 17:58:37
「急所」の一愛読者です。佐渡先生とは無関係な質問ですが、先生にお伺いしたいことがあります。判例は、取材の自由や、法廷での筆記行為の自由を憲法21条1項で保護していると考えているのでしょうか。自分としては、取材や筆記行為は表現行為そのものではないため、価値ある行為ではあるものの、裁判所としては憲法上保障していないと考えるのが素直な読み方ではないかと思いました。先生はいかがお考えかお聞かせいただけないでしょうか。



>大将軍さま (kimkimlr)
2012-01-18 07:18:01
こんにちは。
大将軍さまとは、すごい方から書き込みだと驚きました。
さらに、大将軍と名乗っているにもかかわらず、非常に丁寧な文章が書かれていて、さらに驚きました^-^>


さて、判例は、メモとりは、取材行為などと同様、憲法で「保障される」ではなく、「尊重に値する」と言っています。

確かにこれを保護範囲外とした論証と読むこともできますが、
メモとり・取材の規制はおよそ違憲にならない
とも言っていないので、(むしろ不当な規制は違憲とする方向に見えるので、)
私は、めもとり・取材も「憲法上保護されるが、表現の自由よりも保障の程度が低い」という趣旨かと理解しており、
それが一般的な理解かと思います。

それでは家臣の皆様にもよろしくお伝えください。


Unknown (大将軍)
2012-01-18 09:38:12
はっ、いや…さすがに受験生の宰相であられる木村先生に無礼はできませんで。

一つお尋ねしたいのですが保障の程度が弱いということになりますと、保障根拠が弱く価値が高くないとみるか、要保護性が弱いか、ということになるかと。そうしますと、例えば報道の自由は、自己統治や国民の知る権利に直接奉仕するのに対して、取材の自由はそれらに奉仕はするものの間接的な奉仕にとどまる、ということを理由に保障の程度が弱くなる、と考えられているのでしょうか。ただ、報道の自由を厚く保障するなら前提となる取材の自由も厚く保障しないと一貫しないようにも思います。



>大将軍さま (kimkimlr)
2012-01-19 07:35:15
ふーむ、間接的奉仕というのは、その通りかと思います。

また、取材には様々な態様がある上、取材対象の利益を考慮すべき場面も多く、
取材物の報道後の没収のような特殊な規制態様もあり、
表現行為よりもさらに多様な行為が含まれるので、
一概に手厚く保障するとは言えないということもあるかと思います。

またご存じとは思いますが、
取材の自由は報道の前提ですので、
実際の憲法判断を見ていると、
裁判所はかなり厳しく審査をしている印象を受けます。

こんな感じでいかがでしょうか?

Unknown (大将軍)
2012-01-19 17:14:20
どうもありがとうございます。

確かに取材の自由は博多駅等の事件でも比較的慎重に検討されている感がありますし、NHK記者証言拒否事件でも高い評価をしているみたいです。メモを取る自由は風が吹いたら飛ぶような扱いがされてますが(風は吹かなかったみたいですけど)。こうみていますと、直に保障されている報道の自由や表現の自由と、不可分の関係にあるか、距離感のようなものを意識するのも大事かなと思いました。
ありがとうございました。


>大将軍様 (kimkimlr)
2012-01-19 20:06:06
は。将軍としてのお仕事、大変かと思いますが、
頑張ってください。

社会的身分広義説と参議院の地域代表性

2012-05-04 08:02:25 | Q&A 憲法上の権利
平等権についてのご質問と回答を紹介します。

社会的身分 (まひる)
2012-01-15 19:03:10
先生こんちは

誤字ではないと思いますが、急所P255や269で、14条後段列挙事由を厳格に審査する多数説にたちつつも、「社会的身分」を広義説で述べています
厳格審査するなら、「社会的身分」は絞り込みが必要ということで、少なくとも広義説をとるのはおかしいと以前にLSの教授に厳重注意といいますか大減点を受けたことがあるのですが、

先生の考え方としては気にしなくていいということになりますか?

