日本の「ケータイ」が巻き返しをかけて世界市場に挑もうとしている。
スマートフォン開発に出遅れた日本の携帯電話メーカーは、国内市場で海外勢の攻勢にさらされ、海外展開でも韓国サムスン電子などに大きく後れを取っている。
世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス2012」に世界戦略機種を投入、反攻への足掛かりを探る富士通東芝モバイルコミュニケーションズの大谷信雄社長に戦略を聞いた。
――「モバイル・ワールド・コングレス2012」では防水対応を前面に打ち出した世界仕様の機種が注目された
まずは何とか最新のものを出したが、4つのプロセッサーコアを1つにしたクアッドコアの技術や薄型化といった技術はどの会社も取り組んでおり、それだけでは差異化にはつながらない。
高性能のみを追求する限り、中国メーカーも同じことをできる。
単なる性能競争では最終的には消耗戦にならざるをえない。高速携帯電話サービス「LTE」に対応した製品も同様だ。今は珍しくても、いずれ当たり前になる。
――日本メーカーが世界市場の攻略に向けて採るべき戦略は。
操作性など違った作り込みで強みを発揮していくべきだ。現在課題となっている電池の省電力化、タッチパネルの改善といった技術は日本がこれまで得意としてきた分野だ。
富士通が強みを持つネツトワーク経由でソフトウエアや情報システムを利用するクラウドコンピューティングの技術も応用しながら、今後は海外で中高年層向け市場などを狙っていきたい。
――コスト競争力を高めるため生産を外部委託へ切り替えるなどの動きも加速している
富士通が買収した東芝の携帯部門は国内工場を閉鎖して中国の委託生産としたが、納期などで散々な目にあった。
日本の通信会社(キャリア)は、数の変動やギリギリの仕様変更など様々な要望がある。国内向けは日本でつくった方が結果的にコスト面でいいということがわかった。何でも外でやればいいというのではない。
――今後の販売戦略は
海外を開拓するのか国内をしっかりやるのか方向感が見えない会社もあるが、我々はまずは国内市場でしっかりトップシェアを取ることが先決だと考えている。
通信会社と携帯メーカーとの蜜月関係は薄れてきているが、引き続きNTTドコモなどとの関係を維持していきたい。
国内各社ともスマホ開発に乗り遅れたせいもあり、2011年はスマホヘと社内体制をカジを切るのに精いっぱいで、製品自体を作り込む余裕がなかった。今年こそ勝負の年になるだろう。
赤外線通信やおサイフケータイなどの日本独自の技術をしっかりサポートして、日本の顧客の要求にしっかり対応する。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年3月5日(月)/3面」