「夢は第2の人世である」あるいは「夢は五臓六腑の疲れである」第115回
西暦2022年皐月蝶人酔生夢死幾百夜
いつの間にか我が国も、ロシア並みの専制国家に成り下がっていたので、全国民がどんな書類にでも、「プーチン」とサインするようになってしまった。5/1
「瀕死の詩人たちには、半地下の4畳半に入ってもらうことにする」と、政府が決めたそうだ。5/1
朝から晩まで別の噺をしようと思っていたのだが、ストックがすぐに尽きてしまったので、おなじ噺をちょっとだけ変えて、延々と語る羽目に陥ったが、考えてみれば、これは落語とおんなじだな、と気づいたので、一安心したずら。5/2
モンゴル語学校で最優秀のA君は、確かに語学の天才だったが、余り人望はなく、人々は、成績はナンバー2だが、人間味のあるのB君になついたのよ。5/3
千の天使がバスケットボールをしているので、さっきから呆然と見惚れているのだが、これってもしかすると、中原中也の詩の中の世界ではなかろうか?5/4
暫く前から英国オックスフォード大学に留学していたA君だったが、試験の時にカンニングしたのがばれて、退学処分を受けたのだが、それが本国に伝わらないよう、なんとか内緒にしてくれと頼んで、ようやっと認められたようだ。5/5
朝会社に行くため、かみさんと並んでバスで座っていたら、元パリコレモデルの長身の女が2人の間に割りこんできたので、仕方なく席を立って座らせてやったのだが、朝飯を喰っていなかったので、バス停の前にある一膳飯屋に入って朝定食を頼んだら肉じゃがだったので、それを喰い終わったが、飯もみそ汁も出てこないので、文句を言うたりしている間に、バスは出ていったずら。5/6
「ほなら、これはどうですか?」と言いながら、フルカワが持ち出した不動産は、たった5万円の日比谷公園位の広さの象の親子付きの庭付き10LDK平屋住宅だったが、あいにくケニアの物件だったので、涙を呑んで見送ったのよ。5/7
「諸君、テッテ的に語り合おうじゃないか!」と松田世紀夫クンが言うたが、またか、という顔をしただけで、誰も返事をしなかった。5//8
「月見町で恒例の詩吟会をやるから、一度顔を出しなさい」と言われたのだが、断った。それは第1に、おらっちは詩人ではなく、ただの人だから。第2に、そのテーマが「見渡す限りの春の夜」という奇妙な題名だったからだ。5/9
散歩していたら、俄か雨が降ってきたので、雨宿りしようと思って、急いで分厚い本の中に飛び込んだら、やたら余白が多くて文字数が少ない詩集だったので、だいぶ雨に濡れてしまったのよ。5/10
もののはずみで、人を殺めてしまったおらっちだったが、なんとか無罪放免してもらおうと、家族は町内の人々に嘆願の奉加帳を回覧したそうだが、なんとなんと末の妹が署名していないことが判明したので、おらっちは衝撃を受けた。5/11
パターソンの町をぶらついていたおらっちだったが、「そうだ、今宵のライブに出演する会場の下見をしておこう」と向かったがまだ準備ができていなかったので、さらにあちこちほっつき歩いているうちに小便をしたくなったが、トイレが無いのでさらにさ迷っているうちに迷子になってしまった。5/12
ひともうらやむほどの功なり名を遂げたセイさんが、糟糠の細君と莫大な資産を弊履のように投げ捨てて、無名の乙女と山谷の木賃宿に潜入したとの報に接した時、余は、干天の慈雨を浴びた如き一服の清涼感を覚えたのであった。5/13
「夕方になったら帰ってきてね」と彼女は言うたのだが、いくら街で暇つぶしをしてもカンカン照りで夕暮れにならないので、仕方なくおらっちが家に戻ると、1羽の鶴が機を織っていた。5/14
2022年5月15日、一介のリーマンのおらっちは、往来で1匹のウスバカゲロウを呑みこんでしまったのよ。5/15