しかし私の教科書にも判例が広義説をとっているとありますので、LSの先生が言っていたことが一般なのではとおもうのですが、、



>まひるさま (kimkimlr)
2012-01-15 19:18:40
確かに狭義説の方が、後段審査基準厳格審査説と親和的かもしれませんが、
論理的に、広義説の社会的身分による区別で
厳格審査ということが絶対に成り立たないということはないと思います。

ちなみに私は、後段列挙事由による区別に厳格審査という
学説をとりませんので、
狭義だろうと広義だろうと社会的身分による区別があっただけで厳格審査をしたりはしません。

急所では、原告の立場から
厳格審査を求めるのであれば、
広義説的社会的身分による区別にも
厳格審査をしろと要求しなきゃいけないはずだ、
と書いてあるわけです、

こんな感じでどうでしょう?

Unknown (まひる)
2012-01-15 19:37:18
こんなにも早くお返事ありがとうございます

たしかに後段列挙事由をに厳格審査することと狭義説をとることとは論理必然性はないと思います

まったくそのとおりだと思いました

あと一つ先生にお聞きしたかったことなのですが、判例で、参議院地方選出議員の選挙の仕組みについて事実上都道府県代表的な意義ないし機能を有する要素を加味したからといって、、という有名な一文ってありますよね

この地域代表的性格というのはどういう意味なのか判例よんでもわからず悩んでいます

基礎的なこととは思いますがよろしければ教えてもらえないでしょうか



>まひるさま (kimkimlr)
2012-01-15 20:45:58
こんにちは。
そうですね。あと今気付いたのですが、
そもそも厳格審査をしない説では、
広義説でも狭義説でもどうでもいいはずで、
広義説と狭義説というのは、
後段列挙事由区別は厳格審査という説を前提に
厳格審査の範囲についての対立なのではないでしょうか。
(なので、広義説も厳格審査を前提にした説のはずです)

地域代表は、
全国民の代表なんだけど、
地域の事情に詳しい議員という程度の意味でしょう。

ではでは。


Unknown (まひる)
2012-01-15 21:10:56
そうなんですか、、少し調べてみます
でもたしかに、平等権を徹底する立場なら、厳格審査をとり、かつ広義説をとって平等権をより徹底すべき、というかんがえも成り立ちそうですよね

地域代表の話ですが私の質問が悪すぎました、、
地域代表的性格は衆議院ではいわれずになぜ参議院でいわれるのか、逆にいうとなぜ衆議院には地域代表的性格がないねか、というのが先の質問の趣旨でした
すみませんでした


>まひるさま (kimkimlr)
2012-01-16 06:27:50
二院制の趣旨からすると、
参院が、「全国民の代表」性を失わない範囲で
衆院にはない特色を出すことは、
許容ないし要請されている、ということかと思います。


低価値表現について

2012-04-21 18:03:32 | Q&A 憲法上の権利
うさくんさまから、低価値表現についてです。

Unknown (うさくん)
2012-01-13 09:47:08
はじめまして。
先生の著書を愛読させて頂いている一受験生でございます。
お忙しい中申し訳ございませんが、ひとつ質問をさせてください。


低価値表現を、そこから生じる害悪ゆえに保障の程度を低くする(ないし保護範囲から外す)という議論があります。
しかし、害悪が生じるということは権利の価値を低める理由にならないのではないか、と疑問に思っています。

たとえば、差別的表現は、対象となった者の名誉感情等を害します。
このような事情は、対抗価値に配慮すべきことを示すのみで、権利の価値が低いことは示さないのではないでしょうか?

仮に、権利の価値が低いことを示すのであれば、
規制の必要性はあるが価値の高い表現(たとえば、騒音を生じさせる街頭演説)との区別基準は何なのでしょうか?


