森かずとしのワイワイ談話室

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災害廃棄物市民調査団・金沢 調査まとめ

2012-10-20 07:15:43 | 反原発・脱原発
 調査団は、市役所伝も環境課説明を受けた後、宮古市内を概観しながら抜けて、田老地区の田老漁協の組合長を訪ね、被災状況や復興課題、廃網処理過程などを伺った。私たちは、濁流が漁業の街を呑み込んだ巨大な防潮堤の上に立って、慰霊の読経もさせて頂いた。湾内は何事もなかったかのように穏やかであった。

 昼食を藤原埠頭にある食堂で済ませて、私たちは埠頭の漁具漁網仮置き場の事務所に視察に入った。環境省の岩手支援チームの担当者から概説を受け、現地調査に出た。空間線量と測定器近接による表面線量を測定しながら、現場監督の詳細説明を受けた。市民調査団としては、サンプリングの持ち帰りを強く希望していた。現場で持ち帰りを再度要望し、現場監督、支援チーム担当者
が岩手県所管と電話協議の上、許可をもらった。持参した裁断はさみで漁網の一部を切り取ったのに加え、金沢市試験搬入用に既に実験的に裁断されたものも頂くことが出来た。

 金沢市には可燃廃棄物は落ち込まれないが、小山田地区に二機設置された仮設焼却施設、一般廃棄物最終処分場(宮古地区広域事務組合)も視察し、視察の全日程を終えた。これらには、宮古市の二人の社民党議員に懇切丁寧なサポートを頂いた。環境省支援チーム、宮古市ならぶに田老漁協の関係者に深く感謝したい。

 私たちは、放射能による内部被曝を懸念する若い母親と面談し、日々の暮らし、被災地で被曝防護を問題にしづらい空気、個人の取り組みなどを切々と訴えられた。宮古市周辺の汚染状況もデータを紹介された。私たちは、土壌に含まれるセシウム濃度が比較的高い地点が宮古市内に点在していることも教えられた。

 2000㎞におよぶ調査行程は、多面的な検証の視点を与えてくれた。昨日、市役所内の市政記者室で調査団の参加者が記者会見を行っている。そこでの中間的とりまとめを以下に転載して詳細を報告しておきたい。


「災害廃棄物市民調査団・金沢」調査報告(10/19記者会見用)


【1】○宮古市長は「地元で処理したい」と言っている。(環境課課長)
   ○埋立場も増設する。(焼却灰の埋立地としても必要。)
  ★金沢市で受け入れた場合にかかる費用(復興支援金)を、宮古市の処理場増設費に
   当てては?
  *山野市長は東京の例で、経費試算は7万円/tと答弁。(9月市議会)
   ・宮古市全量の受入の場合  7万円 × 13,000トン=  9億1千万円
   ・宮古地区全量の受入の場合 7万円 × 24,000トン= 16億8千万円
  〈参考〉宮古市仮設焼却施設(2基)の建設・運転経費:33億円
      富山のトン当たり経費試算の17万円を仮に宮古の「漁具・漁網」に当てはめると
   ・宮古市全量の受入の場合  17万円 × 13,000トン=22億1千万円
   ・宮古地区全量の受入の場合 17万円 × 24,000トン=40億8千万円

【2】○漁具漁網以外のガレキは全て処理のメドが立った。
    (宮古市 市民生活部部長 金澤恵一郎氏)
   ○そして、「漁具・漁網」は、ガレキ全体量の3%以下。
  ★3%量が復興の妨げになっているだろうか?請け負うことが支援になるだろうか?
  ・宮古市の漁具漁網量:  13,000㌧ (がれき総量 732,000㌧の1,8%)
  ・宮古地区の漁具漁網量: 24,000㌧ (がれき総量 866,600㌧の2,8%)
   *宮古地区:宮古市・田野畑村・岩泉町(山田町は量が多いので別枠で扱う)
   *宮古地区の漁具・漁網は「分別集積」分が14,300㌧。「混合集積」の中から分別
    され追加が予想される分約1万㌧を推定合計して24,000㌧。
 