おらっちは高嶺の花の彼女を攻略するために、彼女の親友のスタイリストのイヌバシリ嬢を籠絡して、彼女の愛犬のブルドッグが♀なので、それとつがわせる♂を持ちこんで、お見合いさせる機会に、彼女とお近づきになろうと計画したのよ。5/16
おらっち超満員のバスに飛び乗ったんだが、外に押し出されてしまい、かろうじて手すりに捉まったままバスに引きずられるようにして、次のバス停まで走っていったのだが、死ぬかと思ったずら。5/16
本日は午前中に2本の発表を聞かされるのだが、それが嫌で日本橋方面をぶらついているうちに昼になったのでウナギのまむしを喰うたら少し元気になった。午後からはおらっちの発表だから急いで戻ると、おまんた学会は案の定大騒ぎになっていた。5/17
明治時代に来日した御雇外国人の建築家のなかでも、その男はユニークで、建造物の周りを、白い鳥で装飾するという、不思議な白鳥様式を、得意にしていた。5/18
この国に留学生としてやって来て、この牧師館の厄介になっていたおらっちだが、もうひとりの同胞が時々台所から食料を盗んでいることを知って、激しく憎んだ。5/19
「東京大阪名古屋福岡のマンションを比べると、名古屋のそれがいちばん隣の部屋との壁が薄い」という人物がいたが、おらっちは生まれてこのかた、マンションなんかに住んだこともないので、嘘かほんとかてんで分からんずら。5/20
奈翁の末裔だというので、いくたびも彼の容貌やら身体的特徴を精査してみたのだが、結局、その片鱗さえも確認することが出来なかったずら。5/21
その草っぱらで、野球をやる時にどうするかと言うと、おもむろに地下からベースが浮上してきて塁を構成し、試合が終わると、元のように沈んでいくのだった。5/22
リーマン時代の会社の仲間から誘われて、場末の居酒屋にやってきたおらっちだったが、大嫌いな煙草の煙がモウモウと漂う汚らわしさに辟易して、すたこらさっさと逃げ出したのよ。5/23
ふと眼を上げるとそこにはヒラツカ氏がいて、「君に初めて会ったのは、確か2008年の4月だったな」と言うたので、ああそうだったのか、でも良く覚えている人だな、とその時思ったのだった。5/24
私の部下たちは、私が指導者としては無能で失格であることを知っていたので、それを忘れるために、毎朝会社の始業時間の前に運動場を全力で走って気合いを入れていることを知って、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。5/25
米中露朝などの先制攻撃ロボ開発競争にあって、今年の世界ロボット大会の話題をさらったのは、専守防衛機能に特化された我が国の最新型のヒューマン・ロボコップだった。5/26
久し振りに夜の繁華街に出たら、ホテルでなんたら記念の祝賀会をやっていたので、なんなく紛れ込んで、たらふく飲んだり、ごちそうを頂戴したりしてしまった。5/27
突如ロシアとの戦争が始まったので、環境問題NPOから指名された私は、戦艦に乗って北方領土の自然環境についての、命知らずのリサーチをすることになった。5/28
悪魔島のまわりの海の中には、数多くの潮流が川のように流れているので、その水流の動向を熟知していないと、一人前の漁師にはなれなかった。5/29
あれほど清潔だった工場なのに、稼働して半年も経たないうちに、トイレから流れ出た小便やウンコが、フロア全体に垂れ流しになって、二目と見られぬ醜く臭い光景と化していた。5/30
生まれて初めて仲人を頼まれた私は、山の上ホテルに双方の家族を招いて、会食することにした。定時に全員が集まったので、私は立ち上がって、彼らを紹介しようとしたのだが、なんということか、いくら頭をひねっても、彼らの名前が出てこないので、弁慶のように立ち往生してしまった。5/31
なんぼ安うても中国の食料品だけは買うまいと妻と決意を新たにしたり 蝶人