>うさくんさま
そうですね。低価値表現というのは、
例えば性欲を興奮させる以外の意味を持たないハードコアポルノ
のようなものをいっていて、
そこに盛り込まれた情報が少ない、ないしその価値が低い
ということだと思います。

なので、対抗価値が高くなる傾向のある情報を流通させる行為は
表現行為には、ならないでしょう。


Unknown (うさくん)
2012-01-13 23:08:11
お忙しい中回答ありがとうございます。
低価値表現について腑に落ちました!

先生のブログを読むと目から鱗が落ちてばかりです。
これからも楽しく読ませて頂きます!

積極目的による財産権(既得権)制約

2012-04-20 08:01:51 | Q&A 憲法上の権利
今日は、財産権についてのご質問を紹介します。

財産権と営業の自由 (ノブコフ176)
2012-01-13 05:42:04
 はじめまして。先生。大好きです。さて、質問させていただきます。
 「財産権の主張に積極目的規制だから緩やかに判断しよ!!という反論はダメなのですか?」という質問です。

 第五問の急所203Pの、本件では財産権の主張の方がよさそうだというご趣旨の記載に関してです。営業の自由の適法制約についての正当補償請求権を明示的に補償した規定がないからという理由は理解できました。しかし、積極目的規制に分類され、緩やかな審査基準が設定されてしまいそうだから、財産権主張の方がよいとの記載について頭がこんがらがってしまいました。

 第六問の解説を僕は、「積極目的規制は、いわば公的カルテルだから、いろいろくまなく専門的に調査して評価した上で、民主的正当性を確保したい。そーゆー規制は、そーゆー調査に優れた、民主的正当性を確保する機関の立法府に任せるべき。だから、緩やかに審査しよーぜ。」というものだと理解しました。

 それは、第五問でも同じことがいえる気がして、財産権であっても、被告に積極目的規制だ!!と反論させたくなってしまいました。多分僕は、積極目的規制はが営業の自由だけでなく、経済的自由権一般に妥当するものだと思ってしまっているのです。
 「積極目的規制は既存業者を保護するもので、公的カルテルだから、片方の営業の自由を制約し、片方の営業の自由を保護するのが前提になっている規制。だから、財産権主張の反論にならないのかなー。」とか、「でも、片方の財産権を制約し、片方の財産権を保護することも積極目的規制なんじゃないかなー。。」とか頭が混乱し、急所愛読仲間に質問しようとしたのですが、僕は「歩くミスリーディング」とよく友達から罵られるので、怖くなって友達を巻き込むことはできませんでした。ブログを拝見したところ、先生が暖かく優しく質問にお答えしてくださってるので、先生を頼りたくなりました。どうか、稚拙な私の質問にお答えいただけないでしょうか。


>ノブコフ176さま (kimkimlr)
2012-01-13 07:36:42
うーんと、財産権(既得権制約)と目的の積極・消極ですが、
判例は、積極目的だから緩やかに審査する、とは考えていないように思います。

既得権は予測可能性のための権利なので、
そういう保障根拠からすると、積極目的の方が
むしろ重大な侵害になりやすい、という考慮かと思います。

これに対し、営業の自由との関係では
目的がどうだろうと原告の生存と人格に与える影響は同じなので、
積極目的の方が重大な侵害だ、とはなりにくく、
他方、公権力側の事情(第六問で解説)からすると、
積極目的の方は認めてもいい規制なので、
ああいう議論になるのかな、と思います。

ただ、学説レベルでは、既得権保障を含めて
経済的自由権一般について、裁判所の政策判断能力から、
積極目的緩やか審査と言いますので
(芦部『憲法判例を読む』参照)、
第六問の考慮を財産権に及ぼすこともできるかな、と思います。

ありがとうございました。 (ノブコフ176)
2012-01-13 10:53:10
昨日3時間くらい悩んでいたのですが、先生のおかげで理解することができました!!本当にありがとうございます!!

