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個人日記兼つれづれなるままに

高配当利回り株の実質利回りを測定する

2005年01月06日 | 銘柄研究
 日本株式市場において高配当利回り株の代表は電力株であるが、実質的に高配当な株式と呼ばれるものが日本株市場に存在している。本稿では、映画会社の株式配当利回りと優待券のキャッシュフローを合わせた実質的な配当利回りを計測し、その経済効果を測定するのが主眼である。

 高い配当利回り株は日本では電力株などが筆頭であるが、その利回りは3%台がやっとである。最近人気化したREITなどは4%近い水準で推移しているが、それでも海外の高配当株式と比較すると見劣りするのが現状である。無論、各国の金利水準の違いはあるが、日本のケースでは金利水準が高い状態でも配当利回りが大きく上昇したケースはかなりまれである。過去のケースを見ると日経平均が大きく下落し、7000円台まで低下した一昨年後半から昨年前半の時期に配当利回りが5%まで上昇したことがあるが、そのごすぐに水準訂正して5%台は姿を消した。

 キャッシュフローの利回りでなく、株主優待などの効果を含めた実質的な利回りで見る方法がある。典型的な例では映画館、遊園地、鉄道のチケットなどがあるが、ここでは私が実際投資している映画配給会社の実質配当利回りを計測してみることにする。なお、保有銘柄から得られる優待券は一部、自分自身で使用しているが、残りはオークションなどで換金している。実質利回りの計測はヤフーオークションの換金実績を基に優待券のキャッシュフローを計算する。なお、計算根拠となる株価は2005年1月5日の東証終値で計算している。


東宝(9602) 東証一部

名目利回り(現金配当+優待券消費) 2.07% 
実質利回り(現金配当+優待券売却) 1.55%

東宝東和系列の配給劇場の無料券が1000株につき毎月1枚。年間12枚もらえる。オークションの換金レートは一枚1100-1200円と最も換金率が高い。購入すると一枚1800円であるため、ディスカウント率は40%である。全て自家消費して一枚1800円で計算した場合と、換金したケースの両方を示した。


松竹(9601) 東証一部

名目利回り(現金配当+優待券消費) 4.27% 
実質利回り(現金配当+優待券売却) 2.85%

松竹系列で使用できる優待券を年間28枚もらえる。松竹はやや複雑で一枚で入場できる地方館と2枚で入場できる大都市圏の映画館がある。従って、地方に住んでいる人と大都市に住んでいる人とでは優待消費における利回りが変化する。計算は2枚で一回と計算する。オークション落札平均価格は4枚(2回分)で2271円(昨年オークション9回の平均)であった。単価を比較すると東宝とほぼ同じ水準で換金できる。


東映(9605) 東証一部

名目利回り(現金配当+優待券消費) 4.99% 
実質利回り(現金配当+優待券売却) 1.91%

東映系列で使用できる優待券を年間12枚もらえる。但し、優待券は6枚綴りになっていて、切り離し無効になっている。従って、オークションでは綴り毎に売却しなければならず、換金価値は東宝、松竹と比較して急激に低下する。もともと、この仕組みはオークションの換金対策の為、東京テアトルが実施していた方法で、オークションの換金性をわざと悪くする方法である。キャッシュリターンが低いのをカバーするのに換金しているのにわざとそれを阻止する方法と取る会社の姿勢には疑問が残る。なお、東京テアトルはさらにICカードを導入したため、オークションでの換金が不可能に近くなった。オークション落札平均は一枚459円と東宝、松竹と比べると半分以下になる。ディスカウント率も75%にもなってしまう。自家消費利回りは松竹よりも高くなるが、実質キャッシュフロー利回りは松竹より悪くなってしまう。


東京楽天地(8842) 東証一部

名目利回り(現金配当+優待券消費) 6.41% 
実質利回り(現金配当+優待券売却) 3.98%

東京楽天地の優待は少し複雑で、最低単位だと錦糸町楽天地の優待券がもらえるが、3000株以上の投資では年間12枚の東宝系列で使用できる優待券がもらえる。3000株投資すると錦糸町楽天地の券24枚と東宝の券12枚がもらえる。配当計算では3000株を所有するという前提で1000株当たりに還元して算出。オークション換金率は東宝は前出の一枚1100円、楽天地は一枚870円(オークション10回の平均)。落札価格は東映よりも高いが東宝、松竹よりも低い。楽天地は錦糸町、浅草の2つしかないが、錦糸町は映画館9館ある大規模な施設である。 配当利回りは最も高い結果となった。但し、この利回りを実現するためには3000株投資して東宝の券を入手する必要がある。最低投資単位である1000株では利回りは急激に下がる。


東京テアトル(9633) 東証一部

名目利回り(現金配当+優待券消費) 8.57% 
実質利回り(現金配当+優待券売却) 1.22%

株価水準が最も安い株だが、優待券の売却が実質的に不可能になっている。従来はばら売り可能であったが、綴り券方式に変更され、さらにICカード化した。最もオークションによる換金対策を講じている会社であるが、株主への還元を制限することに最も積極的ともいえる。従って、オークション換金実績はない。ICカード化されたときに他人に貸すというやり方も試みられたが、現在ではほとんど出品されていない。恐らく、企業側がオークションにクレームを出した可能性がある。ICカードには年間12ポイントが付与される。1ポイントで一回の計算である。なお、利回り計算では優待売却をゼロとして計算すした。実質利回りは配当のみなので低いが自家消費利回りは8%を超える。


(終わりに)

このように東証に上場している主要な映画配給会社の実質利回りをレビューしたが、結論として安定的なキャッシュフロー利回りを得るという目的からすると映画会社への投資はとても魅力的とは結論付けられないものの、映画ファンにとっては検討の価値があるといえよう。純粋にキャッシュフローだけの評価からすれば高配当の代表格であるREITと比較するとリスク・リターンプロファイルはあまり良いとはいえないのが結論である。
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