Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

不動産所得と確定申告、その経済的な効果(2)

2005年01月06日 | 不動産
 さて前回からの議論の続きであるが、新築マンションを購入し、予定通り確定申告により、56万円の税金を安くすることに成功したわけであるが、問題は次年度に所得と税金がどうなるかという点である。計算の前提として、給与所得は前年と同じ、賃料も同水準としよう。まず不動産所得の計算をする。2年目の不動産所得の大きな違いは取得にかかる経費の違いである。既に取得している状態であるので、仲介業者に支払う手数料などは2年目には発生しない。不動産取得税などの租税公課も初年度限りである。そして変化するのは減価償却費である。
減価償却に関してはあまり詳しく述べなかったが、現在の税法では建物の減価償却は47年の定額法が原則である。しかし、税務署申告すれば建物の付属設備(電源設備、キッチン、浴室等)は定率法を適用できる。ほとんど税務かんする知識がない人は業者に言われるまま購入し、その後はほったらかしにされるケースが多い。また税務に関しても相談にのるといっている業者でも、定率法の適用に関して親切に教えてくれるものは少ないようだ。

 前回のケースを使って2年目の減価償却費を計算する。まず、償却の基礎となる対象資産額を計算する。

減価償却対象資産  3600万円x50%=1800万円(建物合計)
建物本体      1800万円x70%x0.9=1134万円
付属設備      1800万円x30%=540-(540x0.142)=463.3万円(初年度は540万円)

償却額は 定額法(47年)では0.022、定率法(15年)では0.142をかけます。

償却額 = 1134x0.022+463.3x0.142=90.7

不動産所得 = 234(賃料)-10(租税)-90.7(償却)-33(金利)-30(その他経費)= 70.3万

租税、償却が減少。経費も減少して2年目は70.3万円の黒字。とすると2年目の所得税を計算すると、所得税で446万、住民税で244万円となり、合計の租税負担は690万円となり、なんと初年度と比較して125万円の増加、購入前と比べても66万円の増加になってしまう。しかも、不動産からのキャッシュフローは年間31.5万円しかなく購入前と比較したネットのキャッシュフローは35万円の赤字である。1200万円投資して実質のリターンがマイナスになるのでは何のために資金を投じたのか分からなくなる。計算は示さないが、3年目の不動産所得は経費が変わらなければ70万円からさらに増える。これは付属設備の償却が定率法であるから、毎年費用が逓減する。

2年目を赤字にする方法はあることにはあるが、問題が多い。第一にはその他経費を多く計上することである。但し、税務署に否認されてしまっては元も子もない。もう一つは不動産を追加購入する。これによって経費が大幅に増加し、2年目の黒字も飛ぶ。かりに同じような物件を購入すれば、購入物件で120万円の赤字となるので最初の物件の黒字と合わせても50万円程度の赤字になる。但し、その後の3年目にまた黒字となる。3年目は2件とも黒字となるので利益が150万円を超える。税率50%(所得税、住民税)で考慮しても税の負担は70万円以上となる。不動産の実際のネットキャッシュフローは60万円なので10万の赤字。では、3件目といった感じで毎年赤字にするには毎年の不動産の購入が必要である。

中古不動産の記事でも指摘したが、結局、不動産投資を行いかつ借入をおこしながら、税金とキャッシュフローを改善するためには物件のリターンが一番重要である。中途半端なリターンではキャッシュフローがマイナスとなる。しかし、当初考えていた税負担減は1年程度で消えてしまう。このように考えるとやはりうまい話はそんなに転がっていないというのが結論であろう。投資家は不動産であろうと、株式であろうとリターンをベースに投資判断をするべきであるというなんでもない結論に落ち着く。


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