照る日曇る日第1474回
この人の本を一度読みたいと思って半世紀以上が経ったが、ようやく本書を読了することができた。
全然知らなかったのだが、著者は西郷や大久保と同郷の人らしく、なるほどそれで会話に精彩があり、主役の2人のみならず藩主の斉彬や久光、有村俊斎(海江田武次)、有馬新七、奈良原喜八郎、堀次郎、大山格之介、小松帯竹脇、中山尚之助などの群像が生き生きと立ち現れるのだ。
その最たるものが、例の寺田屋騒動の壮絶な立ち回りのまるで現場で見ているように強烈な描写であり、その悲惨な同士討ちのあおりを喰らって切腹する森山新蔵、新伍左衛門父子の哀切な最期の姿である。
そういう類書にない独特の存在感に打たれる雄編ではあるが、前半の月照、西郷入水に至るまでの導入部が余りにも長大すぎて、後半が猛烈な駆け足となり、西郷が大活躍をする戊辰戦争や西南戦争などにまったく触れずに征韓論決裂の巻で終了してしまうのは、新聞連載の宿命とはいえ残念至極である。

「なんでまたトランプさんは退院したの?」「18番のパフォーマンスさ」 蝶人