【3】○復興の為に今急務の課題は住宅再建。(宮古市議会議員)
  〈参考〉・田老町(漁師町)の住宅は全戸倒壊。現在、高台の仮設住宅での生活。
      ・マクドナルドで働く20代の女性:「自分の生まれ故郷は海沿いで、
       すべてなくなった。再建が望み。」
  ★ガレキはすべて仮置き場に移動済みで、住宅再建の妨げにはなっていない。
   ○10.4メートルの防潮堤を築くことが決まっている。その防潮堤を越えて津波が
    越流することが予想される地域に住宅は再建しない。
    藤原埠頭仮置き場は防潮堤より海側。赤前地区仮置き場も田老地区仮置き場も
    越流予想地区で、そこに住宅を建てることはない。(課長)
   ○3年以内にガレキ処理という計画に無理がある。処理にもう少し時間をかけても
    復興(その手始めは住宅再建)は進む。ガレキは時間をかけて地元処理にて。
    (竹花 市議会議員)
    
【4】漁具漁網を、金沢市へ持ち込むことの是非について
   ○震災以前は、「漁具・漁網」は、各漁協を通じて県外の産業廃棄物処理施設へ
    処理を発注。一般ゴミとは区別していた。(課長)
  〈参考〉・田老町漁協組合(組合長)は、和歌山県の産廃業者へ処理を発注。
       65円/kgの経費負担は、漁協と個人で按分。トラックに積んで輸送。
      ・震災後に浜へ陸揚げした漁具漁網は、国の費用負担で青森県の功和産業へ。
      ・今は、近郊の沖にもうガレキはなく、打ち上げもない。
      ・60年代後半に田老町に東北電力の原発建設計画浮上。漁民などの反対で撤退。
       建設されていたら福島第1同様の事態に。(組合長、宮古市議員) 
   ○使い古し漁網はリサイクル不可。油が染込んでいる、防藻剤を施してある。
    (田老町漁業共同組合業務部長)
   ○漁業が主産業の市なので、漁具漁網の処理施設が宮古市内に欲しい
    (外注でなく地元で処理を)という声が、震災以前からあった。
    (課長)
   ○「金沢市さんからのご希望ご所望に応えて、漁具漁網の搬出方法を試験中。」
    「粉砕試験や詰め込み試験を色々やってみて、やっと搬出可能な全体量も
     見えて来る。」(藤原埠頭 現場監督)
   ○ユンボの先に1mくらいの大きさの切断器を取り付けた重機で、粗々と切断。
    フレコンバック1杯分くらいの塊が藤原埠頭の「処理困難物置き場」に散在。
    その日(10/16)夕方には、別の裁断機を導入して切断テストを実施予定。
    金沢市用のフレコンバッグの種類も検討中。
    「できるだけ効率よく粉砕作業をしたい。」
    「こんな手間をかけずに、そのまま地元で埋め立た方が楽ね」との調査団員の質問にうなずいていた。
                                     (藤原埠頭 現場作業員)
  
   《まとめ(漁具漁網を金沢市へ搬出することについて)》
   ★漁具漁網は、震災以前と同様、産業廃棄物として処理すべきもの。
   (油にまみれている・海藻がからまないように防藻剤を施してある。)
   ★復興支援金は広域処理に使うのでなく、処理場を地元に!の声の実現に使うべき。
   ★3.11以前は和歌山の産廃業者が65円/kg(6.5万円/t)で引き取り処理していた。
    金沢市受入単価(想定17万円/t)より格段に安価で、産業廃棄物として適正処理。
   ★金沢市に持ち込むために、粉砕とフレコンバッグ詰めという余分な手間と費用が
    かかっている。地元埋め立ならこの手間暇が不要。
    本当に支援になっているのだろうか?
    
