Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

不動産所得と確定申告、その経済的な効果(1)

2005年01月06日 | 不動産
 不動産を投資目的で取得する場合、もしくは投資目的で業者に勧誘される場合の常套句は「不動産所得を赤字にすることによって税金をするなくすることができる」というものがほとんどである。では、どの程度の効果があるのか、そしてその効果はどの程度続くのかという点を不動産投資の意思決定をする前にシュミレーションできる人は少ない。ここでは新築物件を購入したという前提に立って、その効果をシュミレーションするのが目的である。

(前提)

 まず以下の前提でシュミレーションを行う。典型例とは言えないかも知れないが、計算の単純化の為、以下の投資家を想定する。年齢35歳、外資系金融機関に勤め年収2260万円。妻子なく独身の設定。年収が高すぎるかもしれないが、投資目的の不動産取得はこのような例が比較的多いと考えられる。なぜなら、支払う税金に嫌気がさしている人が多いからである。また年収が2000万円を超えている為、彼は確定申告を行っており、痛税感が高い。総所得が中途半端なのは課税最高税率である37%の最低限に到達する水準である。

(不動産取得前)

ここで、税金について少しおさらいしておこう。給与所得者の税の計算は簡単である。まず、総所得2260万円に95%を掛け合わせ、170万円を差し引いた金額が「課税所得」となる。蛇足だが、このケースでは受取キャッシュフローから270万円を差引いた金額1977万円が課税所得である。270万円は企業で言えば必要経費とみなすことができる。

課税所得 = 総所得x95% - 170万円   ->  2260x0.95 - 170 =1977万円

所得税の計算は各種控除を差引いた後、税額表から計算される。ここでは基礎控除38万円、社会保険料120万円、生命保険料控除10万円の合計168万円を控除すると最終的な課税所得額は1809万円となる。所得税の税率は37%を掛け合わせ、249万円を差引くから、420万円。住民税は13%に31万円の控除で204万円。合計の税額は624万円となる。

(不動産の取得)

ここで、彼は都内の新築物件を購入するとしよう。投資目的で購入し、賃貸に回すことを前提にする。彼の最大の目的は節税をすることである。都内のマンション、どこでも良いが例えば山の手線内の駅から7-8分、という好立地で部屋も45㎡と比較的広いものとしよう。ワンルーム投資にしないのは理由があるがそれは後で述べるとする。価格は3600万円、彼がこれを決めた理由は立地条件があり、さらに賃貸利回りが6.5%で回ると予想されたからである。実際には消費税が90万円別途かかり、さらに業者、司法書士、銀行ローン等の手数料がかかるため、実際の支出はこれよりも多い。彼は自己資金を1200万円投じ、残りの2500万円を銀行ローンとした。
 彼は物件価格の33%の自己資金を投じることによって、その3倍の価格の資産を購入した。これによって彼のレバレッジ効果は3倍となり、投下資金利回り(CCR=Cash On Cash Return)は以下の通りとなる。

 CCR= 賃貸収入/自己資金 -> 234万(3600x6.5%)/1200万 = 19.5%

無論、これは借り入れコストをゼロとおいた場合で世の中それほど甘くない。銀行ローンは2500万円、期間2年固定金利、返済期間18年、元利金等返済、ボーナス返済なし、金利2.0%とした。ボーナス返済がないのは計算の簡便化の為であり、期間が中途半端なのは彼が早期にローンを返済し、かつネットのキャッシュフローをプラスにしようとしたからである。毎月13万7920円、年間で165万5千円の返済となる。また、マンションの管理費、修繕積立金が月に2万5千円、年間30万円かかる。固定資産税は7万円と暫定的に試算すると、ネットのキャッシュフローは以下の通り。

ネットキャッシュフロー = 234万円(賃貸料) - 165.5万(元利返済) - 37万(諸経費)=31.5万円

ざっと毎月2.6万円の黒字になる。ここで再度CCRを計算すると2.6%になる。これだけなら、投資してもあまり意味がないように見える。真の目的は不動産所得を確定申告して実質のキャッシュフローを改善するのが目的である。


(不動産取得後の確定申告、初年度)

計算を簡便にするために不動産の取得・引渡し、賃貸が1月1日に終了したと仮定しよう。不動産所得の計算は総収入から経費を引くだけでよい。但し、不動産は建物が建っていることから減価償却という非現金費用が発生する。ここでは土地と建物の比率を50:50とする。また、取得にかかった費用は消費税等の租税公課で120万円、金融機関、業者への手数料が100万円とする。土地は減価しないので建物の減価償却は47年(係数0.022)、さらに建物本体と付属設備に分け(建物:付属設備、7:3で計算)、付属設備は定率法を適用(税務署への事前申請が必要)である場合のトータルの減価償却コストは初年度で109万円。かかった金利コストは年間33万円(建物にかかる金利)であると。所得金額は

不動産所得 = 234(賃料)-120(租税)-100(手数料)-101(償却)-33(金利)= -120万

となる。これを給与所得と損益通産すると新しい税負担額は以下の通りとなる。

所得税 =(2260x0.95 - 170)-120(不動産所得)=1857 - 168(各種控除)=1689x37%-249=376万円
住民税 =1689x13%-31万=189万円

合計の租税負担額は565万円となり、税額が59万円減少する。これにネットキャッシュフローを加えた金額が合計の経済効果で年間では890.5万円円。実質のCCRは7.54%になる。今時の低金利で7%を実現できるのは少ないと喜ぶところだが、実はこれには大きな落とし穴がある。それは不動産所得が来年も続くということであり、減価償却は定率法を選べば次年度は減少し、大きなマイナス効果を持っていた諸経費は次年度に大幅な低下をみる。これについては次回で見てみよう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高配当利回り株の実質利回り... | トップ | 不動産所得と確定申告、その... »
最新の画像もっと見る

不動産」カテゴリの最新記事