東京 DOWNTOWN STREET 1980's

東京ダウンタウンストリート1980's
1980年代初頭に撮影した東京の町並み、そして消え去った過去へと思いを馳せる。

大正・雑司ヶ谷~森岩雄著

2011-10-14 20:03:29 | 書籍
さて、大正っ子シリーズの紹介も今回が最後。大正・雑司ヶ谷~森岩雄著青蛙房刊である。このシリーズの面白い所は、旧江戸市中のエリアばかりではなく、こういった大正期に郊外から都市部へと変貌を遂げていったエリアについてもきちんと取り上げているところだと思う。今回の雑司ヶ谷は池袋にほど近く、変貌振りも大きなところである。それだけに面白いと思う。著者の森岩雄は、東宝の映画プロデューサーであり、脚本家であり、評論家であったという人物で、そういった世界に強い青蛙房ならではの人選だと言えるだろう。明治32年生まれで、昭和54年に亡くなられている。


舞台は鬼子母神で知られる雑司ヶ谷であり、今日の姿は私も良く知っている辺りである。まだ、田園の面影を強く残していた頃の話なのだが、なかなか今日の姿からは想像するのが難しい。


池袋とてターミナルとして盛り場に発展していくのは、震災後昭和に入ってからのことであり、元々何もないところに信号所として造られたのが始まりであっただけに、狐の鳴き声のするような寂しいところだったという。今の池袋駅東口の前には、高田村から板橋へ遊びに行くものを狙った追い剥ぎも出て、命を落とした者の供養塔が建てられていたと言うほどだった。その供養塔はいまは線路際の公園に移設されている。そんな時代のお話である。


御茶ノ水の京華学校とか、この当時池袋西口にあった成蹊は、このシリーズの別の著者のところでも登場している学校で、この共通項もまた面白い。京華は度々取り上げている木村荘太、荘八兄弟の母校でもある。東京には沢山学校あれども、重なってくると言うことはそれなりに理由があるのだろうと思う。まだ、そこを読み解けるところまで理解出来ていないのだが。この見返しの地図は、今年100周年を迎えた王子電車が早稲田まで開通する前、鬼子母神が終点であった頃の様子が描かれていて、面白い。いまでも鬼子母神駅周辺は行き止まりで小さな車庫があった頃の姿を想像することが出来る。


このシリーズは、単に地形や古地図というものだけではない、生きた町の有様、生活の様子が描かれているところに面白さがある。町歩きは面白いが、過去の町の人々の生活まで見えてこその面白さだと私は思っている。そういった部分で想像する材料を得る為には、大正っ子シリーズは本当に貴重な書籍だと思う。機会があれば、是非一読してみることをお勧めしたい。

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