【5】「汚染の少ない地域は、安全な食品の供給地に!」という宮古市民の声。
   ~宮古市の一般市民の女性(30代)3歳・6歳の二児の母~
  ○宮古市2カ所と岩手県内他2箇所の土壌調査を実施
   ・宮古市佐原     セシウム134+セシウム137 22.89bq/kg 5/13
   ・宮古市役所付近の土手 セシウム134+セシウム137 62.69bq/kg 5/13
   ・宮古市川井江繁 セシウム134+セシウム137 300.81bq/kg 5/13
   ・山田町折笠 セシウム134+セシウム137 412.85bq/kg 5/16
  ●岩手県の測定結果沿岸市町村の「可燃物」の推計結果 宮古市:37.6Bq/Kg
   ・平成24年5月15~18日に試料を採取。21~29日に測定
   ・数字は品目ごとの測定結果を組成率で案文したもの
焼却炉
災害廃棄物の発生地域 焼却物における災害廃棄物の割合 主灰の放射性セシウム濃度 飛び灰の放射性セシウム濃度 採取年月日
宮古市清掃センター 宮古市   27%       10          133         H23.9.14


  ○岩手県内で、基準値越え椎茸、薪の灰4200bq/kg、牧草1000bq/kgなど。
  ○自分の子どもたち用に、岩手県・東日本産を避け西日本の食品を測定。
  (行政の提示する安全値を信頼できない。市民測定所の発表数字などが頼り。)
  ○子どもたちを健康被害から守る為に、学習会開催・講演会参加などの研鑽・
   啓蒙活動も地道に行っている。
  ○今支援が必要なのはメンタル面のケア。自身はアロマセラピスト。
20歳代~70歳代の女性がクライアントの大半。母娘で訪れる人も多い。
  〈参考〉田老村の漁協の業務部長:
   「怒り悲しみが湧いてくるので、今はあれこれ考えたくない。食べて、飲むだけです。」

《広域処理と東北支援について(お話より)》
  ★放射能の影響は量りしれない。集中管理・非拡散が大原則でそれを守るべき。
  ★西日本に放射能を持ち込まないための最大限の努力をして、汚染されていない
   食べ物を東北に供給してほしい。
  ★薪を燃やしたあとの灰を農家の方らが肥料に使えなくなった。汚染されていない
   灰を欲しいという声もある。

【6】島津勢津子さん(盛岡市に隣接する矢巾町)さんと交流。
  ○管理栄養士であり、とりわけ子どもたちの内部被曝を小さくするための活動を展開
   している。
  ・県内のホットスポットで子どもたちの尿検査を実施→福島の子どもたちより高い値
   が出た。
  ・矢巾町に働きかけて、放射能測定器(450万円)3台を購入。
   うち2台で、保育園、小学校の給食を毎日食べる前に測定している。
   3台目は、市民の食品測定に無料開放されている。
  ○矢巾町で、2012年春先から毎日10tの震災瓦礫を普通ごみに混ぜて焼却している。
   放射能の拡散について危惧・不安があり、町内3箇所で定点計測を行っている。
  ○平和と環境について学習し考え行動する仲間たちの会を定期的に開催している。
  ○・青森六ヶ所村再処理計画以降「三陸の海を放射能から守る岩手の会」として活動。
   ・岩手県の滝沢村に日本唯一の医療用放射性廃棄物処理工場(RMC)があり、
    建設計画当初から現在に至るまで、仲間たちと監視活動を続けている。
   ・今、岩手県内で進められているリニアコライダー誘致計画(中性子に放射線を
    当てる。むこう30年間の研究)についても、問題提起をしている。
   
≪ガレキの広域処理について≫ 
  ★ガレキを広域処理すれば放射能は拡散する、その影響は量りしれない。
   後の影響について責任が取れない。広域処理を行ってはならない。
  ★輸送費が莫大で、東電関係の業者に復興支援が流れてゆき、被災の地元が潤わない。
   その構図は納得できない。

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