教育を受ける権利について

2012-04-09 07:24:32 | Q&A 憲法上の権利
今日は、satoimomokoさまから頂いた教育を受ける権利についての
やりとりを御紹介します。

普段あまり考えない論点を考える機会を得られるのが、
このような双方向のやりとりのメリットですね。

教育を受ける権利について (satoimomoko)
2011-12-12 15:56:56
木村先生こんにちは。
以前にも質問させていただいたsatoimomokoと申します。

憲法26条の教育を受ける権利について質問があります。
急所の請求権の解説によると、請求権の具体例として、憲法26条の教育を受ける権利が挙げられていますが、憲法26条を請求権として主張する場合とは、具体的にはどのような場面なのでしょうか。

教育を受ける権利(子供の学習権)が問題となる場合、結局は、親の教育の自由、教師の教育の自由の制約を主張して、三段階審査をすることになるのではないかと考えていたのですが…間違っていますよね…。

どのような場面で教育を受ける権利を請求権として主張しなければならないのか、参考となる判例・裁判例や文献等ありましたら、ご教授いただければ幸いです。



>satoimoko様 (kimkimlr)
2011-12-13 12:55:03
こんにちは。お久しぶりです。

教育を受ける権利ですが、
たとえば、国や公共団体が過疎地の学校をどんどん廃止していって、
実質的に教育を受けることが不可能な地域が生じたとか
そういうケースでしょうか。

現状はそこまでの事態は生じていませんが、
障がいを持つ子供が、地元の自治体にバリアフリー化を
請求するなんてケースは考えられそうです。

ただ、現状は、教育とくに初等中等教育は、
自治体や政治家の方々においても
非常に重要な問題と考えられているようで、
そういうケースが生じることは
幸いにして避けれてきたということでしょう。

教育を受ける権利というと、
古典的ではありますが
奥平康弘先生の芦部編『憲法Ⅱ』という論文が
有名です。ご回答ありがとうございます。


さらに質問があります。 (satoimomoko)
2011-12-13 19:12:59
木村先生
 早速のお返事ありがとうございます。具体例とてもわかりやすく、参考になりました。ご紹介いただいた文献についても、大学の図書館で読んでみようと思います。
 お忙しい中大変申し訳ないのですが、さらに質問があります。

教育を受ける権利に基づく請求をする場合に、その要件と効果はどのようになるのでしょうか。

 条文の文言から、①「国民」であることと、
 教育は、個人が人格を形成し、社会において有意義な生活を送るために不可欠の前提をなすものであるということが26条の保障根拠であると考えられることから、②請求する教育内容が、人格形成に役立ち、社会で有意義な生活を送るために不可欠であることが要件なのではないかと考えました。
効果は、教育の機会均等のための教育制度を整備する措置を請求できる権利が抽象的権利として認められる
などと自分なりに考えてみたのですが、よくわかりません。

お時間がありましたら、ご回答よろしくお願いいたします。


>satoimomokoさま (kimkimlr)
2011-12-14 10:43:23
そうですねえ・・・。
国民要件は、まあ憲法上の権利ですから
当然として、
さらに、「能力に応じた十分な教育を受ける機会を与えられていないこと」くらいな感じでしょうか。

効果は、抽象的権利で、場合によっては一般法適用請求権もって感じな気がします。

全体としては、生存権に準じて考えておけばいいかのかなという見通しを持っています。
昨今の情勢を観るに、奨学金の問題とか
今後問題に十分なりうる感じがしますね。

議論もあまりないとこなので
ぜひ、いいことを考えたら教えてください。


Unknown (satoimomoko)
2011-12-14 11:00:40
木村先生

ご回答ありがとうございます。
受験生として、穴がないように勉強することを心がけているのですが、教育を受ける権利は演習問題も少なく、手持ちの基本書の記述も少なかったので、どのように対処してよいか不安を感じていた部分でした。
処理の方向性がわかり、安心しました。
先生のお話をもとに具体的な主張等、考えてみようと思います。

どうもありがとうございました。
また質問させていただくかもしれませんが、よろしくお願いいたします。



>satoimomokoさま (kimkimlr)
2011-12-14 14:36:02
どうもありがとうございます。

たしかに教育関係の練習問題を作るのは難しそうですね。
構造としては、
『急所』第八・九問といっしょになるので
そちらもご参照ください。